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Disease Atlas · 腫瘍 · 腫瘍

濾胞性リンパ腫

Follicular lymphoma

別名
FL
臓器系
腫瘍血液
科目
PathologyInternal MedicineHistopathology
トピック
病理学 C/13:濾胞性リンパ腫/マントル細胞リンパ腫/節外辺縁帯(MALT)リンパ腫内科学 H-22:濾胞性リンパ腫組織病理 H2-008:濾胞性リンパ腫Grade 1(HE染色)組織病理 H2-009:濾胞性リンパ腫(BCL2・CD20免疫染色)組織病理 H2-007A:反応性濾胞過形成(HE染色)病理学 B/07:EGFR・ABL・BCL2遺伝子(腫瘍形成への関与)
上位概念
非ホジキンリンパ腫
鑑別疾患
MALTリンパ腫慢性リンパ性白血病
続発疾患
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
治療薬
リツキシマブイブルチニブベンダムスチン
症状
リンパ節腫脹脾腫発熱寝汗体重減少
検査値
乳酸脱水素酵素ヘモグロビン血算
スコア
Ann Arbor分類
適応薬
ベンダムスチン

🧠 全体像に由来する、の代表的な低悪性度()病型である。学習の幹は「にt(14;18)によるIGH::が生じる→BCL2でアポトーシスが阻害される→濾胞状(結節状)に腫瘍細胞が蓄積し、CD10・BCL6・BCL2をする表現型を保つ→のため無症候・低なら経過観察でよいが、症候性やでは抗CD20抗体を中心に治療し、約3〜4割はより悪性度の高いDLBCLへ形質転換しうる」という一本の流れである。CD10陽性かつBCL2陽性という組み合わせは、同じでもBCL2が陰性にとどまるを鑑別する決め手になる。

概要

(follicular lymphoma、FL)はに由来する成熟B細胞腫瘍で、(DLBCL)に次いで頻度の高いNHLである。中高年に好発し、診断時にはが広範囲に及び、でIII〜IV期のであることが多い。それでも多くの症例は長期間にわたり寛解と再発を繰り返す緩徐な経過をとり、無症候のであれば直ちに治療を要しない点がリンパ腫と対照的である。

発生機序

中心となる遺伝子異常はt(14;18)(q32;q21)で、18番染色体のBCL2遺伝子が14番染色体のIGH(プロモーター・領域に転座し、IGH::BCL2融合遺伝子としてBCL2を恒常的にさせる。

BCL2は本来ミトコンドリア外膜でBax/Bakを阻害し、内因性(ミトコンドリア)アポトーシス経路の実行を防ぐである。では、抗原親和性の低いB細胞やがアポトーシスによって選別・除去される。t(14;18)によってBCL2がすると、本来なら排除されるはずのB細胞クローンがアポトーシスを免れて生存・蓄積し、を保ったままする。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='germinal center B cell'>胚中心B細胞</span>"] --> B["t(14;18)(q32;q21)"]
    B --> C["IGH::BCL2融合遺伝子"]
    C --> D["BCL2<span class='jp-term jp-term-diagram' title='overexpression'>過剰発現</span>"]
    D --> E["Bax/Bak阻害による<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Evading apoptosis'>アポトーシス回避</span>"]
    E --> F["本来排除されるB細胞クローンが蓄積"]
    F --> G["濾胞状(結節状)の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tumor growth'>腫瘍増殖</span>"]

/も抗アポトーシス機序を中心とする点は共通するが、CLL/SLLはCD5・CD23陽性の小型B細胞からなり、表現型(CD10・BCL6)は示さない。追加の変異(KMT2Dなど)の蓄積が、t(14;18)陽性クローンから臨床的なへの進展に関与すると考えられている。

💡 MALTリンパ腫にもt(14;18)が生じることがあるが、融合するパートナー遺伝子はBCL2ではなくMALT1である。同じ「t(14;18)」という転座表記だけで両疾患を混同しない。

病理形態・免疫表現型

腫瘍細胞は正常に類似する2種類の細胞からなる。

細胞 形態 意味
小型〜中型、切れ込み・捻れを伴う核 主体を占める細胞
大型、胞状核、複数の核小体 増加するほどより進行性

リンパ節は正常構築を失い、大小がそろった腫瘍性濾胞が背中合わせに密に増殖する「結節状(濾胞状)」の外観を呈し、マントル層は菲薄化・消失しやすい。

マーカー 典型的所見 意味
CD20・PAX5 陽性 成熟B細胞由来
CD10・BCL6 陽性 形質を反映
BCL2 陽性 反応性との決定的な鑑別点
CD5・CD23 陰性 陽性ならCLL/SLLやを疑う

⚠️ でも同じ表現型(CD10・BCL6陽性)を示すが、反応性のBCL2は通常陰性で、周囲のマントル層・T細胞が陽性の内部対照になる。腫瘍性濾胞でBCL2が陽性となることが、・極性のある反応性濾胞と、密でな腫瘍性濾胞を鑑別する最大の手がかりになる。ただしBCL2陰性例も存在し、免疫染色単独ではを完全には除外できないため、構築・CD10/BCL6・必要に応じたIGH::BCL2のFISH検査を統合して診断する。

臨床像

多くは中高年で、無痛性・全身性のリンパ節腫脹に発見される。数か月〜数年かけて増大と自然消退を繰り返すことがあり、経過はきわめて緩徐である。の頻度が高く血球減少や脾腫を来しうるが、発熱体重減少などのB症状はまれである。診断時にはすでに(III〜IV期)であることが多いが、であること自体は予後不良や即時治療の適応を意味しない。

