小児科学

小児科学 · 3-13

小児・思春期の摂食障害

Eating Disorders in Childhood

前提:正常
脳と脂肪組織の代謝的特徴;腸上皮細胞とリンパ球の代謝;飢餓-摂食サイクルとその調節;飢餓時の肝細胞代謝の調節
疾患
摂食症(神経性やせ症・過食症)
症状
肢端チアノーゼ

🧠 全体像:摂食障害は体重だけでは重症度を判断できない。徐脈、、電解質異常、自殺リスク、を同時に評価する。

主な疾患

疾患 中核像 身体リスク
必要量に満たない摂取、体重増加への強い恐怖、体重・体型認知の障害 徐脈、低血圧、低体温、成長・思春期停止、骨密度低下
制御不能なと嘔吐・下剤・過運動などの代償行動 低K血症、、食道損傷、不整脈
体型へのこだわりなしに感覚・恐怖・食欲低下で摂取不足 体重減少、、依存
発達段階に不適切な非栄養物質摂取 鉄・、中毒、閉塞、感染

無月経や特定はの必須条件ではない1。正常・高体重でも急速な減量で医学的に不安定になりうる。

💡 -IVのには無月経(3周期以上の欠如)と体重の数値基準(標準体重の85%未満など)が含まれていたが、ではこれらの旧基準を置き換え、無月経の要件を削除し、体重基準も固定数値ではなく年齢・性別・・身体的健康に照らした「有意に低い体重」という相対的な記述に変えた1。旧来の無月経・体重数値基準は、帯や思春期前で医学的に不安定な患者を見落とす限界が指摘されていたための改訂である。同じで新設された「(ARFID)」は、体型・体重へのこだわりを伴わず・食への恐怖・食欲低下などにより摂取不足が生じる診断で、一般小児人口でのは0.35〜3.2%と報告され、体型認知の障害を前提としない点で小児では特に見逃されやすく重要である2。の中ではの死亡率が最も高い部類とされる3。

評価

  • 体重推移・、食事、、嘔吐、下剤、運動、月経、薬物を本人と保護者から聴取する。
  • 脈拍、血圧・起立変化、体温、脱水、浮腫を確認する。
  • 血算、電解質、Mg、P、腎肝機能、血糖、心電図を重症度に応じて検査する。
  • うつ、不安、強迫、虐待、・自殺リスクを必ず評価する。

治療

flowchart TD
    A["摂食障害を疑う"] --> B["循環・電解質・自殺リスクを評価"]
    B --> C{"医学的または精神科的に不安定"}
    C -->|"はい"| D["入院・監視下<span class='jp-term jp-term-diagram' title='refeeding'>再栄養</span>"]
    C -->|"いいえ"| E["家族を含む外来多職種治療"]
    D --> F["P・K・Mgと心機能を監視"]
    E --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='family therapy'>家族療法</span>・栄養回復・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='psychotherapy'>心理療法</span>"]

青年のではが重要である45。ではを中心に、適応があればなどを専門医が検討する。栄養回復時は低P血症を中心とするを予防・監視する6。

💡 12〜18歳の患者を対象としたRCTで、家族基盤型治療(FBT)は青年個人焦点化療法と治療終了時の寛解率に差がなかったが、終了6か月後・12か月後の追跡ではFBTの方が寛解率で有意に優れており、青年・若年成人の摂食障害に関する2022年の医学的管理の提言も家族基盤型治療を外来における第一選択のと位置づけている45。入院したの患者を対象としたRCT(StRONG試験)では、1日2000kcalからのは1日1400kcalからの低カロリーと比べて安全性イベントを増やさず、医学的安定をより早く達成した。本ノートで扱う低カロリーで慎重に始めるはとして引き続き妥当だが、より高いカロリーで開始し入院期間を短縮できるという知見も蓄積している7。入院の適応となるの目安として、徐脈(日中50/分未満・夜間45/分未満)、血圧90/45mmHg未満、体温35.6度未満、起立性の脈拍上昇(19歳未満で40/分超)などが挙げられている5。

