精神医学

精神医学 · A-12

不安症群:パニック症・広場恐怖症・全般不安症・恐怖症

Anxiety disorders: panic disorder and agoraphobia, generalized anxiety disorder, phobic disorders, etiology, epidemiology, diagnostic criteria, subtypes, course and outcome, differential diagnosis

前提:正常
大脳辺縁系と扁桃体の恐怖回路セロトニン・GABA受容体の性質
疾患
不安症群(パニック症・全般不安症・恐怖症)
症状
知覚異常不安

🧠 全体像:は「何を恐れるか」と「不安がいつ起こるか」で分ける。予期せぬ発作を恐れるのが、逃げにくい状況を恐れるのが、複数領域への制御困難な心配が続くのが、特定対象や他者評価への恐怖が恐怖症群である。

共通する機序

、を含む、セロトニン・ノルアドレナリン・系、、、、慢性ストレスが相互作用する。回避は短期的に不安を下げるが、「避けなければ危険」という学習を強化して長期的には症状を維持する。

  • 不安症・の家族歴は発症リスクを高める。
  • 幼少期の逆境や慢性ストレスは発症・増悪因子となり得る。
  • やなどの特性は脆弱性に関与するが、それだけで疾患が決まるわけではない。
flowchart TD
    A["身体感覚・状況・心配"] --> B["危険だという<span class='jp-term jp-term-diagram' title='catastrophic interpretation'>破局的解釈</span>"]
    B --> C["自律神経症状と不安が増強"]
    C --> D["回避・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='safety behavior'>安全確保行動</span>"]
    D --> E["一時的に安心"]
    E --> F["恐怖が修正されず維持"]
    F --> A

疫学

は精神疾患の中でも頻度が高い。代表的な目安は、全体の15〜20%、2〜3%、1〜2%、3〜5%、7〜9%、約7%である。実際の推定値は診断体系、調査地域、年齢、観察期間によって変動するため、固定した世界共通値とはみなさない。

多くの不安症は女性で診断される割合が高い。は小児期、は小児期〜青年期、は青年期後半〜成人早期に始まることが多い。

診断の比較

病態 中核 期間・要件
予期しないの反復 1回以上の、追加発作への心配または不適応な行動変化が1か月以上
逃げることや援助を得ることが難しいと感じる状況 公共交通、開放空間、閉鎖空間、列・人混み、自宅外に一人、のうち2つ以上。通常6か月以上
仕事・健康・家族など複数領域への過剰で制御困難な心配 大半の日に6か月以上。成人では随伴6症状のうち3つ以上
特定の対象・状況への不釣合いな恐怖と回避 通常6か月以上。動物、自然環境、血液・注射・外傷、状況型など
・否定的評価を受け得る社会場面への恐怖 回避または強い苦痛を伴い、通常6か月以上。遂行場面限定型もある

の随伴症状は、落ち着かなさ、、、、筋緊張、睡眠障害である。小児では1症状以上でよい。

💡 ではの境界が引き直された。 とはでの章から分離され、それぞれ独立した、心的外傷および関連症群の章になった1。も、での有無によらず診断できる独立した疾患として再定義されている2。

パニック発作

は数分以内に頂点へ達する急激な恐怖・不快感で、、発汗、振戦、息苦しさ、、胸部不快、悪心、めまい、悪寒/熱感、、、制御を失う恐怖、死の恐怖などを伴う。自体は複数の精神疾患や身体疾患で起こり得るため、発作があるだけでとは限らない。

鑑別診断

鑑別 確認点
心肺・内分泌疾患 、不整脈、喘息、肺塞栓、甲状腺機能亢進症、低血糖など。初発・非典型・高リスクでは身体評価を優先
物質・薬剤 、刺激薬、、、アルコール・など
うつ病・OCD・PTSD 不安が低気分、、外傷に従属するかを確認
特定場面だけでなく、自己像とに広く持続する抑制

⚠️ 胸痛、失神、局在神経症状、低酸素、高熱、妊娠、初発高齢、物質使用などがあれば「不安」と決めつけない。

治療

心理療法

  • は、の修正と段階的な曝露を組み合わせる。
  • では身体感覚への曝露、・では状況曝露、では社会場面への曝露を行う。
  • では心配の扱い、、、を用いる。

薬物療法

を第一選択として検討し、も有効である。開始初期には一過性に不安が増すことを説明し、低用量から調整する。効果発現には時間を要し、急な中止はを来すため段階的に減量する。では、急性期にと抗うつ薬を併用すると、いずれかの単独療法よりも有効という報告がある3。

ベンゾジアゼピンは依存、耐性、鎮静、転倒、認知影響があり、やの長期治療には用いない。では薬物よりが中心である。

経過

は青年期後半〜成人早期、は小児期、は青年期まで、はより緩徐に発症することが多い。未治療では慢性化し得るが、適切なと薬物療法で機能は改善する。

まとめ

  • とを区別する。
  • は・援助困難な5状況群のうち2つ以上への恐怖である。
  • 回避の悪循環を断つ曝露を含むと、必要に応じた/が治療の柱となる。

出典

  1. 1.The DSM-5: Classification and criteria changes(World Psychiatry・2013)DSM-5でDSM-IVの不安症群が、恐怖回路に基づく不安症群、強迫症など強迫関連の不安症群、心的外傷後ストレス障害など外傷・極度ストレスに由来する群、解離を特徴とする群という複数の章に再編されたこと閲覧 2026-08-26
  2. 2.A comparison of DSM-5 and DSM-IV agoraphobia in the World Mental Health Surveys(Depression and Anxiety・2019)DSM-5が広場恐怖症をパニック症の有無によらない独立した診断実体として定義したこと、27か国13万人超の調査でDSM-5基準による有病率がDSM-IV基準と同程度(生涯1.5%)であったこと閲覧 2026-08-26
  3. 3.Combined psychotherapy plus antidepressants for panic disorder with or without agoraphobia(Cochrane Database of Systematic Reviews・2007)21試験1709人のメタ解析で、急性期治療において認知行動療法と抗うつ薬の併用が、抗うつ薬単独(相対リスク1.24)および心理療法単独(相対リスク1.17)のいずれよりも有効だったこと閲覧 2026-08-26