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Disease Atlas · 内分泌・代謝 · 先天性疾患

Zellwegerスペクトラム障害

Zellweger Spectrum Disorder

別名
Zellweger症候群新生児副腎白質ジストロフィーNALD乳児Refsum病IRD
臓器系
内分泌・代謝神経肝胆膵小児
科目
PediatricsMolecular Cell Biology
トピック
小児科 2-10:先天代謝異常を疑う状況と初期評価分子細胞生物学 65:ミトコンドリアとペルオキシソームへのタンパク質ターゲティング;リソソームへの基質取り込み(EM学生のみ)
上位概念
先天代謝異常症
鑑別疾患
成人Refsum病副腎白質ジストロフィー
合併症
白内障感音難聴尿路結石症
続発疾患
原発性副腎不全
関連疾患
点状軟骨異形成症
治療薬
ビタミンKコール酸
症状
筋緊張低下発作黄疸肝腫大視力低下
検査値
赤血球膜プラスマローゲンフィタン酸ピペコリン酸極長鎖脂肪酸
適応薬
コール酸

🧠 全体像:()は、をコードする13種のPEX遺伝子いずれかのによりそのものが正しく作られなくなる、単一の分子基盤から生じる疾患である。かつて「」「」「」という3つの別個の疾患として記載されてきたが、生化学的・分子的基盤が同一と判明し、現在は重症度の連続体をなす単一のという概念に統一されている。⚠️ 「」という歴史的名称が、(ABCD1遺伝子)と紛らわしいが、両者は・機序ともに別物であり、実際にPEX6欠損症がとされた症例が報告されている。診断は血漿・・血漿・という複数のの組み合わせで進め、確定はPEXによる。

位置づけと分類の変遷

は、に必要なタンパク質「」をコードする13種のPEX遺伝子(PEX1が原因の60.5%、PEX6が14.5%を占める)のによるのである1。

⭐ かつての「3疾患」は、実際には重症度の異なる同一疾患である。

旧来の呼称 現在の位置づけ
の重症型
() の
(IRD) の

PEX1のは表現型とある程度対応し、p.Ile700TyrfsTer42のホモ接合はより重症、p.Gly843Aspのホモ接合はより軽症またはを示し、検査が正常で候群のみを呈する成人例も報告されている1。

臨床像

⭐ 重症型と中間〜で、そのものが異なる。

重症型(旧) 中間〜(旧・旧IRD)
発症 〜幼児期後期と幅がある
先天性の高度、、、発作、 発達遅滞、難聴、が前景に立つことが多い
経過 通常生後1年以内に死亡、発達進歩なし 進行性(加齢とともに聴覚・視覚が悪化)
随伴所見 、黄疸・などの、脛骨・の 、の

1

💡 77%という数字の母集団は「生後1年を超えて生存した患者全体」ではない。 「生後1年を超えて生存し、かつ経過が非進行性である」患者に限ると、77%が学童期に到達する。この条件を満たさない急速進行例は含まれない点に注意する。知的発達が正常で感覚障害のみを呈する成人例も報告されている1。

診断

flowchart TD
    A["低緊張・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='characteristic facies'>特徴的顔貌</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='liver dysfunction'>肝機能障害</span><br>または進行性の難聴・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='visual disturbance'>視覚障害</span>から<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Zellweger spectrum disorder'>ZSD</span>を疑う"] --> B["血漿<span class='jp-term jp-term-diagram' title='very-long-chain fatty acid'>VLCFA</span>(C26:0・C26:1上昇、<br>C24/C22比・C26/C22比上昇)"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='erythrocyte plasmalogen'>赤血球膜プラスマローゲン</span>(C16・C18低下)"]
    C --> D["血漿<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pipecolic acid'>ピペコリン酸</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='C27 bile acid intermediate'>C27胆汁酸中間体</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='trihydroxycholestanoic acid'>THCA</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dihydroxycholestanoic acid'>DHCA</span>)"]
    D --> E["PEX遺伝子(13種)の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='biallelic pathogenic variant'>両アレル性病的バリアント</span>を検索"]
    E --> F{"PEX変異が見つかるか"}
    F -->|"見つかる(約85%)"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Zellweger spectrum disorder'>ZSD</span>として確定"]
    F -->|"見つからない(約15%)"| H["ACOX1・HSD17B4を含む<br>広い<span class='jp-term jp-term-diagram' title='single enzyme defect'>単一酵素欠損</span>症パネルへ"]

