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Lab values · Published

経横隔膜圧

Transdiaphragmatic pressure

別名
Pdi経横隔膜圧測定
臓器系
呼吸器神経
科目
PulmonologyNeurology
トピック
呼吸器内科 04:呼吸機能検査:静的・動的肺気量神経内科 G3-22:筋萎縮性側索硬化症
関連疾患
筋萎縮性側索硬化症

🧠 全体像MIP・MEPSNIPは口腔内圧・という「出口」で全体の合力を測る。これに対して(Pdi)は、鼻から胃と食道下部へ留置した2本のを同時に記録し、その差──横隔膜という単一の筋が実際に発生させている圧そのもの──を取り出す検査である。他のどのも、横隔膜だけの寄与をここまで分離して定量することはできない。

何を測っているか

は、を代表する胃内圧(Pga)からを代表する(Pes)を差し引いた値(Pdi = Pga − Pes)であり、・胃内圧の差分としてそのものを定量する1。横隔膜が収縮すると腹腔内容が圧迫されてPgaは陽性側へ、してPesはより陰性側へ動くため、両者の差はそのまま横隔膜が生み出した圧を表す。

MIP・SNIPが口や鼻という「出口」の圧を測る以上、胸郭を動かすや胸郭・肺自体の弾性の寄与も一緒に含んでしまう。Pdiだけが、横隔膜という単一の筋の収縮力を他のから切り離して評価できる。

基準値と単位

単位はcmH2O。ただし他ののような年齢・性別ごとの単純なは存在しない。測定法によって「何をもって異常とするか」の考え方そのものが変わるためである。

な測定(鼻すすり時Pdi・時Pdi)は患者の努力に強く依存し値のばらつきが大きいため、単一のでの判定に向かない1。一方、による非な測定(時Pdi)は努力に依存しないぶん再現性が高く、時Pdiが15 cmH2Oを下回る場合はを示すとされる1

手技と判定基準

測定法 手技 特徴
測定(鼻すすり時Pdi・時Pdi) 鼻すすり動作、またはに対する努力をさせながらPga・Pesを同時記録する 患者の協力と最大努力を要し、値のばらつきが大きい1
測定(時Pdi) 頸部で両側または電気刺激し、不随意に収縮した横隔膜のPga・Pesを記録する 患者の努力に依存しないため、協力不良例や努力不足が疑われる例でも解釈できる

時Pdiが呼吸筋力評価の基準検査とされる理由はここにある。 刺激に反応して生じる陰圧を測る方法が、横隔膜の機械的機能を定量する最も確実な手段とされる1。刺激そのものの方式(の使い分け、それぞれの利点・欠点)はと共通するため、そちらを参照。

⚠️ 測定上の注意

  • バルーンの位置ずれ・は値そのものを狂わせる。 充填量が不足すれば圧を過小評価し、過剰なら過大評価する。体位やが大きく変わる場面(人工呼吸中のPEEP変更など)では、そのつど適正な充填量を確認し直す必要がある2
  • 心拍による が心臓の直下を通る位置にあると心拍動が波形に混入する。カテーテルをやや引き戻しへ位置を調整すると軽減できる2
  • 食道のも圧記録を乱しうる。 嚥下や自発的な食道収縮が一過性の圧変化として記録に混入することがある。
  • 腹壁筋の共収縮はPdiを過大評価させる。 の吸気では腹筋が同時に収縮してPgaを押し上げることがあり、横隔膜自体の収縮力を実際より高く見積もってしまう。
  • 鼻からの挿入は不快感が強い。 2本を同時にするため、患者の拒否やが起こりやすい。
  • 実施できる施設が限られる。 専門的な技術と機材、相応の時間を要するため日常臨床には向かず、多くはに習熟した施設に限られる1
  • 人工呼吸中の測定は換気設定の影響を受ける。 PEEPや体位、が変わるとバルーンの至適充填量も変わるため、設定変更後はをやり直す必要がある2

