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Symptoms · Published

筋緊張低下

Hypotonia

別名
筋緊張低下症低緊張floppy infant
臓器系
神経小児
科目
NeurologyNeurology and Neurosurgery
トピック
神経内科 G2-07:筋緊張の調節と障害神経内科 04:運動系の診察:筋緊張・筋萎縮・筋力(Muscle tone, bulk, power)
関連疾患
CACT欠損症GM1ガングリオシドーシスGM2アクチベーター欠損症Lowe症候群MCT8欠損症Niemann-Pick病C型Pena-Shokeir症候群Tay-Sachs病Zellwegerスペクトラム障害アンジェルマン症候群イソ吉草酸血症コバラミンC欠損症シンドラー病テトラヒドロビオプテリン欠損症(BH4欠損症)ビオチニダーゼ欠損症ホロカルボキシラーゼ合成酵素欠損症メチルマロン酸血症メンケス病モリブデン補因子欠損症新生児一過性重症筋無力症非ケトン性高グリシン血症複合カルボキシラーゼ欠損症

🧠 全体像:は「関節を的に動かしたときの抵抗が異常に低い」という所見であって、筋力そのものの低下(発揮できる最大筋力の低下)とは別の軸である。乳児では「floppy infant」として気づかれることが多く、評価の第一歩はと反射が保たれているかを見て、中枢性か末梢性かの大枠を決めることにある1。

定義と用語の整理

筋緊張は安静時の筋にかかる持続的な軽度収縮で、関節を的に動かしたときの抵抗として観察される。(抵抗の低下)と筋力低下(出せる力の低下)は独立した軸であり、中枢性のでは筋力そのものは比較的保たれることが多い1。原因検索・鑑別のは筋力低下が担い、このノートはの低下という所見とその局在診断に絞る。

病態生理:中枢性か末梢性か

の原因は、大きく中枢性(大脳・脳幹・脊髄の障害)と末梢性(・末梢神経・・筋の障害)に分かれ、乳児期には中枢性が原因の60〜80%を占める。中枢性の遺伝性原因として最も頻度が高いのはで、・・先天感染・代謝性疾患が続く1。

中枢性 末梢性
低下しうる 正常(覚醒)
姿勢 で体幹が広がる より正常な姿勢に近い
自発運動 質的に異常(動きのパターンが崩れる) 量的に減少(動き自体が少ない)
腱反射 正常〜亢進・遷延 低下〜消失
筋力 比較的保たれる傾向 明らかに低下
障害される より高度に障害される

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💡 「floppy but strong」という表現は中枢性を示唆する。 逆に、意識清明のまま明らかな筋力低下・を伴えば末梢性()を疑う——この対比の骨格は、成人の筋力低下で使う「のどの高さか」という発想と同じである。

診察では次の手技でとを評価する2。

手技 方法 正常 低緊張
腋窩で体幹を支えて持ち上げる が体幹を支える 検者の手からすり抜け落ちる
(懸垂) 腹部を手掌で支えて水平に持ち上げる 頭・体幹・四肢が軽度屈曲 頭・四肢が垂れ下がる
仰臥位で上肢を体幹の前を通して反対側肩へ引く 肘がの手前で止まる 肘がを越えて巻きつく
Pull-to-sit 仰臥位から手を引いて座位へ引き起こす 頭部が体幹について起き上がる 頭部後方への遷延

⚠️ 見逃してはいけないもの

発症時期そのものが手掛かりになる。出生時から、かつ低値を伴うはを示唆する——が正常なら、出生時から見られていても大多数は先天性の他原因(など)を考える。生後12〜24時間してからの発症は代謝性疾患(・・など)を示唆する1。

病態 見逃す/遅れると何が起こるか 手掛かり
の適応時間枠(発症早期)を逃す 周産期の低酸素既往、意識障害、けいれん
呼吸不全へ進行。(・遺伝子治療)は診断が早いほど効果が大きい 対称性の筋力低下、、舌の、感覚は正常
下行性に進行しに至りうるが、早期に気づけば支持療法だけで完全回復しうる 便秘の先行、哺乳力低下、弱々しい、・
(など) ・代謝性アシドーシスの進行 、嘔吐、意識障害の進行、特異な尿臭
・ 哺乳・呼吸の失調に気づかれず誤嚥・無呼吸に至る 哺乳中の易疲労、、母体の重症筋無力症の既往(一過性型)

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypotonia'>筋緊張低下</span>"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='level of consciousness'>意識レベル</span>・反射は保たれているか"}
    B -->|"意識低下・反射正常〜亢進・遷延"| C["中枢性を疑う"]
    B -->|"意識清明・反射低下〜消失・明らかな筋力低下"| D["末梢性(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='motor unit'>運動単位</span>)を疑う"]
    C --> E{"発症時期と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Apgar score'>Apgarスコア</span>"}
    E -->|"出生時から・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Apgar score'>Apgarスコア</span>低値"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypoxic-ischemic encephalopathy (HIE)'>低酸素性虚血性脳症</span>を評価"]
    E -->|"出生時から・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Apgar score'>Apgarスコア</span>正常"| F2["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Down syndrome'>Down症候群</span>などの染色体異常・<br>先天性症候群・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='brain malformation'>脳形成異常</span>を評価"]
    E -->|"生後12〜24時間後"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inborn error of metabolism'>先天代謝異常</span>(アンモニア・血糖・乳酸・アシドーシス)を評価"]
    D --> H{"感覚障害・自律神経症状の有無"}
    H -->|"感覚正常・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fasciculations'>線維束攣縮</span>"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anterior horn cell'>前角細胞</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spinal muscular atrophy'>脊髄性筋萎縮症</span>を疑い遺伝学的検査"]
    H -->|"易疲労・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ptosis'>眼瞼下垂</span>・哺乳中増悪"| J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neuromuscular junction (NMJ)'>神経筋接合部</span>:一過性重症筋無力症・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='congenital myasthenic syndrome'>先天性筋無力症症候群</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='infantile botulism'>乳児ボツリヌス症</span>を評価"]
    H -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='creatine kinase'>CK</span>上昇・筋力低下が主体"| K["筋:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='congenital myopathy'>先天性ミオパチー</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='congenital muscular dystrophy'>先天性筋ジストロフィー</span>を疑い<span class='jp-term jp-term-diagram' title='muscle biopsy'>筋生検</span>・遺伝学的検査"]

