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Disease Atlas · 内分泌・代謝 · 疾患

腫瘍性骨軟化症

Tumor-induced osteomalacia

別名
TIO腫瘍随伴性骨軟化症oncogenic osteomalacia
臓器系
内分泌・代謝運動器
科目
Internal MedicinePathology
トピック
内科学 S-13:骨軟化症とくる病病理学 C/91:後天性骨疾患(骨粗鬆症・くる病・骨軟化症)
上位概念
くる病・骨軟化症
鑑別疾患
X連鎖性低リン血症性くる病・骨軟化症
治療薬
ブロスマブ
症状
骨痛筋力低下
検査値
血清リンALP活性型ビタミンD(1,25(OH)2D)
画像所見
ソマトスタチン受容体シンチグラフィ/PETFDG-PET

🧠 全体像:(TIO)は、くる病・の「経路②:型」に属する、成人発症の後天性・傍腫瘍性の性である。原因はを過剰産生する腫瘍(多くは性)で、⭐ 腫瘍そのものは通常良性・小さく・全身のどこにでも生じうるため、「原因は特定できるのに、その原因を画像で見つけ出すことが最大の難所」という一風変わった疾患である。は腫瘍の完全切除だが、見つからない・切除できない例には抗抗体というがある。

病態

正常なリン・では、は骨細胞から分泌されでのリン再吸収を抑制し、またを抑制して産生を減らすことで、リンの恒常性を調整している。TIOでは、性などの腫瘍がを自律的に過剰産生し、この調整機構が病的に暴走する。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='phosphaturia'>リン酸尿</span>性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mesenchymal tumor'>間葉系腫瘍</span>が<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='fibroblast growth factor 23'>FGF23</span>を自律的に過剰産生"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proximal tubule'>近位尿細管</span>でのリン再吸収抑制"]
    A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='1-alpha-hydroxylase'>1α水酸化酵素</span>の抑制"]
    B --> D["尿中リン排泄増加・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypophosphatemia'>低リン血症</span>"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='active vitamin D'>活性型ビタミンD</span>(1,25(OH)2D)低下"]
    E --> F["腸管リン吸収も低下"]
    D --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='osteoid'>類骨</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='defective mineralization'>石灰化障害</span>"]
    F --> G
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone pain'>骨痛</span>・筋力低下・易骨折性(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='osteomalacia'>骨軟化症</span>)"]

くる病・のノートで整理した「経路②:型」の代表例がTIOと()であり、両者とも・ビタミンD代謝の異常を介さず、が直接にを引き起こすという点で経路①(栄養性)と機序が異なる。⚠️ は先天性で小児期から発症するのに対し、TIOは後天性ので成人発症であるという点が最大の分かれ目になる。

疫学と臨床像

きわめてまれな疾患で、韓国の単一施設25例に既報22例を加えた scoping review では対象47例中53.2%が男性、年齢中央値52歳であった1。臨床像は進行性の・筋力低下・繰り返すで、症状が非特異的なため診断が遅れやすい。

局在診断:見つけにくさそのものが臨床上の課題

⭐ 原因腫瘍は小さく(大きさの中央値1.9 cm)、全身のどこにでも生じうる。 韓国の47例では下肢が最多(57.5%)だった1。

画像診断法 特徴
ガリウムスキャン 最も一般的に用いられる画像診断法。 初回検査での局在成功率は77.3%1
68Ga-DOTATATE PET/CT 30例の検討で患者単位の感度85.7%・特異度77.8%・83.3%。18F-FDG PET/CTより感度に優れるとされ、患者の80%で臨床管理に実際の影響を与えた2

⚠️ 判読には落とし穴がある。 亜急性期骨折・・胸腺への生理的取り込み・椎体血管腫・骨・・が偽陽性の原因となる2。一方で陽性を示す骨折の存在は、かえって局在成功と有意に関連していた(多変量9.45)2。

⭐ 一度の陰性で探索を打ち切らない。 初回の局在診断が陰性だった症例の80%は1〜2年後の再検査で陽性となった1。腫瘍が小さく代謝活性が変動しうることを踏まえ、症状・生化学所見が持続する限り画像検索を繰り返す価値がある。

治療

原因腫瘍の完全切除が根治的治療

腫瘍が同定できれば外科的切除(を含む)がである。韓国の47例のうち45例で切除が行われたが、26.7%(12/45)はのためを要した1。⚠️ 切除できても取り残しがあればは続くため、術後も・の推移で治癒を確認する必要がある。

切除不能・局在不明例にはブロスマブ

flowchart TD
    A["TIOの診断(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypophosphatemia'>低リン血症</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fibroblast growth factor 23'>FGF23</span>関連の機序を確認)"] --> B{"原因腫瘍を<br>局在診断できたか"}
    B -->|"できた"| C["外科的切除(根治的)"]
    C --> D{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='serum phosphate'>血清リン</span>・症状は改善したか"}
    D -->|"いいえ(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='residual tumor'>遺残腫瘍</span>を疑う)"| E["画像を再検し<span class='jp-term jp-term-diagram' title='revision surgery'>再手術</span>を検討"]
    B -->|"できない・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='unresectable'>切除不能</span>"| F["抗<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fibroblast growth factor 23'>FGF23</span>抗体<span class='jp-term jp-term-diagram' title='burosumab'>ブロスマブ</span>"]

