組織病理学

組織病理学 · H2-009

濾胞性リンパ腫(BCL2・CD20免疫染色)

Follicularis lymphoma (BCL-2) – CD20 stain

描出疾患
非ホジキンリンパ腫
疾患
濾胞性リンパ腫

🧠 全体像:リンパ腫(follicular lymphoma)の免疫染色では、CD20が腫瘍細胞のB細胞性を示し、BCL2が腫瘍性濾胞で異常発現することが多い。CD20だけでは反応性濾胞と区別できず、BCL2も陰性例があるため1、構築、マーカー、遺伝学的所見を統合する。

CD20染色

CD20は成熟B細胞の細胞膜に発現する。

染色部位 解釈
腫瘍性濾胞のびまん性膜陽性 B細胞性濾胞を可視化する
の陽性 正常B細胞も染まるため、腫瘍特異的ではない
濾胞外の散在陽性細胞 非腫瘍性B細胞を含みうる
陰性・減弱 技術的問題、治療後の抗原減弱、CD20陰性病変を検討する

⭐ CD20陽性は「B細胞である」ことを支持するが、「である」ことを単独では証明しない。

BCL2染色

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reactive germinal center'>反応性胚中心</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='germinal center'>胚中心</span>細胞はBCL2陰性"]
    A --> C["マントル層・T細胞はBCL2陽性"]
    D["典型的<span class='jp-term jp-term-diagram' title='follicular lymphoma, FL'>濾胞性リンパ腫</span>"] --> E["IGH::<span class='jp-term jp-term-diagram' title='BCL2 rearrangement'>BCL2再構成</span>が多い"]
    E --> F["腫瘍性濾胞でBCL2<span class='jp-term jp-term-diagram' title='overexpression'>過剰発現</span>"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Evading apoptosis'>アポトーシス回避</span>"]

ではBCL2が通常陰性で、周囲のマントル層やT細胞が陽性の内部対照となる2。典型的な低グレードでは腫瘍性濾胞がBCL2陽性となるため、との鑑別に有用である。

⚠️ 内部対照が陽性であることが、この染色の前提である。 反応性リンパ組織でBcl-2が陰性になるのはの大多数だけで、マントル層・のT細胞領域・内に散在する細胞はもともと陽性である。したがって「マントル層が染まっているから腫瘍」ではなく、の内部が染まっているかを見る。この陰性パターンは強い過形成でも崩れないので、内部対照が陰性なら染色自体を疑う2。

結果 注意点
腫瘍性濾胞BCL2陽性 を支持する
BCL2陰性 を完全には除外しない1
びまん性BCL2陽性 T細胞やマントル層など内部対照との位置関係を確認する
BCL2蛋白陽性 BCL2 再構成と同義ではなく、必要に応じなどで確認する2

⚠️ BCL2陽性率は文献で食い違う。 のbcl-2陽性率は、濾胞で97%とする報告3や「ほぼ全例」とする総説4がある一方、10〜15%はでBcl-2陰性という報告もある1。陰性FLでもアポトーシス量はBcl-2陽性FLと同程度に低く、Bcl-XLの高発現やAkt/Bad経路の活性化という別のが働いている。「BCL2陰性=反応性」と読まない理由がここにある。

💡 Bcl-2はB細胞リンパ腫の「型」を教えない。 他のB細胞もほぼ一様にBcl-2陽性で、でも74%が陽性である。Bcl-2免疫染色はB細胞リンパ腫の亜型分類には使えず、反応性濾胞か腫瘍性濾胞かという一点にだけ効くである2。

診断パネル

目的 主な検査
B細胞性 CD20、PAX5
分化 CD10、BCL6
アポトーシス関連 BCL2
網 CD21、CD23
クローン性・遺伝学 軽鎖制限、IGH::BCL2 FISHなど3

HE染色での構築と細胞像は H2-008:Grade 1 で確認する。

💡 免疫染色の陰性は「除外」ではなく「保留」である。 41例の検討では、bcl-2蛋白97%・単クローン性軽鎖83%が陽性だった一方、によるの検出率はbcl-2座位32%、IgH座位44%、いずれか61%にとどまった。免疫染色が判断に迷うとき分子検査は確定側に効くが、陰性でリンパ腫を否定しない3。

