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Disease Atlas · 腫瘍 · 腫瘍

疣贅癌

Verrucous carcinoma

別名
いぼ状癌
臓器系
腫瘍皮膚
科目
DermatologySurgery
トピック
皮膚科 2-04:性器疣贅(尖圭コンジローマ)外科学 S-17:直腸・肛門腫瘍
鑑別疾患
陰嚢癌
関連疾患
Buschke-Löwenstein腫瘍
症状
皮膚びらん・潰瘍分泌物出血

🧠 全体像:は、の一亜型でありながら、周囲へ「押し広げるように」深部へ拡大するを持つのに、転移はまれという、悪性度の評価が難しい腫瘍である。同じ疾患単位が生じる部位によって呼び名が変わる(口腔=、外陰・肛門性器=、足底=epithelioma cuniculatum、喉頭など)ことも理解を難しくする一因になる。⚠️ 表面を浅くこすっただけの生検では良性のと見分けがつかず、深部の押し広げる境界まで含めた生検でなければ診断できない。放射線治療の位置づけは長年「を誘発する」として避けられてきたが、よりな検討はこれを裏付けておらず、現在も評価が分かれている。

定義と生物学的特徴:押し広げるが転移しない

は1948年にAckermanにより定義された、の亜型である1。に発育し、表面はで緩徐に増大する1。

⭐ この腫瘍を特徴づけるのは「浸潤の仕方」である。 通常の扁平上皮癌のように個々の腫瘍細胞が・単細胞性に周囲組織へ食い込むのではなく、境界の丸みを保ったまま塊として下方へ拡大する1。この push型ののため、細胞異型に乏しく一見良性にみえる組織像でありながら、放置すれば骨・軟部組織まで及ぶを持つ。

一方で、はきわめてまれで、遠隔転移の報告はない1。「組織は高分化で大人しく見えるのに、周囲へは容赦なく広がり、しかし転移はしない」という一見矛盾した振る舞いこそが、を理解する核心になる。

部位別の呼称

同一の疾患単位が、発生部位によって異なる名で呼ばれてきた1。

部位 呼称
口腔 、florid oral papillomatosis
外陰・肛門性器
足底 epithelioma cuniculatum(carcinoma cuniculatum)
喉頭

Buschke-Löwenstein腫瘍との関係:連続するスペクトラムの一段階

外陰・肛門性器領域では、(良性の)から、さらに通常の扁平上皮癌へと連続するスペクトラムが想定されており、明確なを引けるとは限らない(詳細はを参照)。この領域ではHPV6・11型によるが病変の起点になる。

HPVの関与:部位によって様相が異なり一様ではない

⚠️ 「=HPV6・11型」と一括りにしない。 の関与は部位や研究によって大きく異なり、一様ではない。

  • 全体での検出率は29.5%にとどまるとする報告があり、型の内訳までは示されていない1。
  • 29例の検討では、 は45%に検出されたが、陽性例の内訳はHPV-16単独・HPV-18単独・両方の混合のみで、HPV-6b/11 はいずれの症例からも検出されなかった2。の原因型が低リスクのHPV6・11であるのとは対照的に、で検出されるのはのHPV16・18である。
  • 外陰・肛門性器領域(からのスペクトラム)は例外的にHPV6・11型との関連が確立している(詳細はのノートに譲る)。

💡 同じ「」という組織診断名でも、発生部位によってウイルス学的背景が異なりうるという点は、単一の病因論に当てはめて理解しようとすると誤る典型例である。

診断:生検の落とし穴

⚠️ 表面だけの浅いは、の診断に不十分なことが多い。 は境界部で細胞異型に乏しく良性のに酷似するため、臨床病理学的診断はしばしばとなり、極めて難しい1。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='exophytic (outward-growing)'>外向性</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='verrucous'>疣贅状</span>の病変を疑う"] --> B["表面の浅い<span class='jp-term jp-term-diagram' title='incisional biopsy'>切開生検</span>"]
    B --> C{"深部の押し広げる境界を<br>組織学的に評価できているか"}
    C -->|"評価できていない"| D["良性の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='verrucous hyperplasia'>疣贅性過形成</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='misdiagnosis'>誤診</span>しうる"]
    C -->|"評価できている"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deep invasion'>深部浸潤</span>パターンを確認"]
    D --> F["複数回・深部に及ぶ生検を追加"]
    F --> E
    E --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='resection specimen'>切除標本</span>で最終診断を確定"]

深部の浸潤パターンまで含めて評価できる、複数回・深めの生検が推奨される1。1回の浅い生検で良性と判定されても、臨床像(緩徐だが進行性の)が合わない場合は、生検をやり直す。

