脳神経内科学

脳神経内科学 · G3-25

生理的睡眠と睡眠障害

G3-25: The physiological sleep and the sleep disorders

前提:正常
脳波(EEG);睡眠現象。学習と記憶。網様体とモノアミン作動系
疾患
むずむず脚症候群睡眠関連過運動てんかん
症状
カタプレキシーセクソムニア悪夢錯乱性覚醒歯ぎしり周期性四肢運動睡眠関連幻覚睡眠関連摂食障害睡眠時随伴症睡眠時遊行症頭内爆発音症候群反復孤発性睡眠麻痺非回復性睡眠夜驚症
検査値
アクチグラフィ覚醒維持検査終夜睡眠ポリグラフ検査反復睡眠潜時検査

🧠 全体像:睡眠はNREM睡眠とREM睡眠が約90分周期で反復する能動的な生理状態である。睡眠障害は「眠れない」だけでなく、、、、睡眠時行動、運動障害に分け、病歴・と目的に合った検査で診断する1。

睡眠構築

段階 ・生理 主な特徴
N1 低振幅混合周波数、緩徐眼球運動 覚醒から睡眠への移行、容易に覚醒
N2 、K複合 成人睡眠の最大部分を占め、心拍・体温が低下
N3 深いNREM睡眠、が高い、分泌と関連
REM 低振幅混合周波数、急速眼球運動、 鮮明な夢、自律神経変動。呼吸筋と眼筋は完全には抑制されない

入眠後はNREMからREMへ移り、一晩に複数回反復する。前半はN3、後半はREMが多い。睡眠は記憶処理、情動、免疫、代謝、に関与するが、各段階を単一機能に一対一対応させない。

💡 現行のN1〜N3・REMという4段階表記は、旧来のRechtschaffen–Kales方式の3・4を統合したものである。 米国睡眠医学会(AASM)の判定基準は旧来の4段階NREM分類の3と4を単一のN3()にまとめ、現在のN1・N2・N3・Rの4区分とした2。

睡眠障害の分類

ICSD-3-TR大分類 代表例 主な訴え
、短期 入眠・維持困難、と日中機能障害
閉塞性・、低換気 いびき、無呼吸、、日中眠気
、 十分な睡眠でも強い日中眠気
・前進、、 との不一致
、、 睡眠中の行動・体験
、 不快感、動かしたい衝動、反復運動

代表疾患

は、十分ながあるのに夜間症状と日中障害が反復する状態である。ストレス、、疼痛、薬剤、、睡眠時無呼吸を併存症として評価し、「心理的原因だけ」としない。

ではにより無呼吸・、、低酸素が反復する。大きないびき、無呼吸、起床時頭痛、、眠気が手掛かりである。は自体が低下し、心不全、オピオイド、高地、など原因別に扱う。

は、安静で生じる不快な下肢感覚と動かしたい衝動が、運動で改善し、夕方・夜間に悪化する。鉄欠乏、妊娠、腎不全、薬剤を評価する。

ではに、情動で誘発される、、入眠時・、夜間を伴いうる。を「」と混同しない。

💡 1型は()欠乏で定義される。 -1濃度110 pg/mL未満(または健常者平均の1/3未満)が診断的基準であり、この欠乏の有無が1型・2型を分ける主な違いである3。産生ニューロンの選択的喪失は-DQB1*06:02を背景としたが想定されており、単純な遺伝病ではない4。

⚠️ 2009年のワクチン接種後に発症リスクの増加が報告された。 添加H1N1ワクチンPandemrix接種後、20歳以下で2.92、21〜30歳で2.18と診断リスクの増加がスウェーデンのコホートで確認され、40歳超では増加を認めなかった5。

⭐ は病のでありうる。 特発性から(主に)への率は、多施設前向きコホートで診断から2年で10.6%、5年で31.3%、12年で73.5%に達する6。などの指標とともに、パーキンソン病の研究基準における非運動症状の尤度比に組み込まれている7。

