組織病理学

組織病理学 · H2-008

濾胞性リンパ腫Grade 1(HE染色)

Follicularis lymphoma grade 1 (HE)

描出疾患
非ホジキンリンパ腫
疾患
濾胞性リンパ腫

🧠 全体像:リンパ腫(follicular lymphoma)は、由来のである。リンパ節内にで密な腫瘍性濾胞が増殖し、Grade 1では切れ込み核をもつ小型のが主体で、大型のは少ない。

標本の要点

項目 所見
基本構築 背中合わせに増殖する腫瘍性濾胞
小型〜中型、切れ込み・ねじれを伴う核
大型、胞状核、複数の核小体
マントル層 菲薄化・不明瞭化するが、一部残存しうる
され、一部残存する
周囲脂肪 進展例では腫瘍性濾胞・細胞が浸潤しうる

反応性濾胞との違い

所見
濾胞の分布 で間隔がある 密で、背中合わせ
極性 暗調部・明調部がみられる 失われやすい
多い 少ないことが多い
マントル層 保たれる 菲薄・消失しうる
BCL2 通常陰性 多くは陽性

分子病態

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='germinal center B cell'>胚中心B細胞</span>"] --> B["t(14;18)・IGH::<span class='jp-term jp-term-diagram' title='BCL2 rearrangement'>BCL2再構成</span>"]
    B --> C["BCL2<span class='jp-term jp-term-diagram' title='overexpression'>過剰発現</span>"]
    C --> D["アポトーシスを回避"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Centrocytes'>中心細胞</span>が蓄積"]
    E --> F["腫瘍性濾胞を形成"]
    F --> G["骨髄・脾・他リンパ節へ進展しうる"]

典型的な低グレードでは IGH::BCL2 再構成が多いが、全例に認めるわけではない。第5版がclassic FLとしてまとめたのはの約85%であり1、t(14;18)を欠く一群をどう位置づけるかは両分類の論点として残っている。ICCはt(14;18)陰性でCD23陽性の濾胞中心リンパ腫を暫定的病型として提案した2。BCL2は細胞産生を直接増やすというより、アポトーシスを抑えて腫瘍細胞を蓄積させる。

Grade 1の位置づけ

Grade 数の目安 現在の読み方
1 0〜5個/ Grade 2と合わせて低グレードとして扱うことが多い
2 6〜15個/ Grade 1と臨床的挙動が近い
3A 15個超、を残す 病理・臨床を統合して扱う
3B相当 が 現行分類では病変として別個の評価が重要

には観察者間差があるため、Gradeの数字だけで治療を決めず、病期、、症状、、の有無を合わせる。Gradeの判定と形質転換の評価には十分な組織量が要るので、よりが望ましい3。

⚠️ 分類第5版(2022年)ではGradeの記載が必須ではない。 の約85%を占める、濾胞パターンをもちとからなり IGH::BCL2 を伴う病変をclassic FL(cFL)としてまとめ、Grade分類はcFLにのみ当てはまる任意項目に格下げされた。理由は、あたりのの再現性が低いこと(視野径の非統一、の定義のばらつき、生検法の違い)と、Grade 1・2・3Aで臨床経過に大きな差がないことである。旧Grade 3Bはfollicular large B-cell lymphoma(FLBL)へ改称され、芽球様・大型の細胞像をもつものや、びまん性増殖が主体のものはFL with uncommon features(uFL)として分けられた1。上のGradeは実習・試験や過去の報告書を読むために引き続き必要なので、対応づけて覚える。

⚠️ 「Gradeを書かなくてよい」のは第5版の話であって、ICCの話ではない。 第5版とICC(2022年)はでかなり重なるが、日常診断に効いてくる差の多くがに集まっている。Grade記載が必須のまま残っているのはICCだけである。ほかに、あたり芽球15個超(Grade 3A)でびまん性増殖を示す病変を第5版は自動的にDLBCLへ分類しない点、芽球様・大型という非典型形態のFL亜型(uFL)を独立の項目として認めるのが第5版だけである点も食い違う4。報告書の「Grade」を読むときは、どちらの体系で書かれたかを先に確かめる。

💡 再現性を上げる試みは「まだ採用されていない」だけである。 第5版は、デジタル画像解析や免疫染色によるの補助を検討したが、これらが患者の予後と対応するかが検証されていないため採用は時期尚早と判断した。将来の版で戻ってくる可能性のある論点である1。

免疫表現型

マーカー 典型的所見
CD20・PAX5 B細胞として陽性
CD10・BCL6 形質を支持
BCL2 腫瘍性濾胞で陽性となることが多い
を評価する

BCL2・CD20染色の読み方は H2-009:のBCL2・CD20染色 で確認する。

臨床と治療

で発見され、診断時に骨髄を含む多部位へ進展していることが多い。ただし、率を一律80%と固定しない。は「びまん性リンパ節腫脹・・脾腫」で特徴づけられ節外病変は比較的少ないが、発熱・・体重減少はDLBCLへの形質転換が無ければ稀である、という粒度で押さえる3。