⚠️ 単独の指標で確定させない。 は上昇しうるが非特異的であり、VLCFA・プラスマローゲン・という複数マーカーの組み合わせと、最終的なPEXによる確定が必要である1。

⚠️ PEXが陰性でもを否定しない。 様の臨床像と血漿上昇を示す患者の約15%は13種のPEX遺伝子いずれにもが見つからず、実際には系の症(ACOX1による、HSD17B4によるなど)である。この場合はPEXにとどめず、ACOX1・HSD17B4を含む広いへ進む必要がある1。

💡 は用の検査にりする。 のC26:0-を測定するのスクリーニングプログラムで、も同時に検出される。確認されたは133,000人に1人だが、の生化学異常は検出されにくく過小評価の可能性がある1。

鑑別——名前の罠と真の鑑別疾患

⚠️ 「」という語を含む病名が2系統ある。とは別疾患であり、両者の鑑別はGeneReviewsが正式な表の筆頭に置く真の鑑別である。 名前の紛らわしさだけの問題ではなく、が単独で高値か、プラスマローゲン低下・上昇・上昇を伴い多数の異常が同時に出るかという生化学的な軸で見分けられる。

ZSD (X-ALD)
PEX1等13種のPEX遺伝子 ABCD1(単一遺伝子)
機序 そのものの障害(が作られない) の欠損(は正常に存在する)
遺伝形式 X連鎖
生化学異常 上昇に加え、プラスマローゲン低下・上昇・上昇など多数の異常が同時に出る 血漿上昇のみで他の生化学異常を伴わない

PEX6欠損症がとされた症例が報告されており、「」という語だけで判断せず、の数(単独か多数か)で見分ける1。

もう一つの鑑別は、rhizomelic chondrodysplasia punctata type 1(PEX7の)である。()はとスペクトラムという2つのに分かれ、RCDP1はと並んでを構成する姉妹であって、単一の酵素欠損症ではない(症に当たるのは前述のACOX1・HSD17B4の側である)。PEX7はPTS2経路という別ののみを損なうため、生化学プロファイルがとは異なる1。

治療

⚠️ 根治療法はなく、多臓器にわたる対症療法と定期が柱になる。

対象 介入
栄養 、
聴覚 補聴器
視覚 手術、
肝機能・ ・ビタミンK補充、による低下療法
発作
副腎機能 に準じた
骨 による骨密度評価、ビタミンD補充、にはを検討
腎 負荷による・に対し、、外科的介入。は1研究で排泄を減らさなかった

1

⚠️ 「骨粗鬆症」ではなく「」である。 原文が用いるのはosteopeniaで、osteoporosisという語は使われていない。の有効性を裏づけるのも症例報告レベルにとどまる1。

⭐ (Cholbam)は、を含むにおける肝疾患・・低下に対して2015年に米国で承認されたである。 そのものの神経症状やを治療する薬ではなく、肝胆道系マニフェに限定した適応である点に注意する。用量は10〜15 mg/kg/日を1〜2回に分けて食事とともに投与し、添付文書上のはないが、⚠️ 既存の・進行した肝疾患がある患者では投与がかえって肝疾患を悪化させうる(GeneReviews)。禁忌欄が空であることは「安全に使える」ことを意味しない。投与開始後は肝機能・凝固能を定期的にモニタリングし改善が乏しければ中止を検討する。阻害薬(等)との併用は避け、やとは服用間隔を空ける21。

