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Disease Atlas · 神経 · 疾患

Charcot-Marie-Tooth病

Charcot-Marie-Tooth disease

別名
シャルコー・マリー・トゥース病CMT遺伝性運動感覚ニューロパチーHMSN
臓器系
神経運動器
科目
NeurologyPediatrics
トピック
神経内科 G1-36:多発ニューロパチーの症候と主な原因小児科 3-12:小児神経筋疾患
鑑別疾患
Friedreich失調症ギラン・バレー症候群メンケス病慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー
関連疾患
聴覚ニューロパチースペクトラム障害
症状
凹足末梢神経障害筋力低下腱反射消失難聴槌趾
禁忌薬
ビンクリスチン

🧠 全体像:は最も多いで、慢性・左右対称・遠位優位の運動である1。臨床の骨格は二段構えで掴む——まずが落ちているか(CMT1)/保たれているか(CMT2)をで決め、次に遺伝子を決める。の入口は決まっていて、全でまず PMP22 の重複/欠失を調べる(これだけで全CMTの最大50%が付く)1。そして治療は対症的である以上、臨床でいちばん効く介入は「悪くする薬を避けること」——とくにである。

分類:まず伝導速度で二分する

上肢のによる従来の分類は次のとおりである1。

型 病理
CMT1() 35 m/s未満 髄鞘の異常
優性(DI-CMT) 35〜45 m/s 脱髄との中間
CMT2() 45 m/s超 軸索の変性

正常値は40〜45 m/s超である1。

では髄鞘の脱落とが繰り返され、で玉ねぎの断面のようなの肥厚がみられる。ではは保たれ、の振幅が落ちる——ここがでの分かれ目になる。

💡 「38 m/s」という数字の出どころ。 このはHarding とThomasが1980年に228例を検討し、のが38 m/s未満か以上かでI型とII型が遺伝的に区別できることを示したことに始まる2。現在のGeneReviewsはを置く3区分(35未満/35〜45/45超)を採る1。数字そのものより「脱髄なら遅くなり、なら速度は保たれて振幅が落ちる」という原理を握るほうが役に立つ。

⭐ 同じ検討で、I型は第1十年に発症して手の筋力低下・振戦・失調・神経の肥厚を伴うのに対し、II型は第2十年以降の発症が典型であった2。

遺伝子と遺伝形式

・・X連鎖のいずれの形式でも遺伝しうる1。

遺伝子 位置づけ
PMP22 17p11.2の1.5 Mb重複が全CMTの最大50%を占める。CMT1Aの原因1
MPZ CMT1Bなど1
GJB1() X連鎖。ただし女性も男性と同程度に重症化しうるため、家族歴がに見えることがある1
MFN2 CMT2A。を伴いうる1
GDAP1・HINT1・SH3TC2・SORD 上記と並んで頻度の高い8遺伝子に含まれる1

⚠️ X連鎖でも女性が軽症とは限らない。 GJB1 型で「母も同程度に症状がある」ことを理由にX連鎖を否定しない1。

臨床像

10代から30代までに始まる、左右対称・緩徐進行・遠位優位の運動である1。は通常5〜25歳に症状が現れる1。

flowchart TD
    A["遠位の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='motor neuron'>運動神経</span>が長い順に侵される"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ankle dorsiflexion'>足関節背屈</span>力の低下"]
    A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intrinsic foot muscles'>足内在筋</span>の筋力低下と萎縮"]
    B --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='foot drop'>下垂足</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='steppage gait'>鶏歩</span>"]
    C --> E["筋のつり合いが崩れて足の形が変わる"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pes cavus (high-arched foot)'>凹足</span>(高いアーチ)"]
    E --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hammer toe'>槌趾</span>"]
    A --> H["下腿遠位1/3の萎縮に対し大腿は保たれる"]
    H --> I["逆さのシャンパンボトルのような下肢の輪郭"]
    A --> J["腱反射の低下・消失"]
    A --> K["軽度〜中等度の遠位感覚障害(振動覚から)"]
  • 遠位筋の筋力低下と萎縮、力の低下、、が代表的所見である1。
  • 感覚障害は軽度〜中等度の遠位優位で、振動覚の低下として最も捉えやすい1。
  • 感音難聴が生じうる1。
  • 足部ではを伴い、による反復性のやを合併しうる3。