まとめ

  • だけでなく減量速度と生理的不安定性をみる。
  • 家族を責めず、治療資源として参加させる。
  • は治療だが、電解質・循環の監視が必要である。

出典

  1. 1.Anorexia Nervosa(StatPearls Publishing(NCBI Bookshelf)・2026)DSM-5の神経性やせ症診断基準では無月経の要件が削除されたこと(Evaluation節「amenorrhea has been removed from the DSM-5 criteria」)、体重に関する基準もDSM-IVの固定した数値基準ではなく「有意に低い体重(significantly low body weight)」という相対的な記述になっていること、摂食症の中で神経性やせ症は最も死亡率が高い部類であること(Prognosis節)を確認した。閲覧 2026-08-27
  2. 2.Avoidant Restrictive Food Intake Disorder(StatPearls Publishing(NCBI Bookshelf)・2026)回避・制限性食物摂取症(ARFID)はDSM-5で新設された独立診断であること(Introduction節)、診断基準の骨格は体重減少・栄養欠乏・経管栄養や栄養補助食品への依存・心理社会的機能の著しい変化のいずれかを伴う摂食障害であること(Criterion A)、体型・体重への懸念ではなく食物の味・食感・色・匂いへの嫌悪が中心であること、一般小児人口での有病率は0.35〜3.2%と報告され小児期に特に重要な診断であることをEpidemiology節・History and Physical節から確認した。閲覧 2026-08-27
  3. 3.Mortality rates in patients with anorexia nervosa and other eating disorders. A meta-analysis of 36 studies(Archives of General Psychiatry・2011)36研究(神経性やせ症16万6642人年、神経性過食症3万2798人年、特定不能の摂食症2万2644人年)を統合したメタ解析で、加重死亡率・標準化死亡比とも神経性やせ症が摂食症の中で最も高く(標準化死亡比5.86)、神経性やせ症で死亡した者の5人に1人が自殺によることを確認した。閲覧 2026-08-27
  4. 4.Randomized clinical trial comparing family-based treatment with adolescent-focused individual therapy for adolescents with anorexia nervosa(Archives of General Psychiatry・2010)12〜18歳の神経性やせ症患者121人を対象としたRCTで、家族基盤型治療(FBT)と青年個人焦点化療法(AFT)は治療終了時の完全寛解率に差がなかったが、治療終了6か月後・12か月後の追跡ではFBTの方が完全寛解率で有意に優れていたことを確認した。閲覧 2026-08-27
  5. 5.Medical Management of Restrictive Eating Disorders in Adolescents and Young Adults(Society for Adolescent Health and Medicine / Journal of Adolescent Health・2022)青年・若年成人の摂食障害に関する医学的管理の提言(Position 6)で家族基盤型治療(FBT)を18歳までの青年期の外来における第一選択の心理療法としていること、入院を支持する所見(Table 4)として徐脈(日中50/分未満・夜間45/分未満)、血圧90/45mmHg未満、体温35.6度未満、起立性の脈拍上昇(19歳未満で40/分超・19歳以上で30/分超)または血圧低下(収縮期20mmHg超・拡張期10mmHg超)を挙げていること、1日2000kcalからの高カロリー経口再栄養が再栄養症候群のリスクを増やさずに医学的不安定期間と入院期間を短縮したという無作為化試験(Position 7)を確認した。閲覧 2026-08-27
  6. 6.ASPEN Consensus Recommendations for Refeeding Syndrome(American Society for Parenteral and Enteral Nutrition・2020)再栄養症候群(成人・小児双方を対象)では血清値が正常でも体内のリン・カリウム・マグネシウムが枯渇しており、再栄養開始から5日以内にこれらのいずれか1〜3項目が10〜20%低下すれば軽症、20〜30%で中等症、30%超またはこれらの低下・チアミン欠乏による臓器障害を伴えば重症と診断されることを確認した。閲覧 2026-08-27
  7. 7.Higher-Calorie Refeeding in Anorexia Nervosa: 1-Year Outcomes From a Randomized Controlled Trial(Pediatrics・2021)入院した思春期・若年成人の神経性やせ症患者111人を対象としたRCT(StRONG試験)で、高カロリー再栄養(1日2000kcalから開始し1日200kcalずつ増量)は低カロリー再栄養(1日1400kcalから開始)と比べて安全性イベントを増やすことなく医学的安定をより早く達成し、1年後の寛解率・再入院率にも有意差がなかったことを確認した。閲覧 2026-08-27