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Disease Atlas · 循環器 · 病態

肺水腫

Pulmonary edema

臓器系
循環器呼吸器
科目
HistopathologyPathology
トピック
組織病理 H1-033:肺水腫病理学 A/27:浮腫の原因と分類病理学 B/37:肺性心(Cor pulmonale)
鑑別疾患
急性呼吸窮迫症候群
関連疾患
僧帽弁狭窄症慢性心不全
治療薬
フロセミドニトログリセリンドブタミン
原因薬剤
テルブタリンドキソルビシンアルデスロイキン
症状
呼吸困難発作性夜間呼吸困難チアノーゼ
検査値
ナトリウム利尿ペプチド低酸素血症
画像所見
肺野陰影
スコア
Killip分類
下位分類
再膨張性肺水腫
元疾患
サリチル酸中毒たこつぼ症候群一酸化炭素中毒急性冠症候群急性腎障害心室性不整脈(心室頻拍・心室細動)

🧠 全体像:肺水腫は、肺間質・に過剰な液体が貯留してガス交換を障害する病態で、単一の疾患ではなく多様な原因疾患の終末である。機序は大きく2つに分かれる。性)肺水腫は肺の上昇(主に)が中心で、(透過性亢進性)肺水腫は肺胞毛細血管障壁そのものの傷害が中心となる。後者の重症型はARDSとして別に定義されるため、本稿は主にの病態・診断・急性期治療を扱い、非の原因はにとどめる。

定義と2つの機序

  • 肺水腫 = 肺胞・間質への異常な液体貯留によりガス交換が障害された状態。単独の疾患名ではなく、多くの疾患に共通する終末像である。
  • Starling平衡(毛細血管の・透過性・出)のいずれかが破綻すると生じる(浮腫一般の機序は浮腫の原因と分類を参照)。
項目 ・透過性亢進性
主機序 の上昇 肺胞毛細血管障壁の傷害
代表的原因 、輸液過剰 ARDS、重症感染、吸入傷害、薬剤性
液体の性質 初期は蛋白の少ない 蛋白に富む滲出液
随伴所見 毛細血管うっ血、 炎症、

⚠️ 重症のはARDSとして扱う。 1週間以内の発症、両側性陰影、酸素化不良という3条件を満たし、・水分過剰だけでは説明できない場合はで評価する。両者は併存しうる。

心原性肺水腫の病態

flowchart TD
    A["左室収縮・拡張機能低下<br>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mitral valve disease'>僧帽弁疾患</span>・輸液過剰"] --> B["左房圧・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulmonary venous pressure'>肺静脈圧</span>の上昇"]
    B --> C["肺<span class='jp-term jp-term-diagram' title='capillary hydrostatic pressure'>毛細血管静水圧</span>の上昇"]
    C --> D["間質への水分移動"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lymph flow'>リンパ流</span>出の代償能を超える"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alveolar space'>肺胞腔</span>への水分流入"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diffusion impairment'>拡散障害</span>・シャント増加<br>低酸素血症"]

💡 肺のリンパ管は正常時、間質への水分移動をある程度代償する余力を持つ。急性の圧上昇(など)ではこの代償が追いつかず短時間でに至るが、緩徐な慢性の圧上昇(など)では出がに増大し、同程度の左房圧でも急性発症より症状が軽いことがある。

原因

心原性

  • 、心筋症、など)のとして起こることが多い。
  • は左室機能が正常でも左房圧上昇のみで肺水腫を来す代表例。
  • 急性の圧・、急性重症、不整脈。

非心原性

⭐ 「肺水腫=心不全」と短絡させないこと。のように左室機能正常でも生じる例、腎不全による容量、薬剤性・の非例まで、鑑別の幅を持って評価する。

臨床像

  • 呼吸困難(臥位で増悪し座位で軽快)、を強く示唆する。
  • 頻呼吸、頻脈、両側の)、S3ギャロップ。
  • 重症例では状の痰、チアノーゼ
  • ではなどの体循環うっ血所見を伴うことが多い。

診断

  1. 病歴・身体所見の有無、心不全の既往、輸液歴、薬剤歴。
  2. (BNP/:低値はを否定する方向に働く一方、腎機能低下や高齢ではになりうる。
  3. 胸部X線部を中心とした、上へのなどのに乏しく両側びまん性陰影が急性に進行する場合は非・ARDSを疑う。
  4. 心エコー:左室収縮・拡張能、弁膜症の評価。
  5. 肺エコー:多発する肺水分の増加を示唆する簡便な指標。

重症度と初期評価

に伴う肺水腫では、うっ血ののプロファイルで初期対応を判断する。に伴う場合はする。

flowchart TD
    A["急性の呼吸困難・低酸素"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cardiogenic'>心原性</span>を示唆する所見<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='orthopnea'>起座呼吸</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cardiomegaly'>心拡大</span>・BNP高値)"}
    B -->|"あり"| C{"血圧は保たれているか"}
    C -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='systolic blood pressure, SBP'>収縮期血圧</span>正常〜高値"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vasodilator'>血管拡張薬</span>+利尿薬"]
    C -->|"低血圧・低灌流"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inotropic agent'>強心薬</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vasoactive drugs'>循環作動薬</span>を優先<br>利尿薬は慎重に"]
    B -->|"なし・非<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cardiogenic'>心原性</span>を疑う"| F["原因検索(容量過剰・感染・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neurogenic'>神経原性</span>・薬剤)"]
    F --> G["ARDSの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diagnostic criteria'>診断基準</span>を満たすか評価"]

治療(心原性肺水腫の急性期管理)

  • 酸素化の是正:低酸素があれば酸素投与、努力呼吸やがあればNIV(CPAP/BiPAP)を積極的に用いる。改善が乏しければをためらわない。
  • 利尿薬:うっ血が主体であれば静注で速やかに前負荷を軽減する。
  • が保たれている、または高血圧を伴う例では静注などで前負荷・を軽減する。
  • 原因治療があれば、重症があれば外科的介入を検討する。
  • :低血圧・低灌流を伴う例では、利尿薬・より先になどのを優先する。

⚠️ モルヒネのルーチン投与は行わない。 かつて症状緩和目的で常用されたが、呼吸抑制・挿管率上昇との関連が指摘され、現行のガイドラインではへのルーチン使用は推奨されない。

⭐ 非の原因(容量過剰、薬剤性、など)では、利尿薬やCPAPに加えて原因の除去の中止、体液バランスの是正)が治療の中心になる。

まとめ

  • 肺水腫は単一疾患ではなく、Starling平衡の破綻により肺胞・間質に液体が貯留する終末共通像で、性)と非(透過性亢進性)に大別する。
  • による肺上昇が主体で、・S3ギャロップ・胸部X線のが手がかりになる。
  • 重症のはARDSとして扱い、1週間以内の発症・両側性陰影・酸素化不良・の除外という基準で診断する。
  • 急性期治療は酸素化の是正(NIVを含む)、うっ血主体には利尿薬、血圧が保たれていれば、低灌流があればを優先し、モルヒネのルーチン投与は避ける。
  • 原因はだけでなく、容量過剰、、薬剤性(など)も鑑別に含める。