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Drug Atlas · B25 Other / その他

チオ硫酸ナトリウム

sodium thiosulfate

分類
Other / その他
商品名(EU)
Pedmark
科目
Forensic MedicinePharmacology
トピック
31: Carbon-monoxide poisoning. Arsenic, cyanide, lead and methanol poisoningCore48: Antidote - definition and examples
副作用
悪心嘔吐
監視検査値
クレアチニン
対象疾患
シアン化物中毒薬剤の血管外漏出
対象薬
シスプラチンベンダムスチンメクロレタミン

🧠 全体像は、体内にを補給する薬である。イオン(CN⁻)は本来、体内常在の)によって毒性の低い(SCN⁻)に変換され尿中へ排泄されるが、酵素の量ではなく基質であるの枯渇にある。外から大量のチオ硫酸を供給し反応を加速させる——酵素そのものではなく、酵素が働く「材料」を渡すという発想が軸になる。同じ発想が、高濃度シスプラチン・などのに対する局所としての顔にもつながる。

薬効群の中での位置づけ

には、の2系統がある。

項目
標的 CN⁻を直接で捕捉 がCN⁻を隔離し、チオ硫酸が硫黄を供与しSCN⁻へ変換
効果発現 速い チオ硫酸単独では遅く、による隔離が前段に必要
・CO同時曝露 使用できる(優先) ⚠️ を悪化させるため不可
単独使用 単剤で完結する の枯渇を補うのみで、CN⁻を隔離する仕組みを欠く

💡 の弱点は「隔離役」を持たないことである。 CN⁻を反応の場へ集める仕組みがなければ反応は進みにくい。がメトヘモグロビンでCN⁻を引き剥がし濃縮して初めて、硫黄供与が効果を発揮する。この二段構えを欠く単独投与は重症例では遅すぎる1

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cyanide'>シアン化物</span>イオン(CN⁻)"] --> B["体内常在の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='rhodanese'>ロダネーゼ</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thiosulfate sulfurtransferase'>チオ硫酸硫黄転移酵素</span>)"]
    C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sodium thiosulfate'>チオ硫酸ナトリウム</span>を投与"] --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sulfur donor'>硫黄供与体</span>を大量に供給"]
    D --> B
    B --> E["CN⁻へ硫黄を転移"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='SCN⁻'>チオシアン酸</span>"]
    F --> G["腎から尿中へ排泄"]
    H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rate-limiting step'>律速段階</span>は酵素活性ではなく<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='sulfur donor'>硫黄供与体</span>の枯渇"] -.-> D

💡 自体が不足することはまずない。 の供給量であり、外因性に大量投与することがそのまま治療になる。への応用も同じ発想の延長で、を持つチオ硫酸が、漏出した(高濃度シスプラチン・メクロレタミンなど)ので不活性化する。

薬物動態

項目 値・特徴
分布 が主体。細胞内へはほとんど移行せず、ミトコンドリア内のへの到達は限定的
代謝 反応でへ変換される分を除き、大部分は未変化体として存在する
排泄 主に。腎機能低下例では変換後のが蓄積しやすい

適応

領域 使いどころ
に続けて投与する古典的レジメン。・CO曝露が否定できる例に限る1
高濃度シスプラチン・の漏出に対する局所2
の予防 1か月齢以上・限局性非転移性固形腫瘍の小児で、難聴リスクを下げる目的で承認(2022年)3
に伴うへのを可溶性化する目的で静注する

用法・用量

に続け、成人は25%溶液50 mLを緩徐に静注する。小児は1 mL/kg(最大50 mL)とし、症状時は初回量の半量を追加する1

:希釈した本剤を漏出部位周囲へ少量ずつ皮下注射する2

の予防:体重に応じ10〜20 g/m²を、投与終了から6時間後に15分かけて静注する。シスプラチンの投与時間が1〜6時間を超える例では確立していない3

⚠️ 「6時間後」という遅延投与のタイミングが本質である。 早すぎれば腫瘍組織へ到達する前のシスプラチンまで不活化し抗を損なう。遅すぎれば不可逆的な内耳障害がすでに生じている。

禁忌・注意

  • 禁忌に対する重篤な過敏反応の既往3
  • ⚠️ と同一静脈ラインで同時投与しないのため)。併用時は別ラインを確保する
  • 腎機能低下例では変換後のが蓄積しやすい。大量投与ではが上昇しうる
  • ・CO同時曝露が疑われる患者で問題になるのはを使えないことであり、自体はを悪化させない。この状況ではが優先される

副作用

頻度 内容
高頻度 悪心嘔吐
大量投与 上昇
腎機能低下例 蓄積による中毒症状

まとめ

  • は、反応のであるを外から補給し、イオンを毒性の低いへ変換させる薬である。
  • 単独では隔離役を欠くため効果発現が遅く、古典的にはと併用する。・CO同時曝露が疑われる場合はを避け、を優先する。
  • 高濃度シスプラチン・に対する局所としても用いられる。
  • 小児のの予防(2022年承認)では、投与終了から6時間後というタイミングが抗を損なわないための本質になる。
  • とはのため同一ラインで同時投与しない。

出典

  1. 1.NITHIODOTE (sodium nitrite injection and sodium thiosulfate injection) — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration (DailyMed)・2021)シアン化物中毒に対する亜硝酸ナトリウム+チオ硫酸ナトリウムの用法を確認した。亜硝酸ナトリウムに続けてチオ硫酸ナトリウムを投与し、成人は25%溶液50 mL、小児は体重あたり1 mL/kg(最大50 mL)とし、症状再燃時は初回量の半量で追加投与する。チオ硫酸ナトリウムがロダネーゼ反応(Na2S2O3 + CN⁻ → SCN⁻ + Na2SO3)を介してシアン化物を無毒化する硫黄供与体であることを確認した。閲覧 2026-08-02
  2. 2.PEDMARK (sodium thiosulfate injection) — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration (DailyMed)・2022)PEDMARK(チオ硫酸ナトリウム)は2022年9月20日、1か月齢以上・限局性非転移性固形腫瘍の小児患者における、シスプラチンに伴う耳毒性リスク低減を適応としてFDA承認された。用法は体重に応じ10〜20 g/m²を、シスプラチン投与終了から6時間後に15分かけて静注する。シスプラチンの投与時間が1〜6時間を超える例や本剤への重篤な過敏症の既往がある患者への安全性・有効性は確立していない。閲覧 2026-08-02
  3. 3.ONS/ASCO Guideline on the Management of Antineoplastic Extravasation(Oncology Nursing Society (ONS) / American Society of Clinical Oncology (ASCO)・2025)高濃度シスプラチン(0.5 mg/mL超)・ベンダムスチンの血管外漏出に対する解毒薬としてチオ硫酸ナトリウムが位置づけられていることを確認した。閲覧 2026-08-02