⭐ 「両側対称性の」は入口の所見である。 症候性の患者の約2/3で背景にがあり、そのなかでが最多である3。整形外科の変形として処理せず、家族歴・腱反射・振動覚を取る。

診断

flowchart TD
    A["遠位優位・緩徐進行の運動<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sensory neuropathy'>感覚性ニューロパチー</span>"] --> B["家族歴の聴取と診察<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pes cavus (high-arched foot)'>凹足</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hammer toe'>槌趾</span>・腱反射・振動覚)"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nerve conduction study (NCS)'>神経伝導検査</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='demyelinating type'>脱髄型</span>か<span class='jp-term jp-term-diagram' title='axonal type'>軸索型</span>かを決める"]
    C --> D["全<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proband'>発端者</span>でまず PMP22 の重複/欠失解析"]
    D -->|"陽性"| E["CMT1A として確定"]
    D -->|"陰性"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='multigene panel'>多遺伝子パネル</span>"]
    F -->|"不明のまま"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='comprehensive genomic testing'>包括的ゲノム解析</span>"]

PMP22 の重複/欠失解析はすべてのに対する最初の検査として推奨される1。これが陰性なら頻度の高い遺伝子を含む、それでも不明ならへ進む1。

治療と管理

治療は対症的で、神経内科・リハビリテーション科・整形外科・/による多職種管理となる1。

課題 対応
・歩行 、を支える靴1
の短縮 毎日のストレッチ1
重度の変形 手術による矯正1。から・・まで幅がある3
の痛み 、1
、カルバマゼピン、1

⚠️ ビンクリスチンを避ける

⚠️⚠️ を含む癌化学療法は末梢神経にとくに障害的で、を著しく悪化させうる1。既に脆弱な末梢神経に、が神経毒性である薬を重ねることになるためで、CMT1A患者に重度の神経障害を来した報告がGeneReviewsに引用されている1。

💡 これは「稀な遺伝病の話」ではなく、腫瘍診療の実務問題である。 小児のやリンパ腫のプロトコルはを含む。化学療法の前に、・・・家族歴という所見が拾えるかどうかで結果が変わる。CMT患者に毒性を持ちうる薬剤は、明らかな高リスクからできるリスクまでの幅を持つ1。

鑑別

疾患 決め手
数日〜数週の急性上行性経過。家族歴なし、足の変形なし、髄液の
経過が緩徐でも性・非対称で、免疫療法に反応する。のような長年の変形を伴わない
を共有するが、失調・・・糖尿病を伴う。性の失調が前面に出る
糖尿病性など後天性の 全体として最も多い原因。家族歴・足の変形・小児期からの経過が無い
ATP7A 関連疾患のうち成人発症のはCMTに似るが、古典的の・・を欠く

まとめ

  • 最も多い。左右対称・緩徐進行・遠位優位の運動。
  • 上肢のでCMT1(、35 m/s未満)/(35〜45)/CMT2(、45 m/s超)に分ける。歴史的にはHarding とThomasの38 m/sが起点。
  • PMP22 の1.5 Mb重複が全CMTの最大50%。全でまずこれを調べる。
  • 遠位筋の萎縮と筋力低下、力低下、、・、逆さのシャンパンボトルのような下肢。感音難聴もありうる。
  • 治療は対症的(・ストレッチ・・重度変形への手術)。
  • ⚠️ は末梢神経をとくに強く傷め、CMTを著しく悪化させる。 化学療法の前にCMTを拾えるかが分かれ目になる。