年1回の聴覚・眼科評価、肝機能・凝固因子の年1回モニタリング、6か月ごとの歯科評価、年1回の/クレアチニン比・腎画像評価という定期を継続する1。

まとめ

  • は13種のPEX遺伝子いずれかのによるで、旧来の(重症型)・()・()は同一疾患の重症度連続体として統一された。()はと(rhizomelic chondrodysplasia punctata)スペクトラムという2つのに分かれ、RCDP1はの分類ではなく姉妹である。
  • 「」という歴史的名称は、・機序ともに全く別のと紛らわしいが、両者の鑑別は名前の問題を超えた真の鑑別点であり、生化学異常が単独(のみ)かのように多数同時に出るかで見分ける。
  • 診断は血漿・・血漿・という複数のの組み合わせで進め、確定はPEXによる。ただし上昇例の約15%はPEX変異が見つからず、ACOX1・HSD17B4による症であることがあるため、陰性でもを否定しない。はX-ALD用検査にりして検出される。
  • 根治療法はなく、栄養・聴覚・視覚・肝機能・発作・副腎機能・骨()・腎()という多臓器への対症療法とが柱。は2015年に米国で承認されたが、適応は肝疾患・・低下に限られ、既存の・進行肝疾患ではかえって悪化させうる。
  • 重症型は通常生後1年以内に死亡するが、生後1年を超えて生存しかつ非進行性の経過をたどる中間〜患者は77%が学童期に達し、知的発達が正常な成人例もある。