下図は同じ多施設前向きコホートで報告された時点別の率である。観察された集団の推定値であり、個人が各時点までに発症する確率を確定するものではない。

xychart-beta
    title "特発性REM睡眠行動障害からの累積表現型変換率"
    x-axis "診断後年数" [0, 2, 5, 12]
    y-axis "累積表現型変換率(%)" 0 --> 80
    bar [0, 10.6, 31.3, 73.5]

診断

flowchart TD
    A["不眠・眠気・いびき・睡眠時行動"] --> B["睡眠時間・規則性・薬剤・併存症"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sleep diary'>睡眠日誌</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='questionnaire'>質問票</span>・必要時<span class='jp-term jp-term-diagram' title='actigraphy'>アクチグラフィ</span>"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='respiratory impairment'>呼吸障害</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='abnormal behavior'>異常行動</span>が疑わしい"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='polysomnography (PSG)'>終夜睡眠ポリグラフ</span>"]
    C --> F["単純な高リスクOSAで併存症が少ない"]
    F --> G["適切な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='home sleep apnea test'>在宅睡眠時無呼吸検査</span>"]
    C --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='narcolepsy'>ナルコレプシー</span>疑い"]
    H --> I["十分な睡眠確認後にPSGと<span class='jp-term jp-term-diagram' title='multiple sleep latency test (MSLT)'>反復睡眠潜時検査</span>"]

の診断にを通常は用いない。は、合併症の少ない成人で中等度以上のが疑われる場合に適し、、低換気、重い心肺・神経筋疾患では検査室評価を選ぶ。

治療

  • :が第一選択で、、、、リラクゼーションを組み合わせる8。指導だけでは治療として不十分である。
  • :CPAPを中心に、体重・飲酒、体位、、解剖学的治療を重症度と希望に合わせる。⚠️ CPAPは症状を改善するが、心血管イベントの効果は無作為化試験で示されていない。 中等度〜重度OSAと冠動脈疾患・を有する2,717例を対象としたSAVE試験では、CPAP追加群と通常治療群で心血管死・心筋梗塞・脳卒中などのに有意差がなかった(1.10、95%CI 0.91-1.32)9。
  • :鉄指標を測定し、基準に応じて鉄補充する。、などを重視する。長期は症状増強を起こすため、現在は多くの患者で安易な第一選択にしない10。
  • :規則的睡眠とに、、、、などを症状・地域承認に応じて選ぶ。
  • :危険物、窓、への対策を行い、睡眠不足・薬剤・睡眠時無呼吸など誘因を治療する。
  • :望ましい時刻に合わせて光、、睡眠時刻を病型別に調整し、自己流の急激な時刻移動を一律に勧めない。

まとめ

  • 睡眠はNREMとREMが周期的に反復し、前半にN3、後半にREMが増える。
  • 睡眠障害はICSDの6大分類で整理し、症状に合う検査だけを行う。
  • は-I、はCPAPが治療の軸となる。
  • では鉄評価とを重視し、の長期的症状増強に注意する。

