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Disease Atlas · 精神 · 病態

摂食症(神経性やせ症・過食症)

Eating disorders (anorexia nervosa and bulimia nervosa)

別名
摂食障害神経性やせ症神経性過食症ANBN
臓器系
精神
科目
PsychiatryPediatrics
トピック
精神医学 B-05:摂食症:診断基準と臨床管理小児科 3-13:小児・思春期の摂食障害
鑑別疾患
悪液質身体醜形症
続発疾患
骨粗鬆症成長不良
関連疾患
気分障害(うつ病・双極性障害)自殺と自傷行為心的外傷後ストレス障害不安症群
治療薬
フルオキセチンオランザピン
症状
筋力低下不安浮腫嘔吐
検査値
クレアチニン血算血糖QT延長
下位分類
夜間摂食症候群
禁忌薬
ブプロピオン

🧠 全体像は「体重の病気」ではなく、食行動・体重や体型への認知・が相互に影響し、によって全身を損なう精神である。ではと体重増加への恐怖、ではではを伴わないでは体型へのこだわりを伴わない摂取制限が中核となる。でも急速な減量、嘔吐、電解質異常、自殺リスクにより生命の危機となり得るため、身体安全の確保・栄養回復・疾患別を同時に進める

病型

病型 中核となる食行動・認知 体重 後の
(anorexia nervosa:AN) 必要量に満たない摂取、著しい、体重増加への恐怖または増加を妨げる行動、体重・体型認知の障害 年齢・性別・発達・身体状態に比して著しく低い 制限型ではなし。・排出型ではあり得る
制御不能なと不適切なが週1回以上・3か月持続し、自己評価が体重・体型に強く左右される 多くは正常域〜高値 嘔吐、下剤・利尿薬、絶食、過剰運動などがある
制御不能なが週1回以上・3か月持続し、早食い、苦しい満腹、秘密の摂食、罪悪感などと強い苦痛を伴う 問わない 習慣的にはない
(avoidant/restrictive food intake disorder:ARFID) 、食への関心低下、窒息・嘔吐への恐怖などによる摂取不足 とは限らない 体型へのこだわりを動機としない
他の特定される(OSFED) 非定型AN、低頻度・短期間のBN/BED、排出性障害、など、完全な基準を満たさなくても臨床的苦痛・機能障害がある 多様 多様

⚠️ 無月経はANの必須条件ではない。非定型ANでは体重が正常域または高値でも、急速かつ大幅な減量により徐脈、低血圧、低体温、を来し得る。BMIだけで診断、治療の必要性、入院適応を決めない。

病態

、気質、・恐怖学習、の困難、発達課題、家族・対人環境、、食事制限を促す文化などが相互作用する。家族を原因とみなすのではなく、回復を支える治療資源として位置づける。

食事制限が続くと、そのものが集中力低下、抑うつ・不安、強迫性、柔軟性の低下を招き、食事や体重へのとらわれを強める。後の嘔吐や絶食は短期的に不安や罪悪感を下げるためを受け、次の制限とを招く。

flowchart TD
    A["食事制限・体重や体型への過大評価・回避"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='starvation'>飢餓</span>と心理的剥奪"]
    B --> C["食物へのとらわれ・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperphagia'>過食</span>衝動・認知の硬直"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperphagia'>過食</span>または制限の強化"]
    D --> E["嘔吐・下剤・絶食・過剰運動"]
    E --> F["短期的に不安や罪悪感が低下"]
    F --> G["電解質異常・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='malnutrition'>栄養障害</span>・自己評価の悪化"]
    G --> A

臨床像

行動・精神症状

  • 食事量・食品群の制限、細かな食事儀式、秘密の、食後の長いトイレ滞在
  • 自己誘発性嘔吐、下剤・利尿薬・やせ薬の乱用、インスリン省略、過剰運動
  • 体重・体型の頻回確認または回避、、学業・就労機能の低下
  • 抑うつ不安症状、、物質使用の併存

