組織病理学

組織病理学 · H1-076

肝血管腫(肉眼標本)

Haemangioma hepatis

🧠 全体像:成人のは、下に生じる境界明瞭な良性で、多くはに拡張した血液充満腔からなる。赤褐色でのを示すが、成人肝病変を小児の退縮性毛細血管腫と混同しない。

肉眼所見

項目 特徴
臓器 肝臓
部位 被膜直下にみられることが多い
境界 境界明瞭で周囲肝をする
色調 暗赤色〜赤褐色
血液に富み、・
性質 良性

組織学的対応

flowchart TD
    A["薄い隔壁で区切られた<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular space'>血管腔</span>"] --> B["血液が充満"]
    B --> C["扁平で異型の乏しい内皮が被覆"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cavernous'>海綿状</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular lesion'>血管性病変</span>"]
    D --> E["周囲<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hepatic parenchyma'>肝実質</span>を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mass effect'>圧排</span>"]
    D --> F["血栓・器質化・石灰化を伴うことがある"]
所見 読み方
拡張 の血液充満腔が連続する
内皮 一層の扁平で均一な細胞。多層化やを欠く
間質 薄い
周囲肝 浸潤破壊よりが主体

成人肝血管腫と乳児血管腫

項目 成人の典型的 乳児血管腫
主な構築 に拡張した には毛細血管様小血管が密に増える
年齢 成人で偶発的に発見されることが多い 乳児期
経過 多くは長期に安定 増殖後にしうる
用語上の注意 と呼ばれてきた病変 退縮性の

「小児に多くする毛細血管腫」という説明を、成人の典型的な肝へそのまま当てはめない。

💡 「長期に安定」は平均的な傾向であって不変という意味ではない。 成人211例を3年以上追跡した研究では、腫瘍径は縮小38.9%・不変31.3%・増大29.8%とほぼ3等分され、増大は40歳未満に多く、縮小は60歳超および60 mm超の病変で目立った1。増大してものリスクは無く、破裂は後などに限られる極めてまれな事象である(起きた場合の致死率は高い)。5 cm以上ではによる腹痛・悪心を、まれにを起こしうる2。手術適応はガイドライン間で一致しておらず、(2014)は10 cm以上を切除検討の対象に含めるのに対し、(2016)とブラジル肝臓学会(2015)は症状のある病変に限っている2。典型例では画像による定期経過観察も不要とされる3。

鑑別

病変 鑑別点
実質性腫瘍で異型肝細胞・を示す
多発結節、壊死、腺管形成など原発癌に応じた形態
浸潤性にを破壊し、内皮異型・多層化・有糸分裂を示す
Peliosis hepatis 内の不規則な血液腔で、真の内皮被覆を欠くことがある

⚠️ 生検では血液に富む病変であることを意識する。肉眼色だけで良性と断定せず、境界、、内皮異型を合わせて評価する。生検を行うかどうか自体がガイドライン間で割れている。(2014)は典型的な画像所見があれば生検を避けるとし、ブラジル肝臓学会(2015)はにはのリスクがあるため複数のでも診断がつかず悪性の疑いが残る例に限るとする。一方(2016)は、画像で診断がつかないときはを行ってよく、被膜と病変縁の間に正常を挟めば禁忌ではないという立場である2。

まとめ

  • 成人の典型的は、被膜下の赤褐色・の良性である。
  • 組織学的には、異型の乏しい内皮が血液充満腔を一層に覆う。
  • 周囲組織を破壊する浸潤ではなく、性発育が主体である。
  • 乳児血管腫の性を成人へ機械的に当てはめない。

出典

  1. 1.The Natural History and Management of Hepatic Hemangioma(Journal of Clinical Medicine・2023)成人肝血管腫211例を3年以上追跡すると腫瘍径は縮小38.9%・不変31.3%・増大29.8%に分かれた。増大の頻度は40歳未満で高く加齢とともに低下し、縮小の頻度は60歳超と60 mm超の病変で著明に増える閲覧 2026-08-24
  2. 2.Scoping review of clinical practice guidelines on the management of benign liver tumours(BMJ Open Gastroenterology・2021)肝血管腫は悪性転化のリスクがなく破裂は鈍的外傷後などに限られる極めてまれな事象だが致死率は高い。5 cm以上では圧排による腹痛・悪心、まれにKasabach-Merritt症候群を起こす。手術適応はACG(2014)が10 cm以上を検討対象に含めるのに対しEASL(2016)とブラジル肝臓学会(2015)は症状のある病変に限り、経皮針生検もACGとブラジル肝臓学会は出血リスクを理由に非推奨、EASLは非推奨としないとガイドライン間で食い違う閲覧 2026-08-24
  3. 3.EASL Clinical Practice Guidelines on the management of benign liver tumours(European Association for the Study of the Liver・2016)肝血管腫は良性の経過をとるため典型例では画像による定期経過観察を要しない。介入は圧排による症状、増大病変、Kasabach-Merritt症候群がある例に限り、良性肝腫瘍の多職種チームへ紹介する閲覧 2026-08-24