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Lab values · Published

メチルマロン酸

Methylmalonic acid

別名
MMA血中メチルマロン酸methylmalonic acid
臓器系
血液内分泌・代謝
科目
Medical BiochemistryInternal MedicinePediatrics
トピック
生化学 7/5:ビタミンB12欠乏とメチルマロン酸血症内科学 H-03:大球性貧血小児科 2-10:先天代謝異常を疑う状況と初期評価
関連疾患
HIV関連空胞性脊髄症コバラミンC欠損症メチルマロン酸血症亜急性連合性脊髄変性症巨赤芽球性貧血

🧠 全体像:(MMA)は、ビタミンB12欠乏に特異的な機能的指標である。血清B12濃度が体内に「どれだけ蓄えがあるか」を映すにすぎないのに対し、MMAは細胞がそのB12を実際に反応へ使えているかを映す下流のであり、組織レベルの欠乏をより鋭敏に反映する。血清B12がの域にあって臨床的にB12欠乏が疑わしいとき、MMAを測ることで欠乏を確定・除外する(その「」の区間は資料によって違う。下の「と単位」を参照)12。ただし腎機能低下という強力ながあり、単独の高値だけでB12欠乏と決めつけてはならない。

何を測っているか

MMAは、のと・・・の分解が収束する共通の中間体から、を経てへ至る反応経路のである。この経路の最終段階を担うはとして(B12の一形態)を必須とし、葉酸は一切関与しない。この反応が滞ると、上流のが加水分解されてとして血中・尿中にあふれ出す。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='odd-chain fatty acid'>奇数鎖脂肪酸</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='beta-oxidation'>β酸化</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='valine'>バリン</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='isoleucine (Ile)'>イソロイシン</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='threonine'>スレオニン</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='methionine'>メチオニン</span>の分解"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='propionyl-CoA'>プロピオニルCoA</span>"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='methylmalonyl-CoA'>メチルマロニルCoA</span>"]
    C --> D{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='methylmalonyl-CoA mutase'>メチルマロニルCoAムターゼ</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adenosylcobalamin'>アデノシルコバラミン</span>依存)"}
    D -->|"反応が進む"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='succinyl-CoA'>スクシニルCoA</span> → <span class='jp-term jp-term-diagram' title='citric acid cycle (TCA cycle)'>クエン酸回路</span>"]
    D -->|"B12欠乏または酵素自体の欠損で反応が滞る"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='methylmalonyl-CoA'>メチルマロニルCoA</span>が蓄積"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='methylmalonic acid (MMA)'>メチルマロン酸</span>として血中・尿中に検出される"]

同じくB12欠乏の確認に使うは、という別の反応の基質でありB12・葉酸いずれの欠乏でも上昇するため、両者の鑑別には使えない。MMAはB12欠乏でのみ上昇する点が、この検査の中心的な価値になる。

血清(または血漿)と尿のいずれでも測定でき、尿中はクレアチニンで補正した比で報告される。

基準値と単位

単位は血清・血漿でnmol/L、尿ではクレアチニンで補正したµmol/mmol Crが用いられる。ある集団研究では、血清MMAの中央値は129.3 nmol/L、5〜95は69.6〜297.0 nmol/Lであった3。診断としては血清0.35 µmol/L(350 nmol/L)以上、尿中MMA/クレアチニン比1.45 µmol/mmol以上(感度55.1%・特異度87.9%)を用いた研究がある4。

⭐ 単一の普遍的は存在しない。 測定法・施設ごとにが異なり、年齢とともに値が上がる傾向は腎機能低下と関連する3。経時比較は同一施設・同一測定系で行う。英国(NG239)も、MMAの結果は検査施設ので判定するとしている2。

MMAを測る引き金となるB12の範囲は資料で違う

⚠️ 「B12が境界域ならMMA」と覚えるとき、その境界域の数字は資料ごとに別である。 単位は ng/L と pg/mL が同じ値で、pmol/L は数値が違う。

資料 B12欠乏と確定 MMA追加の対象(・境界域) 欠乏の可能性が低い
英国 NG239(総B12)2 180 ng/L(133 pmol/L)未満 180〜350 ng/L(133〜258 pmol/L) 350 ng/L(258 pmol/L)超
英国 NG239(活性B12)2 25 pmol/L未満 25〜70 pmol/L 70 pmol/L超
StatPearls(の章)1 100 pg/mL未満 100〜400 pg/mL (400 pg/mL超ではを測る)

