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Lab values · Published

反復神経刺激試験

Repetitive nerve stimulation

別名
RNS誘発筋電図(反復刺激)Harvey-Masland試験
臓器系
神経
科目
Medical PhysiologyNeurologyPediatrics
トピック
生理学 1.9:神経筋接合部と骨格筋の生理学神経内科 G1-33:重症筋無力症神経内科 G3-09:神経系の傍腫瘍症候群(ニューロパチー・小脳変性・ランバート・イートン症候群)小児科 3-12:小児神経筋疾患
関連疾患
ランバート・イートン筋無力症候群重症筋無力症新生児一過性重症筋無力症先天性筋無力症症候群中間症候群

🧠 全体像:(RNS)は、という一点に絞って伝達の余力()を学的に試す検査である。読み方の軸は一つ——低頻度刺激(2〜5Hz)でのはに広く共通する所見、高頻度刺激(15〜50Hz程度)または運動直後の漸増は性の病態に特異的な所見である。この対比が重症筋無力症(MG)と(LEMS)を学的に鏡合わせにする軸そのものであり、(CMS)でも病型によってどちらのパターンを示すかが変わる。⚠️ 技術的な誤りが偽陰性の主因になる——の中止不足と検査部位の低体温は、実在する異常を覆い隠す。

何を評価しているか(原理)

正常なには、1回の刺激で伝達に必要な量を大きく上回るアセチルコリン(ACh)が放出される「」がある。RNSはを経皮的に反復刺激し、の(CMAP)の振幅・面積が刺激列の中でどう変化するかを追う。

  • 低頻度刺激:刺激のたびに放出可能なAChの蓄え(即放出プール)が徐々に減る生理的な現象が起こるが、が保たれていれば伝達は破綻せずCMAPは安定する。の受容体が減少・機能低下している場合も、からのACh放出量そのものが乏しい場合も、この生理的な減少がそのまま伝達失敗として顕在化し、CMAPがする。⚠️ 低頻度それ自体は性・後性のどちらでも起こりうる非特異的所見であり(LEMS・・もこの機序でする)、鑑別には次の高頻度刺激の所見を組み合わせる必要がある。
  • 高頻度刺激・運動直後:短時間に反復する刺激は内のカルシウムを蓄積させ、AChの放出効率を一時的に高める()。のが減少している病態では、安静時のCMAPがもともと小さい代わりに、この効果がより顕著に現れてCMAPが著明に増大する。

実施法と判定基準

flowchart TD
    A["罹患が疑われる筋の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='motor neuron'>運動神経</span>を経皮的に反復刺激"] --> B["低頻度刺激(2〜5Hz)を5〜10発、<br>1分間隔で3系列反復"]
    B --> C{"第1波形に対し第4〜5波形の<br>CMAP振幅が10%以上減衰するか"}
    C -->|"あり"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tapering'>漸減</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neuromuscular junction disorder'>神経筋接合部障害</span>を示唆<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='presynaptic'>シナプス前</span>性・後性いずれでも起こりうる)"]
    C -->|"なし、または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tapering'>漸減</span>の原因を確認したい"| E["高頻度刺激(15〜30Hz、2〜3秒間)<br>または最大<span class='jp-term jp-term-diagram' title='voluntary contraction'>随意収縮</span>1分後から毎分再検査"]
    E --> F{"CMAP振幅が著明に増大するか"}
    F -->|"あり(LEMS:抗体陽性で100%超・<br>陰性でも60%以上、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='botulism'>ボツリヌス中毒</span>:30〜60%)"| G["漸増:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='presynaptic'>シナプス前</span>性の病態を示唆"]
    F -->|"なし。3〜4分後に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tapering'>漸減</span>が悪化すれば運動後<span class='jp-term jp-term-diagram' title='exhaustion'>疲弊</span>"| H["RNSだけでは<span class='jp-term jp-term-diagram' title='indeterminate'>判定不能</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='single-fiber electromyography'>単線維筋電図</span>・抗体検査へ"]
プロトコル 刺激条件 異常の判定
低頻度RNS 2〜5Hzで5〜10発、1分間隔で3系列反復 第1波形に対し第4〜5波形のCMAP振幅が10%以上減衰(U字型の)1
高頻度RNS 15〜30Hzで2〜3秒間の刺激2、または20Hz(疑いでは50Hz)で100〜200発反復1 LEMSは抗体陽性例で100%超、抗体陰性例でも60%以上(は30〜60%、多くは60%未満)1

⭐ 代表的な検査部位は、上肢では-・-小指、では-・-・-、顔面では顔面神経支配の鼻筋・・・である。、とくには最も感度が高く、の小筋群とあわせて優先的に検査する12。

低頻度刺激が正常または境界域でもMGを疑うときは、最大随意を1分間行った直後に低頻度刺激を毎分反復する。運動直後はによりが一時的に改善するが、3〜4分後にかけてがむしろ悪化する(運動後)という反応が、のが尽きた所見として診断的価値を持つ1。

疾患ごとの所見の違い

疾患 低頻度刺激 高頻度刺激/運動直後
重症筋無力症 (AChRなど) 変化なし〜軽度改善1
(VGCC) 著明な漸増(抗体陽性で100%超、陰性でも60%以上)1
(AChR欠乏型・COLQ型など大多数) ・ 変化なし3
(PREPL・SNAP25B・SYT2・UNC13A・VAMP1関連型など一部性) しうる 漸増という所見3
(放出機構の破壊) 2 漸増(30〜60%、多くは60%未満)1
(ACh分解障害による過剰持続) 2 明確な漸増所見の報告はない

