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Disease Atlas · 内分泌・代謝 · 先天性疾患

X連鎖性低リン血症性くる病・骨軟化症

X-Linked Hypophosphatemia

別名
XLHVitamin D-resistant ricketsPHEX関連低リン血症性くる病
臓器系
内分泌・代謝運動器腎・泌尿器
科目
Internal MedicinePediatrics
トピック
内科学 S-13:骨軟化症とくる病小児科 3-59:ビタミンD欠乏症とくる病
上位概念
くる病・骨軟化症
鑑別疾患
ビタミンD依存性くる病腫瘍性骨軟化症
治療薬
ブロスマブカルシトリオール
症状
O脚・X脚骨変形骨痛関節痛難聴
検査値
血清リンPTHビタミンD代謝物アルカリホスファターゼ
画像所見
偽骨折

🧠 全体像:()は、PHEX遺伝子の→血清上昇→でのリン再吸収低下+1,25(OH)₂D産生低下という一本の経路で説明できる、くる病・の「型(経路②)」の代表疾患である1。⚠️ ・ビタミンD代謝の異常が主因ではない——栄養性くる病が上昇を起点とするのに対し、はが直接にを引き起こす点が病態の核心である。⭐ では「なのに1,25(OH)₂Dが正常」という一見矛盾した所見(inappropriately normal)が、がを抑えていることの現れとして最も問われやすい。

遺伝形式

X連鎖性だが、の男性との女性が同程度に罹患する——いわゆる X連鎖優性の遺伝形式である1。

  • 罹患男性は娘全員にを伝達し、息子には伝達しない1。
  • は10万出生あたり3.9〜5人とされるが、1.3〜1.7人という低い報告もあり、診断漏れの可能性が指摘されている1。

病態機序

flowchart TD
    A["PHEX遺伝子の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pathogenic variant'>病的バリアント</span>"] --> B["血清<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fibroblast growth factor 23'>FGF23</span>濃度が上昇"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fibroblast growth factor 23'>FGF23</span>がFGF受容体1c・Klothoに結合"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='renal proximal tubule'>腎近位尿細管</span>でのリン再吸収が低下<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='renal phosphate wasting'>腎性リン喪失</span>)"]
    C --> E["腎の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='1-alpha-hydroxylase'>1α水酸化酵素</span>を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='downregulation'>下方調節</span>"]
    E --> F["1,25(OH)2D産生が低下<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypophosphatemia'>低リン血症</span>に見合うだけ上昇しない)"]
    D --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypophosphatemia'>低リン血症</span>"]
    F --> G
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='osteoid'>類骨</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='growth plate'>成長板</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='defective mineralization'>石灰化障害</span><br>(くる病・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='osteomalacia'>骨軟化症</span>)"]

💡 PHEXそのものはを分解する酵素ではない。 PHEXのがなぜ濃度を上げるのかという直接のは完全には解明されていないが、結果としてが過剰になり、それが腎でのリン再吸収抑制と1,25(OH)₂D産生抑制の両方を同時に起こす点は確立している1。

臨床像

年齢層 所見
小児期 体重負荷開始後の下肢弯曲(O脚・)、身長増加速度の低下、くる病様の
成人期 非対称に下肢が短い、股関節・脊椎・を中心とする関節痛
年齢を問わず する歯膿瘍(を伴わない)、難聴、エンテソパチー(腱・付着部の骨化)、脊椎の石灰化、

1

⚠️ 「歯膿瘍」はとは限らない。 ではがなくてもする歯膿瘍を来しうる——・のが背景にあるためで、原因不明の反復性歯膿瘍でを疑う手がかりになる1。

診断——ビタミンD欠乏性くる病との鑑別

⭐ 鍵は25(OH)Dと1,25(OH)₂Dの挙動である。

項目 (栄養性)
25(OH)D 低値 正常
1,25(OH)₂D 正常〜低値 低値〜「inappropriately normal」(本来上がるべきところ正常止まり)
低値 著明低値
高値 正常〜二次性
正常 通常上昇
骨密度 低下() むしろ高い

1

💡 25(OH)Dが正常なら「ビタミンD欠乏ではない」ことは言えるが、それだけでが確定するわけではない。 リン・・家族歴(X連鎖性の家系パターン)を合わせて判断する。確定診断にはPHEXのを行う。

