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Symptoms · Published

睡眠関連摂食障害

Sleep-related eating disorder

別名
SRED睡眠時摂食障害
臓器系
神経精神
科目
NeurologyPsychiatryPharmacology
トピック
神経内科 G3-25:生理的睡眠と睡眠障害精神医学 B-07:睡眠障害:診断基準と臨床管理薬理学 A17:非ベンゾジアゼピン系抗不安薬・睡眠薬
起因薬
ゾルピデム

🧠 全体像は、本人の記憶がないまま夜間に摂食が反復する点でと同じの一型に属する。他のと一線を画すのは原因の多くが薬剤性だという点で、なかでも非、代表は)は原因薬を中止するだけで消退する例が大半を占める。臨床的な仕事は2つに分かれる。覚醒しており記憶も保たれると混同しないこと、そして非食物・生食材の摂取や調理行動がもたらす外傷・熱傷・のリスクを見極めることである。

定義と用語の整理

患者側の訴えは「朝起きたらキッチンが荒れていた」「冷蔵庫の中身が減っているのに食べた記憶がない」「体重が知らないうちに増えている」のように、行為の痕跡からする形をとる。本人が摂食行動そのものをしていないことが診断の出発点になる。

と同じ「」の家族に属し、深いNREM睡眠からの不完全な覚醒という共通機序を持つ(機序の詳細はを参照)。国際分類では、睡眠期間中に反復する不適応な摂食に部分的〜完全な意識障害とその健忘を伴うことを中核基準とし、生食材・冷凍食品・非食物(石鹸・など)の摂取や、調理・食物探索行動に伴う受傷、健康への悪影響のいずれかを伴うことをに含める1

用語として最も混同されやすい相手は(NES)である。どちらも「夜、食べる」という現象を指すため同一視されやすいが、意識と記憶の有無で根本的に異なる。

項目
分類上の位置づけ 睡眠随伴症(の一型) 、他の特定される(OSFED)の一亜型
摂食時の意識 低下〜消失 覚醒しており保たれる
摂食後の記憶 乏しい〜無い 保たれている
摂食内容 生食材・冷凍食品・非食物(石鹸・など)に及ぶことがある 通常の食品の
診断上重視する軸 睡眠随伴症としての随伴症状(外傷・危険行動) 夕食後の摂取カロリー比率、朝の、気分症状

💡 NESのは「量」と「時間帯」で立てる。 1日の摂取カロリーの25%以上を夕食後に摂り、少なくとも週2回は夜間に目を覚まして食べること、加えて夕食後の強い食欲・朝の・夜間に食べないと眠れないという思い込み・夕方から夜の気分低下のうち複数を満たすことが診断の中心になる。NESはうつ病との関連が強く報告されており、治療も・SSRI(など)・といったの枠組みに準じる2

「夜に食べている」だけで両者を区別しない。のように食べていた」という家族の証言の多くはSREDだが、「夕食後お腹が空いて仕方なく食べてしまう、覚えている」という訴えはNESであり、対応の枠組みがまったく異なる。翌朝に前夜の摂食を本人へ告げて反応を見る(覚えているか、驚くか)だけでも大まかな鑑別になる。

病態生理

深いNREM睡眠からの不完全な覚醒により運動系だけが先に覚醒し、状況判断を担うは眠り続けるという機序はと共通する。SREDに固有なのは、この解離状態の中で摂食・の回路が特異的にされる点である。

)が最も重要な原因である。 はGABA-A受容体を増強して深い睡眠を作りやすくする一方、覚醒の閾値を不均一に下げるため、運動系・摂食回路だけが先に覚醒する解離を誘発しやすい。WHOの医薬品安全性データベースを用いた解析では、薬剤関連SRED676例のうちが約36%を占めて最多であり、次いで(約27%)、(約14%)と続く。については症例集積・観察研究のいずれでも関連が支持されており、原因薬を中止すればほぼ全例で症状が消退する1。米国FDAは2019年、を含む(睡眠関連摂食を含む)についてのと、既往患者への使用禁忌を設けている3

💡 以外の薬剤でも起こりうる。 抗精神病薬(など)、一部の抗うつ薬、でも報告されており、いずれも中止・減量で消退する例が多い1

薬剤以外の背景としては、、断眠・不規則な睡眠時間が繰り返し報告されている。SRED患者のとしては不眠が約59%、が約47%、が約26%を占め、精神疾患の併存も約38%にのぼる1。日中の食事制限下でも発症した報告はあるが、これを主要な誘因として一般化できるだけの強い根拠は無い。

⚠️ 見逃してはいけないこと

⚠️ 非食物・生食材の摂取と調理行動による受傷を今夜のリスクとして扱う。 生の肉、冷凍のまま咬んで欠けた歯、石鹸・・ペットフードの摂取、熱い鍋やオーブンによる熱傷が報告されている。調理を始めたままベッドに戻り火を消し忘れてに至った例もあり、キッチンの安全確保は環境整備の最優先事項になる1

体重増加と代謝への影響を過小評価しない。 食事制限や運動を続けていても、6か月で20kg、12か月で6kg増加したという報告があるほど体重増加は顕著になりうる。肥満・への進展を見込んだ経過観察が要る1