総B12について書かれた2つの区間は、同じ量を ng/L と pg/mL で書いているだけなので直接比べられる——NG239のほうが欠乏確定の線が高く(180 対 100)、MMAを追加する幅が狭い(180〜350 対 100〜400)。どちらが正しいという関係ではない。NG239の閾値は、B12欠乏にの検査が無くエビデンスも無いなかで委員会が経験に基づいて定めたもので、偽陽性が増えうることを委員会自身が認めている2。施設の検証済み閾値に大きな差があるときは施設の閾値を使うとされており、目の前の検査室のを確かめるのが先になる。

💡 NG239がMMAの追加を症状・徴候のある人に限って考慮するとしたのは、の全員に測ることが臨床的・費用的に見合うというエビデンスが無く、MMA自体が高価な検査でもあるためである。一方で、症状のある人では追加測定がにつながりうると委員会は認めている2。

高値の意味

病態 機序
ビタミンB12欠乏 の基質が上流に滞留する。葉酸欠乏では上昇しないため、両者の鑑別における最大の価値になる1
腎機能低下(など) 腎からの排泄が落ちクリアランスが低下する。B12が充足していても軽度上昇しうる、この検査最大の43
腸内細菌の過剰増殖(SIBO) 過剰増殖した腸内細菌がプロピオン酸などMMAの前駆体を産生し全身へ供給する。血清B12が正常でも上昇しうる。など腸管解剖が変化した病態で特に目立つ
(脱水など) により見かけ上の濃度が上がる
遺伝性 の完全欠損(mut0型)・(mut-型)、合成障害(cblA・cblB・cblD-MMA型)に分かれ、型によりが異なる(cblA型は大半が、cblB型は約3分の1が反応、mut0型は非反応性でmut−型のは明確な根拠を欠く)5

⭐ 遺伝性はのうちに分類され、によるの対象に含まれる(の(C3)高値で拾い上げる)。蛋白摂取が始まると開大性代謝性アシドーシス・・を伴って乳児期に発症するのが典型像である5。

低値の意味

低値そのものに確立した臨床的意義はなく、この検査の主題ではない。

⚠️ 測定上の注意

  • 腎機能を必ず併せて解釈する。 低下がある患者では、単独の高値だけでB12欠乏と判定しない。血漿B12が201〜350 ng/L(域)の内科入院患者127例の前向き研究では、血漿MMAはに依存し(p=0.004)、その上昇は 100 mL/min/1.73 m²未満という早期の腎機能低下から始まっていた(同集団の50.4%が該当)。同じ研究で尿中MMA/クレアチニン比はに依存しなかった(p=0.34)4。
  • は小さく、随時採血で評価できる。
  • 検体の安定性が保たれれば測定自体の再現性は高いが、測定法(、)が施設ごとに異なり、絶対値をそのまま施設間で比較しない3。
  • ⚠️ B12補充直後のMMA測定は解釈が難しい。 反応の回復が追いつかず高値が残ることがあり、評価は補充から十分な期間を空けてから行う。

経時変化とモニタリング

単回値そのものより、B12補充後に正常化するかどうかが診断的な意味を持つ。域のB12値とMMA高値からB12欠乏を疑って補充したのちMMAが正常化すれば、それ自体が欠乏の存在を裏づける治療反応としての確認になる。逆に十分量のビタミンB12補充後もMMAが低下しなければ、腎機能低下や遺伝性の酵素異常など他の高値の原因を再検討する。

まとめ

  • MMAは(依存、葉酸非依存)の反応が滞ると蓄積するで、B12欠乏に特異的な機能的指標である。
  • 血清B12がの域にあるとき、MMAは欠乏の確定・除外に使う。と異なり葉酸欠乏では上昇しない。
  • ⚠️ その「」の区間は資料で違う——英国 NG239は総B12 180〜350 ng/L、StatPearlsは 100〜400 pg/mL(ng/L と pg/mL は同じ値)。どちらの資料の閾値かを確かめる。
  • 血清・血漿・尿いずれでも測定でき、単位は血清nmol/L、尿はµmol/mmol Cr。単一の普遍的はない。
  • 高値の原因はB12欠乏のほか、腎機能低下(最大の)、SIBO、、遺伝性(対象、乳児期のアシドーシス・で発症)と幅広い。
  • 腎機能を必ず併せて解釈し、B12補充後の正常化を診断確認として使う。

