疾患ノート一覧へ

Disease Atlas · 内分泌・代謝 · 先天性疾患

コバラミンC欠損症

Cobalamin C deficiency

別名
cblC型cblC diseaseメチルマロン酸血症・ホモシスチン尿症合併型combined methylmalonic acidemia and homocystinuria, cblC type
臓器系
内分泌・代謝小児神経眼科腎・泌尿器
科目
Pediatrics
トピック
小児科 3-64:先天代謝異常症
上位概念
先天代謝異常症
鑑別疾患
ホモシスチン尿症メチルマロン酸血症
合併症
慢性腎臓病
続発疾患
血栓性微小血管症
治療薬
ヒドロキソコバラミンベタインロイコボリン葉酸
症状
筋緊張低下発作眼振発達退行
検査値
メチルマロン酸ホモシステインメチオニンアンモニアアシルカルニチン分析
画像所見
牛眼様黄斑症

🧠 全体像:C欠損症(cblC型)は、MMACHC遺伝子の異常でビタミンB12の細胞内処理そのものが止まる疾患である。B12から先の2つの活性型——と——がどちらも作れなくなるため、依存のと依存のが同時に機能低下し、結果としてとが合併する1。(は正常)とも(は高値)とも生化学プロファイルが異なり、この「両方が上がるが、は低め」という組み合わせが診断の出発点になる。臨床像は乳児期発症の重症型(神経症状・・)と、青年期以降にや血栓症で現れるに大別され、治療の柱はではなくのとの併用である。

何が止まっているのか

食事由来のビタミンB12は、リソソームから細胞質へ出たあと、ミトコンドリアではへ、細胞質ではへとそれぞれ加工されて初めて酵素のになれる。この2方向への加工の手前の共通段階(の還元・アルキルの)を担うのがMMACHC蛋白であり、cblC型ではここが障害される1。

flowchart TD
    A["食事由来のビタミンB12<br>(リソソームから細胞質へ)"] --> B["MMACHC蛋白<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cyanocobalamin'>シアノコバラミン</span>還元・アルキル<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cobalamin'>コバラミン</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='dealkylation'>脱アルキル化</span>)"]
    B -->|"障害される"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adenosylcobalamin'>アデノシルコバラミン</span>合成障害"]
    B -->|"障害される"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='methylcobalamin'>メチルコバラミン</span>合成障害"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='methylmalonyl-CoA mutase'>メチルマロニルCoAムターゼ</span>が働かない<br>→ <span class='jp-term jp-term-diagram' title='Methylmalonic acidemia'>メチルマロン酸血症</span>"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='methionine synthase'>メチオニン合成酵素</span>が働かない<br>→ <span class='jp-term jp-term-diagram' title='homocystinuria'>ホモシスチン尿症</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Hyperhomocysteinemia'>高ホモシステイン血症</span>"]
    E --> G["両方が合併する<br>(cblCの生化学的特徴)"]
    F --> G

⚠️ cblA/cblBは経路のみ、cblE/cblGは経路のみの障害である。 障害が2経路の手前の共通段階にあるcblC(cblD・cblFも同様の合併型を来しうる)だけが、との両方を合併する1。

病型:早発型と遅発型

⭐ cblCはの細胞内代謝異常のなかで最も頻度が高い。はおよそ1:200,000と推定されるが、に基づく推定はより高く、ニューヨーク州で約1:100,000、カリフォルニア州で約1:67,000(ヒスパニック集団では約1:46,000)とされる1。

病型 発症時期 主な臨床像
(最多) 〜乳児期早期 、、、、ケトン尿、、進行性の神経症状・
青年期〜成人期 、進行性の、血栓塞栓症、

出典はこの病型分岐を扱っている1。

臨床像

神経・眼症状

⚠️ は主にに生じ、では通常みられない。 初期は「さまよう眼球運動」、困難、眼振として現れ、眼底では黄斑・様・黄斑がみられ、時間とともにとへ進行する1。神経症状は・失調・を含む発作・進行性脳症・・として現れる1。

血液・腎・心肺

、血球減少(血小板減少・好中球減少を含む)を来す。⭐ 腎・HUS(治療しなければ致死的になりうる)、肺高血圧、びまん性肺疾患も生じうる1。・を伴うこともある。

⚠️ cblCが起こす・は補体とはの代謝性の機序による。 aHUSの診療体系では、代謝異常(MMACHCを含む)は「非補体遺伝子の変異または代謝異常に伴う」という独立した区分に置かれ、の初期検査一式にを含めることが推奨されている2。aHUSと違いの適応にはならないため、この機序を見落としてだけに向かわないことが実務上の要点になる。

診断

血液生化学:孤立性メチルマロン酸血症・古典型ホモシスチン尿症との書き分け

⭐ 「とがともに上がるが、は低め」がcblCのになる。

cblC (cblA/cblB等) ()
血中 上昇 上昇 正常
上昇 正常 上昇
血漿 低値〜正常 正常 高値
血清ビタミンB12 正常 正常 正常

出典はこの区別を扱っている1。の「孤立性」という限定は、・・を伴わないことを意味し1、(、)はが高値になる点でcblCと反対方向に分かれる。cblCは、この2疾患のどちらの「孤立型」にも当てはまらない合併型として独立に分類される。

新生児マススクリーニングと確定診断

での検出は、各施設が用いる(C3)とC3/C2比の、および低を検出できるかに左右される1。確定診断はMMACHCのにより、変異の96〜98%を検出できる1。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='methylmalonic acid (MMA)'>メチルマロン酸</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='total homocysteine'>総ホモシステイン</span>がともに上昇"] --> B{"血漿<span class='jp-term jp-term-diagram' title='methionine'>メチオニン</span>"}
    B -->|"低値〜正常"| C["cblC型を疑う"]
    B -->|"高値"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='remethylation pathway'>再メチル化経路</span>以外の機序を再検討"]
    C --> E["MMACHC<span class='jp-term jp-term-diagram' title='genetic analysis'>遺伝子解析</span>で確定"]

