呼吸器学

呼吸器学 · 33

睡眠関連呼吸障害の診断

Diagnostics of sleep related breathing disorders

前提:正常
脳波(EEG)と睡眠現象
疾患
続発性赤血球増加症閉塞性睡眠時無呼吸
検査値
在宅睡眠時無呼吸検査終夜睡眠ポリグラフ検査夜間低換気評価
スコア
エプワース眠気尺度

ポッドキャスト

🧠 全体像:は、夜間・日中症状、同床者からの情報、併存症・危険因子を拾い、スクリーニング後に簡易またはで呼吸イベントとを確認する。PSGは睡眠段階まで測れる標準検査である。

1. 症状と問診

時間帯 症状
夜間 いびき、された無呼吸、睡眠の質低下、、
日中 傾眠、起床時頭痛、、短期記憶低下、抑うつ・気分不良、状、
  • 本人の睡眠歴だけでなく、睡眠パートナーからいびき・無呼吸を聴取する。
  • 肥満、頸囲、顎顔面形態、心血管疾患、神経筋疾患、薬物・アルコール、高地滞在などを評価する。

2. スクリーニング質問票

STOP-BANG質問票

文字 項目
S 大きないびき
T 日中の疲労・眠気
O 睡眠中の
P 高血圧
B BMI >35 kg/m²
A 年齢 >50歳
N 頸囲 >40 cm
G 男性

これはの診断ではなく、を見積もるためのスクリーニングである。指針は、・臨床ツール・予測アルゴリズムをPSGやHSATなしにOSAの診断へ用いないことを強く推奨している1。

Epworth眠気尺度

次の8場面で居眠りする可能性を、それぞれ0(決してない)〜3(高い)で自己評価する。

場面 場面
座って読書中 テレビを見ているとき
会議・劇場などで座っているとき 車に1時間ほど同乗しているとき
午後に横になって休むとき 座って人と話しているとき
飲酒せず昼食をとった後に静かに座っているとき 運転中、渋滞などで数分停止しているとき

合計は0〜24点で、11点以上は過度のを示唆する(配点と解釈の詳細は)。ただし眠気の重症度を測る尺度であり、OSAの有無や重症度を単独で診断する検査ではない。

3. 補助検査

4. 睡眠検査

検査 測定内容 位置づけ
(HSAT) 気流、、SpO₂、脈拍など 合併症がなく、中等症〜重症OSAの可能性が高い成人で用いる。睡眠時間を直接測らないため、記録時間当たりのREIを算出する
(PSG) HSAT項目に・眼球運動・などを追加 OSAを含む睡眠障害診断の標準。睡眠時間当たりのAHIやRDI、睡眠段階、を評価する

指標の区別と成人OSAの診断基準

指標 分子 分母・主な検査
AHI 無呼吸+ 睡眠1時間、PSG
RDI 無呼吸++関連覚醒 睡眠1時間、PSG
REI 無呼吸+ 記録時間1時間、HSAT

HSATではを通常記録しないため、睡眠時間やのみを伴うを捉えにくい。このためREIは真のAHIを過小評価しうる。成人OSAは、PSGで閉塞性RDIが5回/時以上かつ典型症状または関連する内科・精神科併存症がある場合、または症状・併存症の有無を問わず15回/時以上の場合に診断する1。AHIによる軽症・中等症・重症の区分と、その境界値が資料で割れる点はにまとめてある。

HSATは、合併症のない成人で中等症〜重症OSAの可能性が高い場合に、技術的に適切な装置を用いて行う。1回のHSATが陰性・・技術的に不十分ならPSGへ進む。重要な、神経筋疾患による低下の可能性、覚醒時低換気または疑い、慢性オピオイド使用、脳卒中既往、重度不眠では、初めからPSGを選ぶ1。

⭐ 「合併症がない」「可能性が高い」は、指針が具体的に定義している。 名前だけで運用すると人によって線が動くので、数えられる形で覚える1。

語 指針の定義
中等症〜重症OSAの可能性が高い 過度の日中の眠気があり、かつ次の3つのうち2つ以上を満たす——①習の大きないびき、②された無呼吸あるいは喘ぎ・、③診断されている高血圧
合併症がない(uncomplicated) 次の3つがいずれも無い——①閉塞性以外の(、低換気、)のリスクを高める病態(重要な、神経筋疾患による低下の可能性、脳卒中既往、慢性オピオイド使用など)、②評価を要する重い非呼吸性の睡眠障害(、、)やHSATの精度を損なう病態(重度不眠)、③在宅記録の取得・判読を妨げる環境要因・個人的要因

⚠️ 上の定義は成人についてのものである。この指針は表題も個々の推奨文も一貫して成人を対象としており、小児にそのまま当てはめない。

PSG波形で呼吸イベントを見分ける

イベント 気流 胸腹部の 読み方
閉塞性無呼吸 90%以上低下が10秒以上 持続または増強 気道は閉じているが、患者は吸おうとしている。胸腹部の運動を伴いうる
90%以上低下が10秒以上 消失 気流とが同時に途絶える
無呼吸 90%以上低下が10秒以上 前半で消失し、後半で再出現 中枢性に始まり、気流が戻らないまま閉塞性の努力へ移る
30%以上低下が10秒以上 病型により異なる 脱飽和またはとの時間関係を確認する

授業資料はを「4%以上の脱飽和または」とまとめているが、現行AASMの推奨基準は「3%以上の脱飽和または」である。4%以上の脱飽和を用いる別ルールでは、だけのイベントは含めない。どの基準でAHIを算出したかを報告書で確認する3。

