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Disease Atlas · 精神 · 病態

夜間摂食症候群

Night eating syndrome

別名
NES
臓器系
精神神経
科目
Psychiatry
トピック
精神医学 B-05:摂食症:診断基準と臨床管理精神医学 B-07:睡眠障害:診断基準と臨床管理
上位概念
摂食症(神経性やせ症・過食症)
治療薬
セルトラリン
症状
不眠
スコア
夜間摂食質問票

🧠 全体像:(NES)は「量」と「時間帯」と「意識」の3点で定義されるの一亜型である。1日摂取カロリーの相当量を夕食後に集中させ、夜間に目を覚まして食べる行動が反復するが、摂食していることを本人がはっきりし、翌朝も覚えているという点が、同じ「夜に食べる」現象を示す他の病態との最大の分かれ目になる。臨床的な仕事は突き詰めれば1つで、「夜、食べていた」という訴えを聞いたときに、意識と記憶の有無で少なくとも3つの別物を鑑別することである。

定義とDSM-5-TRでの位置づけ

-TRでは、NESは独立した診断カテゴリーではなく他の特定される食または摂食障害(OSFED)の一亜型として例示される。の骨子は、①睡眠からの覚醒後の摂食、または夕食後の過剰摂取が反復すること、②その摂食に対する意識とが保たれていること、③摂食がの変化(など)や地域の社会規範だけでは説明できないこと、④有意な苦痛または機能障害を伴うこと、である1。

⭐ -TRの定義文が「の変化では説明できない」と明記している点が重要。 単なる夜型の生活リズム(者が夜に主食を摂る、単に夜更かしで小腹が空く等)は、それ自体ではを満たさない1。

Allison(2010)が提案した実務的なはさらに具体的で、総摂取カロリーの25%以上を夕食後に摂取する、または平均週2回以上の夜間摂食を主要基準とし、朝の、夕食から就寝までの間に食べたいという欲求、、食べないと眠れないという思い込み、夕方〜夜の気分低下、のうち3項目以上を伴い、3か月以上持続し、他の疾患で説明されないことを求める2。

病態生理

⭐ 摂食・睡眠・気分に関わるの後方シフトが中核にあると考えられている。健常者では摂取カロリーの大半が日中〜夕方に集中するが、NESでは摂食パターンそのものが夜側へシフトし、・時の摂食という形で現れる。夕食後の強い食欲や「食べないと眠れない」という思い込みは、こののずれを患者自身が経験的に補おうとする行動と理解できる。うつ病との関連が強く報告されており、ストレス応答系の関与も想定されている3。

flowchart TD
    A["摂食・睡眠・気分に関わる<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='circadian rhythm'>概日リズム</span>の後方シフト"] --> B["夕食後の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='increased appetite'>食欲亢進</span><br>朝の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anorexia'>食欲不振</span>"]
    A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='difficulty falling asleep (sleep-onset insomnia)'>入眠困難</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='nocturnal awakening'>中途覚醒</span>"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nocturnal awakening'>中途覚醒</span>時に食べないと<br>眠れないという思い込み"]
    B --> E["夕食後の過剰摂取・夜間摂食"]
    D --> E
    A --> F["夕方〜夜の気分低下"]

⚠️ 3つの「夜に食べる」を区別する

⚠️ 「夜、食べていた」という訴えを、そのままと決めつけない。 実害が大きいのはここで、少なくとも3つの別物が同じを作る。

病態 分類上の位置づけ 摂食時の意識・記憶 中核的な特徴
(NES) 、OSFEDの一亜型 覚醒しており保たれる 夕食後の摂取カロリー比率が高い、朝の、、夕方〜夜の気分低下
(SRED) (の一型) 低下〜消失、健忘を伴う 生食材・冷凍食品・非食物の摂取もありうる。原因の多くが薬剤性(など)
(BED) の病型の一つ 覚醒しており保たれる 夜間に限らず生じる制御不能な。NES患者よりエピソード頻度・が多い2
単なる夜型の生活・ 病的分類ではない 覚醒しており保たれる 生活リズム上の選択・就労形態で説明でき、苦痛・機能障害を伴わない

⭐ 翌朝、前夜の摂食を本人へ伝えて反応を見るだけで、SREDとの大まかな鑑別がつく。 覚えていて驚かなければNES系(NESまたは単なる夜型生活)、覚えておらず驚けばSREDを疑う。NESと単なる夜型生活は、苦痛・機能障害の有無と、朝の・など随伴基準を満たすかどうかで区別する。NESとBEDは、が夜間に集中し夕食後の摂取比率という「量と時間帯」の基準を満たすかどうかで区別し、BEDは時間帯を問わない制御不能なが中核になる2。