状況 主な方針
無症候・低 経過観察を選択できる(血球減少が無ければ早期治療にのは示されていない)3
限局期 放射線治療で・治癒を目指せる場合がある
治療を要する を基盤に、または免疫調節薬などを組み合わせる
再発・難治 既治療、、分子所見に応じて、細胞療法なども検討する

をの一律な標準初回治療とはしない。キナーゼ阻害薬、幹細胞移植、はいずれも再発例で検討する位置づけである3。急速な増大、上昇、B症状、節外病変が出現した場合は、への形質転換を疑いする。

まとめ

  • は由来のである。
  • Grade 1ではが主体で、は少ない。
  • 分類第5版ではGradeの記載は任意で、旧Grade 3Bは follicular large B-cell lymphoma と呼ぶ。ICCではGrade記載が必須のまま残る。
  • 密な腫瘍性濾胞、極性消失、BCL2陽性を反応性濾胞と比較する。
  • でも緩徐なことが多いが、限局期は治癒可能性があり、形質転換にも注意する。

出典

  1. 1.The 5th edition of the World Health Organization Classification of Haematolymphoid Tumours: Lymphoid Neoplasms(World Health Organization Classification of Tumours Editorial Board・2022)WHO分類第5版(2022年)で濾胞性リンパ腫の約85%を占める、濾胞パターンを持ち中心細胞と中心芽細胞からなりIGH::BCL2融合を伴う病変をclassic FL(cFL)とまとめ、Grade分類がcFLにのみ適用される任意項目となったこと(中心芽細胞計数の再現性の低さとGrade 1・2・3A間で臨床経過に差がないことが理由。再現性が低い原因として生検法の違い(リンパ節全摘対針生検)、中心芽細胞の定義と認識のばらつき、40倍対物での高倍率視野の大きさが年代とともに変わってきたことが挙げられている)、旧Grade 3BがFollicular large B-cell lymphoma(FLBL)へ改称され、芽球様・大型中心細胞型やびまん性増殖主体の病変がFL with uncommon features(uFL)として分けられたこと、デジタル解析や免疫染色による再現性改善の試みは予後との対応が検証されておらず第5版への採用は時期尚早と判断されたことを確認した閲覧 2026-08-24
  2. 2.Follicular lymphoma and marginal zone lymphoma: how many diseases?(Virchows Archiv・2023)2022年のICCが濾胞性リンパ腫について下した結論とWHO第5版案との差異、とくにGradeの扱いとFLの遺伝学的目印であるt(14;18)を欠く亜型の位置づけが論点であること、t(14;18)陰性でCD23陽性の濾胞中心リンパ腫がICCで暫定的病型として提案されたこと、小児型濾胞性リンパ腫・精巣濾胞性リンパ腫・原発性皮膚濾胞中心リンパ腫・IRF4再構成を伴う大細胞型B細胞リンパ腫が通常のFLとは別個の病型とされ、IRF4再構成型は2017年WHOの暫定的病型から2022年ICCで確定的病型へ格上げされたことを確認した閲覧 2026-08-24
  3. 3.Follicular lymphoma: 2023 update on diagnosis and management(American Journal of Hematology・2022)濾胞性リンパ腫の診断は生検組織の組織学によること、Gradeの判定と形質転換の評価に十分な組織量を得るため針生検より切除生検が望ましいこと、免疫染色ではCD19・CD20・CD10・単クローン性免疫グロブリンとbcl-2蛋白の細胞質発現がほぼ全例で陽性で大多数がt(14;18)(IgH/bcl-2)をもつこと、無症候・低腫瘍量・血球減少なしの症例では経過観察が適切で早期治療(化学療法・リツキシマブ単剤いずれも)に全生存の上乗せが無いこと、キナーゼ阻害薬・幹細胞移植・CAR-T細胞療法は再発例で検討される位置づけであること、FLIPIが60歳超・ヘモグロビン12 g/dL未満・LDH高値・Ann Arbor III/IV期・病変リンパ節領域4カ所超の5因子で低・中間・高リスクを分けることを確認した閲覧 2026-08-24
  4. 4.Classification of indolent B-cell lymphomas: Novelties and open questions(Die Pathologie・2023)WHO第5版(WHO-HAEM5)とICCは低悪性度B細胞リンパ腫の分類でかなり重なるが差異もあり、日常診断への影響が大きい差の多くが濾胞性リンパ腫に関すること、Gradeの記載が必須のまま残っているのはICCだけであること、高倍率視野あたり芽球15個超(FL grade 3A)でびまん性増殖を示す病変をWHO-HAEM5は自動的にDLBCLへ分類しないこと、芽球様・大型中心細胞という非典型形態と生物学をもつFLのサブタイプを独立した項目として認めるのはWHO-HAEM5のみであることを確認した閲覧 2026-08-24