経時変化とモニタリング

Pdi、とりわけtwitch Pdiは侵襲的で手技の負荷が大きく、経過を追って繰り返す検査ではない。診断確定やMIP・MEPなど非侵襲的検査だけでは判断がつかない場面で一度だけ測定し、確定診断・重症度の裏づけに使う位置づけが基本になる。進行性の神経筋疾患を繰り返し経過観察する場合は、MIP・MEPなど非侵襲的な指標を用いる。

位置づけ/次に進むべき検査

呼吸筋力の評価は、侵襲度の低い検査から始めて必要に応じて踏み込んでいく。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vital capacity'>肺活量</span>(臥位・立位差)"] --> B["MIP・MEP"]
    B --> C["SNIP"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diaphragm ultrasonography'>横隔膜超音波</span><br>(動き・厚みを直接見る)"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='phrenic nerve conduction study'>横隔神経伝導検査</span><br>(伝導路を評価)"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Pdi'>経横隔膜圧</span><br>(発生する力そのものを評価)"]

とPdiは競合ではなく補完関係にある。が明らかにするのは「信号が神経を伝わっているか」であり、Pdiが明らかにするのは「その信号を受けて筋が実際にどれだけの力を出せるか」である。神経は保たれているのに力が出なければ横隔膜自体の筋障害やを疑い、そのものが障害されていれば力が出ない理由の説明がつく。

臨床で遭遇する場面は、など神経筋疾患での呼吸筋力の定量評価、の重症度判定、の可否判定、ICUでの呼吸筋機能評価など幅広い。

まとめ

  • から(Pes)を差し引いた値で、横隔膜という単一の筋が生み出す圧そのものを表す。MIP・SNIPが全体の合力を測るのに対し、Pdiだけが横隔膜の寄与を分離して定量できる。
  • 測定(鼻すすり時Pdi・時Pdi)はが高くばらつきが大きい。による非測定(時Pdi)は努力に依存せず、15 cmH2Oを下回るとを示すとされる。
  • 時Pdiが呼吸筋力評価の基準検査とされるのは、協力不良例・努力不足が疑われる例でも解釈できるためである。
  • バルーンの位置ずれ・、心拍・食道蠕動による、腹壁筋の共収縮によるPdiの過大評価、鼻からの挿入に伴う、実施できる施設の少なさ、人工呼吸中は換気設定の影響を受けることが測定上の注意点である。
  • 非侵襲的検査から段階的に踏み込む評価の最終段階に位置し、とは「神経か筋か」を補完し合う関係にある。

出典

  1. 1.Diaphragm Dysfunction: Diagnostic Approaches and Management Strategies(Journal of Clinical Medicine (Dubé BP, Dres M)・2016)経横隔膜圧(twitch Pdi)が食道内圧と胃内圧の差分として定義され横隔膜収縮そのものを定量する指標であること、sniff動作や閉鎖気道に対する最大吸気努力による随意的な測定は患者の努力に強く依存しばらつきを生みやすいこと、横隔神経刺激に反応して生じる陰圧(twitch Pdi)の測定が横隔膜の機械的機能を定量する最も確実な方法とされていること、twitch Pdiが15 cmH2Oを下回る場合に横隔膜機能不全を示すとされること、横隔神経刺激技術は相応の熟練・専用機材・時間を要し日常臨床には向かないことを確認した。閲覧 2026-08-04
  2. 2.Technical aspects of bedside respiratory monitoring of transpulmonary pressure(Annals of Translational Medicine (Mojoli F, Torriglia F, Orlando A, et al.)・2018)食道バルーンカテーテルの充填量が不足すると圧を過小評価し、過充填では弾性反跳圧が加わって過大評価すること、適正な充填量は体位・PEEP設定・腹腔内圧が変化するたびに再確認すべきこと、バルーンが心臓直下の食道部分にあると心拍動によるアーチファクトが混入し、カテーテルを引き戻し中部食道へ位置調整すると軽減できることを確認した。閲覧 2026-08-04