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Lab values · Published

低酸素血症

Hypoxemia

別名
PaO2低下動脈血酸素分圧低下
臓器系
呼吸器全身
科目
PulmonologyPhysiologyPathophysiology
トピック
呼吸器内科 35:急性呼吸不全呼吸器内科 17:酸素療法生理学 3.3:酸素と二酸化炭素の運搬。ヘモグロビン。低酸素症の種類。病態生理学 2-11:換気障害と呼吸機能検査;呼吸不全
関連疾患
再膨張性肺水腫市中肺炎先天性心疾患(非チアノーゼ性・チアノーゼ性)特発性肺線維症肺血栓塞栓症肺水腫閉塞性睡眠時無呼吸慢性閉塞性肺疾患

🧠 全体像:低酸素血症は「血液中の酸素が少ない」という所見であり、組織へ酸素が届かない「」とは別の概念である。認識したら、まずPaCO₂の上昇でを拾い上げ、次にで残り4つの機序をふるい分け、最後に酸素投与への反応でシャントとを区別する。は便利だが、・皮膚色素などで実際の値からずれることを忘れない。

低酸素血症と低酸素症の違い

低酸素血症(血液中の・飽和度が低い)と、(組織へ酸素が届かない)は別の概念である。貧血、循環不全ではPaO₂が正常でも組織は低酸素になりうる。の4分類(・うっ滞性・)のうち、低酸素血症が原因になるのはだけである。循環不全(うっ滞性)を疑う場面では乳酸の上昇がの傍証になる。

低酸素血症は呼吸困難の原因になり、夜間のではの亢進を介して徐脈を伴うこともある。一方、チアノーゼの絶対量で決まるため、貧血が高度だと低酸素血症があっても目立ちにくい。

臨床的な閾値は、に対応するPaO₂ 60 mmHg未満またはSpO₂ 90%未満である。急性のこの状態は(I型・II型の分類はに譲る)の中核所見にあたる。慢性に持続する場合は、安静・覚醒時・室内気でPaO₂ ≤55 mmHgまたはSpO₂ ≤88%、あるいは浮腫・を伴うPaO₂ 56〜59 mmHgが在宅の適応の目安になる。

何を測っているか:PaO₂とSpO₂は別物

PaO₂(動脈血にした)と、SpO₂・SaO₂(ヘモグロビンの)は違うものを測っている。両者を結ぶのがで、S字型のためSpO₂が90%を切ると、わずかなPaO₂低下が急激なSpO₂低下として現れる。曲線の(pH低下・PaCO₂上昇・体温上昇・2,3-BPG上昇)は組織への酸素解離を促し、(その逆+)は解離を妨げる。

機序で5つに分ける

機序 代表例 酸素投与への反応
吸入の低下 高地、閉鎖空間 正常 よく改善する
、神経筋疾患(など)、 正常(PaCO₂上昇が決め手) 酸素化は改善しても換気不全は残る
COPD、喘息、肺炎 開大 ⭐ よく改善する(臨床で最多)
シャント 肺水腫、肺胞出血、心内 開大 ⚠️ 改善しにくい
、肺気腫 開大 安静時は保たれ運動で顕在化する

💡 で酸素がよく効くのは、換気が乏しいだけで肺胞自体は開いているため。シャントだけ酸素が届かないのは、その肺胞に換気が全く無く、静脈血がガス交換されずそのまま素通りするためである。この1点が両者を分ける最大の臨床的手掛かりになる。

A–a較差の使い方

の計算式と、低換気・低吸入酸素(較差正常)対・シャント(較差開大)への大分けはに譲る。ここでは異常値側で押さえる2点を補う。

  • 較差のは加齢とともに開くため、固定値では判断しない。目安として(年齢+10)/4 mmHgまで許容される1
  • FiO₂が上がると較差そのものが広がるため、酸素投与下の値をそのまま解釈しない。評価は室内気(またはFiO₂を明記した値)を基本とする。

⚠️ 測定上の注意(パルスオキシメトリの落とし穴)

