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Disease Atlas · 生殖・産婦人科 · 疾患

赤色変性

Red degeneration of uterine fibroid

別名
Carneous degeneration
臓器系
生殖・産婦人科
科目
Obstetrics and Gynecology (Gynecology)Pathology (Histopathology)
トピック
婦人科 20:子宮の良性疾患組織病理 H1-077:子宮平滑筋腫
鑑別疾患
急性虫垂炎精巣捻転・卵巣捻転
治療薬
パラセタモールジクロフェナク
症状
腹痛発熱悪心嘔吐圧痛
検査値
白血球数
元疾患
子宮筋腫

🧠 全体像:は、妊娠中のがのうっ滞・閉塞によりに陥る病態である。全般の疫学・分類・非妊娠時の治療はを参照し、本ノートは妊娠中のとしてのそのものに絞る。核心は原則として保存的治療(鎮痛・安静)で軽快することと、の特徴的信号(T1高信号を中心に、出血の時期により変化するT2信号)が診断の決め手になることの2点であり、これを押さえれば外科的介入を要する・虫垂炎など他の妊娠中と混同しない。

病態

妊娠中はエストロゲン・プロゲステロンの上昇によりが急速に増大しうるが、筋腫自体の血管新生はその増大速度に追いつかない。筋腫辺縁の静脈がうっ滞・血栓性に閉塞すると、筋腫実質は(壊死)に陥る1。妊娠中ののうちを来す頻度はおよそ8%と、妊娠中の合併症としてはもっとも頻度が高く、筋腫が最も急速に増大する後半〜前半にかけて症状が出現しやすい1。

flowchart TD
    A["妊娠に伴うエストロゲン・プロゲステロン上昇"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='uterine fibroids (leiomyoma)'>子宮筋腫</span>の急速な増大"]
    B --> C["筋腫辺縁の血管新生が増大速度に追いつかない"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peripheral vein'>辺縁静脈</span>のうっ滞・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thrombotic occlusion'>血栓性閉塞</span>"]
    D --> E["筋腫実質の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hemorrhagic infarction'>出血性梗塞</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='red degeneration'>赤色変性</span>)"]
    E --> F["急性腹痛・軽度発熱・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='leukocytosis'>白血球増多</span>"]

💡 「梗塞」という言葉が示すとおり、は感染ではなく虚血性の壊死である。発熱・を伴っても無菌性の炎症反応であり、抗菌薬が必要なではない。この・梗塞型の変性は、の組織像ではのとは別物として扱われており、が起きたというだけで直ちに肉腫を疑う根拠にはならない。

臨床像

急激な限局性の腹痛、圧痛を伴う腫瘤の触知、軽度の発熱、悪心・嘔吐、軽度の上昇を来す1。全般に共通する・圧迫症状などはを参照。

診断

⭐ が診断の決め手になる。 特徴的な所見は、で筋腫内部がびまん性〜辺縁性に高信号(血液由来のタンパク質・細胞内メトヘモグロビンを反映)を示し、は出血の時期により信号が多彩だが、慢性期には高信号部分がより辺縁側へ寄りを伴いやすい(うっ滞した静脈と壊死組織の境界を反映する)ことである2。臨床像・画像所見の組合せで診断し、他のを除外する。

鑑別 鑑別点
悪心・嘔吐が強く、超音波で卵巣を認める。外科的が高い
による虫垂の位置変位を考慮したうえで、臨床経過・画像で鑑別する
筋腫の でのみ起こる。急激なで、での茎のが手がかりになる

治療

⭐ 原則として保存的治療で軽快する。 第一選択は鎮痛(、は最長48時間程度を目安とした短期使用)と安静で、必要に応じて入院・輸液・を併用する1。妊娠中期以降、特にでのなどの長期使用はへの影響が懸念されるため、短期に限定して用いる。

保存的治療に反応しない場合、または臨床像・画像から捻転が疑われる場合は外科的評価を検討する。妊娠中のは出血・のリスクを伴うため、緊急性がない限り妊娠中は避け、保存的治療を尽くしたうえで個別に判断する。

経過・予後

⭐ 多くは保存的治療に反応し、手術を要することはまれである1。同一妊娠中に筋腫がさらに増大すれば、時期を変えてしうる。

そのものがに与える影響を筋腫非合併妊娠と直接比較したデータは限られるが、を合併する妊娠全般では、非合併妊娠と比べて早産(1.5)、(2.65)、(2.63)、帝王切開(2.60)、(2.95)のリスクが上昇するとされる1。はこうした背景を持つ妊娠の経過中に生じる急性エピソードの一つと位置づけ、疼痛が軽快した後も産科的な経過観察を継続する。

まとめ

  • は妊娠中のに生じるで、筋腫のうっ滞・が機序である。妊娠中の合併症としてはもっとも頻度が高く、およそ8%に生じる。
  • 急性の限局性腹痛・軽度発熱・を来すが、これは無菌性の虚血反応であり感染ではない。
  • のT1高信号(辺縁性になりやすい)とT2信号の変化が診断の決め手で、・虫垂炎・筋腫のとの鑑別に用いる。
  • 治療は原則として(は最長48時間程度に限定)と安静による保存的治療で、外科的介入は捻転疑いや保存治療不応時に限る。
  • 多くは保存的治療に反応し手術を要することはまれだが、妊娠中に筋腫がさらに増大すればしうる。合併妊娠全般では早産・・などのリスクが上昇するため、疼痛軽快後も産科的経過観察を続ける。

出典

  1. 1.Fibroids and pregnancy(International Journal of Gynecology & Obstetrics・2026)赤色(カルネウス)変性が妊娠中の子宮筋腫のもっとも頻度の高い合併症でおよそ8%に生じること、機序が辺縁静脈の急性血栓性閉塞による梗塞・壊死であること、症状は突然の限局性腹痛・軽度発熱・悪心嘔吐・局所圧痛・白血球増多で筋腫が最大増大速度を迎える妊娠第1三半期後半〜第2三半期前半に多いこと、治療はNSAIDsを最長48時間程度の初期治療としこれに入院・輸液・制吐薬を組み合わせる保存的管理が標準で手術は保存治療不応・緊急時に限られること、子宮筋腫を合併する妊娠全般で非合併妊娠と比べ早産(オッズ比1.5)・胎位異常(オッズ比2.65)・常位胎盤早期剥離(オッズ比2.63)・帝王切開(オッズ比2.60)・分娩後出血(オッズ比2.95)のリスクが上昇すること(これらは筋腫合併妊娠全般の値で赤色変性に特異的な値ではない)を確認した。閲覧 2026-08-20
  2. 2.Magnetic resonance imaging findings of degenerating uterine fibroids: A pictorial review(Journal of Clinical Imaging Science・2026)赤色(カルネウス)変性が腫瘍辺縁の静脈の急性閉塞による出血性壊死であること、MRIではT1強調像でびまん性〜辺縁性の高信号(タンパク質・細胞内メトヘモグロビンを反映)を示し、T2強調像は出血の時期により信号が多彩で慢性期には高信号がより辺縁側へ移動しT2低信号の性状を伴いやすいことを確認した。閲覧 2026-08-20