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Symptoms · Published

びらん・潰瘍

Skin erosion and ulcer

別名
びらん皮膚潰瘍erosionskin ulcer
臓器系
皮膚
科目
Dermatology
トピック
皮膚科 1-01:皮膚の原発疹・続発疹
関連疾患
カポジ水痘様発疹症壊死性軟部組織感染症壊疽性膿皮症基底細胞癌固定薬疹自己免疫性水疱症(天疱瘡・水疱性類天疱瘡)皮膚癌皮膚有棘細胞癌母斑性基底細胞癌症候群末梢動脈疾患慢性静脈不全薬疹(SJS・TENを含む)褥瘡
スコア
PEDIS分類SINBAD分類WIfI分類

🧠 全体像:びらん・潰瘍はどちらも組織が欠損しただが、臨床的な意味を分けるのは範囲の広さではなく深さである。表皮に限局するびらんは瘢痕を残さず治るのに対し、潰瘍は真皮以深に達して瘢痕を残し、血流障害・感染・など全身の原因検索につながることが多い。深さを最初に判定し、次に部位・辺縁・基底の性状で機序を絞り込む。

定義と用語の整理

近接すると混同しやすいため、深さとで整理しておく。

深さ・定義 びらん・潰瘍との関係
びらん(本項) 表皮に限局する 通常は瘢痕を残さず治癒する
潰瘍(本項) 真皮以深に及ぶ 瘢痕を残して治癒する1。血流障害・感染・の検索を要する
〜真皮に達する線状の裂け目 「線状」という形態がびらん・潰瘍と異なる唯一の点で、深く達すれば潰瘍相当になる
による線状〜点状のびらん・潰瘍 )で規定される点が異なる。強いそう痒を示唆する
による組織死 壊死組織が脱落すると深い潰瘍として現れる。潰瘍の前段階に位置づけられることが多い

びらん・潰瘍の面はしばしば体液がにじみ出て滲出・湿潤を伴うが、滲出は体液が漏れ出る現象、びらん・潰瘍は組織そのものが欠損した所見であり、指す実体が異なる。

病態生理

機序で群にまとめると、原因検索の優先順位が立てやすい。

⚠️ 見逃してはいけないもの

  • ⚠️ 外観に不釣り合いな激痛を伴う潰瘍を、蜂窩織炎で片付けない。 は非壊死性の軟部組織感染症に比べ、呈している症状に不釣り合いな激烈な疼痛と全身の敗血症徴候を伴って発症することが多い2。急速に進行し、水疱・・全身毒性を伴えば画像検査を待たず外科的評価を急ぐ。に疼痛がかえって和らぐのは、した小血管と浅在神経の破壊による見かけの改善であり、軽快と読み違えない2
  • ⚠️ 潰瘍でや急な症状悪化を認めたら、としてを評価する。 による重度の虚血肢では、など向けの処置がかえって虚血を悪化させうる。
  • ⚠️ 数か月治癒しない潰瘍・辺縁が硬く隆起する潰瘍は、腫瘍のを疑って生検する。 ・慢性など長期治癒しない創部から悪性腫瘍(、多くは)が生じることがあり、平均潜伏期は約29年と長いため「昔からある創」という経過だけで良性と判断しない3
  • ⚠️ 粘膜のびらんを伴う広範な皮膚びらんを、通常のや熱傷と混同しない。 口腔・眼・などのを伴う(SJS・TENを含む)を示唆し、の中止と全身管理を急ぐ。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["びらん・潰瘍を確認"] --> B{"深さを評価:<br>表皮限局か、真皮以深に及ぶか"}
    B -->|"表皮限局(びらん)"| C["水疱破綻・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='scratching (excoriation)'>掻破</span>・浅い外傷を想定"]
    B -->|"真皮以深(潰瘍)"| D{"部位は下肢か、<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='bony prominence'>骨突出部</span>か、その他か"}
    D -->|"下肢"| E["辺縁・基底の性状を確認し<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='arterial'>動脈性</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='venous'>静脈性</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neuropathic'>神経障害性</span>を鑑別"]
    D -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bony prominence'>骨突出部</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immobilization'>不動化</span>患者"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pressure ulcer'>褥瘡</span>を想定し病期を評価"]
    D -->|"その他・治癒が遅い"| G{"辺縁が硬く隆起し<br>数か月治癒しないか"}
    E --> H["血流評価(脈拍触知・ABIなど)"]
    G -->|"はい"| I["腫瘍の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ulceration'>潰瘍化</span>を疑い生検"]
    G -->|"いいえ"| J["感染・血管炎・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='drug eruption'>薬疹</span>など<br>他の機序を検索"]
    H --> K["原疾患に応じた<span class='jp-term jp-term-diagram' title='treatment strategy'>治療方針</span>を決定"]

対症療法の考え方

原疾患の治療が主軸であることは他のと同じだが、創部そのものへの対症療法が予後を左右する場面が多い。

  • 創傷被覆と湿潤環境の維持:滲出量に応じた材で創面を保護し、乾燥させすぎずもさせない湿潤環境を保つとが進みやすい。壊死組織がを覆う場合はを先行させる。
  • ではの選択が創傷治癒の前提であり、なしの創部管理は効果が乏しい。
  • 血流再建潰瘍はの適応を評価してから創部管理を進める。は事前に動脈血流を確認する必要があり、両者を取り違えると虚血を悪化させる。
  • 感染徴候(、周囲の急速な発赤拡大、発熱)があれば培養を確認し、全身抗菌薬の適応を判断する。

まとめ

  • びらんは表皮に限局し瘢痕を残さず治るのに対し、潰瘍は真皮以深に達して瘢痕を残す。この深さの違いが予後と処置を決める。
  • 近接するには(線状の裂け目)、というで規定)、(潰瘍の前段階になりうる)があり、成り立ちで区別する。
  • 機序は水疱・膿疱の破綻、虚血()、感染、外傷・熱傷、腫瘍の、血管炎によるに大別できる。
  • ⚠️ 潰瘍の、腫瘍のを伴うは見逃すと致命的または不可逆な経過をたどる。
  • 対症療法は創傷被覆・湿潤環境・・血流再建の組み合わせで、かを取り違えるとがかえって害になる。

出典

  1. 1.Marjolin Ulcer(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2025)Marjolin潰瘍は熱傷瘢痕・外傷性創傷・静脈性潰瘍・骨髄炎・褥瘡・放射線皮膚炎など長期治癒しない慢性創傷部に生じる悪性腫瘍(組織型は扁平上皮癌が80〜90%と最多で、次いで基底細胞癌・メラノーマ)であること、平均潜伏期は約29年(5〜51年の幅)と長いこと、確定診断には4分画からの生検が必須であることを確認した。閲覧 2026-08-04
  2. 2.Terminology in dermatology(DermNet NZ・1997)この皮膚科用語集は、潰瘍を「表皮の全層に加えて真皮の少なくとも一部を失った欠損で、皮下組織に及ぶこともある」と定義し、潰瘍は瘢痕を残して治癒すると述べていること、びらんは表層の(部分的な)組織欠損として定義されていることを確認した。閲覧 2026-08-04
  3. 3.Necrotizing Fasciitis(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)壊死性軟部組織感染症は非壊死性の軟部組織感染症に比べ、呈している症状に不釣り合いな激烈な疼痛と全身の敗血症徴候を伴って発症することが多いこと、進行期には血栓化した小血管と皮下組織の浅在神経の破壊により患部の疼痛がかえって減弱することを確認した。閲覧 2026-08-04