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Disease Atlas · 感染症 · 疾患

ポリオ

Poliomyelitis

別名
急性灰白髄炎Infantile paralysis
臓器系
感染症神経
科目
Medical Microbiology
トピック
微生物学 3/29:ピコルナウイルス:ポリオウイルス
鑑別疾患
ギラン・バレー症候群横断性脊髄炎
原因微生物
Enterovirus A, B, C, D
症状
悪心単麻痺Trendelenburg徴候咽頭痛球麻痺筋力低下倦怠感項部硬直弛緩性麻痺頭痛背部痛発熱便秘麻痺嘔吐
検査値
抗体価

🧠 全体像:ポリオは「感染する小さなウイルスが、腸管から血流を経ての運動ニューロンだけを選んで壊す」という一本の経路で理解する。臨床像の95%以上は無症候〜軽症で、有名なを来すはむしろ例外(0.1〜0.5%)である。ワクチンでに近づいた疾患だが、の常在地域や、株が病原性を取り戻すによる的な流行が現在も報告されており、「済みの過去の病気」ではない。

病原体と発症機序

に属するエンベロープのないssRNAウイルス(血清型1・2・3型)で、酸に安定なため胃酸を通過でき、汚染された食物・水を介した感染で伝播する。

  1. 腸管リンパ組織での増殖:回腸のを含む腸管リンパ組織・扁桃で複製する(約2〜3週間)
  2. ウイルス血症:リンパ組織から血流に乗り、・脳幹へ拡散する
  3. 運動ニューロンでの複製:運動ニューロンに感染してを起こし、麻痺につながる
flowchart TD
  A["汚染された食物・水を経口摂取"] --> B["咽頭・腸管リンパ組織で増殖<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Peyer&#39;s patch'>パイエル板</span>、2-3週)"]
  B --> C["ウイルス血症"]
  C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ventral horn'>脊髄前角</span>・脳幹へ到達"]
  D --> E["運動ニューロンに感染・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cytolysis'>細胞溶解</span>"]
  E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute flaccid paralysis'>急性弛緩性麻痺</span>(下肢に多い)"]
  C -->|"中枢神経到達せず"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='incomplete form'>不全型</span>:上気道炎様症状"]

臨床像

3つの血清型すべてが同じ疾患「ポリオ」を起こす。転帰は感染ごとに以下の4パターンに分かれる。

パターン 頻度 症状
約72% 症状なし
約24% 上気道炎様の・発熱、消化器症状(悪心・嘔吐・便秘)
約1〜5% 中枢神経まで進むが麻痺は起こさない。・筋肉痛・頭痛
(主要疾患) 約0.1〜0.5% 最重症型。非対称性の(下肢に多い)。感覚は保たれ、が消失する

⚠️ は病変の高さによって重症度が変わる。 に分類され、・嚥下に関わるが障害されるため最重症——・誤嚥により死に至りうる。

:急性感染から回復して15〜30年後に、既に障害されていた運動ニューロン領域を中心として筋力低下・・筋肉痛・する遅発性ので、新たなウイルス感染のではない。

診断

  • 便検体・咽頭・(まれに)髄液からのウイルス分離・RT-PCR、および急性期・によるの上昇(血清学的診断)で確認する。ウイルスは髄液中には検出されないことが多い点に注意する。
  • の髄液所見は、と異なり糖正常・蛋白軽度上昇という無菌性(ウイルス性)髄膜炎に典型的なパターンを示す。
  • を呈する小児では、(AFM、D68関連)など他のの原因を鑑別に含める。
  • 、あるいはAFPを疑う症例は、事業()の観点から当局へ届け出る。

治療

  • 支持療法のみ——特異的な抗ウイルス治療はない。
  • があれば(陰圧式の「」は過去の技術だが、現代ではで対応する)。
  • 急性期を脱した後は、によるリハビリテーションが機能予後を左右する。

予防

2種類のワクチンが存在し、地域の疫学状況により使い分けられている。

ワクチン 種類 特徴
IPV、Salkワクチン) 不活化3価ワクチン 筋注 IgGのみ産生(消化管免疫は誘導しない)。感染・排出リスクがなく、米国を含む先進国のはIPVのみに統一されている
OPV(経口生ポリオワクチン、Sabinワクチン) 経口 腸管免疫(IgA+IgG)を誘導し、感染の連鎖を断つ効果が高いため事業(特に)で重視される。一方で株が長期の腸管・変異を経て病原性・伝播性を取り戻すを生じうる

⚠️ OPV由来のとVDPVのリスクから、米国・欧州など多くの先進国はすでにOPVを使用せずIPVのみに切り替えている。 一方、2型に特異的なcVDPV流行対策として、より遺伝的安定性を高めた新型2型(nOPV2)がWHOのリストで承認され、2021年の導入以降20億回分以上がで接種されている1

は2型(1999年以降未検出、2015年認定)・3型(2012年11月のナイジェリアの症例を最後に未検出、2019年認定)が認定済みで、1型はアフガニスタン・パキスタンのみで常在流行が続く。事業の最大の課題は、の残存流行そのものよりも、免疫の隙間(未接種地域)で生じるcVDPVによる新規発生に移りつつある1

まとめ

  • はエンベロープのないssRNA・で、感染により腸管リンパ組織で増殖後、ウイルス血症を経て・脳幹の運動ニューロンに感染しを起こす。
  • 臨床像は無症候性(約72%)が大半で、(約0.1〜0.5%)はまれだが最重症——で致死的。感染から15〜30年後にとして筋力低下がしうる。
  • 診断は便・咽頭検体のウイルス分離・RT-PCRと上昇で行い、非の髄液は「糖正常・蛋白軽度上昇」というのパターンを示す。
  • 治療は支持療法のみで、特異的な抗ウイルス薬はない。
  • 予防はIPV(不活化・筋注・IgGのみ、先進国の標準)とOPV(生ワクチン・経口・腸管免疫が強いが稀にVDPVを生じる)の使い分けが軸で、事業の課題はの残存流行からVDPV対策(nOPV2導入を含む)へ移りつつある。

出典

  1. 1.Statement of the Forty-fourth Meeting of the Polio IHR Emergency Committee(World Health Organization・2026)野生株ポリオウイルスは1型のみアフガニスタン・パキスタンに常在流行し、2型(1999年以降未検出、2015年根絶認定)・3型(2012年11月のナイジェリアの症例が最後、2019年根絶認定)は根絶認定済みであること、循環型ワクチン由来ポリオウイルス(cVDPV)の流行が続き2021年以降nOPV2が導入されていることを確認した。閲覧 2026-08-02