出典

  1. 1.Charcot-Marie-Tooth Hereditary Neuropathy Overview(GeneReviews(NCBI Bookshelf)・2025)全文を閲覧した(2025年11月20日最終改訂、Bird TD)。Charcot-Marie-Tooth病が慢性の運動感覚性多発ニューロパチーを特徴とする一群で遺伝性運動感覚ニューロパチー(HMSN)とも呼ばれること、最も多い遺伝性ニューロパチーであること(明示的な有病率の数値は本章に無い)、常染色体顕性・常染色体潜性・X連鎖のいずれの形式でも遺伝しうること、神経伝導速度による従来の分類が脱髄型(CMT1、NCV <35 m/s)・軸索型(CMT2、NCV >45 m/s)・優性中間型(DI-CMT、NCV 35〜45 m/s)であり正常は40〜45 m/s超であること、`PMP22` 重複(`PMP22` を含む17p11.2の1.5 Mb重複)が全CMTの最大50%を占めること、すべての発端者でまず `PMP22` の重複/欠失解析を行うことが推奨されること、次いで多遺伝子パネル・包括的ゲノム解析へ進むこと、原因遺伝子として頻度の高い8つが `GDAP1`・`GJB1`・`HINT1`・`MFN2`・`MPZ`・`PMP22`・`SH3TC2`・`SORD` であること、`GJB1` がX連鎖だが女性も男性と同程度に重症化しうるため家族歴が常染色体顕性に見えうること、`MFN2` がCMT2Aに関連し視神経萎縮を伴いうること、臨床像が10代から30代までに始まる左右対称・緩徐進行の四肢遠位優位の運動ニューロパチーであり遠位筋の筋力低下と萎縮・足関節背屈力低下・腱反射低下・凹足を示すこと、軽度〜中等度の遠位感覚障害を伴い振動覚の低下として捉えやすいこと、感音難聴が生じうること、脱髄型は通常5〜25歳に症状が現れること、治療が対症的で神経内科・リハビリテーション科・整形外科・理学/作業療法士による多職種管理となること、足関節を支える靴や下垂足に対する短下肢装具・アキレス腱短縮を防ぐ毎日の踵腱ストレッチ・重度の凹足に対する手術が用いられること、筋骨格系の痛みにアセトアミノフェンや非ステロイド性抗炎症薬、神経障害性疼痛に三環系抗うつ薬・カルバマゼピン・ガバペンチンが用いられること、ビンクリスチンを含む癌化学療法が末梢神経にとくに障害的でCMTを著しく悪化させうること("Chemotherapy for cancer that includes vincristine may be especially damaging to peripheral nerves and severely worsen CMT.")、CMT患者に毒性を持ちうる薬剤が高リスクから無視できるリスクまでの幅を持つことを確認した閲覧 2026-09-02
  2. 2.The clinical features of hereditary motor and sensory neuropathy types I and II(Brain・1980)抄録のみを閲覧しており全文は未取得。遺伝性運動感覚ニューロパチー228例(発端者120例・罹患血縁者108例)が、正中神経の運動神経伝導速度が38 m/s未満か以上かによって遺伝的に区別されるI型とII型に分けられたこと("These could be separated into genetically distinct type I and type II categories depending upon whether motor nerve conduction velocity in the median nerve was below or above 38 m s-1.")、I型のほうが多く大半が常染色体顕性遺伝で一部は孤発例であったこと、常染色体潜性遺伝と考えられる4家系では運動伝導速度が有意により遅かったこと、I型は第1十年に発症し手の筋力低下・振戦・失調・神経の肥厚を伴う一方、II型は第2十年以降の発症が典型であったことを確認した。閲覧 2026-09-02
  3. 3.Pes Cavus(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)症候性の凹足患者の約2/3で神経疾患(Charcot-Marie-Tooth病が最多、Friedreich失調症、脳性麻痺、脊髄係留症候群、二分脊椎)が背景にあること、槌趾・外側不安定性による反復性足関節捻挫・第5中足骨疲労骨折を合併しうること、治療が装具から腱移行術・骨切り術・関節固定術まで幅があることを確認した(Etiology節・Complications節・Treatment節)。閲覧 2026-09-02