基本検査(血算・生化学・電解質・Mg・薬物スクリーン、必要に応じ血液/尿/)を先に行い、画像(・)と特殊検査(・・・遺伝学的検査)へ進む1。

支持療法と原疾患治療の関係

という所見そのものを直接に「治療」する手段はなく、管理は支持療法(哺乳・呼吸の確保、・によると発達支援)と原疾患の治療の両輪になる。ただしこの原則には例外があり、のようにがに強く依存する病態が末梢性の中に含まれるため、「様子を見る」判断を急がないことが重要である1。一過性重症筋無力症やのように支持療法だけで完全回復する病態もあり、予後は原因によって大きく異なる1。

まとめ

  • は「への抵抗の低下」であり、筋力低下(出せる力の低下)とは別の軸。乳児では floppy infant として気づかれる。
  • 中枢性が原因の60〜80%を占める。中枢性は意識低下・反射正常〜亢進・筋力比較的保持、末梢性は意識清明・反射低下〜消失・明らかな筋力低下という対比で見分ける。
  • ・()・scarf徴候・pull-to-sitでのが診察の要点。
  • 発症時期が手掛かりになる:低値を伴う出生時からの発症は、生後12〜24時間後からは代謝性疾患を疑う(が正常なら、出生時からの症状でも大多数は先天性の他原因)。
  • 中枢性の遺伝性原因として最も頻度が高いのはである。
  • ・・は、見逃す/遅れることの代償が大きい。
  • 治療は支持療法と原疾患治療の両輪。はが治療効果を左右する。

出典

  1. 1.Hypotonia(StatPearls / NCBI Bookshelf・2022)筋緊張低下が関節の他動運動に対する抵抗の異常な低下(floppiness)であり筋力低下(発揮できる最大筋力の低下)とは異なる概念であること、中枢性が原因の60〜80%を占め中枢性では意識レベル低下を伴いやすく反射は正常〜亢進・遷延、末梢性では意識は正常(覚醒)で反射が減弱〜消失し明らかな筋力低下を伴うこと、発症時期の手がかりとして原文は"hypotonia at birth with poor Apgar score may indicate hypoxic-ischemic encephalopathy"・"poor muscle tone developing 12 to 24 hours after birth may indicate a metabolic disorder"としており、**Apgarスコア低値を伴う**出生時からの筋緊張低下は低酸素性虚血性脳症を、生後12〜24時間後の発症は代謝性疾患を示唆すること、診察手技として垂直懸垂(腋窩支持で検者の手からすり抜ける)・水平懸垂(正常は軽度屈曲姿勢、低緊張は逆U字=inverted U姿勢)・scarf徴候(上肢を胸部を越えて引いたとき肘が正中線を越える)・pull-to-sit手技での頭部ラグ評価を用いること、基本検査として血算・生化学・Mg・薬物スクリーン・血液/尿/髄液培養、画像として頭部超音波・MRI/CT、特殊検査としてCK・筋電図・筋生検・遺伝学的検査を行うこと、中枢性の代表原因としてDown症候群(遺伝性原因で最多)・Prader-Willi症候群・低酸素性虚血性脳症・先天感染・代謝性疾患があること、末梢性では脊髄性筋萎縮症・先天性ミオパチー症候群・新生児一過性重症筋無力症・乳児ボツリヌス症(米国ではカリフォルニア州に多く全米症例の約半数を占める)・先天性筋ジストロフィーがあること、治療は支持療法(栄養・呼吸管理・リハビリテーション)を基本としPompe病の酵素補充療法やSMAに対する核酸医薬・遺伝子治療など疾患特異的治療があること、一過性重症筋無力症・乳児ボツリヌス症は完全回復しうる一方SMA重症型・古典型Pompe病は無治療では生命予後不良となりうることを確認した。2022年10月12日最終更新。閲覧 2026-09-02
  2. 2.The Floppy Infant: Evaluation of Hypotonia(Pediatrics in Review, American Academy of Pediatrics・2009)筋緊張低下の評価において中枢性と末梢性を対比する臨床所見の枠組み(中枢性:腹臥位で体幹が広がる姿勢・自発運動が質的に異常・腱反射は正常〜亢進・筋力は比較的保たれる/末梢性:姿勢はより正常に近い・自発運動は量的に減少・腱反射は低下〜消失・筋力は明らかに低下し、抗重力運動は末梢性でより高度に障害される)を確認した。診察手技としてtraction response(pull-to-sit)での頭部支持、head lag、ventral suspension、scarf signを用いることを確認した。閲覧 2026-09-02