身体合併症

系統 主な所見・機序
循環器 、低血圧、、低体温、心、電解質異常によるQT延長・不整脈
電解質・腎 嘔吐による低K・低Cl血症性、下剤による代謝性アシドーシス、脱水、、水負荷による低Na血症
消化管・口腔 、便秘、腹部膨満、唾液腺腫脹、歯牙酸蝕、食道損傷。は反復嘔吐の手掛かり
内分泌・骨 様の適応、骨量低下・
血液・免疫 貧血、、血小板減少。重度でも炎症反応が乏しいことがある
小児・青年 からの逸脱、、骨量獲得障害、認知・社会発達への影響

診断

診断では、体重の一点測定よりも体重・身長・の推移、減量速度、食行動、、認知、身体不安定性で統合する。SCOFFなどのは会話の入口にはなるが、単独で診断や除外に用いない。

初期評価

評価領域 確認内容
食行動 1日の摂取、避ける食品、の頻度と制御不能感、嘔吐、下剤・利尿薬、絶食、運動、、インスリン省略
認知・機能 体重・体型への自己評価、体重増加への恐怖、ARFIDの感覚・恐怖・関心低下、家庭・学校・仕事・対人機能
精神科安全性 抑うつ、不安、強迫、トラウマ、物質使用、、治療同意能力
体重・身長・、体温、臥位・立位の脈拍と血圧、脱水、浮腫、筋力、口腔・歯、嘔吐の徴候
検査 血算、Na・K・Cl・HCO3⁻、尿素・クレアチニン、血糖、Ca・Mg・P、肝機能。危険因子があればECG
追加評価 妊娠、内分泌・消化器疾患、骨量、糖尿病管理などを病歴・症状・期間に応じて評価

鑑別には、、糖尿病、副腎不全、、セリアック病、吸収不良、悪性腫瘍、症、嚥下障害、薬剤・物質、うつ病・・精神病などがある。ARFIDでは、口腔運動・嚥下障害、を積極的に評価する。

医学的緊急度

見た目が元気、、採血が一度正常というだけでは安全と判断できない。MEEDの全世代リスク評価は複数領域を赤・黄・緑で統合する補助枠組みであり、単一所見で全体の危険度を決めない。

緊急評価・医学的安定化を要する手掛かり 代表例
循環・体温 意識時心拍数が一貫して40/分未満、失神、90 mmHg未満または小児の年齢別低値、著明な起立変化、35.5℃未満
電解質・代謝 重度または進行するK・Na・Mg・P異常、低血糖、脱水、、肝障害
心電図・臓器 QT延長、不整脈、虚血性変化、心不全、呼吸不全、消化管出血・破裂を疑う所見
栄養・行動 急速な減量、急性の食事・水分拒否、制御不能な嘔吐・下剤・過剰運動、重度筋力低下
精神科 切迫した自殺・リスク、精神病、著しい低下、外来で安全を保てない状態

⚠️ これは自宅での判定表ではない。重度の電解質異常、、脱水、臓器不全の兆候、切迫した自殺リスクでは救急評価と入院を行う。入院先は病態に応じて内科・小児科・精神科が共同し、医学的安定化とを安全に行える場所を選ぶ。

治療

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='eating disorders'>摂食症</span>を疑う"] --> B["循環・電解質・臓器障害と自殺リスクを評価"]
    B --> C{"医学的または精神科的に不安定"}
    C -->|"はい"| D["救急評価・入院で医学的安定化"]
    C -->|"いいえ"| E["年齢に合う専門外来・デイケア"]
    D --> F["監視下の栄養回復と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='electrolyte correction'>電解質補正</span>"]
    E --> G["疾患別<span class='jp-term jp-term-diagram' title='psychotherapy'>心理療法</span>と栄養支援"]
    F --> G
    G --> H["家族支援・併存症治療・再発予防"]