治療:外科的切除が基本、放射線治療の位置づけは今も議論が続く

標準治療は外科的切除

適切な治療は外科的切除である1。押し広げるように浸潤するため、切除範囲は肉眼的な病変の広がりだけでなく、深部への進展を十分に評価したうえで決める。

放射線治療をめぐる議論

⚠️ 放射線治療は、をさせを持つに変貌させるという懸念から、古くから避けられる傾向にあった。 この懸念は一部の著者による報告に基づくもので、一方ではであるとする立場もある1。

一方で、その後のよりな検討はこの懸念を裏付けていない。 口腔53例(42例が)を検討したでは、放射線治療への76%・24%と良好な反応を示し、5年66%・全生存率86%は同時期の通常型高分化扁平上皮癌(43%・56%)よりむしろ良好であった(p=0.004)。放射線治療後に再発した16例のいずれにもの所見は認められなかった3。

💡 このは今も解消されていない。 「には放射線治療を用いない」という古典的な教えを絶対視せず、切除が困難な部位・症例では放射線治療も選択肢になりうることを踏まえたうえで、個々の症例で外科と・放射線科が方針を検討する必要がある。手術可能な病変では、依然として外科的切除が第一選択に位置づけられる。

まとめ

  • はの亜型で、周囲組織を押し広げるようにするが、リンパ節・遠隔転移はきわめてまれである。
  • 発生部位により口腔=、外陰・肛門性器=、足底=epithelioma cuniculatum、と呼称が分かれる。
  • の関与は部位により異なり一様ではない。外陰・肛門性器領域はHPV6・11型と関連するが、ではHPV16・18型が検出されHPV6b/11型は検出されない。
  • 浅い生検では良性のとされやすく、深部の浸潤パターンを含む複数回の生検が推奨される。
  • 標準治療は外科的切除。放射線治療がを誘発するという古典的懸念は、よりな検討では裏付けられておらず、位置づけは今も議論が続く。

出典

  1. 1.Verrucous carcinoma-an enigma: Case report and review(Contemporary Clinical Dentistry(Rao DS, Kalappanavar AN, Ali IM, Annigeri RG)・2016)疣贅癌が高分化型扁平上皮癌の亜型として1948年にAckermanにより定義されたこと、部位により口腔=Ackerman腫瘍・外陰肛門性器=Buschke-Lowenstein腫瘍・足底=epithelioma cuniculatum(carcinoma cuniculatum)・florid oral papillomatosisなど複数の呼称があること、外向性発育を示し表面が細顆粒状で緩徐に増大するが未治療のまま経過すると局所浸潤性になること、所属リンパ節転移がきわめてまれで遠隔転移の報告はないこと、HPV検出率が29.5%であったこと(型の内訳は記載なし)、臨床病理学的診断がしばしば除外診断で極めて困難であり切開生検では良性の疣贅性過形成と誤診されうること、この問題を避けるため複数回の深い生検が推奨されること、標準治療は外科的切除であることを確認した閲覧 2026-09-02
  2. 2.Laryngeal verrucous carcinoma: a clinicopathologic study and detection of human papillomavirus using polymerase chain reaction(The Laryngoscope(Fliss DM, Noble-Topham SE, McLachlin M, Freeman JL, Noyek AM, van Nostrand AW, Hartwick RW)・1994)喉頭疣贅癌29例のPCR検討でHPV DNAが45%(13例)に検出されたこと、陽性例の内訳はHPV-16単独4例・HPV-18単独4例・HPV-16と18の両方5例でありHPV-6b/11 DNAはいずれの症例からも検出されなかったこと、HPV DNA陽性は進行病期の腫瘍でより多い傾向があったが患者年齢・腫瘍部位・放射線治療への反応性とは関連しなかったことを確認した(抄録のみを閲覧しており全文は未取得)閲覧 2026-09-02
  3. 3.Radiotherapy in the treatment of verrucous carcinoma of the oral cavity(Oral Oncology(Jyothirmayi R, Sankaranarayanan R, Varghese C, Jacob R, Nair MK)・1997)口腔疣贅癌53例(うち42例が根治的放射線治療を受けた)の後方視的検討で、放射線治療への完全奏効率76%・部分奏効率24%であったこと、5年無病生存率66%・全生存率86%と同時期の通常型高分化扁平上皮癌(それぞれ43%・56%、p=0.004)より良好であったこと、放射線治療後に再発した16例のいずれにも退形成転化の所見を認めなかったこと、疣贅癌は放射線抵抗性で放射線治療が退形成転化を誘発するとされてきた従来の見解に反し通常型扁平上皮癌と同等の放射線感受性を示したことを確認した(抄録のみを閲覧しており全文は未取得)閲覧 2026-09-02