⭐ 抗抗体は、腫瘍が見つからない・切除できないTIOに対するである。 または局在不明の成人TIO 14例を対象とした第2相試験では、4週ごとの皮下注射でをへ維持する目標のもと用量を漸増したところ、平均空腹時はベースライン0.52 mmol/Lから第22週に0.91 mmol/L・第144週に0.82 mmol/Lへ有意に上昇した(p<0.0001)3。48週時点のでは厚が有意に減少し(p<0.05)、144週時点でベースラインの骨折・249個のうち33%が完全治癒・13%が部分治癒した3。

⚠️ 有害事象は既知の阻害の裏返しである。 過リン血症(14.3%)・(21.4%)はを強く抑制することの当然の帰結で、注射部位反応(21.4%)も含めいずれも軽度〜中等度だった。7例に生じた16件の重篤な有害事象(腫瘍進行5例・敗血症による死亡1例を含む)はいずれもとは無関連と判定されている3。💡 「切除できないから」ではない——厚の改善や骨折治癒という組織学的・構造的な指標まで動いている。

まとめ

  • TIOはくる病・の型に属する、産生腫瘍による成人発症の性である。
  • 原因腫瘍(多くは性)は通常良性・小さく(中央値1.9 cm)・全身のどこにでも生じうるため、原因が分かっていても局在診断そのものが難しい。
  • ガリウムスキャンが最も広く用いられ初回成功率77.3%、はより感度に優れる。⭐ 初回陰性の80%が再検査で陽性になるため、一度の陰性で探索を打ち切らない。
  • は外科的切除だが、のため26.7%がを要する。・局在不明例にはが有効で、の正常化に加え組織学的な骨軟化所見の改善・骨折治癒も示されている。

出典

  1. 1.Challenges in Evaluation and Management in Tumor-Induced Osteomalacia: A Retrospective Institutional and Literature-Based Scoping Review in Korean Patients(Journal of Bone Metabolism・2025)2004〜2024年にSeverance骨・ミネラルクリニックを受診したTIO患者25例を後方視的に分析し、PubMedなどで報告された韓国の既報症例14件・22例を加えて計47例を対象とした scoping review で、53.2%(25例)が男性、年齢中央値52歳であったこと、原因腫瘍は下肢に最も多く(57.5%)、大きさの中央値は1.9 cmと小さかったこと、45例で外科的切除(ラジオ波焼灼を含む)が行われ26.7%(12/45)が遺残腫瘍のため再手術を要したこと、ガリウムスキャンが最も一般的に用いられる画像診断法で初回検査での局在成功率が77.3%であったこと、初回陰性であった症例の80%は1〜2年後の再検査で陽性所見を示したこと、腫瘍が小さく解剖学的に広範に分布しうるため局在診断が依然として困難で、繰り返しのスキャンや追加の画像診断法が有用でありうると結論していることを、Europe PMCで取得した抄録で確認した閲覧 2026-09-07
  2. 2.Gallium-68-DOTATATE PET/CT for phosphaturic mesenchymal tumor localization in suspected tumor-induced osteomalacia(JBMR Plus・2025)2017〜2023年に単一の三次医療機関でTIOが疑われ68Ga-DOTATATE PET/CTを施行した30例の前向き登録・後方視的検討で、18例で組織学的に確認された真陽性病変22個が同定され平均SUVmaxは16.8(±10.9)であったこと、患者単位の感度85.7%・特異度77.8%・正診率83.3%、病変単位の感度84.6%・特異度56.3%・正診率73.8%であったこと、亜急性期骨折・副甲状腺腺腫・胸腺への取り込み・椎体血管腫・骨内軟骨腫・肝血管腫・骨壊死が判読上の落とし穴として挙げられていること、68Ga-DOTATATE PET/CTが患者の80%(24/30)で臨床管理に有意な影響を与えたこと、DOTATATE陽性を示す骨折の存在が局在成功と有意に関連したこと(単変量オッズ比15.0、95%CI 2.80〜110、多変量オッズ比9.45、95%CI 1.33〜98.4)、18F-FDG PET/CTと比べて感度に優れ局在診断の精度が良好であるとしていることを、Europe PMCで取得した抄録で確認した閲覧 2026-09-07
  3. 3.Burosumab for the Treatment of Tumor-Induced Osteomalacia(Journal of Bone and Mineral Research・2021)切除不能または局在不明のTIO成人14例を対象とした非盲検第2相試験(UX023T-CL201)で、ブロスマブを4週ごと皮下注し初期用量0.3 mg/kgから第16週まで最大2.0 mg/kgまで漸増して空腹時血清リンを基準範囲(0.81〜1.29 mmol/L)へ維持することを目標としたところ、平均空腹時血清リンはベースライン0.52 mmol/Lから第22週に0.91 mmol/L・第144週に0.82 mmol/Lへ有意に上昇したこと(p<0.0001)、48週時点の骨組織形態計測で類骨厚が16.5±3.6 µmから11.3±2.8 µmへ有意に減少した一方(p<0.05)、類骨量/骨量・石灰化遅延時間の変化は統計的有意差に至らなかったこと、144週時点でベースラインに存在した骨折・偽骨折249個のうち33%が完全治癒・13%が部分治癒したこと、治療関連の重篤な有害事象は無く、最も頻度の高い有害事象は注射部位反応(21.4%)・過リン血症(14.3%)・過敏反応(14.3%)・異所性石灰化(21.4%)であったこと、7例で発生した16件の重篤な有害事象(腫瘍進行5例、敗血症・心停止による死亡1例を含む)はいずれも治験薬と無関連と判定されたことを、Europe PMCで取得した全文(PMCID PMC8247961)で確認した閲覧 2026-09-07