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Disease Atlas · 皮膚 · 外傷

熱傷

Burn injury

別名
burnthermal injury熱傷症
臓器系
皮膚全身呼吸器
科目
SurgeryForensic Medicine
トピック
外科学 A/01:創傷の分類と創傷治癒法医学 27:熱傷・熱中症と寒冷障害・低体温症
合併症
コンパートメント症候群急性腎障害急性呼吸窮迫症候群敗血症
続発疾患
一酸化炭素中毒
関連疾患
熱中症・低体温症
治療薬
ヒドロキソコバラミン
原因微生物
緑膿菌
症状
疼痛水疱紅斑浮腫皮膚滲出
スコア
9の法則

🧠 全体像:熱傷の初期評価は「①深さ()」「②広さ()」「③気道が巻き込まれているか」の3軸で行う。知覚と(血色の戻り)で判定するのが臨床的に速く、水疱があるかどうかより「痛みがあるか」「圧迫で血色が戻るか」のほうがまで及んでいるかを見分ける手がかりになる。広さはで概算し、成人でT 20%超・小児で10〜15%超なら正式な輸液蘇生(Parkland)の適応になる。そして見た目の熱傷とは別に、気道熱傷()は熱傷そのものより先に患者を殺しうる——顔面熱傷・鼻毛の焼失・煤・嗄声・喘鳴を見たら、酸素化が保たれていても気道が閉塞する前に挿管を検討する。・広さ・気道の3軸の評価が終わって初めて、輸液量・創傷管理・熱傷センターへの紹介要否が決まる。

深達度分類

熱傷の深さは、侵された皮膚の層と、知覚という2つので判定する。

侵される層 外観 知覚 治癒
表在性(第1度) 表皮のみ 発赤、水疱なし、乾燥 あり(中等度の痛み) 保たれる 5〜10日、瘢痕なし
熱傷(第2度A) 真皮 水疱、均一な紅色〜 あり(強い痛み) 圧迫で血色が戻る 2〜3週間、軽微な瘢痕
熱傷(第2度B) 水疱、まだら模様 深部への圧迫でのみ 緩徐にしか戻らない 遷延し瘢痕は避けられない
全層熱傷(第3度) 表皮・真皮全層 革様、乾燥、白色〜褐色 なし(神経終末が破壊) 戻らない( 8週間超、)を要する

⭐ 第2度は幹細胞が温存されているかで自然治癒するA型と、を要するB型に分かれる。水疱の有無だけで浅い・深いを判断せず、知覚とで見極めることが臨床的に重要である1

💡 疼痛が「強い」ほど浅く、疼痛が「ない」ほど深い、というな関係を覚えておく——全層熱傷は神経終末そのものが破壊されているため、一見軽症に見える無痛の創ほど重症である。

面積評価

熱傷の重症度評価には深さだけでなくに占める割合が重要で、(頭頸部9%、上肢各9%、体幹前後各18%、下肢各18%、1%)を用いて概算する。は面積が大きいほど過大評価しやすく、小児では配分が異なるため専用の図を用いる(詳細はを参照)。

初期対応とABCDE

flowchart TD
    A["熱傷患者"] --> B["熱源からの離脱・熱傷進行の停止"]
    B --> C["気道評価:顔面熱傷・鼻毛焼失・煤・嗄声・喘鳴は<br>気道熱傷を疑う所見"]
    C --> D{"気道熱傷を疑うか"}
    D -->|"あり・喘鳴/上気道雑音"| E["早期の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endotracheal intubation'>気管挿管</span>を検討<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='airway edema'>気道浮腫</span>は急速に増悪しうる)"]
    D -->|"なし"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='depth of invasion'>深達度</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='body surface area, BSA'>体表面積</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rule of nines'>9の法則</span>)を評価"]
    E --> F
    F --> G{"T<span class='jp-term jp-term-diagram' title='body surface area'>BSA</span>が成人20%超<br>小児10〜15%超か"}
    G -->|"はい"| H["Parkland<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Widmark&#39;s formula'>公式</span>で輸液蘇生量を算出"]
    G -->|"いいえ"| I["局所創傷管理を中心に経過観察"]
    H --> J{"熱傷センター紹介基準に該当するか"}
    I --> J
    J -->|"該当"| K["熱傷センターへ紹介"]
    J -->|"非該当"| L["外来・一般病棟で継続管理"]

