脳神経内科学

脳神経内科学 · G1-06

失語症の型と局在

G1-06: Types and localizations of aphasias

前提:正常
大脳皮質の微細構造と皮質野中枢神経・神経解剖:大脳
疾患
Landau-Kleffner症候群
症状
失語聴覚性失認

🧠 全体像:は言語そのものの産生・理解・反復・読み書きの障害であり、や意識障害とは区別する。診察は「、理解、」の3軸で行うと、病変部位を素早く絞り込める。

言語ネットワークと診察

多くの右利き者と一部の左利き者では、言語は左半球である。があるため、画像だけで利き半球を断定しない。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dominant hemisphere'>優位半球</span>の後<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inferior frontal gyrus'>下前頭回</span><br>Broca領域:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='speech (utterance/production)'>発話</span>の計画・産生"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arcuate fasciculus'>弓状束</span><br>反復・音韻情報の連絡"]
    B --> C["後上側頭領域<br>Wernicke領域:言語理解"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='angular gyrus'>角回</span>・周辺<span class='jp-term jp-term-diagram' title='parietal lobe'>頭頂葉</span><br>読み書き・語の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='retrieval'>想起</span>"]
診察項目 具体例 評価する機能
病歴を話してもらう 、、、内容
聴覚的理解 「目を閉じて」「右手を上げて」 単語・命令の理解
短文から複雑な文へ ・言語ネットワークの連結
呼称 時計、ペンなどを示す
読み書き 指示文を読ませ、書かせる 視覚性言語機能

💡 意識、注意、聴力、視力、口腔運動、・を同時に確認する。が不明瞭でも言語理解・が保たれれば、でなくの可能性がある。

💡 上の図式(Wernicke-Lichtheim型モデル)は局在の出発点として今も有用だが、現在ではより精緻なモデルに更新されつつある。 その後の研究はこの古典モデルのを踏まえたうえで、実証的な弱点を克服するdual-stream(背側・腹側二経路)モデルへ発展させている。古典分類自体を置き換えるものではなく、局在をより正確に説明する枠組みが加わったと理解する1。

型を分ける比較表

型 理解 典型的局在・特徴
比較的保たれる 障害 後。・、右を伴いやすい
障害 障害 後上側頭領域。・、内容に乏しい、低下
〜ほぼ 障害 障害 の広範囲病変、しばしば大きな梗塞
比較的保たれる 著明に障害 または左頭頂・島周辺。と自己修正
保たれる 保たれる 困難、・間が多い。局在は一様でない
保たれる 保たれる Broca領域の前上方・前方境界域
障害 保たれる Wernicke領域周辺の後方境界域
混合型超皮質 障害 保たれる 前・中・の境界域。を示しうる

代表的な失語症

Broca失語

病変、特に上行枝の虚血で生じる。は遅くで短く、文法機能語が抜けやすい。一方、比較的良好な理解とが残るため、患者は強いフラストレーションを示しうる。

Wernicke失語

後方の病変で起こる。の速さやは保たれても意味内容に乏しく、語性・やを含む。理解とが障害され、を欠くことがある。

伝導失語と健忘失語

ではと理解が比較的保たれるのに、だけが不釣り合いに難しい。古典的にはので説明されてきたが、再構成法を用いた群研究とfMRI研究は左planum temporale後部(area Spt)を含む左の関与を示しており、単独モデルでは説明しきれないとされる2。は呼称障害が中心で、曖昧な表現やで補おうとする。

超皮質性失語

の共通点はが保たれることである。言語中枢そのものより、その周囲を隔離する病変を考える。運動型は低下、感覚型は理解障害、混合型は両者を併せ持つ。

症候から型を絞る

flowchart TD
 A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='aphasia'>失語</span>を疑う"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spontaneous speech'>自発話</span>は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fluent'>流暢</span>か"]
 B --> C["理解は保たれるか"]
 C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='repetition (repeat back)'>復唱</span>は保たれるか"]
 D --> E["呼称・読み・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='writing (written language)'>書字</span>を確認"]
 E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dominant hemisphere'>優位半球</span>の局在と病因を画像と統合"]
  • (運動性・):左のBroca領域、しばしば枝梗塞で生じる。は遅くで、短いになる。理解は比較的保たれ、右を伴いうる。
  • (・受容性):左後方の病変で、だが意味をなさない・を伴う。も同様に意味を失い、低下を伴うことがある。
  • :Broca・Wernicke領域を含む広い左病変で、、理解、、読み書きが重度に障害される。
  • :ので、と理解がよいのにが悪い。を自ら修正しようとすることがある。
  • :を含む左頭頂・側頭領域などで、障害によるが目立つが、・理解・は保たれる。
  • 超運動/感覚:前者はBroca前上方の病変でBroca様だがが残り、後者はなどでWernicke様だがが残る。混合は病変で・理解不良だがが保たれる。

まとめ

  • では、理解、、呼称、読み書きを系統的に評価する。
  • 「・理解良好・不良」は、「・理解不良・不良」はの基本形である。
  • が保たれるはを、だけが強く障害される場合はを考える。

出典

  1. 1.The dual stream model of speech and language processing(Handbook of Clinical Neurology・2022)古典的なWernicke-Lichtheim-Geschwindモデルはその限られた対応範囲にもかかわらず神経学の言語モデルとして使われ続けてきたが、その後の研究がこの古典モデルの基本構造を更新し、実証的な弱点を克服するdual-stream(背側・腹側二経路)モデルへ発展させたことを概説する総説閲覧 2026-08-27
  2. 2.Conduction aphasia, sensory-motor integration, and phonological short-term memory - an aggregate analysis of lesion and fMRI data(Brain and Language・2011)伝導失語は古典的に弓状束などの白質路の障害で説明されてきたが、病巣再構成法を用いた群研究(14例)では左側頭頭頂接合部が関与し、健常者105例のfMRI音韻性ワーキングメモリ課題では左planum temporale後部のarea Sptが同定され、伝導失語例の病巣重複域はこのarea Sptと一致した閲覧 2026-08-27