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終夜睡眠ポリグラフ検査

Polysomnography

別名
PSG睡眠ポリグラフ検査終夜PSG
臓器系
呼吸器神経
科目
Pulmonology and Thoracic SurgeryNeurologyMedical Physiology
トピック
呼吸器内科 33:睡眠関連呼吸障害の診断神経内科 G3-25:生理的睡眠と睡眠障害生理学 8.11:脳波(EEG);睡眠現象。学習と記憶。
関連疾患
ポリオ後症候群血管性・レビー小体型・前頭側頭型認知症など非アルツハイマー型認知症睡眠関連過運動てんかん致死性家族性不眠症中枢性睡眠時無呼吸・肥満低換気症候群特発性過眠症不眠障害・ナルコレプシー閉塞性睡眠時無呼吸

🧠 全体像:(PSG)はのである。何が決定的に違うかというと、・眼球運動・を記録するため「眠っていたか」「どの段階だったか」が分かる点にある——ここから、真の睡眠時間を分母にした指標、でしか捉えられないイベント、睡眠段階に依存する現象、睡眠中のが、すべて評価可能になる。したがってPSGは「を見つける精密版」ではなく、呼吸以外の睡眠障害まで含めて答えを出せる検査と捉えるのが正しい。一方で施設で一晩を過ごす負担と、単一の夜しか見られないという限界を常に抱える。

何を記録しているか

タイプ1(施設内・技師付き添い)の診断的PSGが記録する信号は、何を判定するためのものかで3群に分けて覚える1。

群 記録する信号 何が決まるか
睡眠そのものを決める (推奨誘導F4/M1・C4/M1・O2/M1、予備F3/M2・C3/M2・O1/M2)、眼球運動電図(E1-M2・E2-M2)、 睡眠段階、、
呼吸イベントを決める 口鼻(無呼吸)、鼻圧センサー()、胸腹のモニタ、 無呼吸・の有無と種類、低下
併存する現象を拾う 心電図II誘導、の、いびき・体位・映像記録 不整脈、、体位依存性、睡眠中の

💡 第1群があるかどうかが、在宅検査との本質的な差である。 が無ければ覚醒と睡眠を区別できず、も検出できない。が記録時間を分母にせざるを得ない理由はここにある。

💡 の記録が「閉塞性か中枢性か」を決める。 気流が止まっている間に胸腹の努力が続いていれば閉塞性、努力そのものが消えていれば中枢性である——は「イベント全体を通じて吸気努力を欠く」ことで定義される2。気流だけを見ていては、この区別ができない。

睡眠段階をどう決めるか

⭐ 判定は30秒ごとの「エポック」を単位に行い、1エポックに1つの段階を割り当てる1。段階は覚醒(W)、NREM睡眠のN1・N2・N3、REM睡眠(R)の5つで、いずれも・眼球運動電図・の3信号の組合せから決まる1。

段階 決め手になる所見
W(覚醒) 後頭部優位のα波、や速い眼球運動、高い活動
N1 低振幅・混合周波数のと緩徐眼球運動。覚醒からの移行段階でが低い
N2 低振幅混合周波数の背景にとが出現する1。成人の睡眠の最大部分を占める
N3 0.5〜2 Hzのδ波が優勢で振幅75 µVを超える1。が最も高い
R(REM睡眠) 急速眼球運動と筋緊張の消失。は覚醒時に近い低振幅の脱同期

💡 段階を付けられることが、そのまま「分母」と「分断」を測れることを意味する。 段階の付いたエポックの合計がで、AHI・RDIの分母はここから来る。時間に対するの割合が、消灯から最初の睡眠エポックまでが入眠である。⭐ は、段階が覚醒へ戻るには至らない数秒のの切り替わりであり、本人に目覚めたはない——やRERAの判定条件にこれを含められるのは、を録っているPSGだけである。

