小児科学

小児科学 · 3-12

小児神経筋疾患

Neuromuscular Disorders

前提:正常
神経筋接合部と骨格筋の生理学。伴性遺伝
疾患
Charcot-Marie-Tooth病デュシェンヌ・ベッカー型筋ジストロフィー新生児一過性重症筋無力症脊髄性筋萎縮症先天性筋無力症症候群
症状
凹足槌趾
検査値
反復神経刺激試験

🧠 全体像:神経筋疾患は、末梢神経、、筋のどこが障害されるかで整理する。治療可能な疾患が増え、と早期遺伝診断の価値が高い。

局在による分類

部位 遺伝性の例 後天性の例
() ポリオ
末梢神経
重症筋無力症
筋 Duchenne/Becker型、 ウイルス性筋炎、

脊髄性筋萎縮症

SMN1異常によるで、近位筋優位の進行性筋力低下、低緊張、、、・を示す。遺伝学的に診断し、SMN2は重症度に関連する。従来は発症年齢・到達により、乳児期発症で座位も獲得できないI型(Werdnig-Hoffmann病)から、成人発症のIV型までに分類されてきた。

治療には、アベパルボベク、があり、適応・地域承認に従い早期開始する。呼吸、嚥下・栄養、整形、リハビリを同時管理する。治療時代には旧来の「I型は2歳までに死亡」という予後説明は適切でない。

⭐ 乳児期発症(I型相当)でのが、この「2歳までに死亡」という説明を過去のものにした。 生後7か月未満で発症した乳児を対象とした第3相試験(ENDEAR試験)で、群は運動マイルストーン達成率がシャム群より高く(最終解析で51%対0%)、死亡または恒久的までのも群で有意に優れた(0.53)1。

💡 による発症前治療は、症状出現後の治療開始より効果が大きいとされる。 はの主要な遺伝学的原因であり、発症前に治療を開始できれば転帰を改善しうるための意義が大きい2。この学科があるハンガリーでは、2025年時点ではにオプトインで含まれている3。

デュシェンヌ型とベッカー型筋ジストロフィー

項目 Duchenne型 Becker型
ほぼ欠失 減少・機能低下
発症 幼児期 より遅い
特徴 、、、著増 同様だが進行緩徐
合併症 、不整脈、呼吸不全、 心筋症が目立つこともある

遺伝学的検査で確定し、ステロイド、、呼吸管理、、適応変異への分子治療を多職種で行う。

⭐ ステロイドの至適投与法がで検討された。 未治療の4〜7歳のDMD患児196例(5か国32施設)を連日・連日・隔日(10日オン/10日オフ)間欠の3群にした3年間の試験で、連日投与の2群はより・呼吸機能などので有意に優れ、連日と連日の間に有意差はなかった4。ステロイドの筋力・機能改善効果は12試験・667例のでも支持されている(0.75mg/kg/日が6か月時点の筋力・機能をより改善、は2年時点で筋力を安定化)5。

💡 薬は対応する変異を持つ患者にしか適応がない。 エクソン51スキップによりを戻すは2016年に米国のを得たが、この薬剤が適合するのはDMD変異のおよそ14%にすぎない6。

⚠️ 遺伝子治療の主要な無作為化試験は、を達成していない。 による導入()を4歳以上8歳未満の歩行可能なDMD患児125例に投与した第3相試験(EMBARK試験)では、52週時点のの変化というに有意差がなく、一部のは数値的に治療群を支持したが統計学的なは示されなかった7。💡 一方、同試験のクロスオーバー設計を用いた2年追跡では、重み付けしたとの比較で機能評価に有意な利益が報告されている8。された比較ではないため、52週のの結果と同列には扱えない。

シャルコー・マリー・トゥース病

軸索または髄鞘蛋白異常による遺伝性末梢神経障害で、・筋力低下、、、、感覚障害を示す。と遺伝学で診断し、・リハビリ・整形を行う。

flowchart TD
    A["筋力低下・低緊張"] --> B["近位/遠位・感覚・腱反射を評価"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='creatine kinase'>CK</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nerve conduction'>神経伝導</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='electromyography'>筋電図</span>"]
    C --> D["遺伝学的検査"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='disease-modifying therapy'>疾患修飾治療</span>の適格性"]
    E --> F["呼吸・心臓・嚥下・整形を継続管理"]

