脳神経内科学

脳神経内科学 · G1-05

上位・下位運動ニューロン障害の症候

G1-05: Symptoms of upper and lower motor neuron damage

前提:正常
運動系(総論)皮質脊髄路(錐体路)脊髄の運動機能。脊髄反射。脊髄離断と脊髄ショック。
疾患
Kennedy病ポリオ後症候群筋萎縮性側索硬化症良性線維束攣縮症候群頸椎症性筋萎縮症
症状
Babinski徴候筋線維束攣縮麻痺
検査値
AR遺伝子CAGリピート検査

🧠 全体像:運動障害は、皮質からまでのなら痙性・、から筋までのなら弛緩・・として現れる。

用語と経路

用語 意味
/ それぞれ筋運動の部分的低下/完全消失
速くするほど抵抗が増すの
でみる、方向・速度に依存しにくい抵抗。と区別する
弛緩 により筋が軟らかく力が入らない状態
障害されたのによる、肉眼で見えるのぴくつき
個々の筋線維ので肉眼では見えず、(EMG)で検出する
flowchart TD
 A["大脳皮質・脳幹のUMN"] --> B["皮質脊髄路/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='corticobulbar tract'>皮質延髄路</span>"]
 B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ventral horn'>脊髄前角</span>・脳神経<span class='jp-term jp-term-diagram' title='motor nuclei'>運動核</span>のLMN"]
 C --> D["末梢神経・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neuromuscular junction (NMJ)'>神経筋接合部</span>"]
 D --> E["骨格筋"]
 B --> F["UMN障害:痙性・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperreflexia'>反射亢進</span>"]
 C --> G["LMN障害:弛緩・萎縮・反射低下"]

UMN障害

UMNは大脳皮質または脳幹からLMNへ指令を送る。皮質脊髄路・のどこでも病変となりうる。脳幹より上では対側、脊髄内では原則として病変と同側に筋力低下が出る。

所見 理由・診察上の表現
単一筋より筋群に目立つ。上肢屈筋群でが目立つことが多い
最初は強い抵抗、途中で急に抵抗が抜ける。を速くするほど抵抗が増す
・ が失われ、・・が過大になる。は速い律動的収縮の連続
陽性 足底外側を刺激するとがし、他趾が扇状に開く
pronator drift 両上肢を前方挙上し手掌を上へ向けると、がし下垂する
通常は目立たず、あっても性で軽い

⚠️ は臨床的に重視されるが、単独での間は高くない。 既知の片側UMN脱力例を含む10例を10名が診察した検証研究では、のはκ=0.30(fair)、既知の脱力とのは56%にとどまり、タッピング速度の低下(κ=0.73、85%)の方が優れていた1。1所見だけで判断せず、他のUMN徴候と合わせて評価する。

💡 急性期のUMN障害は痙性ではなく弛緩性を呈しうる。 ・の直後にはが消失・減弱するの時期があり、・を呈する。反射は数週間〜数か月かけて回復し、最終的に痙性・というUMN障害の典型像へ移行する2。「弛緩性=LMN障害」と即断せず、発症からのを確認する。

主な原因:脳卒中、、、、。

LMN障害

LMNはと脳幹のにあり、からまでの障害が対象である。

所見 理由・診察上の表現
弛緩性 と脱力が同時にあり、がだらりと下がる
残存LMNのによる不随意な筋のぴくつき
高度・早期の で筋線維への入力が失われるため、UMN障害より速く強い
/消失 が障害される
陰性 趾はまたは足底屈曲する生理的反応

主な原因:などの末梢神経障害、Guillain–Barré症候群、ポリオ、等の、末梢神経外傷、ALS。

一目で比較する

所見 UMN障害 LMN障害
麻痺 弛緩性
筋緊張 増加() 低下(弛緩)
腱反射 亢進 低下・消失
軽い性 強い性
通常なし あり
陽性 陰性
ありうる なし

まとめ

  • UMNは「痙性・・Babinski」、LMNは「弛緩・萎縮・・反射低下」で覚える。
  • ALSではUMNとLMNの徴候が同一患者に併存しうる。

出典

  1. 1.Should the Babinski sign be part of the routine neurologic examination?(Neurology・2005)Babinski徴候の医師間信頼性を検証した研究で、既知の片側上位運動ニューロン脱力例を含む10例の足底を医師10名(神経内科医5名・非専門医5名)が診察したところ、Babinski徴候の評価者間一致はκ=0.30(fair)、既知の脱力所見との一致率は56%にとどまった。対照的に足趾タッピング速度の低下という所見はκ=0.73(substantial)、一致率85%と優れていた閲覧 2026-08-27
  2. 2.Spinal shock revisited: a four-phase model(Spinal Cord・2004)脊髄損傷・脊髄離断の急性期には脊髄反射が消失・減弱する脊髄ショックを呈し、時間経過とともに反射亢進・痙性へ移行する。この経過を4つの相に整理した総説モデル閲覧 2026-08-27