気道熱傷

⚠️ 気道熱傷は熱傷そのものより早く患者を脅かす。 顔面熱傷、鼻毛の焼失、口腔内・喀痰中の煤、嗄声、、チアノーゼ、喘鳴・ラ音は気道熱傷を疑う所見である。嗄声や上気道の喘鳴・雑音は気道閉塞切迫のであり、直ちにを強く検討する。 は受傷後急速に増悪しうるため、酸素化が保たれていても挿管の閾値を低く保つ2

気道熱傷では、局所の熱傷とは別に生成物(・シアン化水素)による全身性の中毒を考える。

輸液蘇生(Parkland公式)

成人でT 20%超、小児で10〜15%超の熱傷が正式な輸液蘇生の適応となる3

内容
Parkland 4 mL/kg/%T(小児 3 mL/kg/%T)を、受傷後最初の8時間で半量、残り16時間で残量を投与する
Modified Brooke 2 mL/kg/%T を用いる代替式

いずれも受傷時刻を起点に計算する(刻ではない)点に注意する。輸液量は尿量を指標に調整し、成人で30〜50 mL/時(0.5〜1.0 mL/kg/時)、体重30kg未満の小児で1 mL/kg/時、30kg超の小児で0.5 mL/kg/時を目標にする3

⚠️ はあくまで初期投与量の見積もりであり、固定したプロトコルとして機械的に投与し続けない。 過剰な蘇生は浮腫の増悪、を招きうるため、尿量・血行動態を見ながら投与量を継続的に調整する。

臨床像と合併症

広範囲熱傷では、局所の疼痛水疱紅斑に加え、血漿成分のへの大量流出により浮腫皮膚滲出(熱傷水疱の破綻・により血漿成分が直接流出する病態)を来す。へ進行しうるほか、四肢・体幹の熱傷は皮膚のを失わせてを合併しうる。を、気道熱傷やを招きうる。は感染の場になりやすく、緑膿菌をはじめとする創部感染から敗血症に進展することがある。

治療

・面積の評価と並行して、そのものの管理を行う。

  • 創傷管理:清浄化、破れた水疱の除去、局所抗菌薬・創傷被覆材による感染予防を行う。熱傷・全層熱傷ではが必要になる。
  • 熱傷:四肢・胸郭の熱傷で循環障害・換気障害を来せば、を検討する。
  • :熱傷は強い疼痛を伴うため、十分な鎮痛を初期対応から組み込む。
  • 感染対策は正常な皮膚バリアを欠くため、緑膿菌などによる創部感染から敗血症に進展しうる。全身性の予防的抗菌薬投与はルーチンには推奨されず、感染徴候に応じて治療する。

熱傷センターへの紹介基準

⭐ 紹介基準は「転送を考慮した即時のコンサルト」と「コンサルトを推奨」の2段階に分かれる4

損傷の種類 転送を考慮した即時のコンサルト コンサルトを推奨
熱傷 全層熱傷/T 10%以上の熱傷/顔面・手・・足・会陰部・関節にかかるまたは全層熱傷/を有する熱傷/併存外傷を伴う症例/が困難な症例 T 10%未満の熱傷/大きさを問わず深達化しうる熱傷
が疑われる全症例 顔面のフラッシュ熱傷・鼻毛の焼失・煙曝露など、の徴候がある症例
小児(14歳以下または30 kg未満) 疼痛・創処置・リハビリテーション・患者・の負担・虐待の観点から、すべての小児熱傷が紹介の利益を得うる
すべての
(1,000 V以上)の全症例/ (1,000 V未満)は、症状の遅発とのスクリーニングのためコンサルトと経過観察を考慮

💡 年齢層別の閾値(10歳未満・50歳超で10%、その他で20%)は旧基準である。 現行版では年齢で分けず熱傷10%の単一閾値になり、小児は年齢・体重で括られている。熱傷は紹介基準の項目としては挙げられていない(の適応としては別に重要)。