まとめ

  • 局在診断が検査選択を決める。
  • とDuchenne型では早期遺伝診断が治療機会に直結する。
  • 呼吸・心臓・嚥下の定期評価を評価と並行する。

出典

  1. 1.Nusinersen versus Sham Control in Infantile-Onset Spinal Muscular Atrophy(The New England Journal of Medicine・2017)乳児期発症(多くはSMA I型相当)のSMA乳児を対象とした二重盲検シャム対照第3相試験(ENDEAR試験)で、最終解析においてヌシネルセン群の運動マイルストーン達成率がシャム対照群より有意に高く(37/73例51%対0/37例0%)、死亡または恒久的補助換気までの無イベント生存もヌシネルセン群で有意に優れた(ハザード比0.53、p=0.005)ことをResults節で確認した。閲覧 2026-08-27
  2. 2.Establishment of a Pilot Newborn Screening Program for Spinal Muscular Atrophy in Saint Petersburg(International Journal of Neonatal Screening・2024)SMAが乳児死亡の主要な遺伝学的原因であり、発症前(新生児スクリーニングによる)治療開始が症状出現後の治療開始より乳児の運動機能転帰を改善しうるため新生児スクリーニングの意義が大きいことを確認した。閲覧 2026-08-27
  3. 3.Celebrating 50 Years of Nationwide Newborn Screening in Hungary—Review, Current Situation, and Future Directions(International Journal of Neonatal Screening・2025)ハンガリーの新生児スクリーニング制度が2025年時点で27疾患(オプトアウト)に加え脊髄性筋萎縮症(オプトイン)を対象としていることを確認した。閲覧 2026-08-27
  4. 4.Effect of Different Corticosteroid Dosing Regimens on Clinical Outcomes in Boys With Duchenne Muscular Dystrophy: A Randomized Clinical Trial(JAMA・2022)未治療の4〜7歳DMD患児196例(5か国32施設)を連日プレドニゾロン・連日デフラザコート・隔日(10日オン/10日オフ)間欠プレドニゾロンの3群に無作為化し3年間追跡した二重盲検試験で、連日プレドニゾロン・連日デフラザコートはいずれも間欠プレドニゾロンより主要評価項目(起立速度・努力肺活量・治療満足度の複合)で有意に優れ、連日プレドニゾロンと連日デフラザコートの間に有意差はなかったことをResults節で確認した。閲覧 2026-08-27
  5. 5.Corticosteroids for the treatment of Duchenne muscular dystrophy(Cochrane Database of Systematic Reviews・2016)12試験・667例を対象としたコクランレビューで、プレドニゾン0.75mg/kg/日はDMDの6か月時点の筋力・機能をプラセボより改善し(中等度の質のエビデンス)、デフラゾコートは2年時点で筋力を安定化させたことを確認した。閲覧 2026-08-27
  6. 6.Eteplirsen in the treatment of Duchenne muscular dystrophy(Drug Design, Development and Therapy・2017)エクソン51スキップにより読み枠を戻しジストロフィン産生を促すエテプリルセンが2016年9月に米国FDAの迅速承認を得たこと、この薬剤がDMD変異のおよそ14%にしか適合しないことを確認した。閲覧 2026-08-27
  7. 7.AAV gene therapy for Duchenne muscular dystrophy: the EMBARK phase 3 randomized trial(Nature Medicine・2025)4歳以上8歳未満の歩行可能なDMD患児125例(デランジストロジン モキセパルボベク63例・プラセボ62例)を対象とした第3相試験(EMBARK試験)で、52週時点の主要評価項目(North Star Ambulatory Assessmentスコアのベースラインからの変化)に有意差がなく(群間差0.65、95%CI −0.45〜1.74、p=0.2441)、一部の副次評価項目(起立時間・10m歩行走行など)は数値的に治療群を支持したが統計学的な優越性は示されなかったことをResults節で確認した。閲覧 2026-08-27
  8. 8.Two-Year Outcomes Following Delandistrogene Moxeparvovec Treatment in Ambulatory Patients with Duchenne Muscular Dystrophy: Phase 3 EMBARK Trial(Neurology and Therapy・2026)EMBARK試験のクロスオーバー設計を利用した2年追跡で、第1部でデランジストロジン モキセパルボベクを投与された患児を傾向スコア重み付けした外部対照群と事前規定の解析で比較したところ、歩行能力喪失までの期間を予測する機能評価(North Star Ambulatory Assessment・立ち上がり時間・10m歩行/走行)で統計学的に有意な利益が示され、マイクロジストロフィンの発現と筋鞘への局在が64週にわたり維持されたこと。ただしこの比較は無作為化された対照群とではなく外部対照との比較である閲覧 2026-08-27