実施法と判定基準

判定はAASMの判定マニュアルに従う。⭐ 版を確認する習慣を持つ——第3版は2023年に公開された3。呼吸イベントの中核的な定義は次のとおり。

イベント 定義
無呼吸 気流信号の振幅がイベント前から90%以上低下し、10秒以上持続する2
(推奨基準) 振幅が30%以上低下して10秒以上持続し、3%以上の低下またはを伴う2
(4%基準) 30%以上の低下+4%以上の低下。2012年時点では代替として許容される位置づけだったが2、第3版では認定施設に3%基準(1A)の使用を求め、4%基準(1B)は保険上必要な患者について併記する位置づけになった3
イベント全体を通じて吸気努力を欠く2
flowchart TD
    A["気流信号の振幅が低下した区間を見つける"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='baseline'>基線</span>から90%以上の低下が<br>10秒以上続くか"}
    B -->|"はい"| C["無呼吸"]
    C --> D{"イベント中に胸腹の吸気努力があるか"}
    D -->|"ある"| E["閉塞性無呼吸"]
    D -->|"ない"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='central apnea'>中枢性無呼吸</span>"]
    B -->|"いいえ"| G{"30%以上の低下が10秒以上続き<br>3%以上の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='O₂ saturation'>酸素飽和度</span>低下<br>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arousal'>覚醒反応</span>を伴うか"}
    G -->|"はい"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypopnea'>低呼吸</span>"]
    G -->|"いいえ"| I{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='respiratory effort'>呼吸努力</span>の増大に続いて<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='arousal'>覚醒反応</span>が生じているか"}
    I -->|"はい"| J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='respiratory effort'>呼吸努力</span>関連覚醒(RERA)<br>AHIには入らずRDIにだけ入る"]
    I -->|"いいえ"| K["イベントとして数えない"]

⚠️ どのルールで判定したかによって、同じ一晩の記録から違う重症度が出る。 4%基準はだけを伴うを拾わないため、3%・基準よりイベント数が少なくなる。報告書を読むときは採用された判則と版を確認する——数値だけを他施設の結果と並べない。

所見の意味(何が示唆されるか)

AHI・RDI・RERAの区別

3つは分子が違う。AHIだけを見ると、の増加だけで眠りが分断されている患者を取りこぼす。

指標 分子 分母
AHI() 無呼吸+ 睡眠1時間
RERA指数 関連覚醒(気流低下がの基準に達しないまま、努力の増大によってが生じるイベント) 睡眠1時間
RDI(指数) 無呼吸++RERA 睡眠1時間

RDIはAHIにRERA指数を加えたものとして定義される2。⭐ AHIが正常でもRDIが高い患者がいる——RERAを数えなければ、日中の眠気の原因が「検査は正常だった」で終わってしまう。

成人の重症度区分は、AASMの成人OSA診療ガイドラインがコンセンサスとして軽症5以上15未満、中等症15以上30以下、重症30超(回/時、RDIで定義)を示している4。⚠️ 境界値をどちらの区分に入れるかは資料によって揺れる(5回/時以下を正常と書く資料もある1)ので、AHIがちょうど5・15・30の報告書では、どの定義で判定したかを確かめてから重症度を口にする。

PSGでなければ答えられない問い

⚠️ PSGを選ぶ理由は「精度が高いから」ではなく「その問いが在宅検査では原理的に解けないから」である。

問い PSGが要る理由
CPAP・BPAPをどの圧に設定するか 中の睡眠段階とを見ながら圧を上げる必要がある1
か 前夜のPSGで睡眠が十分だったことを確かめてからへ進む1
夜間の発作はてんかんかか と映像を睡眠段階と同時に見る必要がある1
が眠気の原因か 下肢との対応を見る1
神経筋疾患で夜間の換気が破綻しているか 睡眠段階(とくにREM睡眠)との対応が要る。評価の組み立てはに譲る1

心肺を持つの高い患者や、が疑われる患者では、最初から施設内PSGを選ぶ1。在宅検査を選べない条件の全体像は側にまとめてある。日中の眠気そのものの定量はPSGの仕事ではなくが担う——PSGは前夜の睡眠が足りていたことを保証する側に回る。⚠️ 名前の似た(MWT)は眠気の定量ではなく、静かな環境で覚醒を保っていられるかを見る検査であり、問いが逆を向いている。

⚠️ 測定上の注意

  • ⚠️ 第一夜効果。 慣れない環境と装着した多数のセンサーにより、初回の一晩は・・REM睡眠が実際の生活時より悪く出やすい。「よく眠れなかった」という患者の申告は検査失敗ではなく、この検査の構造的な性質である。
  • ⚠️ 一晩だけの記録である。 呼吸イベントの数は夜ごとに変動し、体位(仰臥位で悪化する例)とREM睡眠の量にも左右される。境界域のAHIを単一の夜の値として絶対視しない。
  • 判定には人の目が要る。 自動解析だけで睡眠段階・・呼吸イベントを確定させない。
  • 記録できることと解釈できることは別である。 十分なが得られなかった記録では、AHIの分母が小さくなり値が不安定になる。

まとめ

  • PSGは・眼球運動・を記録することで睡眠そのものを測れるで、そこから真の睡眠時間・・睡眠段階に依存する現象の評価が可能になる。
  • 記録信号は「睡眠を決める群」「呼吸イベントを決める群」「併存現象を拾う群」の3群で整理する。の記録が閉塞性と中枢性を分ける。
  • 無呼吸は90%以上の気流低下が10秒以上、は30%以上の低下が10秒以上+3%以上の低下または。⚠️ 4%基準は第3版でACCEPTABLEからOPTIONALへ変わった。
  • AHI・RERA指数・RDIは分子が違う。RDI=AHI+RERA指数であり、AHIだけでは増大によるを取りこぼす。
  • ⚠️ 陽圧療法の、の評価、との鑑別、の評価は在宅検査では原理的に解けず、PSGが要る。
  • 第一夜効果と夜ごとの変動があるため、境界域の値を一晩の結果だけで確定させない。

