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Disease Atlas · 精神 · 病態

不安症群(パニック症・全般不安症・恐怖症)

Anxiety disorders (panic disorder, generalized anxiety disorder, phobias)

別名
不安障害パニック障害GAD
臓器系
精神
科目
Psychiatry
トピック
精神医学 A-12:不安症群:パニック症・広場恐怖症・全般不安症・恐怖症
鑑別疾患
アルコール使用障害気分障害(うつ病・双極性障害)強迫症自閉スペクトラム症心的外傷後ストレス障害身体醜形症身体症状症・変換症・病気不安症注意欠如・多動症(ADHD)
関連疾患
チック症(トゥレット症候群)重篤気分調節症摂食症(神経性やせ症・過食症)反抗挑発症不眠障害・ナルコレプシー
治療薬
セルトラリンパロキセチンフルオキセチンデュロキセチンブスピロンプレガバリンアルプラゾラムモクロベミドチアネプチン
症状
知覚異常

🧠 全体像は、危険が目前にないのにが作動し、回避によってその学習が固定される病態群である。「予期せず急激に起こる発作」なら、「逃げにくい状況」なら、「複数領域への制御困難な心配」なら、「特定対象」なら、「他者の評価」ならを考える。初発の胸痛・失神・呼吸困難を安易に不安と決めつけず身体疾患と物質誘発性を除外し、治療では回避を安全に崩すを軸に、必要に応じてSSRI/SNRIを組み合わせる。

不安と恐怖の違い

恐怖は目前のに対する反応、不安は将来のを予測する反応である。どちらも危険回避に必要だが、に不釣合いで、持続し、回避や苦痛によって生活機能を損なうと不安症として評価する。

は単なる「心配性」ではない。症状の強さだけでなく、本人がどれほど回避し、学業・仕事・・移動・医療受診などを制限されているかが診断とに直結する。

病態

を中心とする、セロトニン・ノルアドレナリン・GABA系、幼少期の逆境、慢性ストレス、が相互作用する。身体感覚や状況を「破局の」と解釈すると交感神経反応が増え、その反応自体をさらに危険と解釈する。

flowchart TD
    A["身体感覚・状況・将来の心配"] --> B["危険だという<span class='jp-term jp-term-diagram' title='catastrophic interpretation'>破局的解釈</span>"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='palpitations'>動悸</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperventilation'>過換気</span>・緊張・不安が増強"]
    C --> D["回避・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='escape'>逃避</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='safety behavior'>安全確保行動</span>"]
    D --> E["短期的には不安が下がる"]
    E --> F["安全だったという再学習が起こらない"]
    F --> G["次回の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anticipatory anxiety'>予期不安</span>と回避が強まる"]
    G --> A

💡 回避は症状の「結果」であると同時に病態を維持する「原因」でもある。は本人を無理に恐怖へ放り込む治療ではなく、段階的・反復的に接近して「不安は耐えられ、予測した破局は起こらない」と再学習する治療である。

病型の比較

病型 恐怖・不安の焦点 時間的特徴 代表的な回避
予期しないと、その再発・結果への恐怖 発作は数分で頂点。の心配または行動変化が1か月以上 運動、電車、単独外出など身体感覚や発作が起きそうな状況
逃げることや援助を得ることが難しい状況 5状況群のうち2つ以上、通常6か月以上 公共交通、開放空間、閉鎖空間、列・人混み、自宅外に一人
仕事、健康、家族、金銭など複数領域への制御困難な心配 大半の日に6か月以上 不確実な決定、心配を誘う情報。回避より確認・安心希求が目立つこともある
特定の対象・状況 接触するとほぼ即時に恐怖、通常6か月以上 動物、高所、飛行、閉所、血液・注射・外傷など
され、否定的に評価される社会場面 通常6か月以上 会話、会食、人前での発表・行為。遂行場面限定型もある

は診断名ではなく、急激な恐怖と身体症状のまとまりを示す。以外の不安症、、外傷関連疾患、物質誘発性、身体疾患でも起こる。

臨床像

パニック発作

数分以内に頂点へ達する強い恐怖・不快感に、次の症状が組み合わさる。

  • 、発汗、振戦、息苦しさ、窒息感
  • 胸部不快、悪心、めまい、
  • 悪寒・熱感、
  • 制御を失う恐怖、死の恐怖

を介して口周囲・四肢の、手足のこわばり、めまいを増幅し、「重大な身体疾患が起きている」というを強める。

全般不安症

制御困難な心配に、落ち着かなさ、、筋緊張、睡眠障害を伴う。成人では6症状中3つ以上、小児では1つ以上が診断上の目安となる。慢性の筋緊張、頭痛、消化器症状をとして受診することもある。