病期評価・予後指標

病期は(消化管外病変が主体のためLugano改訂を併用)で評価する。予後指標にはFL(Follicular Lymphoma International Prognostic Index)を用い、年齢、病期、ヘモグロビン値、LDH、病変数の5因子でリスクを層別化する。

⚠️ FLはあくまで予後の層別化指標であり、それ自体が治療開始基準ではない。治療開始の判断は・FLのスコアより、症状・・臓器障害の有無で行う。

グレード分類の現行の扱い

にはあたりの数で1(0〜5個)・2(6〜15個)・3A(15個超だがを残す)・3Bへ分類されてきた。この扱いは分類体系によって現在も割れている。WHO分類第5版(2022)はグレード1・2・3Aを「」という単一のカテゴリにまとめ、グレーディングを診断上の必須要件から外した。一方でグレード3B(を占める病変)はから切り離し、「」という独立した病型として扱う。これに対しInternational Consensus Classification(ICC)2022は細胞学的グレーディングを維持しており、グレード3Aと3Bの鑑別(・CD10陽性は3Aを支持するなど補助検査を併用)を引き続き重視する。いずれの体系でもグレード3Bは大細胞優位の像を示し、臨床的にはDLBCLに準じて管理される点で一致する。

診断

flowchart TD
    A["持続する<span class='jp-term jp-term-diagram' title='painless lymphadenopathy'>無痛性リンパ節腫脹</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='excisional biopsy'>切除生検</span>で濾胞構築・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Immunophenotype'>免疫表現型</span>を確認"]
    B --> C["CD10・BCL6・BCL2などでグレード・病型を評価"]
    C --> D["PET/CTで病変分布・生検すべき高集積部位を評価"]
    D --> E["血算・LDH・肝腎機能・B型肝炎など治療前評価"]
    E --> F["必要に応じ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone marrow examination'>骨髄検査</span>"]
    F --> G["Ann Arbor病期+FL<span class='jp-term jp-term-diagram' title='International Prognostic Index'>IPI</span>でリスクを層別化"]

治療

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='follicular lymphoma, FL'>濾胞性リンパ腫</span>を確定"] --> B{"限局期(I〜<span class='jp-term jp-term-diagram' title='continuous'>連続性</span>II期)か"}
    B -->|"はい"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='involved-site radiation therapy'>病変部位放射線療法</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='long-term remission'>長期寛解</span>を狙う"]
    B -->|"いいえ(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='progressive stage'>進行期</span>)"| D{"症状・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high tumor burden'>高腫瘍量</span>・臓器障害があるか"}
    D -->|"いいえ"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='watchful waiting'>無治療経過観察</span>"]
    D -->|"はい"| F["抗CD20抗体を含む<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immunochemotherapy'>免疫化学療法</span>"]
    E --> G["定期的な診察・血液・画像評価"]
    F --> H["反応後は経過観察または維持リツキシマブ"]

でも無症候・低であれば、が標準的な選択肢である。早期に治療を開始しても生存が必ず延長するとは限らないためで、定期的な診察・血液検査・画像評価でや症状の変化を追う。

状況 主な方針
限局期(I〜II期) を中心に検討する
・無症候・低 。B症状、進行する血球減少、、臓器圧迫、症候性脾腫、急速進行などがあれば治療へ移行する
・症候性または リツキシマブ(または)を含む後は維持リツキシマブを継続することがある
再発・難治 前治療・寛解期間・分子所見を踏まえ、などのなどを選択する
DLBCLへの形質転換 のうえ、としてではなくDLBCLとして治癒を目指した治療を行う

DLBCLへの形質転換

は経過中に約30〜40%DLBCLへ組織学的に形質転換しうる。一部のリンパ節だけが短期間で急速に増大する、新規のB症状が出現する、LDHが上昇する、節外病変が出現するといった変化は形質転換を強く示唆し、で確認する。形質転換後はとしてではなくDLBCLとして病期評価・を決定し、多くはR-CHOPなど治癒を目標とした多剤療法の対象となる。転化までの治療歴が少ない例ほど転化後の治療反応が良好な傾向がある一方、多剤治療歴のある転化例は予後不良になりやすい。

鑑別

疾患 ・起源 免疫形質の特徴 主な遺伝子異常 治療の要点
CD10陽性・BCL6陽性・BCL2陽性 t(14;18) IGH::BCL2 無症候なら、症候性ならリツキシマブ併用療法
抗原刺激に対する良性 CD10陽性・BCL6陽性だがBCL2陰性 特異的遺伝子異常なし 原因となる炎症・感染への対応のみ
MALTリンパ腫 下の CD10陰性・CD5陰性・CD23陰性 t(11;18) API2::MALT1など H. pylori陽性の胃例は除菌が第一選択
B細胞 CD5陽性・cyclin D1陽性 t(11;14) IGH::CCND1 で発見されやすく治癒は困難
/SLL ナイーブ・ CD5陽性・CD23陽性 主にBCL2、13q14欠失など 無症候なら経過観察、症候性ならなど

まとめ

  • 由来ので、t(14;18)によるIGH::BCL2融合がBCL2をさせてアポトーシスを阻害し、濾胞状(結節状)のを起こす。
  • CD10陽性・BCL6陽性・BCL2陽性という免疫形質が、同じ表現型でもBCL2陰性にとどまるとの決定的な鑑別点になる。
  • WHO分類第5版(2022)はグレード1・2・3Aをとして一括しグレーディングを必須としない一方、グレード3Bは独立したとして切り離す。ICC 2022は細胞学的グレーディングを維持する点で扱いが異なる。
  • 診断時はのことが多いが、無症候・低ならが標準的な選択肢であり、FLは治療開始基準そのものではない。
  • 経過中に約30〜40%がDLBCLへ形質転換しうるため、急速なリンパ節増大やLDH上昇があればしてDLBCLとして治療する。