疫学

⚠️ の数字は「どの集団を、どの閾値で数えたか」とセットで読む。 米国でのは1.5%で、と同程度とされる3。

これに対し、・肥満・を受ける患者という臨床集団を対象にした系統的レビューでは、は3〜15%と一桁高い水準になる2。⭐ この幅は集団の違いだけでなく判定の閾値でも動く——同レビューは、夜間摂食(NEQ)30点超を診断とすると2.8〜8.2%、25点以上まで緩めると6.9〜15.2%になると述べている2。肥満集団では最大24.62%、を受ける集団では最大20%に達する2。⚠️ を希望する集団の値は、判定の仕方でさらに大きく振れる。 同じことを扱った別の総説では6〜64%と報告され、症状ベースまで緩めれば最大55%が何らかの夜間状を訴えたとされる3。「」という一語の下に、母集団も判定基準も違うものが並んでいることに注意する。

が前提になるとは対照的に、NESは肥満・との関連が強く報告されている病型である。

対応の考え方

治療は・に共通する枠組みに準じ、、(など)、が用いられる3。確立された単一の第一選択治療は無く、不眠やといった随伴症状への対応を並行して行う。

まとめ

  • (NES)は-TRでOSFEDの一亜型として例示され、摂食への意識・記憶が保たれる点が最大の特徴である。
  • の骨子は「量」(夕食後の摂取カロリー比率、夜間摂食の頻度)と「随伴症状」(朝の・・気分低下など)の組み合わせで、単なる夜型の生活や由来の摂食パターンとは、苦痛・機能障害の有無で区別される。
  • 意識・記憶を失うSRED、時間帯を問わないが中核のBEDとは、それぞれ異なる軸(意識の有無、量と時間帯の基準)で鑑別する。
  • ⚠️ は母集団と閾値で大きく変わる。 米国全体では1.5%だが、・肥満・の臨床集団を集めた系統的レビューでは3〜15%(NEQ30点超なら2.8〜8.2%、25点以上まで緩めると6.9〜15.2%)、肥満集団で最大24.62%、集団で最大20%(別の総説では6〜64%、症状ベースで最大55%)である。
  • 治療は・・など・の枠組みに準じ、単一の確立した第一選択は無い。

出典

  1. 1.DSM-5-TR Diagnostic Criteria for Eating Disorders(American Psychiatric Association(InsideOut Instituteによる基準集の転載)・2022)DSM-5-TRにおいて夜間摂食症候群は他の特定される食行動障害または摂食障害(OSFED)の一亜型として例示され、診断基準は睡眠からの覚醒後の摂食または夕食後の過剰摂取が反復すること、摂食に対する意識と想起が保たれていること、その摂食が睡眠覚醒周期の変化や地域の社会規範だけでは説明できないこと、有意な苦痛または機能障害を伴うこと、過食性障害など他の精神疾患・物質使用・身体疾患・薬剤の影響では説明できないことであるのを確認した。旧URLのPDF(assets/dsm-5 criteria.pdf)は現在 HTTP 308 で同機関の HTML 版(ページ表示の最終レビュー日は2022年10月1日)へ転送されるため、転送先で本文を確認した。閲覧 2026-09-24
  2. 2.Night Eating Syndrome in Patients With Obesity and Binge Eating Disorder: A Systematic Review(Frontiers in Psychology・2021)Allison(2010)の診断基準(総摂取カロリーの25%以上を夕食後に摂取する、または平均週2回以上の夜間摂食、摂食行動と摂取への意識が保たれていること、朝の食欲不振・入眠困難・夕方から夜の気分低下などの付随基準を3項目以上、3か月以上の持続、他の疾患で説明されないこと)を確認したほか、過食性障害(BED)患者はNES患者より客観的・主観的な過食エピソードの頻度が高く情動的摂食も多いこと、本レビューが対象としたのが摂食症・肥満・減量手術を受ける臨床集団であり(原文「In this review, individuals with EDs, obesity and/or bariatric surgery patients were considered」)、そこでの有病率が夜間摂食質問票(NEQ)30点超を診断とすると2.8〜8.2%、25点以上まで緩めると6.9〜15.2%、考察では most studies で3〜15%とまとめられていること、肥満集団で最大24.62%・減量手術集団で最大20%に達すること、全文に「general population」の語が一度も現れず本レビューは一般集団の有病率を示していないことを確認した(2026-09-06に PMC8766715 の全文を取得)。閲覧 2026-08-12
  3. 3.Night Eating Syndrome(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2022)夜間摂食症候群の治療は認知行動療法・SSRI・光線療法など摂食症・気分障害の枠組みに準じること、米国での有病率が1.5%で過食性障害と同程度とされること、肥満集団でより多く見られるが患者の全員が肥満ではないこと、発症が10代後半から20代後半に多いこと、減量手術を希望する肥満者では総説により有病率6〜64%と報告され別の研究では最大55%が何らかの夜間摂食症状を訴えたことを確認した(2026-09-06に NBK585047 の全文を取得。最終更新2022年9月14日)。閲覧 2026-09-06