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Disease Atlas · 神経 · 疾患

筋萎縮性側索硬化症

Amyotrophic lateral sclerosis

別名
ALS運動ニューロン病
臓器系
神経
科目
NeurologyPathology
トピック
神経内科 G3-22:ALS神経内科 G1-05:上位・下位運動ニューロン障害の症候病理学 C-107:神経変性疾患・プリオン病
鑑別疾患
ギラン・バレー症候群重症筋無力症頸髄症
症状
単麻痺偽性球麻痺球麻痺筋力低下筋痙攣情緒不安定頭痛日中傾眠嚥下障害筋線維束攣縮
検査値
最大吸気圧・最大呼気圧夜間低換気評価横隔神経伝導検査鼻腔吸気圧経横隔膜圧

🧠 全体像:ALSは、大脳皮質からまでのと、から筋までのが同一患者の中で並行して変性していく疾患である。感覚・眼球運動・は比較的保たれるまま、局所の非対称性脱力が隣接領域へ「じわじわ広がる」進展パターンを示す点が診断の軸になる。UMN徴候だけのや、LMN徴候だけの重症筋無力症と異なり、UMNとLMNの徴候が共存することがALSを特徴づける。

病態と原因

と、脳神経は原則として免れる)の運動ニューロンが変性し、それに伴いが二次的に変性する(=「硬化」)。90%はだが、家族歴のない患者にもが見つかることがあり、代表的なC9orf72SOD1TARDBPFUSである。遺伝学的結果はへの影響が大きいため、現在は家族歴の有無にかかわらず全患者へ遺伝学的検査と遺伝を提案する考え方が重視される。

flowchart TD
    A["加齢・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='genetic predisposition'>遺伝素因</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glutamate excitotoxicity'>グルタミン酸興奮毒性</span>・蛋白凝集・RNA代謝異常"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anterior horn cell'>脊髄前角細胞</span>・脳神経<span class='jp-term jp-term-diagram' title='motor nuclei'>運動核</span>(LMN)の変性"]
    A --> C["皮質脊髄路・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='corticobulbar tract'>皮質延髄路</span>(UMN)の変性"]
    B --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='denervation'>除神経</span>による骨格<span class='jp-term jp-term-diagram' title='muscle wasting (muscle atrophy)'>筋萎縮</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fasciculation'>線維束性収縮</span>"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spasticity'>痙縮</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperreflexia'>腱反射亢進</span>"]
    D --> F["進行性の局所脱力が隣接領域へ拡大"]
    E --> F
    F --> G["球・呼吸筋障害で機能予後を規定"]

💡 が比較的保たれるため、でも眼球運動は温存されやすい——これは重症筋無力症の優位パターンとの表面的な類似にもかかわらず、ALSと鑑別する際の手掛かりになる。

臨床像

障害系統 徴候
筋力低下、
などの
球機能 、嚥下障害、、誤嚥、咳嗽力低下
呼吸 、朝の頭痛、、弱い咳、
認知・行動 前頭側頭型の・言語・行動変化を伴うことがある

発症は上肢・下肢の非対称性脱力、、または呼吸症状のいずれかから始まり、隣接領域へ進展する。感覚障害、、膀胱直腸障害は比較的保たれるが、絶対に障害されないわけではない。

UMN徴候()とLMN徴候(弛緩・萎縮・・反射低下)が同一患者・同一領域に共存することが、末梢神経障害やなど単一系統の疾患との鑑別点になる。

診断

では、正常だったの進行性障害に加え、①1領域でUMN・LMN徴候が共存する、または②2領域以上でLMN障害を示し、他疾患を除外することで診断する。

flowchart TD
    A["進行性の局所筋力低下"] --> B["UMN・LMN徴候を球・頸・胸・腰<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sacral'>仙髄</span>領域で検索"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='needle electromyography'>針筋電図</span>で活動性・慢性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='denervation'>脱神経</span>を確認"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nerve conduction study (NCS)'>神経伝導検査</span>・MRI・血液検査で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mimic (differential diagnosis)'>模倣疾患</span>を除外"]
    D --> E["ALS診断(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Gold Coast criteria'>Gold Coast基準</span>)"]
    E --> F["遺伝学的検査と多職種介入を開始"]

は複数領域の活動性・慢性所見を示し、臨床的なLMN徴候を補強する。ではを伴うなどを除外する。重症筋無力症、ビタミンB12欠乏、、感染症などを臨床像に応じて鑑別する。

疾患修飾療法

治療 対象・要点
多くのALS患者で生存期間を延長する。肝機能や薬物相互作用を確認する
選択された患者で機能低下を緩和しうる。・通院負担・利益をで検討する
SOD1変異ALSに対する。米国では2023年に低下を根拠とした迅速承認を取得しており、臨床的有用性は確認試験(ATLAS試験)の結果を待つ段階にある。適応、髄液関連有害事象、各国の承認・保険適用状況を専門施設で確認する

薬剤の承認・保険適用は国と時期で異なる。だけに偏らず、支持療法を同時に開始する。

呼吸・栄養・意思伝達

  • 座位・臥位のを反復評価する。
  • は通常、などを用いる。のみを治療するCPAPをALSの低換気に対する標準としない。
  • 咳介助、、分泌物管理を行う。
  • 体重減少と嚥下安全性を監視し、誤嚥と呼吸機能を踏まえてを適切な時期に相談する。
  • 装置など手段を早期に導入する。

⚠️ 呼吸不全は最も多い死因である。の数値のみに依存せず、夜間症状・咳嗽力・分泌物管理を含めて反復評価する。

多職種ケアと予後

理学・は過用を避けながら可動域、移動、安全を支える。、疼痛、うつ・不安を個別に治療する。侵襲的換気、蘇生、栄養、療養場所についての本人の価値観を診断早期から継続的に確認し、を診断時から支持療法として併用する。

生存期間には大きながあり、「診断後3〜5年」を個々の患者の期限として提示しない。球・呼吸発症、進行速度、、年齢などが予後に影響する。

まとめ

  • ALSは進行性のUMN・LMN障害で、感覚・眼球運動・は比較的保たれる。診断は臨床進展パターンとから行う()。
  • 家族歴の有無にかかわらず、遺伝学的検査とを検討する。
  • SOD1変異例に対するを適応に応じて用いるが、承認状況は国により異なる。
  • 呼吸はCPAPではなくを中心に評価し、栄養、意思伝達手段、を診断早期から並行する。