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Drug Atlas · B33 Antineoplastics / 抗腫瘍薬 · 必修

ドキソルビシン

doxorubicin

分類
Antineoplastics / 抗腫瘍薬
商品名(日本)
アドリアシン
商品名(EU)
Adriblastina
科目
Pharmacology
トピック
B33: Drugs used in cancer treatment III (Topoisomerase inhibitors. Inhibitors of mitotic spindle)
禁忌疾患
慢性心不全
副作用
呼吸困難末梢浮腫
監視検査値
絶対好中球数心筋トロポニンナトリウム利尿ペプチド
相互作用
トラスツズマブトラスツズマブ エムタンシン
対象疾患
バーキットリンパ腫びまん性大細胞型B細胞リンパ腫ホジキンリンパ腫悪性末梢神経鞘腫瘍移植後リンパ増殖性疾患横紋筋肉腫滑膜肉腫肝芽腫急性リンパ性白血病胸腺腫胸膜肺芽腫血管免疫芽球性T細胞リンパ腫骨肉腫・ユーイング肉腫神経芽腫・ウィルムス腫瘍神経節芽腫成人T細胞白血病リンパ腫線維形成性小円形細胞腫軟骨肉腫軟部肉腫乳癌非ホジキンリンパ腫非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍非特定型末梢性T細胞リンパ腫副腎皮質癌平滑筋肉腫未分化大細胞型リンパ腫膀胱癌
原因となる疾患
がん治療関連心機能障害拡張型心筋症急性骨髄性白血病肺水腫放射線リコール反応慢性心不全薬剤の血管外漏出

🧠 全体像:は「-rubicin」で終わるの代表で、への挿入・阻害・産生という三重の攻撃で殺細胞効果を発揮する。この三重機序のうち3つ目()が心筋というの低い臓器を直撃するため、に比例して不可逆的な心毒性が蓄積するという、他のにはあまりない「量そのものが上限を持つ」薬になっている。

薬効群の中での位置づけ

標的 系統 代表薬 やっていること
一本鎖の再結合 Topo I阻害薬 切断した鎖を戻せなくする
二本鎖の切断・再結合 Topo II阻害薬(単独) 二本鎖を切ったまま固定する
二本鎖の切断・再結合+挿入+ () 上記に加えへ物理的に割り込み、を作る
微小管 / / を壊す(重合阻害/)

3剤の中での位置づけ。

薬剤 主な適応 心毒性 特徴
乳癌・リンパ腫・肉腫・白血病など広汎 基準(300 mg/m²から量依存性に上昇し550 mg/m²超でさらに増加) の代表格。最も適応が広い
・など白血病中心 同様に量依存性 白血病の寛解導入(7+3レジメン)の主力
乳癌・胃癌など やや少ない(同量あたり) の()

同じ薬効成分をに封入したという製剤もあり、血中滞留時間が大幅に延びる代わりに心毒性は軽減され、が新たなとして前面に出るなど毒性プロファイルが別物になる。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='doxorubicin'>ドキソルビシン</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deoxyribonucleic acid'>DNA</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='base pairing'>塩基対</span>の間に<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='intercalation'>インターカレーション</span>(挿入)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deoxyribonucleic acid'>DNA</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ribonucleic acid'>RNA</span>合成を直接阻害"]
    A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='topoisomerase II'>トポイソメラーゼII</span>-<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deoxyribonucleic acid'>DNA</span>複合体を安定化"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='double-stranded DNA'>二本鎖DNA</span>が切断されたまま<br>再結合できなくなる"]
    A --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='quinone'>キノン</span>構造が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='redox cycling'>酸化還元サイクル</span>を起こし<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='free radicals'>フリーラジカル</span>(ROS)を産生"]
    E --> F["心筋ミトコンドリア・細胞膜を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oxidative damage'>酸化障害</span>"]
    B --> G["細胞死(腫瘍細胞)"]
    D --> G
    F --> H["心筋障害が蓄積<br>(心筋は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antioxidant'>抗酸化</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='reserve capacity'>予備能</span>が低い)"]
    H --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cumulative dose'>累積投与量</span>依存性の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='dilated cardiomyopathy, DCM'>拡張型心筋症</span>・心不全"]

💡 心毒性が「量そのものの上限」になる理由。 産生は腫瘍細胞にも心筋にも起こるが、心筋はカタラーゼなどのが少なく、鉄を触媒としたを消去しにくい。しかもはに乏しいため、障害が積み重なって不可逆的なに至る。(剤)はを捕捉して産生を減らすだが、適応は「投与量300 mg/m²以上に達し、を継続する患者」に限定される(開始と同時の投与はを下げうるため避ける)1。

薬物動態

項目 値・特徴
分布 組織移行は広いが血液脳関門はほぼ通過しない
代謝 主に肝臓でドキソルビシノールなどへ代謝
排泄 胆汁排泄が主体。では減量が必要
半減期 多相性で長い(終末相は数十時間)

⭐ の管理がの管理の中心。 3週ごと投与での心筋症は300 mg/m²で1〜2%、400 mg/m²で3〜5%、450 mg/m²で5〜8%、500 mg/m²で6〜20%と量依存性に上昇し、550 mg/m²を超えるとさらにリスクが増す。300 mg/m²を超えたら心機能評価の頻度を増やし、それ以前の他の曝露歴も通算して評価する2。