恐怖症

  • :対象が明確で、血液・注射・外傷型ではによる失神を伴うことがある。
  • :赤面、振戦、発汗、声の震えなどが他者に気づかれること自体を恐れ、出来事の前後にする。
  • :外出時に同伴者を必要とし、重症では自宅から出られなくなる。

診断

診断は症状チェックだけでなく、恐怖の焦点、誘因、予期性、期間、回避、機能障害、併存症、物質・薬剤、身体疾患をで整理する。

flowchart TD
    A["不安・恐怖・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='panic attack'>パニック発作</span>"] --> B{"胸痛・失神・低酸素・高熱・局在神経症状などの赤旗"}
    B -->|"あり"| C["身体救急を優先して評価"]
    B -->|"なし"| D["物質・薬剤・離脱と身体疾患を確認"]
    D --> E["恐怖の焦点と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='time course'>時間経過</span>を整理"]
    E --> F{"予期しない発作が中核"}
    F -->|"はい"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='panic disorder'>パニック症</span>を評価"]
    F -->|"いいえ"| H{"複数領域への慢性の心配"}
    H -->|"はい"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='generalized anxiety disorder'>全般不安症</span>を評価"]
    H -->|"いいえ"| J["広場・特定対象・他者評価への恐怖を分類"]
    G --> K["機能障害・併存症・自殺リスクを評価"]
    I --> K
    J --> K

身体疾患・物質の除外

鑑別群 代表例・手がかり
心血管 、不整脈、胸痛、失神、低酸素、
呼吸器 喘息、、気胸。喘鳴、呼吸音左右差、低酸素
内分泌・代謝 甲状腺機能亢進症、低血糖、
神経 、前庭疾患。意識変容、局在徴候、な反復
物質・薬剤 、刺激薬、
離脱 、ベンゾジアゼピン離脱

⚠️ 初発高齢、妊娠中、既知の心肺疾患、失神、持続する胸痛、低酸素、発熱、局在神経症状、物質使用があれば「不安」と決めつけず、症状に応じた身体評価を優先する。

精神科的併存症

うつ病、、外傷関連疾患、を確認する。不安が抑うつ、、外傷に従属していないかを区別する。、安全確保の必要性を直接尋ねる。

治療

は不安を完全にゼロにすることではなく、回避を減らし、本人が望む生活機能を取り戻し、再発時にも対処できるようにすることである。重症度、希望、過去の反応、併存症、妊娠可能性、薬剤相互作用を踏まえする。

心理療法

病型 の中心
身体感覚への曝露、の修正、状況曝露
回避状況へのの縮小
心配への気づき、、不確実性への耐性、
段階的な現実曝露が中心。血液・注射・外傷型では失神対策として
個別、注意焦点の修正、、社会場面への曝露、事後への介入

軽症では、構造化されたセルフヘルプ、調整から始められる。中等症以上、慢性、機能障害が強い場合はを行う。

薬物療法

薬剤群 位置づけ 注意点
SSRI の第一選択。など 開始初期の一過性不安増強、、消化器症状、。低用量から調整
SNRI SSRIと並ぶ選択肢。などでを用いる 血圧、悪心、を監視
の選択肢 はなく、の頓用薬ではない
でSSRI/SNRIにがない場合の地域指針に基づく選択肢 鎮静、めまい、浮腫、誤用・依存リスク
ベンゾジアゼピン の急性危機に限り、ごく短期に例外的に検討 依存、耐性、離脱、鎮静、転倒、認知影響。には処方せず、の長期治療にも用いない

抗うつ薬の効果発現には数週を要する。で有効なら再発率を下げるため少なくとも1年間継続し、終了時は急に中止せず段階的に減量する。30歳未満ではSSRI/SNRI開始後1週以内に診察し、最初の1か月はリスクを毎週確認する。年齢を問わず治療開始・用量変更時にはを監視する。

が中心で、薬物療法をルーチンに行わない。ではな個別を第一に提案し、希望や利用可能性に応じSSRIを選ぶ。

長期管理

  • 症状尺度だけでなく、外出、就学・就労、、睡眠、物質使用などの機能を追跡する。
  • で得た曝露・再学習を日常生活で継続し、再発の早期徴候と対処計画を共有する。
  • 不安を自己治療するための飲酒、鎮静薬の過量使用、・刺激薬の多用を確認する。
  • 部分反応では診断、併存症、治療実施の質、を再評価してから治療を追加する。

まとめ

  • は「予期しない発作」「逃げにくい状況」「複数領域の心配」「特定対象」「他者評価」という恐怖の焦点で分類する。
  • は複数疾患で起こる症候であり、発作だけでとは診断しない。
  • 初発・非典型・では心肺・内分泌・と物質誘発性を先に除外する。
  • 回避の悪循環を断つが治療の中心で、必要に応じSSRI/SNRIを用いる。
  • ベンゾジアゼピンはには用いず、でも急性危機の短期例外を除いて使用しない。