栄養回復と再栄養症候群

状態で栄養を再開するとが増え、P・K・Mgが細胞内へ移動する。低P血症を中心に、浮腫、心不全、不整脈、呼吸筋力低下、せん妄、けいれんを来すのがである。

  • 開始前に摂取歴、減量速度、身体合併症、血糖、P・K・Mg、腎機能、を評価する。
  • 高リスクでは経験あるチームが標準手順に従い、ビタミンB1と総合ビタミンを補い、電解質・血糖・・心電図を密に監視する。
  • 低下した電解質は原則として経口で補い、重度、症候性、吸収困難では監視下の補正を行う。K・Pのは不整脈を起こし得るため施設手順を厳守する。
  • 低リスク〜の青年では、十分な監視下で従来より高いエネルギーから開始するが安全性と入院期間の点で支持される。MEEDは最高リスクを除き1,400〜2,000 kcal/日からの開始を例示するが、これは全員への固定処方ではない。
  • Pが低下した場合も反射的に栄養を減らしてを長引かせず、増量を一時保留しながら補正・再検査する。継続の両方を避ける

疾患別心理療法

病型・年齢 中心となる治療
AN成人 に焦点化した、MANTRA、専門的支持的臨床管理などと、目標体重へ向けた栄養回復
AN小児・青年 に焦点化したを第一に検討。保護者が一時的に食事と安全を支え、回復に伴って年齢相応のを戻す
BN成人 に焦点化した。規則的な食事を確立し、制限―の連鎖と体型への過大評価を扱う
BN小児・青年 または年齢に適応した。家族を責めず、食事との安全管理に参加してもらう
BED ガイド付き認知行動セルフヘルプ、反応不十分ならに焦点化した。体重減少だけをにしない
ARFID 不足栄養の補充、段階的な食物曝露、恐怖・への、親を基盤とした介入。必要に応じ小児科、栄養、心理、摂食嚥下、が連携
OSFED 最も臨床像が近いの治療を選び、だからと治療を弱めない

薬物療法と禁忌

薬剤 位置づけ 安全上の注意
AN 薬物単独では治療しない。成人ではを栄養・への補助として検討することがあり、体重増加への効果は小さい 代謝系、鎮静、、ECGを患者の身体状態に応じて監視する。小児・青年の根拠は成人より限定的
BN 成人では60 mg/日をと併用、またはへの反応が乏しい場合に検討する 低K血症、徐脈、QT延長、他の、若年者のを評価する。小児・青年では専門医が慎重に判断
BED 成人の中等度〜重度では地域の承認・適応に従いなどを検討できるが、も提供する 血圧・心拍、依存・誤用、躁病、食事制限や体重減少の悪化を評価する
ARFID 特異的に承認された薬物はなく、薬物は併存症や限られた症状への補助にとどまる 栄養回復、曝露、家族・摂食支援の代替にしない

⚠️ は、けいれんリスクが高まるため現在または過去にAN/BNがある人では禁忌である。・脱水・電解質異常ではと心毒性が変化し得るため、一般的な精神科処方をそのまま当てはめない。

長期管理

  • 体重だけでなく、規則的な食事、、月経・性腺機能、骨、成長、学校・仕事、を追跡する。
  • うつ、不安、、物質使用、糖尿病などの併存症を治療と統合する。
  • 家族には「原因探し」ではなく、食事支援、、再発の早期、支援者自身の休息を共有する。
  • 骨量低下の第一治療は栄養回復と性腺機能の回復であり、骨折リスクが高い間は高衝撃運動を避ける。
  • 寛解後も再発計画を作り、体重減少、食事の硬直化、過剰運動、・嘔吐、孤立の再出現時に早期受診する。

まとめ

  • AN、BN、BED、ARFIDは、体重ではなく摂取制限・・体型認知・回避理由で区別する。
  • でも急速な減量、嘔吐、電解質異常、自殺リスクにより生命の危機となり得る。
  • 身体安全の確保、監視下の栄養回復、疾患別を多職種で同時に進める。
  • 小児・青年のANでは、家族を責めず栄養回復を支えるが治療の中心となる。
  • BNではを軸にを補助として用い、AN/BNではを使用しない。
  • ではP・K・Mg、血糖、、心機能を監視し、だけでなく過度な継続も避ける。