組織病理学

組織病理学 · H1-077

子宮平滑筋腫

Leiomyoma - UTERUS

描出疾患
子宮筋腫
疾患
赤色変性平滑筋肉腫

🧠 全体像:(uterine leiomyoma)は、のから生じる境界明瞭な良性である。均一ながする束状・を作り、通常は、腫瘍細胞壊死、異常な有糸分裂を欠く。

標本の要点

項目 所見
臓器 子宮
染色 ・染色(HE)
発生部位 内の筋腫
境界 境界明瞭で周囲筋層を
配列 がするき状構築
細胞 質、両端が細い
悪性所見 通常は、腫瘍細胞壊死、異常有糸分裂を欠く

観察の順序

  1. 子宮内膜との向きを確認する。
  2. 正常筋層と境界明瞭な結節を区別する。
  3. 低倍率でする束状・き状構築を確認する。
  4. 高倍率で細胞の均一性、核異型、有糸分裂、壊死を評価する。
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myometrium'>子宮筋層</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='smooth muscle cells'>平滑筋細胞</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hormone-sensitive'>ホルモン感受性</span>を背景に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='clonal proliferation'>クローン性増殖</span>"]
    B --> C["境界明瞭な結節"]
    C --> D["周囲筋層を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mass effect'>圧排</span>"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='interlace'>交錯</span>する<span class='jp-term jp-term-diagram' title='smooth muscle bundle'>平滑筋束</span>"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='whirl / whorl'>渦巻</span>き状構築"]

細胞形態

所見 良性としての読み方
核 細長く、両端が鈍い葉巻状
細胞質 豊富で好酸性
束状配列 細胞束が直交・する
核異型 目立たない
有糸分裂 少数で、異型有糸分裂を欠く
壊死 を欠く

「」を核異型の根拠にしない。は正常分化した平滑筋の特徴であり、核の、クロマチン増量、とは別である。

発育部位

型 部位 主な影響
筋腫 内 子宮腫大、月経量増加
内膜側へ突出 、、妊孕性への影響
漿膜側へ突出 周囲臓器の圧迫

変性

腫瘍が大きくなると血流が相対的に不足し、、、石灰化、などを生じうる。これらの変性を直ちに肉腫性壊死と解釈しない。

⚠️ 妊娠中・分娩時に摘出された筋腫は、良性でも悪性を思わせる所見をそろえて見せる。 帝王切開時などに摘出された97例の検討では、が57.7%に、凝固性壊死に帰せられる所見(viable部と壊死部のな移行22.7%、腫瘍細胞核の残影50.5%、血管周囲の腫瘍細胞残存9.3%)が高頻度にみられ、奇怪核細胞48.5%、限局性の粘液様変化42.3%も認められた。それでも有糸分裂は平均0.5個/10 HPFと少なく、核異型は87.6%が軽度にとどまっていた1。所見を1つ拾って悪性と決めず、臨床背景を含めた組合せで判断する。

💡 このは実際に手術中に起きている。 瘍の112例の検討で永久標本とのは88%だったが、最大の食い違いは間質のを腫瘍細胞壊死と読み違えたの症例であり、壊死の種類が決められないことなどを理由に8.9%がになっていた2。

平滑筋肉腫との比較

項目
境界 境界明瞭・性 浸潤性になりうる
細胞異型 通常は乏しい 中等度〜
有糸分裂 少数・正常型 増加し、異型分裂を伴いうる
壊死 ・梗塞型変性はありうる が重要

💡 の側にも「悪性に見える亜型」がある。 有糸分裂活性の高い(mitotically active leiomyoma)、を広くもつapoplectic leiomyoma、奇怪核を伴う(leiomyoma with bizarre nuclei)はいずれもと紛らわしく、細胞異型・有糸分裂活性・腫瘍細胞壊死の3項目を厳密に当てはめることが鑑別の要になる。免疫染色に逃げないこと——p16は奇怪核を伴うやapoplectic leiomyomaでもしばしば陽性になるための根拠にはならず、MED12変異もこの鑑別には役立たない3。

詳細は H1-078:肉腫 で確認する。

まとめ

  • は、境界明瞭で性に発育する良性である。
  • する、き状構築、均一なを確認する。
  • は平滑筋分化の特徴であり、核異型ではない。
  • 変性壊死と腫瘍細胞壊死を区別し、との鑑別に用いる。

出典

  1. 1.Uterine Leiomyomas Presenting During Pregnancy and Delivery: Comprehensive Characterization of Features Helpful in the Distinction From Malignant Mimics(American Journal of Surgical Pathology・2026)妊娠中・分娩時に摘出された子宮平滑筋腫97例では虚血性壊死57.7%、凝固性壊死に帰せられる所見(viable部と壊死部の急峻な移行22.7%、血管周囲の腫瘍細胞残存9.3%、腫瘍細胞核の残影50.5%)、奇怪核細胞48.5%、腫瘍体積30%以下の限局性粘液様変化42.3%が高頻度にみられたが、有糸分裂は平均0.5個/10 HPF、核異型は87.6%が軽度にとどまった閲覧 2026-08-24
  2. 2.Intraoperative Frozen Section Biopsy of Uterine Smooth Muscle Tumors: A Clinicopathologic Analysis of 112 Cases With Emphasis on Potential Diagnostic Pitfalls(American Journal of Surgical Pathology・2021)子宮平滑筋腫瘍の凍結切片112例(平滑筋肉腫9例・平滑筋腫103例)で永久標本との一致率は88%。最大の食い違いは、間質の硝子化を腫瘍細胞壊死と誤読した平滑筋腫の症例だった。壊死の種類の判定困難などを理由に8.9%が判定保留となった閲覧 2026-08-24
  3. 3.Practical issues in uterine pathology from banal to bewildering: the remarkable spectrum of smooth muscle neoplasia(Modern Pathology・2016)有糸分裂活性の高い平滑筋腫、apoplectic leiomyoma、奇怪核を伴う平滑筋腫は平滑筋肉腫と紛らわしく、細胞異型・有糸分裂活性・腫瘍細胞壊死という形態基準を厳密に当てはめることが鑑別の要。有糸分裂数の閾値は平滑筋肉腫の亜型ごとに異なる。p16は奇怪核を伴う平滑筋腫やapoplectic leiomyomaでもしばしば陽性になるため平滑筋肉腫の根拠にしてはならず、MED12変異もこの鑑別には役立たない閲覧 2026-08-24