組織病理学

組織病理学 · H1-075

大腸ポリープ(肉眼標本)

Polypus intestini crassi

疾患
大腸腺腫

🧠 全体像:は、からへ突出する肉眼形態の総称であり、名そのものではない。非腫瘍性ポリープ、腺腫、病変、癌を組織学的に区別し、腺腫では大きさ、絨毛成分、が癌化リスクを高める。

肉眼所見

項目 特徴
臓器 大腸
形態 から突出する腫瘤
茎を介して可動性のある頭部が粘膜に連なる
広い基部で粘膜に接する
表面 平滑、、、発赤・びらん・潰瘍など多様
診断 肉眼形態だけで腺腫・癌を確定しない

ポリープの分類

分類 代表病変 腫瘍性
炎症性 炎症性ポリープ、 非腫瘍性
通常は非腫瘍性
、 病変自体と背景症候群を分けて評価
通常型腺腫 ・・腺腫 腫瘍性
病変 、腺腫 腫瘍性
癌 ポリープ内癌を含む 悪性

小さいポリープを一律に炎症性・、大きいポリープを一律に腺腫と分類しない。大きさはリスク因子だが、病変の種類はと細胞異型で決まる。

💡 病変の呼び名は分類第5版(2019)で整理された。 平坦な形をとりうることを理由に「ポリープ」より「」が優先名とされ、従来の sessile serrated polyp/sessile serrated adenoma(SSA/P、・ポリープ)はへ改称された。BRAFとK型が別々の経路を規定することも同時に明示された1。旧称は実習・試験では今も出るので、新旧を対応づけて覚える。ポリープは分類で・腺腫・の3群に分けられ、にあたるのは後2者である。平均的リスク集団でのポリープ全体のは20〜40%で大半はだが、最も多い亜型であるは検出率の高いでは最大15%に見つかる2。

腺腫から癌への進展

flowchart TD
    A["正常大腸上皮"] --> B["APC経路などの初期異常"]
    B --> C["腺腫形成"]
    C --> D["追加の遺伝子・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epigenome'>エピゲノム</span>異常"]
    D --> E["異形成が進行"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intramucosal carcinoma'>粘膜内癌</span>"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Muscularis mucosae'>粘膜筋板</span>を越えて浸潤"]
    G --> H["浸潤性大腸腺癌"]

腺腫は大腸癌の重要なだが、すべての腺腫が癌になるわけではない。

リスクを高める所見 意味
大きい病変 進行した異形成・癌を含む確率が上がる
絨毛成分 より高リスク
癌化に近い上皮内腫瘍性変化
多発 ・病変のリスクを示す
陥凹・潰瘍・硬さ 浸潤癌を疑う手がかり

APCと家族性大腸腺腫症

APCはWnt/β-catenin経路を制御するである。生殖細胞系列APCにより(familial adenomatous polyposis:FAP)が生じる。

誤解しやすい表現 正確な理解
出生時から多数のがある 典型的には小児後期から思春期に腺腫が出現・増加する
15歳頃に必ず癌になる 未介入では癌リスクが極めて高いが、癌発症は通常さらに後で、年齢は固定できない
APC異常がすべてのポリープを説明する 散発性腺腫でもAPC経路は重要だが、など別経路もある

⚠️ 「未介入なら極めて高リスク」は「診断されていれば防げる」と裏表である。 FAP 358例の追跡では大腸癌が59例(16.5%)と最多の癌だったが、大腸癌関連死のほぼ全例はFAPと診断されていなかった人に起きており、減弱型では1例も起きなかった。予防的大腸切除を受けた人では胃癌・十二指腸/が主な死因に置き換わる3。癌化の年齢を一律に決められないのは、監視と切除のタイミングで経過そのものが変わるからである。

腺腫の組織像は H1-072:大腸腺腫性ポリープ、を越えた浸潤癌は H1-073:大腸腺癌 で確認する。

まとめ

  • ポリープは「粘膜から突出する病変」という肉眼形態の名称である。
  • 大きさだけで炎症性・・を分類しない。
  • 腺腫の癌化リスクは大きさ、絨毛成分、異形成度などで層別化する。
  • FAPでは思春期頃から多数の腺腫を生じるが、出生時から癌が決まっているわけではない。

出典

  1. 1.The 2019 WHO classification of tumours of the digestive system(Histopathology・2020)WHO消化器腫瘍分類第5版(2019)で sessile serrated polyp/adenoma は sessile serrated lesion(無茎性鋸歯状病変)へ改称された。平坦な形をとりうるため優先名は「鋸歯状病変」であり、BRAF変異とKRAS変異が2つの別々の腫瘍化経路を規定する閲覧 2026-08-24
  2. 2.Terminology, Molecular Features, Epidemiology, and Management of Serrated Colorectal Neoplasia(Gastroenterology・2019)WHO分類は鋸歯状ポリープを過形成性ポリープ・従来型鋸歯状腺腫・無茎性鋸歯状病変の3群に分け、前駆病変は従来型鋸歯状腺腫と無茎性鋸歯状病変。鋸歯状経路はRAS/RAF変異・Wnt経路の破綻・CpGアイランド広範メチル化で特徴づけられる。平均的リスク集団での鋸歯状ポリープ有病率は20〜40%で大半は過形成性ポリープ、無茎性鋸歯状病変は検出率の高い術者で最大15%に見つかる閲覧 2026-08-24
  3. 3.Cancer Incidence and Mortality in Familial Adenomatous Polyposis Syndrome(Diseases of the Colon and Rectum・2025)FAP患者358例の後ろ向きコホートで大腸癌が59例(16.5%)と最多の癌だったが、大腸癌関連死のほぼ全例はFAPと診断されていなかった人に生じ、減弱型では1例も起きなかった。大腸切除後は胃癌・十二指腸/小腸癌が主な死因となる閲覧 2026-08-24