治療

⭐ は無効であり、使うべきでない。 疑った時点で直ちに非経口を開始する(乳児では通常1日1.0 mg、体重換算で約0.3 mg/kg/日を筋注または皮下注)1。

  • が高い患者にはを併用する(250 mg/kg/日、)1。
  • 葉酸・はを補助しうる。⚠️ の方が血液脳関門を通過しやすいとされる1。
  • ⚠️ 向けの・除去医療用ミルクを流用しない。 cblCではの供給自体が問題になるため、これらのは推奨されない1。

早期治療(・での早期発見を含む)は生存、生化学的・血液学的異常、を改善するが、⚠️ は早期治療でも完全には防ぎきれない1。

まとめ

  • cblC型はMMACHC遺伝子異常により、・の両方の合成が障害される合併型の先天性で、とをあわせ持つ。
  • 生化学的なは「とがともに上昇し、は低値〜正常」——(正常)とも(高値)とも異なる。
  • (乳児期、神経症状・・/が目立つ)と(青年期以降、・血栓症)に分かれ、は主にに生じる。
  • cblCが起こす/は補体とはの代謝性機序であり、の適応にはならない。の測定が見落としを防ぐ。
  • 治療の中心は非経口(は無効)との併用、必要に応じ葉酸・。用のは流用しない。

出典

  1. 1.Disorders of Intracellular Cobalamin Metabolism(GeneReviews(University of Washington, Seattle。Sloan JL, Carrillo N, Adams D, et al.)・2021)全文を確認した(最終改訂2021年12月16日)。cblCがコバラミンの細胞内代謝異常のうち最も頻度が高いこと、原因遺伝子`MMACHC`(1p34.1)でMMACHC蛋白がシアノコバラミン還元酵素・アルキルコバラミン脱アルキル化酵素として働き、この経路の遮断がアデノシルコバラミン依存性のメチルマロニルCoAムターゼとメチルコバラミン依存性のメチオニン合成酵素の両方を障害するために血中メチルマロン酸と総ホモシステインがともに上昇すること、常染色体潜性遺伝であること、罹患率がおよそ1:200,000と推定される一方、新生児マススクリーニングに基づく推定ではニューヨーク州で約1:100,000、カリフォルニア州で約1:67,000(ヒスパニック集団では約1:46,000)とより高いこと、早発型(乳児期)が子宮内発育不全・哺乳不良・筋緊張低下・高アンモニア血症を伴うアニオンギャップ開大性代謝性アシドーシスとケトン尿で発症すること、遅発型(青年期〜成人期)が神経精神症状・進行性認知機能低下・血栓塞栓症・亜急性連合性脊髄変性症として現れること、眼症状(眼振・注視障害に始まり牛眼様黄斑症や視神経萎縮に進行する色素性網膜症)が主に乳児発症型に生じ遅発型では通常みられないこと、腎血栓性微小血管症・溶血性尿毒症症候群(HUS)・肺高血圧・びまん性肺疾患を来しうること、血漿メチオニンが低値〜正常であり古典型ホモシスチン尿症(メチオニン高値)や孤立性メチルマロン酸血症(ホモシステイン正常)と区別されること、血清ビタミンB12は正常であること、確定診断が`MMACHC`の配列解析(変異の96〜98%を検出)によること、治療の中心が非経口ヒドロキソコバラミンでありシアノコバラミンは無効なため使うべきでないこと、乳児では通常1日1.0 mg(約0.3 mg/kg/日)から筋注または皮下注を開始すること、総ホモシステイン高値にはベタイン250 mg/kg/日を併用すること、葉酸・ロイコボリンが再メチル化を補助しうること(ロイコボリンの方が血液脳関門を通過しやすいとされる)、孤立性メチルマロン酸血症用の低蛋白食・医療用特殊ミルクはメチオニンを欠くため推奨されないこと、早期治療が生存・血液学的異常・血栓性微小血管症を改善する一方で眼症状は早期治療でも完全には防げないことを確認した閲覧 2026-09-08
  2. 2.Recommendations for diagnosis and treatment of Atypical Hemolytic Uremic Syndrome (aHUS): an expert consensus statement from the Rare Diseases Committee of the Brazilian Society of Nephrology (COMDORA-SBN)(Sociedade Brasileira de Nefrologia(COMDORA-SBN。Brazilian Journal of Nephrology掲載)・2025)Europe PMC(PMC11804885)で全文を取得して確認した。本合意はGenestらの提案を改変した5区分(①先天性または後天性のTTP、②補体関連遺伝子変異または抗CFH自己抗体による補体介在性のaHUS、③DGKE・THBDなど非補体遺伝子の変異またはコバラミン代謝異常などの代謝異常に伴うTMA、④STEC-HUSを含む感染関連TMA、⑤全身性疾患または薬剤曝露に続発するTMA)を採り、本文では一次性TMAをTTPとaHUSに限り、STEC-HUSと肺炎球菌関連HUSを二次性(感染関連)に置いていること、TMAの初期検査一式に血漿ホモシステイン(コバラミン代謝異常の検出)が含まれること、C5阻害薬が直ちに入手できない場合は血漿療法(血漿交換または血漿輸注)を開始すべきこと(grade 1B)、血小板輸血は活動性出血または手術時に限ることを確認した閲覧 2026-09-08