出典

  1. 1.International classification of sleep disorders-third edition: highlights and modifications(Chest (American Academy of Sleep Medicine)・2014)ICSD-3が不眠症群・睡眠関連呼吸障害群・中枢性過眠症群・概日リズム睡眠・覚醒障害群・睡眠関連運動障害群・睡眠時随伴症群・その他の睡眠障害という枠組みで構成されることを確認した。閲覧 2026-08-27
  2. 2.The Visual Scoring of Sleep in Adults(Journal of Clinical Sleep Medicine(著者 Michael H. Silber, Sonia Ancoli-Israel, Michael H. Bonnet ら)・2007)米国睡眠医学会(AASM)の判定基準では、従来のRechtschaffen–Kales方式の睡眠段階3と4を統合して単一のN3(徐波睡眠)とし、睡眠段階をN1・N2・N3・Rの4つで表すことを確認した。閲覧 2026-08-27
  3. 3.Narcolepsy(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)ナルコレプシー1型・2型の主な違いがカタプレキシーの有無であること、髄液オレキシン(ヒポクレチン)-1濃度110 pg/mL未満または健常者平均の1/3未満が低値の診断的基準であることを確認した。閲覧 2026-08-27
  4. 4.Narcolepsy — clinical spectrum, aetiopathophysiology, diagnosis and treatment(Nature Reviews Neurology(著者 Claudio L. A. Bassetti, Antoine Adamantidis, Denis Burdakov ら)・2019)ナルコレプシー1型はオレキシン(ヒポクレチン)産生ニューロンの選択的喪失によるもので、HLA-DQB1*06:02を背景とした自己免疫機序が想定され、単純なメンデル遺伝病ではないことを確認した。閲覧 2026-08-27
  5. 5.Risks of neurological and immune-related diseases, including narcolepsy, after vaccination with Pandemrix: a population- and registry-based cohort study with over 2 years of follow-up(Journal of Internal Medicine・2014)スウェーデンで334万人が接種したコホート研究で、2009年のパンデミックワクチンPandemrix接種後にナルコレプシー診断のハザード比が20歳以下で2.92、21〜30歳で2.18と増加した一方、40歳超では増加を認めなかったことをResultsで確認した。閲覧 2026-08-27
  6. 6.Risk and predictors of dementia and parkinsonism in idiopathic REM sleep behaviour disorder: a multicentre study(Brain (International RBD Study Group)・2019)孤発性REM睡眠行動異常症から神経変性疾患(主にα-シヌクレイノパチー)への表現型変換率が、多施設前向きコホートで診断から2年で10.6%、5年で31.3%、12年で73.5%に達するという数値をResultsで確認した。閲覧 2026-08-27
  7. 7.Update of the MDS research criteria for prodromal Parkinson's disease(Movement Disorders (International Parkinson and Movement Disorder Society)・2019)MDSの前駆期パーキンソン病研究基準で、REM睡眠行動障害が嗅覚低下などと並ぶ非運動症状の前駆期指標として尤度比に組み込まれていることを抄録で確認した。閲覧 2026-08-27
  8. 8.Management of Chronic Insomnia Disorder in Adults: A Clinical Practice Guideline From the American College of Physicians(American College of Physicians / Annals of Internal Medicine・2016)全成人の慢性不眠症に対し不眠症認知行動療法(CBT-I)を初期治療として強く推奨し、単独で改善しない場合に限り薬物療法の追加を検討するという2段階の推奨構造を確認した。閲覧 2026-08-27
  9. 9.CPAP for Prevention of Cardiovascular Events in Obstructive Sleep Apnea(New England Journal of Medicine・2016)中等度〜重度閉塞性睡眠時無呼吸と冠動脈疾患・脳血管疾患を有する2,717例を対象とした無作為化試験(SAVE試験)で、CPAP追加群と通常治療群の間で心血管死・心筋梗塞・脳卒中などの複合エンドポイントに有意差がなかった(ハザード比1.10、95%CI 0.91-1.32、平均追跡3.7年)ことをResultsで確認した。閲覧 2026-08-27
  10. 10.Treatment of restless legs syndrome and periodic limb movement disorder: an American Academy of Sleep Medicine clinical practice guideline(American Academy of Sleep Medicine / Journal of Clinical Sleep Medicine・2025)成人RLSの鉄補充閾値(血清フェリチン75 ng/mL以下またはトランスフェリン飽和度20%未満)、α2δリガンドを推奨する一方でプラミペキソール・ロピニロールなどドパミン作動薬の標準的使用はオーグメンテーション(長期使用に伴う症状の早期化・重症化・部位拡大)を理由に推奨しないことを確認した。閲覧 2026-08-27