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Symptoms · Published

手掌足底小陥凹

Palmoplantar pits

別名
掌蹠小窩palmar pitsplantar pits
臓器系
皮膚腫瘍
科目
Dermatology
トピック
皮膚科 3-07:基底細胞癌
関連疾患
母斑性基底細胞癌症候群

🧠 全体像:手掌足底小陥凹は「見つけた瞬間に治療対象を探す所見」ではなく、それ自体が特定の疾患を思い出すための鍵である。⭐ 直径1〜2mm程度のが手掌・足底に多発していれば、まず考えるべきは(NBCCS、Gorlin症候群)であり、陥凹そのものを治す発想ではなく、他のが揃うかという診断の入り口として扱う。

定義と用語の整理

  • 手掌・足底の直径1〜2mm程度ので、層)の局所的な欠損によって生じる。患者は「小さな穴」「点々としたくぼみ」と表現することが多く、隆起する疣贅(いぼ)や(たこ)とは逆に、表面がへこむ点が特徴である。
  • 乾燥した状態では目立たないことが多く、手を温水に浸すが膨潤して陥凹が白くふやけ、明瞭になる1。診察で疑わしいが判然としない場合に有用な手技である。
  • 単発の陥凹は健常皮膚でも稀に見られるが、2個以上・多発性・両側性であれば病的意義を考える。

病態生理

は本来、表皮全体を連続した層として覆うが、NBCCSの陥凹ではの成熟過程が局所的に障害され、が部分的に欠損する。💡 陥凹の内部には組織学的にBCCと類似した類巣が存在することが知られており、従来はこれを「BCCとは臨床的に異なる病態」として区別してきたが、陥凹が一時的に炎症を起こしてBCC様の外観をとり、消退後に陥凹として残るという病理学的なを示唆する報告もある2NBCCSで体幹・四肢を含め若年からBCCが多発する背景にあるtwo-hit機序(PTCH1の生殖細胞系列異常+局所の後天的異常)が、この類巣にも及びうるという理解と整合する。

緊急・見逃してはいけない疾患

⚠️ NBCCSのとしての意味を最優先で考える。 2個以上の小陥凹はNBCCS患者の大多数に見られる高頻度所見であり、しばしば小児期から出現する31。陥凹を見つけたら、多発など他のの有無を確認する入り口として扱う。

⚠️ 陥凹とBCCは通常は別の病態だが、境界が曖昧な症例が報告されている。 陥凹内の類巣がBCC様に変化しうるという報告があるため2、陥凹が急速に拡大する、する、出血する、辺縁が隆起するなどの変化があれば、通常の小陥凹として様子を見ず生検を検討する。

鑑別としては、体幹の角化性丘疹を伴う家族性疾患であるDarier病、に多発する角化性・陥凹を来す点状角化症(Buschke-Fischer-Brauer病)が挙がり、いずれもNBCCSの陥凹と紛らわしい4。井戸水など飲料水中のに長期曝露した既往がある場合は、に多発する角化性丘疹・局面を来す砒素角化症を考える。への進展リスクを伴うであり、曝露歴の聴取が鑑別の鍵になる5

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["手掌・足底の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pitting'>点状陥凹</span>を確認"] --> B["温水に浸して<br>陥凹を明瞭化させる"]
    B --> C{"数・分布は<br>2個以上・多発性・両側性か"}
    C -->|"はい"| D["NBCCS<span class='jp-term jp-term-diagram' title='major criteria'>大基準</span>の1つとして評価<br>他の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='major criteria'>大基準</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='minor criteria'>小基準</span>を検索"]
    C -->|"いいえ・少数<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sporadic'>孤発性</span>"| E{"曝露歴・随伴所見は"}
    E -->|"慢性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arsenic'>ヒ素</span>曝露歴あり"| F["砒素角化症を疑う"]
    E -->|"体幹の角化性丘疹・家族歴あり"| G["Darier病・点状<span class='jp-term jp-term-diagram' title='palms and soles'>掌蹠</span>角化症を疑う"]
    D --> H{"陥凹の急速拡大・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ulceration'>潰瘍化</span>・<br>出血はあるか"}
    H -->|"あり"| I["生検で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='basal cell carcinoma, BCC'>基底細胞癌</span>を除外"]
    H -->|"なし"| J["経過観察としつつ<br>NBCCSの他の基準を継続評価"]

対症療法の考え方

手掌足底小陥凹そのものを対象にした治療は存在しない。陥凹自体への介入ではなく、背景にある疾患の検索が目的になる。

  • NBCCSが疑われれば、陥凹の治療ではなくNBCCSとしての(皮膚診察・顎パノラマX線・など)を組む。
  • 陥凹がBCC様に変化しと診断された場合は、通常のBCCと同様に治療する。
  • Darier病・点状角化症・砒素角化症など他疾患が原因と判明すれば、それぞれの原疾患の管理に委ねる。

まとめ

  • 手掌・足底の直径1〜2mm程度のは、の局所的欠損によって生じ、温水に浸すと明瞭化する。
  • 2個以上・多発性であればNBCCS(Gorlin症候群)のの1つとして扱い、他のの有無を検索する。
  • 陥凹とBCCは通常は別の病態だが、陥凹内の類巣がBCC様に変化しうるとの報告があり、急速拡大・・出血があれば生検を検討する。
  • 鑑別にはDarier病・点状角化症(Buschke-Fischer-Brauer病)・砒素角化症があり、いずれもの角化性病変として紛らわしい。
  • 陥凹そのものへの治療はなく、背景疾患の同定とその管理が診療の主眼になる。

出典

  1. 1.Nevoid Basal Cell Carcinoma Syndrome(GeneReviews(University of Washington, Seattle)— Evans DG・2024)手掌・足底小陥凹2個以上がNBCCSの大基準の1つであり、成人発症例のほぼ大多数に見られる高頻度所見であることを確認した閲覧 2026-08-11
  2. 2.Basal cell naevus syndrome(DermNet NZ・2021)掌蹠小陥凹がNBCCS患者の最大87%に生じ、しばしば小児期から出現することを確認した閲覧 2026-08-11
  3. 3.Punctate Palmoplantar Keratoderma: A Case Report of Type 1 (Buschke-Fischer-Brauer Disease)(Case Reports in Dermatology・2019)点状掌蹠角化症は掌蹠の多発する小さな角化性丘疹・陥凹であり、鑑別診断にDarier病・点状ポロケラトーシス・NBCCS(basal cell nevus syndrome)などが挙がることを確認した閲覧 2026-08-11
  4. 4.Arsenical Keratosis(StatPearls(NCBI Bookshelf)・2024)砒素角化症は慢性ヒ素曝露(最低6か月以上の過剰摂取)により生じる掌蹠の多発角化性丘疹・局面で、有棘細胞癌への進展リスクを伴う前癌病変であることを確認した閲覧 2026-08-11
  5. 5.Infantile-onset palmo-plantar basal cell carcinomas and pits in Gorlin syndrome(JAAD Case Reports・2018)掌蹠小陥凹の内部には組織学的にBCCに類似した類基底細胞巣が存在するが通常は臨床的に異なる病態とされてきたこと、一方で本症例は炎症を起こした陥凹が一時的にBCC様の外観をとり消退後に陥凹として残るという病理学的連続性を示唆したことを確認した閲覧 2026-08-11