治療との関係

CD20陽性はリツキシマブ(rituximab)などを用いる根拠になるが、染色陽性だけで適応・治療効果を決めない。病期、症状、、既治療を合わせて判断する。

⚠️ はB型肝炎ウイルス再活性化を起こしうるため、治療前にHBs抗原、HBc抗体などを確認し、必要な抗ウイルス予防とモニタリングを行う。

⚠️ 「」でも起こる。数字で押さえる。 HBs抗原陰性・HBc抗体陽性というのB細胞326例がを含むを受けた第3相試験の解析では、8.2%が再活性化し、時期の中央値は初回投与から125日(85〜331日)だった。予防的を受けなかった群では10.8%、受けた群では2.1%。ベースラインで が検出されることが最大の危険因子(調整18.22)で、予防投与は強い(同0.09)である。月次の モニタリングに基づくで、関連肝炎の発症は0例に抑えられた5。HBs抗原陰性でも安心せず、HBc抗体を測り、投与後数か月にわたって追う。

まとめ

  • CD20はB細胞性を示すが、に特異的ではない。
  • は通常BCL2陰性、腫瘍性濾胞は多くがBCL2陽性である。
  • BCL2陰性例もあり、免疫染色単独で除外しない。
  • HE構築、CD10・BCL6、などを統合して診断する。

出典

  1. 1.Similarities of prosurvival signals in Bcl-2-positive and Bcl-2-negative follicular lymphomas identified by reverse phase protein microarray(Laboratory Investigation・2004)濾胞性リンパ腫の10〜15%が免疫組織化学でBcl-2陰性となること、TUNEL法でBcl-2陽性FLと陰性FLのアポトーシス量が同等に低くBcl-2非依存性のアポトーシス抑制が働いていること、Bcl-2陰性FLではBcl-XLの発現が高い傾向にあり、Akt/Bad経路の活性化がBcl-2以外の生存シグナルとして働いていることを確認した閲覧 2026-08-24
  2. 2.Bcl-2 oncoprotein is widespread in lymphoid tissue and lymphomas but its differential expression in benign versus malignant follicles and monocytoid B-cell proliferations is of diagnostic value(APMIS・1995)反応性リンパ組織ではBcl-2陽性が広範に分布し胚中心の周囲・胚中心内に散在する細胞・T細胞領域全般が陽性となる一方、明確に陰性なのは胚中心細胞の大多数であること、濾胞性リンパ腫細胞は一貫してBcl-2陽性であること、他のB細胞小細胞型非ホジキンリンパ腫もほぼ一様にBcl-2陽性となり大細胞型B細胞リンパ腫でも74%が陽性であるため、Bcl-2免疫染色はB細胞リンパ腫の亜型分類には役立たないことを確認した閲覧 2026-08-24
  3. 3.A comparative study of the value of immunohistochemistry and the polymerase chain reaction in the diagnosis of follicular lymphoma(Histopathology・1995)濾胞性リンパ腫41例と反応性リンパ節15例・扁桃5例の比較で、bcl-2蛋白が濾胞性リンパ腫の濾胞中心細胞の97%で陽性・モノクローナルな軽鎖が83%で検出された一方、反応性の濾胞中心細胞はすべてbcl-2陰性かつκ/λポリタイプであったこと、PCRによるbcl-2座位/IgH座位の遺伝子再構成検出はそれぞれ32%・44%(いずれか61%)にとどまり陰性でも診断を除外できないことを確認した閲覧 2026-08-24
  4. 4.Follicular lymphoma: 2023 update on diagnosis and management(American Journal of Hematology・2022)濾胞性リンパ腫の免疫染色ではCD19・CD20・CD10・単クローン性免疫グロブリンとbcl-2蛋白の細胞質発現がほぼ全例で陽性であり大多数がt(14;18)(IgH/bcl-2)をもつこと、Gradeの判定と形質転換の評価に十分な組織量を得るため針生検より切除生検が望ましいこと、抗CD20抗体による治療は病期・症状・腫瘍量を踏まえたリスク適合治療の枠組みで判断されることを確認した閲覧 2026-08-24
  5. 5.Risk of HBV reactivation in patients with B-cell lymphomas receiving obinutuzumab or rituximab immunochemotherapy(Blood・2019)既往感染(HBs抗原陰性・HBc抗体陽性)のB細胞非ホジキンリンパ腫326例が抗CD20抗体を含む免疫化学療法を受けた第3相GOYA・GALLIUM試験の解析で、27例(8.2%)にHBV再活性化が生じ発症時期の中央値が初回投与から125日(四分位範囲85〜331日)であったこと、予防的核酸アナログを受けなかった232例では10.8%、予防投与を受けた94例では2.1%であったこと、ベースラインでHBV DNAが検出されることが再活性化の強い危険因子(調整ハザード比18.22)で予防投与が強い抑制因子(調整ハザード比0.09)であったこと、HBV DNAの月次モニタリングに基づく先制治療でHBV関連肝炎の発症をゼロに抑えられたことを確認した閲覧 2026-08-24