出典

  1. 1.Zellweger Spectrum Disorder(GeneReviews(University of Washington, Seattle)・2020)NCBI Bookshelfで全文を確認した(2020年10月29日最終更新)。Zellwegerスペクトラム障害(ZSD)が13種のPEX遺伝子(ペルオキシンをコードする)の両アレル性病的バリアントによるペルオキシソーム生合成障害であること、かつてZellweger症候群(重症型)・新生児副腎白質ジストロフィー(中間型)・乳児Refsum病(軽症型)という3つの別個の疾患とされていたものが、生化学的・分子的基盤が同一と判明し現在は重症度の連続体をなす単一のZSDという概念に統一されていること、ペルオキシソーム形成異常症(PBD)がZSDとrhizomelic chondrodysplasia punctata(RCDP)スペクトラムという2つのサブタイプに分かれると原文が明記していること、重症型(新生児期発症)が先天性の高度筋緊張低下・特徴的顔貌・脳形成異常・けいれん・哺乳不能・腎嚢胞・肝機能障害・脛骨と膝蓋骨の点状骨化を呈し通常生後1年以内に死亡し発達進歩がないこと、中間〜軽症型は発症時期が新生児期〜幼児期後期まで幅があり発達遅滞・難聴・視覚障害が主訴になることが多く加齢とともに聴覚・視覚が進行性に悪化すること、副腎機能不全と(永久歯の)歯質形成不全・骨減少症(osteopenia。osteoporosisという語は使われていない)も特徴であること、「生後1年を超えて生存し、かつ経過が非進行性である児(children who survive the first year and who have a non-progressive course)」の77%が学童期に達する確率を持つこと(単に1歳を超えて生存した児全体の数値ではない)、中には知的発達が正常で感覚障害のみを呈する成人例もあること、診断の生化学的スクリーニングが血漿VLCFA(C26:0・C26:1上昇、C24/C22比・C26/C22比上昇)・赤血球膜プラスマローゲン(C16・C18プラスマローゲン低下)・血漿ピペコリン酸上昇・C27胆汁酸中間体(THCA・DHCA)上昇であり確定診断はPEX遺伝子の両アレル性病的バリアント同定によること、ZSD様の臨床像と血漿VLCFA上昇を示すが約15%はPEX遺伝子に病的バリアントが見つからず実際にはペルオキシソームβ酸化の単一酵素欠損症(原文:"a broader peroxisomal multigene panel that includes at least ACOX1 and HSD17B4 in addition to the 13 PEX genes")であること、PEX1が原因の60.5%・PEX6が14.5%を占めること、PEX1のp.Ile700TyrfsTer42ホモ接合がより重症、p.Gly843Aspホモ接合がより軽症またはZSD中間型で神経学的検査正常・眼症候群のみの成人例も報告されていること、遺伝形式が常染色体劣性(一部のPEX6 p.Arg860Trpバリアントを除く)で保因者夫婦の同胞再発率が発症25%・保因者50%・非保因者25%であること、鑑別診断としてrhizomelic chondrodysplasia punctata type 1(PEX7両アレル変異、PBDの中でZSDとは異なる姉妹サブタイプを構成し、単一のペルオキシソーム基質輸入経路〔PTS2〕のみが障害されるためZSDと生化学プロファイルが異なる)およびX連鎖副腎白質ジストロフィー(ABCD1変異、血漿VLCFA上昇のみで他の生化学異常を伴わない点でZSDと異なる)が挙がり、PEX6欠損症がX連鎖副腎白質ジストロフィーと誤診された症例が報告されていること、ニューヨーク州の新生児マススクリーニング(X連鎖副腎白質ジストロフィー検出用のC26:0-リゾホスファチジルコリン測定)でZSDも同時に検出され有病率が出生133,000人に1人と推定されるが軽症型の生化学異常が検出されにくいため過小評価の可能性があること、一部の患者で尿シュウ酸負荷に伴う尿路結石症・腎石灰化症を来しうること(原文:"Some affected persons develop urolithiasis & nephrocalcinosis assoc w/urinary oxalate load")、その対症療法が水分補給・体外衝撃波結石破砕術・外科的介入でありピリドキシン投与は1研究でシュウ酸排泄を減らさなかったこと、対症療法として経管栄養・特殊ミルク、補聴器、白内障手術・屈折矯正、脂溶性ビタミン・ビタミンK補充、コール酸によるC27胆汁酸中間体低下療法(ただし既存の肝線維化・進行した肝疾患がある患者では肝疾患を悪化させうる。原文:"Cholic acid supplementation can worsen liver disease in individuals with preexisting fibrosis & advanced liver disease")、抗けいれん薬、副腎補充療法、DXAによる骨密度評価とビタミンD補充・骨減少症へのビスホスホネート検討を行うこと、推奨サーベイランスが摂食(毎回)・聴覚(年1回)・眼科・肝機能(凝固因子・画像、年1回)・神経(発作モニタリング、必要時頭部MRI)・発達・内分泌(ACTH・コルチゾール、1歳時以降年1回)・歯科(萌出後6か月ごと)・腎(尿シュウ酸/クレアチニン比・腎画像、年1回)にわたることを確認した。閲覧 2026-09-02
  2. 2.CHOLBAM (cholic acid) capsules, for oral use — Highlights of Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration・2015)FDA添付文書PDFを全文取得した(Revised March 2015、米国初承認2015年)。コール酸(CHOLBAM)が単一酵素欠損による胆汁酸合成障害の治療、および肝疾患・脂肪便・脂溶性ビタミン吸収低下による合併症を呈するZellwegerスペクトラム障害を含むペルオキシソーム障害の補助療法として適応を持つこと(ZSDそのものを含む全身症状ではなく、肝疾患・脂肪便・脂溶性ビタミン吸収障害という肝胆道系マニフェステーションに限定した適応であること)、通常用量が10〜15 mg/kg/日を1回または2回に分けて食事とともに経口投与すること、禁忌が「None」と明記されていること、警告として肝機能悪化時の中止基準(AST・ALT・GGT・ALP・ビリルビン・INRを投与開始後3か月間は毎月、その後9か月間は3か月ごと、以降は6か月ごとおよび年1回モニタリングし、3か月以内に改善しない場合や胆道閉塞・肝機能悪化の徴候があれば中止を検討)が挙げられていること、頻度1%以上の副作用が下痢・逆流性食道炎・倦怠感・黄疸・皮膚病変・悪心・腹痛・腸ポリープ・尿路感染・末梢神経障害であること、薬物相互作用としてBSEP(胆汁酸塩排出ポンプ)阻害薬(シクロスポリン等)との併用を避けること、胆汁酸吸着レジンやアルミニウム含有制酸薬とは1時間以上前または4〜6時間以上空けて服用することを確認した。閲覧 2026-09-02