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Drug Atlas · B3 Other / その他 · 必修

ベタイン

betaine

分類
Methylating agents / メチル化薬
商品名(日本)
サイスタダン
商品名(EU)
Cystadane
科目
Biochemistry
トピック
7/4: Degradation of amino acids: fate of the carbon skeleton; role of vitamins in amino acid metabolism — L II
副作用
脳浮腫悪心
影響検査値
ホモシステイン
対象疾患
ホモシスチン尿症

🧠 全体像は、を下げるという結果だけを見ればビタミンB6と同じゴールに向かうが、通る経路がまったく違う薬である。には(B12・葉酸依存)と(B6依存、β合成酵素=CBS)という2つの出口があるところに、BHMT(-メチルトランスフェラーゼ)という第3の、肝・腎に限局したを使ってを処理する「迂回路」の薬である。臨床的な出番は明確に住み分けており、(CBS欠損)のうち(B6)を投与しても血漿が十分下がらない「非反応性」の患者でこそが治療の中心になる——B6が効く患者にはB6、効かない患者には+低というが、この2つの薬を対で覚える理由である。

薬効群の中での位置づけ

の治療薬は、患者の(反応性の有無・原因酵素)によって主役が入れ替わる。

・原因 主な治療薬 経路
(CBS欠損)・反応性 ビタミンB6( (CBSのとして働く)
(CBS欠損)・非反応性 +低1 BHMT経路(肝・腎限局の再メチル化)
5,10-欠損 (±葉酸・B12) BHMT経路(MTHFR依存のが使えないため迂回)
補因子代謝異常 BHMT経路+B12依存経路の補助

「反応性ならB6、非反応性なら」という対比が、この2剤をペアで覚える最大の理由になる。 投与下で血漿が50µmol/L未満に低下するかどうかで反応性を判定し、反応性があれば発症が遅く軽症のことが多い一方、非反応性は小児期から重症の多臓器障害(・血栓塞栓症・発達遅滞など)を来しやすい1

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='betaine'>ベタイン</span>(トリメチルグリシン)を内服"] --> B["肝・腎の細胞質でBHMTの基質として作用"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='homocysteine'>ホモシステイン</span>に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='methyl group'>メチル基</span>を1つ供与"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='homocysteine'>ホモシステイン</span>→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='methionine'>メチオニン</span>へ再メチル化"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='betaine'>ベタイン</span>自身はジメチルグリシンへ変換される"]
    D --> F["血漿<span class='jp-term jp-term-diagram' title='homocysteine'>ホモシステイン</span>濃度が低下"]
    D --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='methionine'>メチオニン</span>が増加する"]
    G --> H["⚠️ CBS欠損患者では過剰な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='methionine'>メチオニン</span>が処理しきれず<br>血漿<span class='jp-term jp-term-diagram' title='methionine'>メチオニン</span>値が著明に上昇しうる"]
    H --> I["脳浮腫のリスク"]

💡 を下げる」という結果は同じでも、B12・葉酸依存のとは別の・別の組織(肝・腎に限局)を使う。 そのため、CBSが働かず(B6依存)が使えない患者でも、この経路さえ保たれていればを下げられる。一方でBHMT経路はへ変換するだけなので、CBS欠損患者ではそのの行き場がなく蓄積する——の治療域と毒性域が表裏一体になっている理由がここにある。

適応

における血漿濃度の低下に用いる。対象となる酵素欠損は以下の3つに分かれる2

原因 位置づけ
β欠損 非反応性の患者、または低食のみで管理不十分な患者に併用1
5,10-欠損 そのものが障害されるため迂回路として使う
補因子代謝異常(cblC・cblD・cblEなど) B12依存の再メチル化が働かないため迂回路として使う