適応

領域 使いどころ
血液 (ABVD)、(CHOP/R-CHOP)、
乳腺 乳癌(AC療法など)
肉腫 軟部肉腫、・(のMAP、のVDC/)、、の間葉性亜型(型VDC/)3
小児・内分泌腫瘍 ・ウィルムス腫瘍、
泌尿器

⚠️ の大半を占める通常型はで、の対象になるのは亜型である。 通常型はが低く、緻密なとが薬物の浸透を妨げるため化学療法が一般に無効で、治療の主体は手術である。これに対しHEY1-NCOA2融合遺伝子を伴うはに富み石灰化・基質密度が低いためこの抵抗性が相対的に弱く、・・(VDC)と・()を交代投与する型のが推奨レジメンとされ、周術期(術前・術後)と転移例の双方で用いられる3。ではのプロトコル(を含むMAP、40歳超やメトトレキサート例では+シスプラチン)が考慮されうるが、化学療法の役割は確立していない4。

用法・用量

代表的には1回50〜60 mg/m²を3週ごとに静注する(レジメンにより投与法は多様)。生涯の上限を意識し、投与のたびに量を記録する。 が300 mg/m²に達し、なおを継続する必要がある場合にの併用を検討することがある(乳癌患者が適応の対象)1。でを起こす(vesicant)であり、の確保・観察を徹底する。実際の用量・上限の運用は施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌(米国添付文書):重度の心機能不全(を含む)、過去4〜6週以内の心筋梗塞、薬剤性の重度かつ持続する骨髄抑制、重度の( Class C または血清ビリルビン 5 mg/dL超)、アナフィラキシーを含む重度の過敏症2
  • ⚠️ では「減量」だけでなく「禁忌」の線がある。 血清1.2〜3 mg/dLで50%減量、3.1〜5 mg/dLで75%減量、5 mg/dL超では投与を開始しない(投与中なら中止)2
  • ⚠️ 心毒性は急性型と慢性・型の両方がある。 急性型は投与中〜直後の一過性不整脈で多くは可逆的。慢性・型は投与終了後数週〜数か月で顕在化する不可逆的な心不全で、これが臨床的に問題になる本体
  • ⚠️ との併用は心毒性をに増強する。 陽性乳癌でもは避け、を先に完了させてからへ移行する逐次投与が原則
  • 時は直ちに投与を中止し、施設のプロトコルに従って対応する

副作用

頻度 内容
高頻度 脱毛(ほぼ必発)、骨髄抑制、悪心・嘔吐、、(無害)
注意 呼吸困難・(心不全の初期症状)、
重篤・まれ ・(量依存性)、による、(頻度は低い)

まとめ

  • の代表。+阻害+産生の三重機序。
  • 心毒性は依存性で不可逆的。心筋のの低さとの乏しさが背景にある。
  • ()は高量でのに用いられることがある。
  • とのは心毒性をに増強するため、逐次投与が原則。
  • でを起こす。
  • 適応は乳癌・リンパ腫・肉腫・白血病など極めて広い。

出典

  1. 1.DEXRAZOXANE for injection — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration / DailyMed・2025)デクスラゾキサンの適応が「累積ドキソルビシン投与量300 mg/m²以上に達し、ドキソルビシンを継続する転移性乳癌患者」に限定されること、ドキソルビシン開始と同時の投与は避ける(腫瘍縮小率を下げうる)と記載されていることを確認した。閲覧 2026-09-08
  2. 2.DOXORUBICIN HYDROCHLORIDE injection — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration / DailyMed・2024)3週ごと投与での心筋症発生率が累積投与量300 mg/m²で1〜2%、400 mg/m²で3〜5%、450 mg/m²で5〜8%、500 mg/m²で6〜20%と量依存性に上昇し、550 mg/m²を超えるとリスクがさらに増加すること、累積300 mg/m²を超えたら心機能評価の頻度を増やす記載を確認した。閲覧 2026-08-03
  3. 3.Chemotherapy Strategies and Their Efficacy for Mesenchymal Chondrosarcoma(Current Oncology(Remiszewski P, Wąż J, Falkowski S, Rutkowski P, Czarnecka AM)・2025)間葉性軟骨肉腫が他の軟骨肉腫亜型より全身化学療法への感受性が高く、推奨レジメンがEwing肉腫型の多剤併用療法(ビンクリスチン・ドキソルビシン・シクロホスファミド=VDCとイホスファミド・エトポシド=IEの交代投与)であること、化学療法が周術期(術前・術後)と転移例の双方で用いられること、通常型軟骨肉腫は低い増殖分画・緻密な軟骨基質・腫瘍内低酸素が薬物浸透を妨げるため化学療法抵抗性である一方、間葉性軟骨肉腫は血管増生が豊富で石灰化・基質密度が低いためこの抵抗性が相対的に弱いことを確認した閲覧 2026-09-07
  4. 4.UK guidelines for the management of bone sarcomas(British Journal of Cancer(British Sarcoma Group)・2025)脱分化型軟骨肉腫では化学療法の役割が明確でないものの骨肉腫の化学療法プロトコルが術前・術後療法として考慮されうること、高悪性度骨肉腫の一次治療が40歳未満ではMAP(高用量メトトレキサート・ドキソルビシン・シスプラチン)で40歳超またはメトトレキサート不耐容例ではドキソルビシン+シスプラチンであること、Ewing肉腫で最もよく用いられる薬剤がビンクリスチン・ドキソルビシン・シクロホスファミド・イホスファミド・エトポシドの5剤であることを確認した閲覧 2026-09-07