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Symptoms · Published

筋力低下

Muscle weakness

別名
脱力筋疲労
臓器系
神経内分泌・代謝免疫・膠原病
科目
Internal MedicineAnesthesiology
トピック
内科学 S-50:筋力低下の内科的原因と鑑別診断麻酔科学 B-11:生命を脅かす神経疾患の集中治療(脳卒中・ギラン・バレー症候群)内科学 E-06:糖質コルチコイド欠乏と過剰
関連疾患
2型糖尿病Fanconi症候群ギラン・バレー症候群クッシング症候群クリオグロブリン血症コリン作動性クリーゼサルコペニアデュシェンヌ・ベッカー型筋ジストロフィーてんかんバセドウ病ボツリヌス症ポリオミトコンドリア病ランバート・イートン筋無力症候群悪液質悪性症候群異染性白質ジストロフィー鉛中毒横紋筋融解症関節リウマチ強直性脊椎炎胸腺腫筋萎縮性側索硬化症原発性アルドステロン症原発性副甲状腺機能亢進症原発性副腎不全甲状腺機能低下症混合性結合組織病周期性四肢麻痺重症筋無力症心室性不整脈(心室頻拍・心室細動)腎尿細管性アシドーシス脊髄係留症候群脊髄腫瘍脊髄性筋萎縮症摂食症(神経性やせ症・過食症)男性性腺機能低下症中枢神経系腫瘍(成人・小児)糖原病脳膿瘍皮膚筋炎・多発筋炎副腎白質ジストロフィー副腎皮質癌慢性腎臓病慢性閉塞性肺疾患腕神経叢損傷頸髄症頸椎・腰椎椎間板ヘルニアによる神経根症
起因薬
アミカシンアンベノニウムゲンタマイシンジドブジンダントロレンデキサメタゾントブラマイシントリアムシノロンネチルマイシンバクロフェンヒドロキシクロロキンボツリヌス毒素マグネシウム(Mg++)
スコア
ABCD2スコアmJOAスコアMRC徒手筋力テストNIHSSSARC-F

🧠 全体像:筋力低下の評価は、訴えをほどく → 呼吸を守る → 高さを決めるの3段構えで進む。「力が入らない」は・失調・疼痛回避のこともあり、まずな筋力低下を確認する。確認できたら次は四肢の筋力ではなく呼吸筋と嚥下を見る——ここで死ぬからである。安全が確認できて初めて、のどの高さ(筋・・末梢神経・・中枢)が壊れているかを、分布・腱反射・感覚障害・で決める。

麻痺との分担そのものの消失と、の対比は麻痺ノートが扱う。このノートは程度としての筋力低下と、その原因検索を担当する。

まず「力が入らない」をほどく

のノートで「な筋力低下があれば局在診断という別の体系へ移る」と書いた、その受け皿がここである。逆に、下の表で筋力低下でないと分かったら感の鑑別へ戻す。

訴えの実体 見分け方 進む先
真の筋力低下 で低下。左右差・分布が出る この節から先
感・易疲労 筋力は保たれ、続けられないだけ
失調 力はあるが動きが不正確。・歩行で崩れる 小脳・の評価
疼痛回避 痛みで力を出し切らない。痛みを除くと出る 筋痛関節痛の評価

💡 「反復すると悪化し、休むと戻る」感ではない。 これはの障害を示す固有の所見で、(夕方に増悪)を伴えばさらに強く示唆される。

四肢の筋力より先に呼吸を評価する

⚠️ 筋力低下でするのはである。四肢のを丁寧にとっている間に換気が破綻する。

疾患 進み方 気づく手掛かり
数日〜2週で上行性に進行 腱反射の消失、末梢の、自律神経の
重症筋無力症のクリーゼ 感染・手術・薬剤を契機に急速悪化 、夕方の増悪
から下行性に対称性進行 ・調節障害、口渇、発熱なし、感覚正常

⭐ ベッドサイドの評価順序は、話す → 咳をする → 飲み込む → 息を吸うである。一息で数えられる数が減る、咳が弱い、唾液が処理できない、臥位で息苦しい、腹部が吸気で陥凹する()——このどれかがあれば四肢の評価を中断して気道・換気を確保する。

⚠️ SpO₂と動脈血ガスは遅れて悪くなる。 神経筋性換気不全ではSpO₂が保たれたまま呼吸筋がし、CO₂が上がり始めた時点ではすでに手遅れに近い。を反復測定して傾きで判断する(20 mL/kg、−30 cmH₂O、40 cmH₂Oが挿管を検討する目安として使われる)。

