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Disease Atlas · 精神 · 病態

心的外傷後ストレス障害

Posttraumatic stress disorder

別名
PTSD心的外傷後ストレス症
臓器系
精神
科目
Psychiatry
トピック
精神医学 B-02:心的外傷後ストレス障害
鑑別疾患
パーソナリティ症群外傷性脳損傷気分障害(うつ病・双極性障害)急性ストレス障害強迫症適応反応症不安症群
関連疾患
アルコール使用障害自殺と自傷行為性機能障害・パラフィリア症群精神作用物質使用症摂食症(神経性やせ症・過食症)
治療薬
セルトラリンパロキセチンベンラファキシンプラゾシン
症状
動悸発汗疼痛悪夢

🧠 全体像は、生命・重傷・性的暴力に関わる出来事の記憶が「過去」として統合されず、侵入、回避、認知・気分の陰性変化、の4群として現在の安全感と生活機能を損なう病態である。診断では外傷曝露だけでなく症状構造、1か月を超える持続、機能障害を確認する。治療の中心は、安全を確保した上で行う個別のであり、全員に体験を詳しく語らせる単回のは行わない。

病態

外傷の強度だけで発症が決まるわけではない。、既往の精神疾患、反復する対人外傷、外傷時の解離、外傷後の安全・支援、持続する生活上のが相互作用する。

を中心とする検出が過敏になる一方、による・制御と海馬による時間・場所の記憶統合がうまく働かない。刺激を避けると短期的な苦痛は下がるが、「今は安全である」という新しい学習が成立せず、症状が維持される。

flowchart TD
    A["生命・重傷・性的暴力に関わる外傷"] --> B["強い恐怖反応と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fragmentation'>断片化</span>した外傷記憶"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='retrieval'>想起</span>刺激で侵入記憶・身体反応が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='relapse'>再燃</span>"]
    C --> D["記憶・感情・人物・場所を回避"]
    D --> E["短期的には苦痛が低下"]
    E --> F["現在の安全を学習できない"]
    F --> G["否定的信念・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypervigilance'>過警戒</span>・睡眠障害が持続"]
    G --> C
    H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='trauma-focused psychotherapy'>トラウマ焦点化心理療法</span>"] --> I["安全な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='retrieval'>想起</span>・認知の再評価・回避の縮小"]
    I --> J["記憶を過去として<span class='jp-term jp-term-diagram' title='contextualization'>文脈化</span>し生活機能を回復"]

💡 回避は症状であると同時に維持因子である。治療で行う曝露は、本人を無理に追体験させることではなく、訓練を受けた治療者と安全性を確認しながら記憶や回避状況に段階的に向き合い、現在の安全を再学習する過程である。

外傷曝露とリスク

-TRの外傷基準には、実際のまたは危うく死ぬ、重傷を負う、性的暴力を受ける出来事について、直接体験、、近親者・親しい人への発生を知ること、職務上の反復・極端な曝露が含まれる。近親者・親しい人の死亡または死亡の危機を知る場合、その出来事は暴力的または偶発的なものでなければならない。電子媒体・テレビ・映画・写真を介した曝露は、職務上でない限り通常は含まれない。

リスクを高める因子 回復を支える因子
、性的暴力、反復・長期の外傷 現在の安全確保
外傷前の不安・うつ・外傷歴 信頼できる家族・友人・地域からの支援
外傷時の強い解離、重い身体損傷 住居・就労・医療への安定したアクセス
外傷後も続く暴力、避難、喪失、訴訟など 本人の準備に合わせた

外傷を経験した人の全員がPTSDを発症するわけではない。早期反応の多くは正常なストレス反応であり、直ちに病気と決めつけず、苦痛・機能障害・経過と安全性を追跡する。

臨床像

4つの症状群

症状群 -TRでの必要数 代表例
1つ以上 苦痛な記憶、刺激への強い心理・身体反応
回避 1つ以上 外傷に関する記憶・感情・思考の回避、人物・場所・会話・活動の回避
認知・気分の陰性変化 2つ以上 記憶欠損、持続する否定的信念、自責、陰性感情、興味低下、、陽性感情の困難
・反応性の変化 2つ以上 、危険行動、、睡眠障害

は単なる「思い出すこと」ではなく、出来事が現在起きているように感じる再体験である。、発汗、疼痛などの身体症状、原因不明の反復受診、飲酒・鎮静薬による自己対処として現れることもある。

特定用語と併存症

診断

診断を確定する単独の血液検査・画像検査はない。外傷の詳細を最初から強制的に尋ねるのではなく、プライバシー、現在の安全、本人が話せる範囲を確認しながら、曝露、4症状群、期間、機能障害、物質・身体疾患、併存症をで評価する。

flowchart TD
    A["外傷後の侵入・回避・気分変化・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperarousal'>過覚醒</span>"] --> B{"現在も暴力・自殺・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='harm to others'>他害</span>・重い離脱などの危機があるか"}
    B -->|"ある"| C["安全確保と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='crisis intervention'>危機介入</span>を優先"]
    B -->|"ない"| D["外傷基準と4症状群を確認"]
    D --> E{"症状の持続期間"}
    E -->|"3日〜1か月"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute stress disorder'>急性ストレス障害</span>を評価"]
    E -->|"1か月超"| G["PTSDの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diagnostic criteria'>診断基準</span>を評価"]
    E -->|"基準未満"| H["自然な反応として見守りつつ機能と安全を追跡"]
    F --> I["物質・薬剤・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='traumatic brain injury, TBI'>頭部外傷</span>・他の精神疾患を鑑別"]
    G --> I
    H --> I
    I --> J["本人の希望を踏まえ治療計画と症状尺度で経過確認"]