治療

⭐ 国際ワーキンググループの診療ガイドライン(2025年)は、抗モノクローナル抗体を従来療法(経口リン酸+〈〉)より優先して推奨する。 生後12か月以上の小児では強い推奨(確実性中)、生後6〜12か月では条件付き推奨(確実性低)にとどまり、推奨の強さが年齢で分かれる2。

⚠️ 従来療法(リン酸+)は、過量・不適切な使用でや続発性〜を来しうるため、腎機能・尿中Ca・の定期モニタリングが必須になる(詳細はくる病・・のノートを参照)。

まとめ

  • PHEX遺伝子の→上昇→腎リン再吸収低下+1,25(OH)₂D産生低下という単一経路で説明できる、X連鎖優性(男性・女性が同程度に罹患)の遺伝性くる病・。
  • は10万出生あたり3.9〜5人。・ビタミンD代謝異常が主因ではなく、が直接にを起こす点がくる病・の中でも「型」に位置づけられる理由。
  • 鑑別の鍵は25(OH)Dが正常(栄養性くる病は低値)かつ1,25(OH)₂Dがの割に上がらないこと。歯膿瘍・難聴・エンテソパチーは年齢を問わず来しうる。
  • 治療は国際ガイドラインでが従来療法より優先され、生後12か月以上は強い推奨、6〜12か月は条件付き推奨にとどまる。従来療法は・続発性〜のリスクを伴う。

出典

  1. 1.X-Linked Hypophosphatemia(GeneReviews(NCBI Bookshelf)・2023)全文を確認した。発生率が「The incidence of XLH is 3.9-5 in 100,000 live births」であるが1.3〜1.7/100,000というより低い報告もあり診断漏れの可能性が指摘されていること、遺伝形式が「X-linked hypophosphatemia (XLH) is inherited in an X-linked manner; hemizygous males and heterozygous females are similarly affected」で罹患男性は娘全員に病的バリアントを伝達し息子には伝達しないこと、PHEX遺伝子の病的バリアントにより血清FGF23濃度が上昇しFGF23がFGF受容体1cとKlothoに結合して腎近位尿細管でのリン再吸収を低下させリン喪失を来すこと、同時にFGF23が腎の1α水酸化酵素を下方調節し1,25(OH)2D産生を低下させること、臨床像として小児期は体重負荷開始後の下肢弯曲・身長増加速度低下・くる病様所見を来し成人期は非対称に下肢が短い低身長・股関節/脊椎/肩関節を中心とする関節痛を来すこと、年齢を問わず自然発生する歯膿瘍・難聴・エンテソパチー・脊椎靱帯の石灰化を来しうること、生化学所見は血清リンが低値、1,25(OH)2Dが低値〜「inappropriately normal」(低リン血症に対して本来上昇すべきところが正常にとどまる)、PTHが二次性副甲状腺機能亢進を示すことがあり、FGF23は通常上昇し、ALPは年齢相応より高値を示すこと、栄養性のビタミンD欠乏性くる病との鑑別点として欠乏性くる病では25-ヒドロキシビタミンD濃度が低値であるのに対しXLHでは25(OH)D濃度が正常であること、骨密度もXLHで高く栄養性くる病では骨粗鬆化を示すことを確認した(最終更新日 2023年12月14日)。閲覧 2026-09-07
  2. 2.X-Linked Hypophosphatemia Management in Children: An International Working Group Clinical Practice Guideline(The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism・2025)既存id・claimを再利用(diseases/rickets-and-osteomalacia.md、drugs/burosumab.mdの出典と同一)。PMC12187519の全文で確認した。TREATMENT RECOMMENDATIONS(GRADE)は「In children 12 months of age and older with XLH, we recommend burosumab therapy over conventional therapy (active vitamin D and phosphate salts) (strong recommendation, moderate certainty).」「In children 6-12 months of age with XLH, we suggest burosumab therapy over conventional therapy (active vitamin D and phosphate salts) (conditional recommendation, low certainty).」と、推奨の強さを年齢で分けている。会議は2023〜2024年に開催され、公表は2025年である閲覧 2026-09-06