はSpO₂を光吸収から推定するにすぎず、次の状況で実際のSaO₂・PaO₂からずれる。

  • ではSpO₂が偽って正常域になりうる。 通常の2波長式はCOHbとを区別できないため、CO中毒を疑ったらSpO₂を信じない。
  • ではSpO₂がおよそ85%前後で頭打ちになる。 メトヘモグロビンが両波長を強く吸収するためで、PaO₂は正常なことが多く、両者の乖離が診断の手掛かりになる。
  • 、低体温、投与では拍動波形そのものを拾えない。マニキュア・色素、体動も誤差の原因になる。
  • ⚠️ 皮膚色素の濃い患者ではSpO₂が実際のSaO₂を過大評価しやすく、低酸素血症を見逃す()。 黒人患者は白人患者よりこの見逃しがプール比1.67(95%CI 1.47–1.90)と有意に多く報告されている2。境界値や臨床像との不一致ではで確認する。
  • 動脈血採血側の混入、過度のヘパリン、搬送遅延・室温放置。とくに著明な例で顕著)はの採血手技に譲る。
  • を疑う場合、通常のだけで除外せず、でCOHb・メトヘモグロビン分画を含めて実測する。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["SpO2低下・低酸素血症を認識"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arterial blood gas, ABG'>動脈血液ガス</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arterial oxygen partial pressure'>PaO2</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arterial carbon dioxide tension'>PaCO2</span>を確認"]
    B --> C{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arterial carbon dioxide tension'>PaCO2</span>は上昇しているか"}
    C -->|"はい"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alveolar hypoventilation'>肺胞低換気</span>を考える<br>薬物・神経筋疾患・肥満低換気を検索"]
    C -->|"いいえ"| E["A-a較差を計算(室内気で)"]
    E --> F{"A-a較差は年齢補正上限内か"}
    F -->|"はい"| G["吸入<span class='jp-term jp-term-diagram' title='partial pressure of oxygen'>酸素分圧</span>低下を考える<br>標高・閉鎖空間を確認"]
    F -->|"いいえ"| H["高濃度酸素へ反応を見る"]
    H --> I{"酸素投与で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arterial oxygen partial pressure'>PaO2</span>は改善するか"}
    I -->|"改善しにくい"| J["シャントを考える<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='atelectasis'>無気肺</span>・肺水腫・心内シャントを検索"]
    I -->|"よく改善する"| K{"安静時から低下か運動で悪化か"}
    K -->|"安静時から低下"| L["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ventilation-perfusion mismatch'>換気血流比不均等</span>を考える"]
    K -->|"運動で顕在化"| M["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diffusion impairment'>拡散障害</span>を考える"]
    D --> N["画像・心エコーで原因臓器を評価"]
    G --> N
    J --> N
    L --> N
    M --> N

経時変化とモニタリング

単回のPaO₂よりも、で扱うの推移を追う方が、機序や重症度の変化を捉えやすい。急性期はSpO₂の連続監視で傾向をつかみつつ、境界値や臨床像との不一致ではで裏付ける。

目標SpO₂は一律ではない。多くの急性疾患では94〜98%を目標に必要最小限へするが、COPDなど高CO₂血症リスクがある患者では88〜92%に下げる。⚠️ この群に無制限の高濃度酸素を与えると、の解除やでCO₂が上昇し、CO₂ナルコーシスに至りうる。過剰酸素の害を避けつつ、重篤な低酸素血症の初期治療を血液ガス待ちで遅らせない、という両立が要る。

慢性の低酸素血症で在宅を導入した後も、単回値で終わらせない。開始なら60〜90日後、増悪時・退院時開始なら1〜4週後と12〜16週後に、室内気・処方酸素下のSpO₂またはPaO₂を再評価し、必要量が変われば処方を更新する。

まとめ

  • 低酸素血症(血中酸素が低い)と(組織へ届かない)は別概念であり、貧血や循環不全ではPaO₂が正常でも組織は低酸素になる。
  • 閾値はPaO₂ 60 mmHg未満またはSpO₂ 90%未満で、に対応する。
  • PaCO₂上昇の有無でを先に拾い、残りはで低吸入酸素と・シャントに分ける。
  • はよく酸素に反応するが、シャントは反応しにくい。これが両者を分ける最大の手掛かりである。
  • 、皮膚色素の濃い患者ではSpO₂が実際の値からずれ、低酸素血症を見逃しうる。
  • 目標SpO₂はで異なり、高CO₂血症リスクでは低めに設定し過剰酸素を避ける。

出典

  1. 1.Physiology, Alveolar to Arterial Oxygen Gradient(StatPearls Publishing・2023)A–a較差の年齢による正常上限がおよそ(年齢+10)/4 mmHgで近似できることを確認した閲覧 2026-08-03
  2. 2.Racial and Ethnic Disparities in Occult Hypoxemia Prevalence and Clinical Outcomes Among Hospitalized Patients: A Systematic Review and Meta-analysis(Journal of General Internal Medicine・2024)パルスオキシメータ読値が保たれていても動脈血酸素飽和度が実際には低い状態(潜在性低酸素血症)が、黒人患者で白人患者よりプール有病率比1.67(95%CI 1.47–1.90)と有意に多いことを確認した閲覧 2026-08-03