まとめ

  • 熱傷は「深さ()」「広さ()」「気道の巻き込み」の3軸で評価する。は水疱の有無ではなく知覚とで判定し、第1度・第2度A(浅達性)・第2度B(深達性)・第3度(全層)に分ける。
  • 面積はで概算し、成人T 20%超・小児10〜15%超は正式な輸液蘇生の適応になる。
  • 輸液蘇生はParkland4 mL/kg/%T、最初の8時間で半量)が標準で、尿量(成人30〜50 mL/時)を見ながら調整する。固定プロトコルとして機械的に投与し続けない。
  • 気道熱傷は顔面熱傷・鼻毛焼失・煤・嗄声・喘鳴で疑い、が急速に進行しうるため挿管の閾値を低く保つ。には100%酸素、シアン中毒にはで対応する。
  • 、敗血症が主な合併症で、・部位・に応じて熱傷センターへの紹介基準を満たすか判断する。

出典

  1. 1.Burn Classification(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)熱傷深度の分類として、表皮のみを侵す表在性(第1度、発赤主体で水疱を伴わず5〜10日で瘢痕なく治癒)、真皮浅層を侵す浅達性部分層熱傷(第2度、水疱を形成し圧迫で血色が戻り2〜3週間で軽微な瘢痕にとどまる)、真皮深層(網状層)まで達する深達性部分層熱傷(第2度、圧迫への血色の戻りが緩徐で瘢痕形成が避けられず治癒が遷延する)、表皮・真皮に加え皮下組織まで及ぶ全層熱傷(第3度、革様・乾燥した外観で血流途絶により圧迫しても血色が戻らず知覚を消失し8週間超を要し外科的治療を要する)の定義と所見を確認した閲覧 2026-08-10
  2. 2.Burn Fluid Resuscitation(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2025)成人で総体表面積(TBSA)20%超、小児で10〜15%超の熱傷が正式な輸液蘇生の適応となること、Parkland公式が乳酸リンゲル液4 mL/kg/%TBSA(小児3 mL/kg/%TBSA)を受傷後最初の8時間で半量、残り16時間で残量を投与する方法であること、Modified Brooke公式が乳酸リンゲル液2 mL/kg/%TBSAを用いる代替式であること、尿量の目標が成人で30〜50 mL/時(0.5〜1.0 mL/kg/時)、体重30kg未満の小児で1 mL/kg/時、30kg超の小児で0.5 mL/kg/時であることを確認した閲覧 2026-08-10
  3. 3.Guidelines for Burn Patient Referral(American Burn Association (ABA)・2022)熱傷センターへの紹介基準が「転送を考慮した即時のコンサルト」と「コンサルトを推奨」の2段階で提示されていることを確認した。前者は全層熱傷・TBSA 10%以上の部分層熱傷(年齢層別の区分は無い)・顔面・手・外陰部・足・会陰部・関節にかかる深達性部分層または全層熱傷・併存疾患を伴う熱傷(疾患名の列挙は無い)・併存外傷・疼痛管理が困難な症例、後者はTBSA 10%未満の部分層熱傷と大きさを問わず深達化しうる熱傷。吸入損傷は疑い例すべてが即時、小児は14歳以下または30 kg未満と定義され全例が紹介の利益を得うるとされ、化学損傷は全例、電撃傷は高電圧(1,000 V以上)と落雷が即時・低電圧(1,000 V未満)はコンサルト。旧基準にあった年齢層別の10%/20%閾値と全周性熱傷の項目は現行版に存在しない閲覧 2026-08-10
  4. 4.Inhalation Injury(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)気道熱傷(吸入損傷)を疑う身体所見として顔面熱傷・鼻毛の焼失・口腔内や喀痰中の煤(carbonaceous material)、呼吸促迫・チアノーゼ・喘鳴・ラ音を確認した。嗄声や上気道の喘鳴・雑音は気道閉塞切迫のサインであり早期の気管挿管を強く検討すべきこと、上気道浮腫は急速に増悪しうるため挿管の閾値を低く保つべきことを確認した。一酸化炭素中毒への対応は100%酸素投与が標準治療でパルスオキシメトリはCOHbにより偽高値を示しうるため直接血中カルボキシヘモグロビン値を測定する必要があること、シアン中毒が強く疑われる場合はヒドロキソコバラミンを投与しうること(腎排泄性で毒性が低い一方、皮膚・尿の変色という副作用があること)を確認した閲覧 2026-08-10