-TRでは、症状が1か月を超えて続き、臨床的に意味のある苦痛または社会・職業などの機能障害を生じ、物質や他の医学的病態で説明されないことを確認する。PCL-5などのは認識と経過測定に役立つが、得点だけで診断を確定しない。

鑑別

鑑別 区別の手がかり
外傷後3日〜1か月。1か月を超えて症状構造を満たせばPTSDを検討
明確なストレス因はあるが、PTSDの外傷基準・症状構造を満たさない
うつ病 抑うつ・興味低下は共通するが、外傷特異的な侵入と回避が中心ではない
心配・発作・恐怖が外傷記憶に限定されない
は通常、過去の外傷の再体験ではなくである
健忘、が重なる。受傷機序、意識障害、を確認
物質・薬剤誘発性 中毒・離脱との時間関係を確認。症状を抑えるための飲酒・鎮静薬使用も評価

⚠️ 、進行中の・虐待、重い解離、、重い物質離脱があれば、PTSD治療の通常手順より安全確保と緊急評価を優先する。

治療

外傷直後の支援

まず身体的安全、住居、睡眠、医療、家族・社会支援を整え、外傷後に起こり得る反応と受診の目安を説明する。発症1か月以内で軽い症状なら経過観察と能動的なフォローを行い、または臨床的に重要な症状があれば個別のを提案する。

⚠️ は安全・実際的支援・本人の選択を重視する。全員に外傷体験と感情を詳細に語らせる単回のはPTSD予防として行わない。

心理療法

治療 中心となる要素 位置づけ
外傷記憶と安全な回避状況への段階的・反復的な曝露 成人の第一選択
自責、罪悪感、危険・信頼に関する固定した信念の再評価 成人の第一選択
外傷記憶をしながら両側性刺激を用いて処理する 成人の第一選択
、感情調整、記憶処理、、回避の縮小 成人・小児青年の中心

VA/DoDは個別のを薬物療法より優先する。複雑な外傷、解離、併存症があっても一律に除外せず、治療者の訓練、現在の安全、本人の準備、治療へのアクセスを踏まえて個別化する。

小児・青年では年齢と発達に合うを用い、保護者を必要に応じて参加させる。NICEは、PTSDの予防・治療を目的とする薬物療法を18歳未満へ提供しないよう推奨している。併存する精神疾患への薬物療法は、その疾患の適応と安全性を別に評価する。

薬物療法

を希望しない、利用できない、または薬物療法を選好する成人では、の上で抗うつ薬を検討する。

薬剤 位置づけ 主な注意
PTSD全般症状に推奨されるSSRI 消化器症状、、開始時の、自殺リスク・を監視
PTSD全般症状に推奨されるSNRI 血圧、を監視
PTSD関連には弱く推奨。PTSD全般症状の治療とは区別 初回投与時失神、、めまいに注意し漸増
ベンゾジアゼピン PTSD治療として推奨しない 依存、離脱、認知・、曝露治療への悪影響の懸念
抗精神病薬 PTSD全般症状への単剤またはとしてルーチンに用いない 代謝性有害事象、鎮静など。は別に評価し、例外的な補助は専門診療で判断
関連製剤 PTSD治療として推奨しない 依存、などのリスクを評価

薬物開始前に、妊娠可能性、相互作用、自殺リスクを確認する。反応は外傷関連症状だけでなく、睡眠、物質使用、就学・就労、などの機能で追跡し、十分な用量・期間、服薬状況、診断と併存症を再評価してから追加治療を考える。

長期管理

  • 現在の安全、住居・経済、家族支援、睡眠、慢性疼痛、飲酒・薬物使用を継続して確認する。
  • 症状尺度と本人が回復したい生活機能を定め、治療反応を定期的に共有する。
  • 外傷記念日、裁判、報道、医療処置などしやすい状況への対処計画を作る。
  • 部分反応では治療法を漫然と重ねず、診断、併存症、治療の実施の質、本人の希望を再評価する。

まとめ

  • PTSDは外傷曝露だけでなく、侵入、回避、認知・気分の陰性変化、、1か月を超える持続、機能障害で診断する。
  • 外傷直後の反応を直ちに病理化せず、現在の安全と自殺・物質使用リスクを優先して評価する。
  • 治療の第一選択は個別のであり、単回のは予防目的に行わない。
  • 成人で薬物療法を選ぶ場合はを検討し、に限った選択肢として扱う。
  • ベンゾジアゼピンはPTSD治療に用いず、18歳未満へPTSD目的の薬物療法を提供しない。