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Disease Atlas · 腫瘍 · 腫瘍

平滑筋肉腫

Leiomyosarcoma

別名
LMS
臓器系
腫瘍生殖・産婦人科運動器
科目
PathologyHistopathologyOncology
トピック
病理学 C/73:子宮内膜・筋層の腫瘍病理学 C/96:骨格筋・平滑筋腫瘍組織病理 H1-078:子宮平滑筋肉腫組織病理 H1-077:子宮平滑筋腫腫瘍学 II-37:軟部腫瘍の疫学・病因・組織型・病期・症状・診断腫瘍学 II-38:軟部腫瘍の放射線・外科・薬物療法
上位概念
軟部肉腫
鑑別疾患
子宮筋腫
合併症
バッド・キアリ症候群
治療薬
ドキソルビシンゲムシタビンドセタキセル
症状
異常子宮出血骨盤痛腹痛腫脹疼痛末梢浮腫体重減少呼吸困難
画像所見
結節

🧠 全体像は、既存のが悪性化してできる腫瘍ではなく、平滑筋への分化を示すから新規に独立して発生する悪性腫瘍である。子宮、後腹膜、下大静脈などの大血管、四肢深部が好発部位で、部位によって発見の入口はまったく異なる一方、診断そのものは共通して・高いという所見を組み合わせて下す。転移はリンパ節よりも血行性の肺転移が主体で、リンパ節郭清を前提にした戦略は取らない。子宮原発では術前に良性の筋腫と確実に区別する方法がなく、細切()で摘出すると腹腔内に播種する危険があるため、疑いを持った時点で摘出計画そのものが変わる。

病態:良性平滑筋腫からの転化ではない

は成人軟部肉腫の中でも頻度の高い組織型の一つで、後腹膜ではと並ぶ代表的な組織型である。MED12遺伝子のを主なとする単クローン性の良性腫瘍で、エストロゲン・プロゲステロンに反応して増大する。はこの経路の延長にはなく、複雑な染色体異常()とTP53RB1ATRXなどのの不活化を背景に、平滑筋への分化を示すから独立に発生する。

💡 「が大きくなって肉腫化する」という直感は誤りである。はきわめて稀とされ、大半のは最初からとは別の遺伝子異常をもつ独立病変として生じる。この違いには、既存の筋腫を経過観察するだけでは肉腫の発生を予防できないという臨床上の含意がある。

診断:三徴と平滑筋腫・STUMPとの鑑別

診断は、、中等度〜高度の、高い(目安10/10HPF以上)という三つの所見を評価して下す。古典的なパターンでは、このうち2項目がそろえば診断的とされ、3項目すべてを機械的に要求するものではない。一方、・粘液型のは細胞密度や数が低くても悪性のことがあり、パターン用の閾値をそのまま当てはめない。

所見
境界 境界明瞭・ 局所的に不明瞭になりうる 浸潤性になりうる
細胞異型 乏しい 一部所見が非典型 中等度〜高度
少数・正常型 境界的、または他所見と不一致 増加し異型分裂を伴いうる
腫瘍 なし 判定困難、または所見の組合せが不十分 重要な悪性所見

⚠️ ・梗塞型壊死は大きな良性筋腫にも生じるため、腫瘍とは区別する。STUMPは「良性寄りだからできる」病変ではなく、にもにも確定分類できない組合せをもつ病変で、経過観察と再評価の対象になる。

は平滑筋への分化を確認する補助的な位置づけで、などが陽性になる。ただしした病変ではこれらが減弱・陰性化することがあり、免疫染色の陽性・陰性だけで良悪性を判定しない。悪性度そのものは、あくまで壊死・異型・という形態学的評価で決める。

好発部位と部位ごとの臨床像

子宮、後腹膜、下大静脈を中心とする大血管、四肢深部の平滑筋にそれぞれ生じ、部位によって発見の契機が大きく異なる。

部位 頻度の高い背景 主な症状・所見
子宮 閉経後の高齢女性に多い、通常単発 急速に増大する骨盤腫瘤、
後腹膜 巨大化するまで無症状 腹痛、腹部膨満、腫瘤触知
下大静脈(大血管) 下部・中部(の間)・上部(肝後部)の3区域で評価 下部は下肢の、上部は流出路の圧迫・浸潤
四肢深部 より深い無痛性腫瘤 増大する腫脹疼痛