運動単位のどの高さか

高さ 分布 腱反射 感覚障害 CK 特徴的な所見
対称性・近位優位 末期まで保たれる なし 上昇(例外あり) 筋痛、嚥下障害、皮疹
眼瞼・眼球・から 保たれる(LEMSでは低下) なし 正常
末梢神経 遠位優位、または神経支配領域 低下・消失 あり 正常
非対称・ 混在(徴候を伴えば亢進) なし 軽度上昇 、萎縮、
中枢 錐体路パターン・片側性 亢進 を伴いうる 正常

💡 感覚障害の有無が最初の分岐になる。 感覚が完全に正常なら筋・のいずれか、感覚障害を伴えば末梢神経か脊髄・中枢を考える。ただし急性期の痙性病変が弛緩性に見えるといった時間軸の落とし穴は麻痺ノートで扱う。

近位優位か遠位優位か

近位優位 遠位優位
患者の言い方 立ち上がれない、が上れない、髪を洗えない、洗濯物を干せない つまずく、サンダルが脱げる、ボタンが留められない、瓶の蓋が開かない
主な高さ 筋、 末梢神経

💡 椅子から腕を使わずに立てるか、遠位筋力低下はで短時間にふるい分けられる。

⚠️ この対応には例外があり、それ自体が診断の手掛かりになる。は筋疾患でありながら非対称・遠位(長指屈筋)とを侵し、も遠位優位で始まる。「筋疾患=近位」で切り捨てない。

全身性の可逆的原因を先に外す

⭐ 局在診断へ深入りする前に、採血とだけで分かる可逆的原因を落とす。ここを飛ばすとまで進んでから診断がつく。

代表 手掛かり
甲状腺 機能低下症、 低下症ではCK上昇と腱反射の遅延、亢進症では振戦と。どちらも近位筋
副腎・下垂体 、副腎不全 クッシングでは+易出血。副腎不全は真の筋力低下より感が前景
副甲状腺・
カリウム 低K血症、高K血症、 発作性・弛緩性で。低Kではを伴いうる
その他の電解質 、低血症 、アルコール、利尿薬。低リンは呼吸筋を侵す
薬剤 グルココルチコイド、スタチン、、アルコール 開始・増量との時間関係を必ず聞く

⚠️ はCKが正常のままだけが進む。 「CKが正常だから筋疾患ではない」と読むと見落とす。

⚠️ スタチン関連筋症は中止すれば治るとは限らない。 中止後も進行する場合は陽性のを考え、CKがのまま下がらないかを追う。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["「力が入らない」という訴え"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='manual muscle test (MMT)'>徒手筋力テスト</span>で<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='objective'>他覚的</span>な筋力低下があるか"}
    B -->|"なし"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Malaise'>倦怠</span>感・失調・疼痛回避として評価"]
    B -->|"あり"| D{"呼吸・嚥下は安全か"}
    D -->|"危険"| E["換気の確保を最優先<br>四肢の詳細評価より先"]
    D -->|"安全"| F["発症速度と分布を決める"]
    F --> G["電解質・甲状腺・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='medication history'>薬歴</span>・CKで<br>可逆的原因を先に外す"]
    G --> H{"感覚障害があるか"}
    H -->|"あり"| I["末梢神経・神経根・脊髄<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='nerve conduction study (NCS)'>神経伝導検査</span>・脊髄MRI"]
    H -->|"なし"| J{"腱反射・分布・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diurnal variation'>日内変動</span>"}
    J -->|"対称・近位・CK上昇"| K["筋:筋炎抗体・筋MRI・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='muscle biopsy'>筋生検</span>"]
    J -->|"易疲労・眼瞼・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bulbar symptoms'>球症状</span>"| L["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neuromuscular junction (NMJ)'>神経筋接合部</span>:抗体・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='repetitive nerve stimulation test'>反復刺激試験</span>"]
    J -->|"非対称・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fasciculations'>線維束攣縮</span>・萎縮"| M["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anterior horn cell'>前角細胞</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='needle electromyography'>針筋電図</span>"]

まとめ

  • 「力が入らない」は真の筋力低下・感・失調・疼痛回避に分かれる。低下を確認してから先へ進む。
  • 確認できたら、四肢の筋力より先に呼吸筋と嚥下を評価する。が対象になる。
  • 神経筋性換気不全ではSpO₂が最後まで保たれる。の推移で判断する。
  • 局在は分布・腱反射・感覚障害・・CKの組み合わせで決める。感覚障害の有無が最初の分岐になり、局在を決めてから検査を選ぶ。
  • 近位優位は筋と、遠位優位は末梢神経。はこの原則の例外。
  • 局在診断へ進む前に、電解質・甲状腺・副腎・薬剤という可逆的原因を採血とで外す。
  • ではCKが正常。CK正常を根拠に筋疾患を否定しない。
  • の消失そのものとの対比は麻痺が扱う。