⚠️ 糖尿病治療中の患者では血糖の変化を手がかりにする。 低血糖はNREM睡眠からの部分的覚醒とそれに続く摂食エピソードの誘因になりうるため、原因不明の低血糖や体重変化があれば夜間血糖の変動を評価する価値がある。逆に、されない夜間摂食が続けばの悪化・体重増加として現れることもある1

⚠️ ・短時間・高頻度の反復はを疑う。 毎晩ほぼ同じ動きを短時間で反復する例は、と同様にを鑑別に挙げる。SREDのエピソードは食物を探し調理するという目的的な行動を伴い、や複雑さにばらつきがある点で定型発作とは異なり、同時記録でてんかん様活動を認めないことを確認できる1

⚠️ 本人が症状を申告しないことがある。 摂食内容への羞恥心や、体重増加を別の原因と誤解していることから、能動的に尋ねない限り申告されない。診断・治療の遅れは体重増加や受傷リスクの持続に直結する1

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["夜間に食べていたことが<br>後から判明する"] --> B{"翌朝、前夜の摂食を伝えると<br>覚えている・驚かないか"}
    B -->|"覚えている・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='awareness (subjective)'>自覚</span>あり"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='night eating syndrome'>夜間摂食症候群</span>を疑う<br>気分症状・摂食パターンを確認"]
    B -->|"覚えていない・驚く"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sleep-related eating disorder'>睡眠関連摂食障害</span>を疑う"]
    D --> E{"毎晩ほぼ同じ動きを<br>短時間で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='routine'>定型的</span>に反復するか"}
    E -->|"あり"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nocturnal epilepsy'>夜間てんかん</span>を疑い<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='video-EEG monitoring'>ビデオ脳波モニタリング</span>へ"]
    E -->|"なし・目的的な摂食行動"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='medication history'>薬歴</span>を確認:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Z-drugs'>Z薬</span>・抗精神病薬・<br>抗うつ薬・ベンゾジアゼピン"]
    G --> H{"原因薬が同定されるか"}
    H -->|"あり"| I["原因薬の中止・変更を試みる"]
    H -->|"なし"| J["誘因を検索:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='restless legs syndrome (RLS)'>レストレスレッグス症候群</span>・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='obstructive sleep apnea, OSA'>閉塞性睡眠時無呼吸</span>・断眠・血糖変動"]
    I --> K["キッチンの安全確保と<br>経過の再評価"]
    J --> K

では、翌朝に前夜の摂食を本人へ伝えて反応を見るだけでとの大まかな切り分けがつく。と判断したら、毎晩の反復パターンからを除外し、次に(特に)を確認して原因薬の有無を判定し、原因薬が無ければ・断眠・血糖変動といった誘因を検索する、という順で進める。

対応の考え方

対応は原因薬の中止・変更を最優先に、誘因の是正とキッチンの安全確保を重ねる。薬物療法は確立した第一選択が無く、限定的な位置づけにとどまる。

まとめ

  • は本人の記憶がないまま夜間に摂食が反復するの一型で、覚醒下で記憶が保たれるとは意識・記憶の有無で区別する。
  • 原因の多くが薬剤性で、非、特に)が薬剤関連例の最多を占め、中止で消退することが多い。FDAは2019年にへのと使用禁忌を設けている。
  • ・断眠も誘因になりうる。
  • 危険度の順に、非食物・生食材の摂取や調理行動による外傷・熱傷・、体重増加と代謝への影響、血糖変動、との鑑別を見逃さない。
  • 毎晩ほぼ同じ動きをに反復する例はを疑い、目的的な摂食行動を伴うSREDとは・複雑さのばらつきで区別する。
  • 対応は原因薬の中止・変更を最優先に、誘因是正とキッチンの安全確保を重ね、薬物療法(など)は確立した第一選択が無く補助的な位置づけにとどまる。

出典

  1. 1.Night Eating Syndrome(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2022)夜間摂食症候群(NES)が1日摂取カロリーの25%以上を夕食後に摂り週2回以上夜間覚醒下で摂食する、意識・記憶が保たれた摂食症の一亜型であること、診断上は強い食欲・朝の食欲不振・入眠困難・気分低下など複数の付随基準を満たす必要があること、睡眠関連摂食障害との主要な鑑別点が意識・記憶の有無であること、治療は認知行動療法・SSRI・光線療法など摂食症・気分障害の枠組みに準じることを確認した。閲覧 2026-08-03
  2. 2.Current evidence and future perspectives in the exploration of sleep-related eating disorder – a systematic literature review(Frontiers in Psychiatry・2024)睡眠関連摂食障害の診断基準(部分的〜完全な意識障害・健忘、生食材・冷凍食品・非食物摂取、受傷リスク)、薬剤関連例における非ベンゾジアゼピン系睡眠薬(特にゾルピデム約36%)の突出した頻度と原因薬中止によるほぼ全例での消退、レストレスレッグス症候群(47%)・閉塞性睡眠時無呼吸(26%)などの併存疾患の頻度、体重増加(6か月で20kg等)や火災リスクを含む合併症、トピラマートのレスポンダー率68%と高い副作用発生率、確立した第一選択治療が無いことを確認した。閲覧 2026-08-03
  3. 3.FDA requires new warning for several insomnia medications(American Academy of Sleep Medicine・2019)FDAが2019年にゾルピデム・ザレプロン・エスゾピクロンへ複雑睡眠行動(睡眠関連摂食を含む)についての枠組み警告と、既往患者への使用禁忌を追加したことを確認した。閲覧 2026-08-03