⚠️ 下大静脈原発のにかかる上部区域まで及ぶと、静脈流出路を圧迫・浸潤して様の肝うっ血を来しうる。手術は単純な摘出ではなく、罹患区域に応じた血管合併切除となどによる再建を要する点が、他部位の軟部肉腫の手術と異なる。下部区域はが発達していればのみで対応できることがあるが、中部・上部区域では急性のを避けるため、形成や置換など区域に応じた再建計画を術前に立てる。

転移様式:血行性肺転移が主体

を含む肉腫は、上皮性癌と異なり転移がまれで、主に血行性にへ転移する。

⭐ この性質のため、所属リンパ節郭清を診断時の標準治療に組み込まない。画像で肺に多発する類円形の結節(いわゆるの転移パターン)を認めたら、の局所評価と並行して肺転移として扱う。進行例では体重減少呼吸困難などの全身・呼吸器症状を伴う。経過観察は局所の診察・画像に加え、肺転移を念頭に置いた胸部CTを中心に組み立て、間隔・期間の考え方は軟部肉腫に準じる。

子宮平滑筋肉腫に特有の論点

肉腫には、他部位のにはない2つの実務上の問題がある。

第一に、術前にと確実に区別する画像・検査手段がない。急速増大、閉経後の増大、な画像所見は疑いを強めるが、確定診断は摘出標本の病理で下す。したがって「筋腫のはずだから」という前提で手術方針を決めることはできない。

第二に、細切()による腹腔内播種の危険がある。として・経腟的に摘出・細切された症例のうち、実際にはおよそ1/495〜1/1,100程度の頻度で未診断のが潜んでいると推定されている。これを細切すると腹腔内播種やIII〜IV期相当への病期進行を約25〜64%の頻度で来し、細切しなかった場合よりが低下しうる。⚠️ 主要なは、悪性が疑われる・確定した症例および50歳以上の女性へのの使用に反対する勧告を維持しており、確定または強く疑う症例ではを細切せずに行う。

診断が確定した後の標準術式はで、リンパ節転移がまれなことから所属リンパ節郭清は一律に行わない。閉経前で肉眼的な子宮外病変がない場合の卵巣温存は個別に判断する。

治療:組織型に固有の点

局所治療の原則、放射線療法の位置づけ、進行・転移例の全身治療の全体像は軟部肉腫を参照する。ここではに固有の点だけを述べる。

・転移性のでは、全身状態が保たれた患者に対しの併用を6サイクル行い、その後で維持する治療が、単剤よりを延長した。これは軟部肉腫全体に共通する一般的初回治療ではなく、という組織型に特有の初回選択肢である。既治療例や毒性上の理由でこの併用を避ける場合は、などを検討する。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='leiomyosarcoma'>平滑筋肉腫</span>を疑う・確定"] --> B{"原発部位は"}
    B -->|"子宮"| C["細切を避け<span class='jp-term jp-term-diagram' title='simple hysterectomy'>単純子宮全摘</span><br>リンパ節郭清は一律に行わない"]
    B -->|"後腹膜・四肢深部"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='en bloc'>一塊</span>切除<br>軟部肉腫の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='common features'>総論</span>に準じる"]
    B -->|"下大静脈"| E["罹患区域を評価し<br>血管合併切除+再建を計画"]
    C --> F["肺を中心に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='metastatic focus'>転移巣</span>を評価"]
    D --> F
    E --> F
    F --> G{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='unresectable'>切除不能</span>・転移あり"}
    G -->|"はい"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='doxorubicin'>ドキソルビシン</span>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='trabectedin'>トラベクテジン</span><br>を組織型特異的初回選択肢として検討"]
    G -->|"いいえ"| I["局所治療後、肺中心の経過観察"]

まとめ

  • ではなく、TP53/RB1/ATRX不活化を背景に新規に発生する悪性腫瘍である。
  • 診断は・高いの組合せで下し、古典的パターンでは2項目がそろえば診断的である。・粘液型では閾値をそのまま当てはめない。
  • 好発部位は子宮、後腹膜、下大静脈を中心とする大血管、四肢深部で、部位ごとに症状の入口が異なる。下大静脈上部区域は様の病態を来しうる。
  • 転移はリンパ節よりも血行性の肺転移が主体で、所属リンパ節郭清を一律には行わない。
  • 肉腫は術前にと確実に区別できず、細切による腹腔内播種の危険があるため、疑いがあればを細切せずに行う。
  • 全身治療は単剤というに対し、では併用後の維持療法が組織型特異的な初回選択肢になる。