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Drug Atlas · B3 Other / その他

ヒドロキソコバラミン

hydroxocobalamin

分類
Other / その他
商品名(EU)
Cyanokit
科目
Forensic MedicinePediatrics
トピック
法医学 31:一酸化炭素中毒とヒ素・シアン化物・鉛・メタノール中毒小児科 3-64:先天代謝異常症
副作用
皮疹
監視検査値
乳酸
対象疾患
シアン化物中毒熱傷

🧠 全体像ビタミンB12と同じ骨格を持つ分子だが、本稿の主役はビタミンとしての顔ではなく、としての顔である。分子中心のコバルト原子(Co3+)がイオン(CN⁻)を1:1でし、無毒なシアノ(ビタミンB12製剤として用いられる安定型)に変えて尿へ捨てる——「毒を無害な物質に変えて排泄する」型のとして理解する。中毒治療で使う用量は症の補充量とは桁が違う超大量であり、この用量域の違いを意識しないと両者の臨床像を混同する。

薬効群の中での位置づけ

はもう一系統あり、機序も得意な状況もとは対照的である。

機序 得意な状況 注意点
Co3+がCN⁻を直接捕捉しシアノとして排泄 密閉空間、CO同時曝露疑い、小児、妊娠、心肺低下例 皮膚・尿の発色で各種検査に干渉する。、アレルギー反応
がヘモグロビンをメトヘモグロビン化し、よりも高い親和性でCN⁻を引き寄せて隔離する。続いて反応を促進し、隔離されたCN⁻を無毒なへ変換してする ・CO曝露が否定できる純粋な ⚠️ そのものがをさらに低下させるため、やCO同時曝露が疑われる患者にはを使わない。この一点がを密閉空間・小児・妊娠・心肺低下例で優先する理由になる

💡 同じ「を無毒化する」でも、狙う相手が違う。 はCN⁻分子そのものを直接捕まえるのに対し、はいったんヘモグロビンを犠牲にしてCN⁻の受け皿を作り、そこから酵素的にへ作り変える二段構えである。後者は自らを落とす操作を含むため、もともと低酸素にさらされている患者(・CO曝露)にはリスクが利益を上回る。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cyanide'>シアン化物</span>イオン(CN⁻)が体内に侵入"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inner mitochondrial membrane'>ミトコンドリア内膜</span>の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='cytochrome c oxidase'>シトクロムC酸化酵素</span>に結合"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='electron transport chain'>電子伝達系</span>が停止し<span class='jp-term jp-term-diagram' title='aerobic'>好気的</span>ATP産生が止まる"]
    C --> D["細胞は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anaerobic metabolism'>嫌気性代謝</span>へ切り替わる"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lactic acidosis'>乳酸アシドーシス</span>・数分単位の心停止"]
    F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hydroxocobalamin'>ヒドロキソコバラミン</span>を静注"] --> G["分子中心のCo3+がCN⁻を<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='coordinate bond'>配位結合</span>で1:1に捕捉"]
    G --> H["シアノ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cobalamin'>コバラミン</span>(安定型ビタミンB12)に変化"]
    H --> I["腎から尿中へ排泄される"]
    G --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cytochrome c oxidase'>シトクロムC酸化酵素</span>からCN⁻が奪われ<br>酵素機能が回復する"]

💡 血中シアン濃度の結果を待ってはいけない。 測定には時間がかかり、結果が判明する頃には手遅れになりうる。密閉空間、原因不明の重度、意識障害などから中毒を疑った時点で、確定診断を待たずに投与を開始する。

薬物動態

項目 値・特徴
として約21.8〜25.6 L
代謝 代謝は受けない。CN⁻とのそのものが不活化の本体
排泄 が主(投与量の約60〜70%、大半は投与後24時間以内)。色素成分の排泄は最大35日間持続しうる
半減期 として約26〜31時間

適応

領域 使いどころ
中毒(第一選択の 。密閉空間、CO同時曝露疑い、小児、妊娠、心肺低下例で特に優先される。の大量投与に伴う医原性シアン中毒にも用いる
(補助治療) 再メチル化障害(代謝異常の一部病型)での評価・治療に用いられることがある。中毒治療の超大量とは用量域がまったく異なり、貧血補充基質としての本来の適応はビタミンB12を参照

用法・用量

成人の中毒治療:初回5 gを(または・5%ブドウ糖液)200 mLに希釈し、15分かけてする。重症度に応じて2回目の5 gを追加投与でき(総量最大10 g)、は病態が切迫していれば15分、比較的安定していれば最長2時間まで調整する。小児での安全性・有効性は確立していないが、国際的には体重あたり約70 mg/kgを目安とした投与経験が報告されている。血中シアン濃度の結果を待たず、中毒を疑った時点で速やかに開始する。

禁忌・注意

  • 明確なはないが、本剤またはシアノへの過敏反応の既往がある患者では代替など、・CO同時曝露がない場合に限る)を検討する
  • ⚠️ とは同一静脈ラインで同時投与しないのため)。併用する場合は別のラインを確保する
  • 一過性のが起こりうる(健常人の約2割で収縮期180 mmHg以上または拡張期110 mmHg以上に達したとの報告がある)。投与中はを継続的に観察する
  • 形成による腎障害の報告があり、投与後は数日間、腎機能(BUN・)を追跡する

副作用

特徴的な副作用は、赤色を帯びた分子自体の色調に由来するものが多い。

頻度 内容
高頻度 皮膚・粘膜の紅斑(最大2週間持続)、尿の赤色化(。最大5週間持続)
注意 一過性の(投与7〜28日後に出現することがある)
検査への影響 深い赤色がを用いる検査に干渉する。臨床化学は主に投与後24時間(ビリルビンのみ最大4日)、血算は12〜16時間、凝固は24〜48時間、尿検査は48時間〜最大8日間(尿の色調変化は最大28日間)と、項目によって干渉のが大きく異なる。装置の血液漏出センサーを誤作動させることもある
重篤・まれ

まとめ

  • はコバルト原子がCN⁻を1:1で捕捉しシアノとして排泄する、「毒を無害な物質に変えて捨てる」型の
  • はメトヘモグロビン形成を経由するため、をさらに落とす。・CO同時曝露が疑われる患者には使わない——この一点がを密閉空間・小児・妊娠・心肺低下例で優先する理由。
  • 血中シアン濃度の結果を待たず、疑った時点で投与を開始する。
  • 特徴的な副作用は皮膚・粘膜・尿の赤変()で、検査やのセンサーに干渉しうる。ほかに、アレルギー反応がある。
  • 再メチル化障害など代謝異常での使用は、解毒用の超高用量とはまったく別の用量域である。貧血補充基質としての基本はビタミンB12を参照。