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Disease Atlas · 血液 · 先天性疾患

ホモシスチン尿症

Homocystinuria

別名
シスタチオニンβ合成酵素欠損症CBS欠損症Classical homocystinuria
臓器系
血液内分泌・代謝
科目
Pediatrics
トピック
小児科 3-64:先天代謝異常症小児科 3-17:小児の成長障害
上位概念
先天代謝異常症
鑑別疾患
マルファン症候群
合併症
知的発達症骨粗鬆症
続発疾患
静脈血栓塞栓症
治療薬
ビタミンB6(ピリドキシン)ベタイン
症状
脊柱側弯症痙攣
検査値
ホモシステインメチオニン

🧠 全体像は、代謝のを担うβの欠損(・I型)が起こすで、基質のが血中に蓄積する。臨床像は四徴——(下方・鼻側)、骨格異常(Marfan様体型)、、血栓塞栓症——に集約され、とりわけと体型が似るため両者の対比が学習の幹になる。もう一つの核心は、同じ「高値」でも原因によって血中の向きが逆になるという構造で、CBS欠損(の障害)は高値の異常(代謝異常・MTHFR欠損など)は低値を示す。この非対称性がの守備範囲(高値を指標とするためCBS欠損しか捕捉できない)を決めている。

病態

はSAM(メチル)を経てになったのち、①ビタミンB12依存のへ戻るか、②ビタミンB6依存のβによりへ変換されるか、いずれかで処理される(詳細はを参照)。はこのCBSがほぼ完全に欠損した状態で、が遮断される。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='methionine'>メチオニン</span>"] --> B["SAM"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='homocysteine'>ホモシステイン</span>"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transsulfuration pathway'>トランススルフレーション経路</span><br>CBS(ビタミンB6依存)"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cystathionine'>シスタチオニン</span> → システイン"]
    C --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='remethylation pathway'>再メチル化経路</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='methionine synthase'>メチオニン合成酵素</span>(ビタミンB12依存)"]
    F --> A
    D -.->|"CBS欠損(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='classic form'>古典型</span>)"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='homocysteine'>ホモシステイン</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='methionine'>メチオニン</span>ともに蓄積"]
    F -.->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='remethylation pathway'>再メチル化経路</span>の異常<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cobalamin'>コバラミン</span>代謝異常・MTHFR欠損など)"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='homocysteine'>ホモシステイン</span>蓄積・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='methionine'>メチオニン</span>は低値〜正常"]

この経路の非対称性がそのまま鑑別に直結する。 CBS欠損では出口()が塞がれるための上流にあるも押し戻されて高値になるが、の異常ではを再生する経路自体が働かないためはむしろ低値〜正常にとどまる12

蓄積したは血管内皮を障害し、血管系合併症の背景となる。また、の機能を障害することで結合組織にも影響し、と類似した・骨格異常を生じると考えられている。

臨床像(四徴)

無治療(またはコントロール不良)の場合、以下の4系統の障害が年齢とともに順に出現する。

系統 所見
(下方または鼻側偏位が典型)に伴う。無治療では10歳までに80%超の症例でをきたす1。緑内障を合併しうる
骨格異常 症、・クモなど様の体型
中枢神経系 、てんかん、パーソナリティ障害・不安・抑うつなどの精神症状
血管系障害 、肺塞栓、脳血栓塞栓症

無治療例では小児期から・骨格異常・中枢神経系異常が出現し、血栓症は思春期以降に発症して生命予後を規定するため、治療は一生涯継続する必要がある1。早期に治療開始されても、成人期に至る過程で総のコントロールに難渋する例が多く、精神症状・症(骨折)・血栓症の発症には生涯を通じた注意を要する。

マルファン症候群との鑑別

体型が似るため、・クモ偏位を見たら必ずこの2つを対比する。

項目
偏位の方向 下方・鼻側が典型 上方・耳側が典型
高頻度に合併しうる 通常伴わない
血管系障害(血栓塞栓症)が主要徴候 は本質的な特徴ではない(大動脈の脆弱性・解離が主体)
原因 CBS遺伝子変異(の障害) FBN1変異(異常)
尿中所見 尿中ホモ検出 特異的な尿所見なし

診断

新生児マススクリーニング

(I型)は血中高値(1.2 mg/dL・80µmol/L以上)を指標にの対象となっている1。⚠️ の異常(II型:代謝異常症、III型:MTHFR欠損症)はが上昇してもは低値〜正常にとどまるため、高値を指標とする現行のマススクリーニングでは検出できない1の乾燥血液を用いた測定が主なスクリーニング手法である。