日本の添付文書上の効能・効果は単に「」とだけ記載され、は限定されていない3

用法・用量

:3歳以上は1日6gを3gずつ1日2回、3歳未満は100mg/kg/日から開始する2日本(サイスタダン):11歳以上は1回3g、11歳未満は1回50mg/kgを1日2回し、患者の状態・血漿中総値・血漿中値等を参考に増減する3。いずれも粉末を水などに溶かしてし、治療効果は血漿値でモニタリングする。実際の用量は病型・重症度・施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌:本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者3
  • ⚠️⭐ CBS欠損患者では血漿値のモニタリングが必須。 へ変換するだけなので、CBS欠損での下流代謝が障害されている患者ではが蓄積し、1000〜3000µmol/Lのを伴う脳浮腫が報告されている23。発症時期は投与開始2週間〜6か月と幅があり、中止により完全回復した——「投与初期を乗り切れば安全」ではなく、長期にわたって値を追う必要がある2。血漿値を1000µmol/L未満に維持するよう、(低食)と併用量を調整する
  • CBS欠損の管理は単独ではなく低食との併用が基本である1だけで再メチル化を促せば促すほどが増える構造上、食事管理を欠かすと本剤自体が毒性の原因になりうる
  • 反応性が確立している患者では、まず単独での管理を優先し、は反応性が乏しい場合に追加・変更する1
  • は無い——にも日本の添付文書(サイスタダン)にもに相当するセクションは存在せず、脳浮腫は「5.1 CBS欠損患者における高血症」として使用上の注意に置かれている23

副作用

頻度 内容
高頻度 は高く、重大な副作用は少ない。悪心・消化器症状・下痢などが少数例で報告される2
重篤・まれ CBS欠損患者における著明な血漿高値を伴う脳浮腫23

まとめ

  • はBHMT(-メチルトランスフェラーゼ)を介して、肝・腎に限局した独自のへ変換し、血漿を下げる。
  • ビタミンB6(とはゴール(の低下)は同じだが経路が異なり、(CBS欠損)では反応性ならB6、非反応性なら+低というで使い分ける1
  • 適応はCBS欠損(非反応性)・MTHFR欠損・補因子代謝異常による
  • ⚠️ CBS欠損患者ではを増やす方向に働くため、血漿値をモニタリングし1000µmol/L未満に維持する。 では脳浮腫のリスクがあり、低食との併用が前提になる。
  • は概して高く、重大な副作用は少ないが、蓄積という「効きすぎ」の毒性がこの薬特有の注意点になる。

出典

  1. 1.CYSTADANE (betaine anhydrous) for oral solution — Prescribing Information(Recordati Rare Diseases / DailyMed (U.S. FDA)・2006)適応(ホモシスチン尿症:シスタチオニンβ合成酵素欠損・5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素欠損・コバラミン補因子代謝異常のいずれかによる)における血漿ホモシステイン低下、機序(ホモシステインのメチオニンへの再メチル化におけるメチル基供与体)、用法・用量(3歳以上は1日6gを3gずつ1日2回、3歳未満は100mg/kg/日から開始)、「5.1 Hypermethioninemia in Patients with CBS Deficiency」に、投与開始2週間〜6か月以内に重度の脳浮腫と高メチオニン血症が報告され中止により完全回復したこと・脳浮腫を来した患者はいずれもCBS欠損によるホモシスチン尿症で血漿メチオニン値が1000〜3000µmol/Lに著明高値を示していたことが記載されていること、血漿メチオニン値を食事療法により1000µmol/L未満に維持すべきこと、有害事象が少数例(111例中、悪心2例・消化器症状2例・下痢1例)にとどまること、枠組み警告に相当するセクションが存在しないこと、初回米国承認1996年を確認した閲覧 2026-08-10
  2. 2.サイスタダン原末 添付文書(レコルダティ・レア・ディジーズ・ジャパン株式会社 / KEGG MEDICUS(日本医薬情報センター添付文書データ)・2026)日本での効能・効果が「ホモシスチン尿症」であること、用法・用量が11歳以上1回3g・11歳未満1回50mg/kgを1日2回経口投与であること、禁忌が本剤成分への過敏症の既往のみであること、機序がBHMT(ベタイン-ホモシステインメチルトランスフェラーゼ)の基質としてホモシステインへメチル基を供与しメチオニンへ変換することであること、重大な副作用として血漿メチオニン値上昇(1000〜3000µmol/L相当)を伴う脳浮腫が挙げられること、警告に相当するセクションが存在しないことを確認した閲覧 2026-08-10
  3. 3.Guidelines for the diagnosis and management of cystathionine beta-synthase deficiency(Journal of Inherited Metabolic Disease(Morris AAM, et al.)・2017)古典型ホモシスチン尿症(CBS欠損)でピリドキシン投与下でも血漿ホモシステインが50µmol/L未満に低下しない「非反応性」の患者では低メチオニン食とベタインを中心に治療を組み立てること、反応性の有無で治療方針がピリドキシン単独とベタイン中心とに分かれること、非反応性の患者は小児期から重症の多臓器障害を来しやすいことを確認した閲覧 2026-08-03