精神医学

精神医学 · B-05

摂食症:診断基準と臨床管理

Eating Disorders: Diagnostic Criteria and Clinical Management

前提:正常
食物摂取の調節(視床下部弓状核)
疾患
摂食症(神経性やせ症・過食症)夜間摂食症候群
症状
衝動制御障害
スコア
夜間摂食質問票

🧠 全体像:は食行動だけの問題ではなく、・自己評価・と重篤な身体合併症が絡む精神疾患である。心理治療、栄養回復、身体安全管理を多職種で同時に進める。

主な診断

疾患 体重 後の
(anorexia nervosa:AN) エネルギー摂取制限、著しい、体重増加への恐怖、の障害 著しく低い 制限型ではなし、・排出型ではあり得る
制御不能なと不適切な、体型・体重への過度な自己評価 多くは正常域〜高値 あり、週1回以上・3か月
制御不能なと強い苦痛 問わない 習慣的にはなし、週1回以上・3か月
他の特定される 臨床的に重大だが完全な基準を満たさない 多様 多様

💡 の死亡率は精神疾患の中でも高い部類とされる。36研究のではが5.86、1.93、特定不能の1.92と、の中ではの死亡率が最も高く、死亡例の5人に1人が自殺によると報告されている1。

神経性やせ症

  • 年齢、性別、発達、身体健康に比して著しいとなる摂取制限
  • 体重増加・肥満への強い恐怖、または体重増加を妨げる持続行動
  • 体重・体型の体験の障害、自己評価への過大な影響、の重大性の認識不足
  • 制限型と・排出型に分ける

⚠️ 非定型では体重が「正常域」でも、急速・大幅な減量により医学的に不安定になり得る。だけでを決めない。

💡 ではの無月経基準が削除され、体重基準も特定の数値を必須としない記述に緩められた。基準を満たさない体重を除く他の基準を満たす例は「非定型」として位置づけられる2。は旧分類(-IV)では「特定不能の摂食障害」の一例に過ぎなかったが、で独立した診断となった3。

過食エピソード

限られた時間に通常より明らかに多量を食べ、摂食を制御できない感覚を伴う。BEDでは、早食い、苦しい満腹、空腹でないのに食べる、一人で隠れて食べる、後の嫌悪・などを伴う。

評価

精神・社会面

  • 食事制限、、嘔吐、下剤・利尿薬、
  • 、体重変化、月経、性機能
  • うつ、不安、OCD、物質使用、・自殺リスク
  • 家族、学校・職場、、トラウマ、糖尿病でのインスリン省略

身体面

評価 主な目的
バイタル・起立変化・体温 徐脈、低血圧、脱水、
電解質、腎・肝機能、血糖、Mg、P 嘔吐、下剤、、リスク
ECG 徐脈、QT延長、不整脈リスク
骨・ 長期による骨量低下・
歯科評価 による

重度の電解質異常、脱水、、臓器不全の兆候、自殺危険などでは急性期入院を考える。

治療

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='eating disorders'>摂食症</span>を疑う"] --> B["身体危険度と自殺リスクを評価"]
    B --> C{"医学的に不安定か"}
    C -->|"はい"| D["急性身体管理・入院"]
    C -->|"いいえ"| E["外来またはデイケア"]
    D --> F["栄養回復+電解質監視"]
    E --> F
    F --> G["疾患別<span class='jp-term jp-term-diagram' title='psychotherapy'>心理療法</span>"]
    G --> H["再発予防・家族支援・長期フォロー"]

心理療法

  • AN成人:に焦点化した、MANTRA、専門的支持的臨床管理など。
  • AN小児・青年:を中心に、家族が栄養回復を支える4。
  • 💡 12〜18歳のAN患者を対象としたRCTでは、家族基盤型治療(FBT)は個人療法と治療終了時の寛解率は同等だったが、6か月・12か月後の追跡ではFBTの方が有意に優れており、この長期優位性が思春期例でのFBT第一選択という位置づけの根拠になっている4。
  • BN:に焦点化したが中心。
  • BED:や。体重減少だけをにしない。