呼吸イベントの反復に伴って、気流低下、のSpO₂低下、脈拍の徐脈―頻脈変動、上のが対応する。多数の短いは睡眠をし、深睡眠・REM睡眠を減らしうる。

周期性呼吸と睡眠関連低換気

パターン PSGでの判定の要点
3回以上連続する・を、換気振幅の漸増・が隔てる。周期長は40秒以上で、2時間以上の記録中にこのパターンに伴う中枢性イベントが5回/時以上ある
成人の PaCO₂または妥当な代替指標が55 mmHgを超えて10分以上、または覚醒仰臥位から10 mmHg以上上昇して50 mmHgを超える状態が10分以上続く

では、気流と胸腹部努力がともに漸増・し、中央の中枢性休止を周期的に挟む。心不全では循環時間延長、CO₂に対する亢進、肺うっ血によるが組み合わさり、PaCO₂が無呼吸閾値をまたいで振動する。のCO₂評価には、動脈血PaCO₂のほか呼気終末CO₂または経皮CO₂を用いる4。

PSGで記録する生理信号

信号 評価対象
EEG 脳活動、睡眠段階、
EOG 眼球運動、REM睡眠
EMG 顎筋緊張、四肢運動
ECG 心電図 心拍・不整脈
鼻圧・ の低下・停止
胸腹部ベルト 胸郭・腹部運動。閉塞性と中枢性イベントの鑑別
低酸素血症と脱飽和
マイク 上気道振動と呼吸イベントの対応
体位センサー 睡眠体位 仰臥位依存性の評価
赤外線ビデオ 夜間行動 体動・と生理信号の対応

PSGは複数信号の時間的な対応を読む検査であり、単一のSpO₂低下だけで閉塞性・中枢性・低換気を決めない。適切な装着・監視と、訓練された判定者による解析が必要である。

flowchart TD
  A["夜間・日中症状"] --> B["同床者情報・危険因子・併存症"]
  B --> C["STOP-BANGでスクリーニング"]
  C --> D["合併症のない高リスク例ではHSAT"]
  C --> E["複雑例・低換気・中枢性疑いではPSG"]
  D --> F["陰性・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='indeterminate'>判定不能</span>・技術的不良"]
  F --> E
  D --> G["REIと低酸素を評価"]
  E --> H["AHI・RDI・睡眠段階・低酸素を統合"]

まとめ

  • では同床者の情報が重要で、STOP-BANGは診断ではなくスクリーニングである。
  • はを定量化するが、OSAを単独で診断しない。
  • HSATはREIを、PSGは睡眠時間を分母とするAHI・RDIに加えて睡眠段階・を評価する。
  • 気流との組合せで閉塞性・中枢性・イベントを見分け、SpO₂・脈拍・との時間関係を統合する。
  • 高HCO₃⁻や日中高CO₂血症はOHSなどのを疑う手掛かりになる。

出典

  1. 1.Clinical Practice Guideline for Diagnostic Testing for Adult Obstructive Sleep Apnea: An American Academy of Sleep Medicine Clinical Practice Guideline(American Academy of Sleep Medicine (AASM)・2017)全文(PMC5337595)で確認した。ICSD-3の成人OSA診断基準(PSGで求めた閉塞性RDIが5回毎時以上かつ典型症状、または症状の有無を問わず15回毎時以上)を引いていること、REIが睡眠時間ではなく記録時間を分母にするためと従来型センサーが皮質性覚醒のみを伴う低呼吸を検出できないため真のAHIを過小評価しうると述べていること、合併症のない成人で中等症〜重症OSAのリスクが高い場合にPSGまたは技術的に適切なHSATを用いるという強い推奨、1回のHSATが陰性・判定不能・技術的に不十分ならPSGへ進むという強い推奨、重要な心肺疾患・神経筋疾患による呼吸筋力低下の可能性・覚醒時低換気または睡眠関連低換気の疑い・慢性オピオイド使用・脳卒中既往・重度不眠ではHSATではなくPSGを用いるという強い推奨、質問票・予測アルゴリズム単独でOSAを診断しないという強い推奨、さらに「中等症〜重症OSAのリスクが高い」を過度の日中の眠気に加えて習慣性の大きないびき・目撃された無呼吸または喘ぎ窒息感・診断されている高血圧の3項目中2項目以上と定義し、「合併症がない」を3条件の不在として定義していることを確認した閲覧 2026-08-02
  2. 2.Evaluation and Management of Obesity Hypoventilation Syndrome. An Official American Thoracic Society Clinical Practice Guideline(American Thoracic Society (ATS)・2019)OHSを疑う患者における血清HCO₃⁻と動脈血PaCO₂の使い分け閲覧 2026-08-02
  3. 3.Polysomnography for Obstructive Sleep Apnea Should Include Arousal-Based Scoring: An American Academy of Sleep Medicine Position Statement(American Academy of Sleep Medicine (AASM)・2018)成人低呼吸の推奨基準と4%脱飽和のみを用いる代替基準の区別閲覧 2026-09-09
  4. 4.Rules for Scoring Respiratory Events in Sleep: Update of the 2007 AASM Manual for the Scoring of Sleep and Associated Events(American Academy of Sleep Medicine (AASM)・2012)成人の無呼吸・低呼吸・睡眠関連低換気・チェーン・ストークス呼吸の判定基準閲覧 2026-09-09