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Disease Atlas · 腫瘍 · 腫瘍

母斑性基底細胞癌症候群

Nevoid basal cell carcinoma syndrome

別名
Gorlin症候群Gorlin syndrome基底細胞母斑症候群NBCCSnevoid basal cell carcinoma syndrome
臓器系
腫瘍皮膚神経
科目
DermatologyPathologyHistopathology
トピック
皮膚科 3-07:基底細胞癌病理学 C/103:非メラノサイト系皮膚腫瘍組織病理 H2-129:髄芽腫(M分類とリスク層別化)
続発疾患
基底細胞癌中枢神経系腫瘍(成人・小児)
関連疾患
色素性乾皮症
治療薬
ビスモデギブソニデギブ
症状
毛細血管拡張皮膚結節局面びらん・潰瘍手掌足底小陥凹
画像所見
顎骨角化嚢胞大脳鎌石灰化

🧠 全体像(nevoid basal cell carcinoma syndrome:NBCCS、Gorlin症候群)は、PTCH1に生殖細胞系列の異常をもつの腫瘍症候群で、若年から多発する、手掌・足底の小陥凹、の石灰化を特徴とする。診療の骨格は「多発BCCをどう治療するか」だけでなく、紫外線と並んでがもう1つの決定的な発癌因子であるという一点に集約される——には新たなBCCが多発するため、この患者群では代替手段がある限り放射線治療そのものを避ける1

病態

flowchart TD
    A["PTCH1(まれにSUFU)の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='germline pathogenic variant'>生殖細胞系列病的バリアント</span>(第一の異常)"] --> B["全身の細胞が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Hedgehog pathway'>ヘッジホッグ経路</span><br>抑制のブレーキを片方だけ欠いた状態"]
    B --> C["紫外線・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ionizing radiation'>電離放射線</span>による<br>残る<span class='jp-term jp-term-diagram' title='opposition'>対立</span>遺伝子の後天的な異常(第二の異常)"]
    C --> D["曝露を受けた局所で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Hedgehog pathway'>ヘッジホッグ経路</span>が<br>恒常的に活性化"]
    D --> E["多発<span class='jp-term jp-term-diagram' title='basal cell carcinoma, BCC'>基底細胞癌</span>"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='odontogenic keratocyst'>顎骨角化嚢胞</span>"]
    D --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Medulloblastoma'>髄芽腫</span>(主にSHH活性化型)"]

性BCCと同じPTCH1経路異常が原因だが、NBCCSでは片方の遺伝子がすでに生殖細胞系列で異常なため、曝露を受けた皮膚のどこでも、もう片方の遺伝子に後天的な異常が入るだけでBCCが成立する(two-hit機序)。💡 これが、孤発例では顔面など日光曝露部に単発で生じるBCCが、NBCCSでは体幹を含め若年から多発する理由であり、同時に放射線治療を避けるべき理由そのものでもある——の細胞に一斉に「第二の異常」を与えることになるため、通常のBCC治療としての放射線が、その部位に新たなBCCを多発させてしまう1

臨床像

PTCH1がNBCCSの50〜85%を占め、形式をとる。は同症候群で最も頻度の高い腫瘍で、思春期から若年成人期にかけて生じ始める2

所見 要点
多発 10代後半〜20代から出現し、生涯で数十〜数百個に及ぶこともある。BCCと異なり体幹・四肢にも生じる
下顎に多い。無症候性のことが多く、歯科パノラマX線検査で偶発的に見つかることがある
直径1〜2mm程度のが多発する。2個以上でを満たす
の石灰化 多くは無症候性で、頭部画像検査で偶発的に確認される
・前額突出 特徴的な所見の一部
卵巣線維腫・心臓線維腫 多くは無症候性の良性腫瘍
肋骨・脊椎の骨格異常 分岐肋・癒合肋など
NBCCS患者の約5%に生じ、ピーク発症年齢は1〜2歳という例より若い年齢層に偏る1。SHH活性化型が主体で、の枠組みで扱う