薬物療法

疾患 位置づけ
AN 薬物を単独治療にしない。時は副作用・QT・効果低下に注意し、併存症治療も栄養回復と統合する
BN などのが・を減らし得るが、と組み合わせる
BED は一部地域で中等度〜重度成人BEDに承認。循環器・依存リスクを評価する

再栄養

は、状態で栄養を再開した際のインスリン上昇により、P・K・Mgが細胞内へ移動し、心不全、呼吸不全、神経症状を生じる病態である。

⚠️ リスクを事前評価し、標準手順に沿ってエネルギーを増やし、P・K・Mg、血糖、、心機能を監視する。過度に慎重な継続も有害であり、経験あるが調整する。

💡 入院したを対象としたRCT(StRONG試験)では、でを開始する方法は低カロリー法と比べて安全性イベントを増やすことなく、より早く医学的安定を達成したと報告されている。過度に慎重な低カロリーが支持されてきた従来の実践に対し、より速いを支持する根拠となっている5。

まとめ

  • AN、BN、BEDは体重だけでなく・・認知で区別する。
  • が正常でも急速な減量やで重症になり得る。
  • 身体安全、栄養回復、疾患別を同時に行い、を監視する。

参考指針

出典

  1. 1.Mortality rates in patients with anorexia nervosa and other eating disorders. A meta-analysis of 36 studies(Archives of General Psychiatry・2011)36研究(神経性やせ症16万6642人年、神経性過食症3万2798人年、特定不能の摂食症2万2644人年)を統合したメタ解析で、加重死亡率が神経性やせ症で1000人年あたり5.1、神経性過食症で1.7、特定不能の摂食症で3.3、標準化死亡比が神経性やせ症5.86、神経性過食症1.93、特定不能の摂食症1.92であり、摂食症の中では神経性やせ症の死亡率が最も高かったこと、神経性やせ症で死亡した者の5人に1人が自殺によることを確認した。閲覧 2026-08-26
  2. 2.Anorexia Nervosa(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)DSM-5で神経性やせ症の無月経基準が削除されたこと、著しい低体重の基準を満たさないが他の基準を満たす例はDSM-5で非定型神経性やせ症(BMIが18.5kg/m²を超え得る)に分類されること、神経性やせ症は摂食症の中で最も高い死亡率を示し死亡例の25%が自殺によることを確認した。閲覧 2026-08-26
  3. 3.Binge-eating disorder diagnosis and treatment: a recap in front of DSM-5(BMC Psychiatry・2015)過食性障害(BED)がDSM-5で独立した診断として新たにコード化されたこと、心理療法(自助・CBTなど)がBEDの第一選択治療とされる一方、薬物療法・減量手術の役割はなお限定的なエビデンスにとどまることを確認した。閲覧 2026-08-26
  4. 4.Randomized clinical trial comparing family-based treatment with adolescent-focused individual therapy for adolescents with anorexia nervosa(Archives of General Psychiatry・2010)12〜18歳の神経性やせ症患者121人を対象としたRCTで、家族基盤型治療(FBT)と青年個人焦点化療法(AFT)は治療終了時の完全寛解率に差がなかったが、治療終了6か月後・12か月後の追跡ではFBTの方が完全寛解率で有意に優れていたことを確認した。閲覧 2026-08-26
  5. 5.Higher-Calorie Refeeding in Anorexia Nervosa: 1-Year Outcomes From a Randomized Controlled Trial(Pediatrics・2021)入院した思春期・若年成人の神経性やせ症患者111人を対象としたRCT(StRONG試験)で、高カロリー再栄養(1日2000kcalから開始し1日200kcalずつ増量)は低カロリー再栄養(1日1400kcalから開始)と比べて安全性イベントを増やすことなく医学的安定をより早く達成し、1年後の寛解率・再入院率にも有意差がなかったことを確認した。閲覧 2026-08-26