出典

  1. 1.Macrocytic Anemia(StatPearls Publishing(NCBI Bookshelf)(Killeen RB, Adil A)・2025)本文(Last Update は2025年4月4日)で確認した。逐語は Vitamin B12 values <100 pg/mL indicate deficiency / an RBC folate level … should be ordered for a B12 >400 pg/mL / Homocysteine and methylmalonic acid (MMA) should be measured in patients with a B12 level of 100 pg/mL to 400 pg/mL で、100 pg/mL未満を欠乏、100〜400 pg/mLをMMA・ホモシステインの測定対象とすること、メチルマロン酸はビタミンB12欠乏でのみ上昇し葉酸欠乏では上昇しない特異的マーカーであることを確認した閲覧 2026-09-17
  2. 2.Vitamin B12 deficiency in over 16s: diagnosis and management(National Institute for Health and Care Excellence (NICE)・2024)NG239の推奨本文と根拠の節を取得して確認した。表1は総B12が180 ng/L(133 pmol/L)未満または活性B12が25 pmol/L未満を欠乏確定、180〜350 ng/L(133〜258 pmol/L)または25〜70 pmol/Lを判定保留(欠乏の可能性あり)、350 ng/L(258 pmol/L)超または70 pmol/L超を欠乏の可能性が低いとし、総B12の検証済み閾値に施設間で大きな差があるときは検査施設の閾値を使う(1.3.9)。判定保留で症状・徴候がある人にMMAの追加測定を考慮し(1.3.12)、MMAの結果は検査施設の基準範囲で判定する(1.3.10)。娯楽目的の亜酸化窒素使用が疑われるときはMMAまたは血漿ホモシステインを初回検査にする(1.3.3)。根拠の節は、B12欠乏にゴールドスタンダードの検査が無くエビデンスも無いなかで委員会が経験と専門性に基づいて閾値を定めたこと、その閾値が偽陽性を増やしうると委員会自身が認めていること、血清MMAと血漿ホモシステインには一般に受け入れられた基準範囲が無いこと、判定保留の全員にMMAを行うことの臨床的・費用的な有効性を示すエビデンスは無く高価な検査でもあるが、症状・徴候がある人では早期診断につながりうるので選択肢としたことを述べる。推奨・根拠・文脈・研究推奨の4章のいずれにも kidney・renal・eGFR・creatinine は0件で、MMAの解釈に腎機能への言及は無い閲覧 2026-09-17
  3. 3.Population Reference Values for Serum Methylmalonic Acid Concentrations and Its Relationship with Age, Sex, Race-Ethnicity, Supplement Use, Kidney Function and Serum Vitamin B12 in the Post-Folic Acid Fortification Period(Nutrients(Ganji V, Kafai MR)・2018)血清メチルマロン酸の集団基準範囲(中央値129.3 nmol/L、5〜95パーセンタイル69.6〜297.0 nmol/L)、血清クレアチニン第4四分位群が第1四分位群よりメチルマロン酸値が約35.8%高いなど腎機能との関連、単一の普遍的カットオフ値が存在しないことを確認した閲覧 2026-08-03
  4. 4.Diagnostic Performances of Urinary Methylmalonic Acid/Creatinine Ratio in Vitamin B12 Deficiency(Journal of Clinical Medicine(Supakul S, et al.)・2020)血清メチルマロン酸0.35 µmol/L(350 nmol/L)以上をビタミンB12欠乏症の診断基準の一つとしうること、尿中メチルマロン酸/クレアチニン比のカットオフ値1.45 µmol/mmol(感度55.1%・特異度87.9%)、腎機能(eGFR)が血清メチルマロン酸値と有意に関連すること(p=0.004)を確認した閲覧 2026-08-03
  5. 5.Isolated Methylmalonic Acidemia(GeneReviews(University of Washington, Seattle)(Manoli I, Sloan JL, Venditti CP)・2022)孤立性メチルマロン酸血症がメチルマロニルCoAムターゼの完全欠損(mut0型)・部分欠損(mut-型)、補酵素アデノシルコバラミン合成障害(cblA・cblB・cblD-MMA型)などに分類されB12反応性が型により異なること、新生児発症型が蛋白摂取開始後に重度アニオンギャップ開大性代謝性アシドーシス・ケトーシス・高アンモニア血症を来すこと、新生児マススクリーニングがプロピオニルカルニチン(C3)の定量に基づくこと、腎機能が血漿メチルマロン酸濃度に影響することを確認した閲覧 2026-08-03