⭐ CMSでは「性なら必ず高頻度で漸増する」と単純化しない。 CMSの大多数を占める性・の病型は低頻度刺激でのが特徴で、高頻度漸増という所見はごく一部の性遺伝子型に限られる3。

単線維筋電図との使い分け

(測定)はRNSより感度が高いで、全身型MGでは異常率が最大99%に達する1。一方で特異的ではなく、MG以外のやでも異常を示しうる。位置づけとしては、RNSを初期スクリーニングとして行い、RNSが正常または境界域でも臨床的な疑いが強い場合にで感度を補う、という順序が実務的である。

⚠️ 測定上の注意:偽陰性の原因

  • の中止不足。 などはを人為的に改善するため、検査前12時間は中止する必要がある12。内服を続けたまま検査すると、実在するが隠れて偽陰性になる。
  • 低体温。 筋温が低いとのが見かけ上広がり、異常所見が隠れる。検査部位の皮膚温を35℃以上に保つ12。
  • 検査する筋の選択。 罹患していない筋、または障害が軽度な近位筋以外を選ぶと偽陰性になりやすい。臨床的に弱い筋、あるいは近位筋・を優先する。
  • 固定不十分・患者のの混入によるベースライン変動も判読を妨げる。

まとめ

  • RNSはの伝達余力を試す検査で、低頻度刺激(2〜5Hz)でのはに広く共通する所見、高頻度刺激(15〜50Hz程度)または運動直後の漸増は性の病態に特異的な所見である。
  • MGは低頻度のみを示す一方、LEMSは低頻度に加え高頻度で著明な漸増(抗体陽性で100%超、陰性でも60%以上)を示し、両者は学的に鏡合わせの関係にある。
  • CMSは大多数が性・で低頻度を示すが、PREPL・SNAP25B・SYT2・UNC13A・VAMP1関連型など一部の性遺伝子型では高頻度漸増という所見を示す。
  • 代表的な検査部位は-・-小指・-・顔面神経(とくには高感度)で、MGでは最大1分後からの反復検査で運動後(3〜4分後の悪化)を確認する。
  • はRNSより高感度だが非特異的で、RNSでの判定が困難な場合に感度を補う位置づけで用いる。
  • ⚠️ の中止不足・低体温は代表的な偽陰性の原因であり、検査前に必ず確認する。

出典

  1. 1.Electrophysiological evaluation of the neuromuscular junction: a brief review(Arquivos de Neuro-Psiquiatria(Kouyoumdjian JA, Estephan EP)・2023)低頻度反復神経刺激(2〜5Hz、5〜10発)で第1波形に対し第4〜5波形のCMAP振幅が10%以上減衰することが異常(U字型減衰)、高頻度反復神経刺激(20Hz、ボツリヌス毒素疑いでは50Hz、100〜200発)でLambert-Eaton筋無力症候群の抗体陽性例は全例で増分100%以上、抗体陰性例も全例で増分60%以上を示す一方、ボツリヌス中毒では増分が30〜60%(大部分は60%未満)にとどまること、代表的な検査部位が正中神経-短母指外転筋・尺骨神経-小指外転筋・副神経-僧帽筋・腋窩神経-三角筋・橈骨神経-肘筋・顔面神経支配筋(鼻筋・眼輪筋・口輪筋・前頭筋)であること、最大随意等尺性収縮1分後に低頻度反復刺激を毎分行うと運動後促通で漸減が一時的に改善したのち3〜4分後にかけて悪化する(運動後疲弊)こと、重症筋無力症・Lambert-Eaton筋無力症候群・先天性筋無力症症候群での低頻度・高頻度刺激所見の違い、単線維筋電図がRNSより高感度(全身型重症筋無力症で異常率最大99%)だが特異的ではないこと、検査12時間前の抗コリンエステラーゼ薬中止と記録部位を35℃以上に保つことが偽陰性を防ぐために必要であることを確認した。閲覧 2026-08-20
  2. 2.Repetitive Nerve Stimulation(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)低頻度RNS(2〜5Hz、5〜10発を1分間隔で3系列反復)・高頻度RNS(15〜30Hzで2〜3秒間の強直刺激)のプロトコル、顔面筋(特に眼輪筋)が最も感度の高い検査部位であること、重症筋無力症で低頻度刺激時の漸減が10%以上で異常となること、Lambert-Eaton筋無力症候群が低頻度刺激での漸減と高頻度刺激での漸増を併せ持つこと、ボツリヌス中毒・有機リン中毒はいずれも低頻度刺激で漸減を示すこと(高頻度刺激での漸増には触れていない)、単線維筋電図がRNSより感度の高い確認検査であること、抗コリンエステラーゼ薬を検査12時間前から中止する必要があること、筋温低下が神経筋伝達の安全域を見かけ上広げ偽陰性の原因になることを確認した。閲覧 2026-08-20
  3. 3.Congenital Myasthenic Syndromes Overview(GeneReviews (NCBI Bookshelf)・2024)低頻度反復神経刺激でのCMAP漸減が先天性筋無力症症候群のシナプス後性型・シナプス性型に共通する特徴であること、`PREPL`・`SNAP25B`・`SYT2`・`UNC13A`・`VAMP1`関連型などシナプス前性の一部の病型では高頻度反復刺激でCMAPが増分するという逆説的な所見を示すことを確認した。閲覧 2026-08-20