診断

flowchart TD
    A["若年からの多発BCC・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='odontogenic jaw cyst'>顎嚢胞</span>・<br>手掌足底陥凹・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='falx cerebri calcification'>大脳鎌石灰化</span>などを疑う"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='major criteria'>大基準</span>2+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='minor criteria'>小基準</span>1<br>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='major criteria'>大基準</span>1+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='minor criteria'>小基準</span>3を満たすか"}
    B -->|"満たす"| C["臨床診断確定"]
    B -->|"満たさない・確認したい"| D["PTCH1・SUFUの<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='pathogenic variant'>病的バリアント</span>を検索"]
    D --> E{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pathogenic variant'>病的バリアント</span>を同定"}
    E -->|"あり"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='molecular diagnostics'>分子診断</span>確定"]
    E -->|"なし"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='clinical signs'>臨床所見</span>の再評価・経過観察"]

は、①の石灰化(板状・、または20歳未満での確認)、②、③2個以上、④多発BCC(生涯5個超)または30歳未満発症のBCC、⑤のNBCCS罹患である。には小児期の、肋骨・脊椎異常、などが含まれる。2つ+1つ、または1つ+3つを満たせば臨床診断が成立し、が不確実な場合でもPTCH1またはSUFUを同定すれば単独でが確定する1

治療・サーベイランス

  • 多発BCCの治療が特に有効とされる。には・レーザー・も選択肢になる。眼周囲など重症・進行例にはなど阻害薬を検討するが、副作用が高頻度で継続が難しいことが多い1
  • ⚠️ 放射線治療は可能な限り避ける。 通常のBCC治療や他の悪性腫瘍への放射線療法であっても、に多数の新規BCCを誘発しうるため、特に小児期では代替手段を優先する1
  • 紫外線防御を徹底する。 日焼け止めに加え、長袖・襟の高い衣類・帽子で物理的にし、直射日光への曝露自体を最小化する1
  • :皮膚診察は少なくとも年1回(多発・進行例では3〜4か月ごとも考慮)、顎パノラマX線は8歳以降12〜18か月ごとに新規角化嚢胞を確認する。SUFU関連例を中心に、乳幼児期は数か月ごと、以降は年1回まで間隔を延ばしながら学童期までを監視する。心臓線維腫は循環器医の判断に応じて画像フォローする1
  • 遺伝を行い、・歯科口腔外科・小児神経/腫瘍科・眼科・循環器科による多職種フォローを組む。

まとめ

  • NBCCS(Gorlin症候群)はPTCH1の生殖細胞系列異常によるの腫瘍症候群で、多発BCC・・手掌足底小陥凹・を特徴とする。
  • Two-hit機序により曝露を受けた皮膚のどこでもBCCが成立しうるため、放射線治療は新たなBCCを誘発するという管理上の要点を必ず押さえる。
  • 診断はの組合せ、またはPTCH1/SUFU同定で確定する。
  • 治療はMohs手術を中心に、重症例への阻害薬を検討し、紫外線防御と生涯にわたる皮膚・顎・脳のを継続する。
  • (主にSHH活性化型)は乳幼児期に発症リスクが高く、若年児では定期的なで監視する。

出典

  1. 1.Nevoid Basal Cell Carcinoma Syndrome(GeneReviews(University of Washington, Seattle)— Evans DG・2024)PTCH1(まれにSUFU)の生殖細胞系列異常による常染色体顕性遺伝であること、臨床診断基準(大基準:大脳鎌石灰化・顎骨角化嚢胞・手掌足底小陥凹2個以上・多発BCCまたは30歳未満発症のBCC・第一度近親者のNBCCS罹患/小基準:小児期髄芽腫・大頭症・肋骨骨格異常など)が大基準2+小基準1、または大基準1+小基準3の組合せで成立すること、PTCH1/SUFUの病的バリアント同定単独でも分子診断が成立すること、髄芽腫はNBCCS患者の約5%に生じピーク発症年齢が1〜2歳であること、放射線治療は照射野に多数の新規BCCを誘発しうるため代替手段があれば特に小児期は避けるべきこと、重症・進行BCCにはヘッジホッグ経路阻害薬(ビスモデギブ等)が有効だが副作用が高頻度であること、皮膚診察は少なくとも年1回(3〜4か月ごとも考慮)・顎パノラマX線は8歳以降12〜18か月ごと・若年児の脳MRIサーベイランスなどの推奨頻度を確認した閲覧 2026-08-11
  2. 2.Gorlin syndrome(MedlinePlus Genetics(U.S. National Library of Medicine)・2019)PTCH1の病的バリアントがGorlin症候群の50〜85%を占め常染色体顕性遺伝形式をとること、基底細胞癌が思春期から若年成人期にかけて生じる同症候群で最も頻度の高い腫瘍であることを確認した閲覧 2026-08-11