出典

  1. 1.Sleep Study(StatPearls (NCBI Bookshelf)(Sankari A, Slowik JM)・2026)診断的なタイプ1(施設内・技師付き添い)PSGが両側の前頭・中心・後頭脳波、オトガイと下肢表面筋電図、左右の眼球運動電図、心電図II誘導、いびき・体位・異常行動の音声/映像記録、鼻圧センサー、口鼻サーミスタ、胸腹の呼吸努力モニタ、パルスオキシメトリを記録すること、推奨脳波誘導がF4/M1・C4/M1・O2/M1で予備誘導がF3/M2・C3/M2・O1/M2、推奨眼球運動電図誘導がE1-M2・E2-M2であること、成人のAHIが5回/時以下は正常、5〜14回/時が軽症、15〜30回/時が中等症、30回/時超が重症であること、成人でのPSGの適応に睡眠関連呼吸障害の疑い、睡眠に関する問題を伴う神経筋疾患、CPAP・BPAPの滴定、治療反応の評価、ナルコレプシーの診断(PSGに続いて反復睡眠潜時検査を行う)、夜間てんかんの診断、REM睡眠行動障害の診断、日中の強い倦怠感を伴う周期性四肢運動障害の診断が含まれること、睡眠呼吸障害の可能性が高く併存疾患・心肺併存疾患を持つ患者や肥満低換気症候群が疑われる患者では在宅検査ではなく施設内PSGが適応となること(Indications節ほか)、睡眠が30秒ごとのエポックを単位に判定されること、AASM判定マニュアルが覚醒をW・NREM睡眠をN1/N2/N3・REM睡眠をRと表記すること、N2が低振幅混合周波数の背景に出現するK複合波と睡眠紡錘波で特徴づけられること、N3が0.5〜2 Hzのδ波優勢で振幅75 µVを超える高振幅徐波で特徴づけられること(Normal and Critical Findings節)を確認した。閲覧 2026-08-20
  2. 2.Rules for Scoring Respiratory Events in Sleep: Update of the 2007 AASM Manual for the Scoring of Sleep and Associated Events(Journal of Clinical Sleep Medicine(American Academy of Sleep MedicineのSleep Apnea Definitions Task Force;Berry RB, Budhiraja R, Gottlieb DJ, et al.)・2012)診断的PSGで推奨されるセンサーが、無呼吸検出には口鼻サーミスタ、低呼吸検出には鼻圧センサー、呼吸努力には食道内圧測定または較正済み・非較正の胸腹2チャンネルRIPベルト、酸素飽和度には適切な平均化時間を設定したパルスオキシメトリであること(Table 2、3.1.2〜3.1.5節)、無呼吸をイベント前基線からの信号振幅90%以上の低下が10秒以上持続するものと定義すること(4.1節)、推奨される低呼吸判定が振幅30%以上の低下が10秒以上持続し3%以上の酸素飽和度低下または覚醒反応を伴うもので、4%以上の酸素飽和度低下を要する定義が代替として許容されること(4.2節)、中枢性無呼吸をイベント全体を通じて吸気努力を欠くものと定義すること、呼吸障害指数(RDI)が無呼吸低呼吸指数(AHI)に呼吸努力関連覚醒(RERA)指数を加えたものとして定義されること(3.3節)を確認した。閲覧 2026-08-20
  3. 3.AASM Scoring Manual 3: a step forward for advancing sleep care for patients with obstructive sleep apnea(Journal of Clinical Sleep Medicine(American Academy of Sleep Medicine)・2024)判定マニュアル第3版(The AASM Manual for the Scoring of Sleep and Associated Events, version 3)が2023年に公開されたこと、第3版ではAASM認定睡眠施設に低呼吸の1A基準(3%以上の酸素飽和度低下または覚醒反応)の使用を求めたうえで、保険上必要な患者については1B基準(4%以上の酸素飽和度低下)もあわせて報告させる形になったことを確認した閲覧 2026-08-25
  4. 4.Clinical Guideline for the Evaluation, Management and Long-term Care of Obstructive Sleep Apnea in Adults(Journal of Clinical Sleep Medicine(Adult Obstructive Sleep Apnea Task Force of the American Academy of Sleep Medicine;Epstein LJ, Kristo D, Strollo PJ, et al.)・2009)成人OSAの重症度がコンセンサスとして「軽症はRDI 5以上15未満、中等症は15以上30以下、重症は30超(回/時)」と定義されていることを、Diagnosis節のPolysomnographyの項で確認した(全文はPMC2699173で閲覧)。閲覧 2026-08-20