確定診断

主要症状(などの、骨格異常、中枢神経系異常、血管系障害)のいずれか1項目以上に加え、血中高値・血中総高値(60µmol/L以上)・尿中ホモ排泄・CBS酵素活性低下・遺伝子解析のいずれかを組み合わせて確定する1

flowchart TD
    A["血中総<span class='jp-term jp-term-diagram' title='homocysteine'>ホモシステイン</span>高値"] --> B{"血中<span class='jp-term jp-term-diagram' title='methionine'>メチオニン</span>"}
    B -->|"高値"| C["CBS欠損(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='classic form'>古典型</span>)を疑う"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pyridoxine (vitamin B6)'>ピリドキシン</span>反応性を評価"]
    B -->|"低値〜正常"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='remethylation pathway'>再メチル化経路</span>の異常を疑う"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='methylmalonic acid (MMA)'>メチルマロン酸</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cobalamin'>コバラミン</span>代謝・MTHFR活性を評価"]

治療

(ビタミンB6)反応性の有無でが分かれる。 投与下で血漿総が50µmol/L未満まで低下する患者は「明確な反応例」、20%超低下するが50µmol/L以上にとどまる患者は「部分反応例」、20%未満の低下にとどまる患者は「非反応例」に分類される2。白人ではが約半数を占めるが、日本人でははまれである1

反応性 治療の中心
反応例 ビタミンB6(を中心とする
非反応例 食+を中心とする

いずれの反応性でも、低食・システイン補充・葉酸などの栄養管理を併用しながら、血中総を目標値に近づけるよう生涯にわたり調整する。

⚠️ 周術期の血栓症リスク

⚠️ 軽微な手術であっても、周術期・術後は血栓塞栓症のリスクが上昇する。 そのものが血漿濃度を一過性に上昇させるためで、術前にをできる限り目標値に近づけたうえで、輸液による十分な水分管理、による装置の使用を検討する3。可能であれば手術自体を最小限にとどめ、麻酔科医とも周術期管理を事前に相談する。

まとめ

  • はCBS欠損によりが遮断され、がともに蓄積する。
  • 臨床像は(下方・鼻側)・骨格異常(Marfan様体型)・・血栓塞栓症の四徴で、血栓症が思春期以降に発症し生命予後を規定する。
  • とは偏位の方向(下方・鼻側 vs 上方・耳側)、の有無、の有無で鑑別する。
  • 高値を指標とするためCBS欠損(高値)は捕捉できるが、が低値〜正常にとどまるの異常(代謝異常・MTHFR欠損など)は検出できない。
  • 治療は反応性の有無で分かれ、反応例はビタミンB6、非反応例は低食+が中心となる。
  • 軽微な手術でも周術期は血栓症リスクが上昇するため、水分管理・を徹底する。

出典

  1. 1.新生児マススクリーニング対象疾患等診療ガイドライン2025 ホモシスチン尿症(日本先天代謝異常学会・2025)古典型(I型、CBS欠損症)の新生児マススクリーニングは血中メチオニン高値(1.2 mg/dL・80µmol/L以上、基準値0.3〜0.6 mg/dL・20〜40µmol/L)を指標に行われ、確定診断には主要症状(中枢神経系異常・骨格異常・眼症状・血管系障害)と血中総ホモシステイン高値(60µmol/L以上)などを組み合わせること、無治療の場合には10歳までに80%以上の症例で水晶体亜脱臼を呈すること、ビタミンB6反応型は白人では約半数を占める一方で日本人ではまれであること、本邦でのI型の患者発見頻度は約80万人に1人であること、II型(コバラミン代謝異常症cblC等)・III型(MTHFR欠損症)は再メチル化経路の異常でホモシステインは上昇するが血中メチオニンは低値〜正常のため、メチオニン高値を指標とする現行の新生児マススクリーニングでは検出できないこと、無治療例では小児期に中枢神経系・骨格・眼症状を、思春期以降に血栓症を発症し、血栓症が生命予後を規定するため治療を一生涯継続する必要があることを確認した。閲覧 2026-08-11
  2. 2.Guidelines for the diagnosis and management of cystathionine beta-synthase deficiency(Journal of Inherited Metabolic Disease(Morris AAM, et al.)・2017)ピリドキシン負荷下で血漿総ホモシステインが50µmol/L未満に低下する患者を明確な反応例、20%超低下するが50µmol/L以上にとどまる患者を部分反応例、20%未満の低下にとどまる患者を非反応例に分類すること、水晶体偏位は両側性で下方または鼻側方向に生じることが多いこと、低〜正常メチオニン値+シスタチオニン高値は再メチル化経路の異常を示唆しCBS欠損症とは区別されることを確認した。閲覧 2026-08-11
  3. 3.Homocystinuria Caused by Cystathionine Beta-Synthase Deficiency(GeneReviews(University of Washington, Seattle)・2025)周術期は輸液による水分管理を維持し、低分子量ヘパリン・早期離床・弾性ストッキングや間欠的空気圧迫装置の使用を考慮することを確認した。閲覧 2026-08-11