組織病理学

組織病理学 · H2-010

慢性リンパ性白血病(MGG染色、末梢血)

CLL (MGG) – BLOOD SMEAR

描出疾患
慢性リンパ性白血病

🧠 全体像:/性リンパ腫(chronic lymphocytic leukemia/small lymphocytic lymphoma:CLL/SLL)は、CD5・CD23をする小型成熟B細胞の同一腫瘍である。末梢血に特徴的が5 × 10⁹/L以上、3か月以上持続すればCLL、主にリンパ節・脾などを侵し末梢血が基準未満ならSLLと呼ぶ12。

💡 「3か月以上持続」は今も生きている条件である。 この持続期間の要件はiwCLLの2008年版に「末梢血のBリンパ球5 × 10⁹/L(5,000/μL)以上が少なくとも3か月間存在すること」と明記されたもので、2018年改訂で削除されたわけではない。iwCLLの取りまとめ役による2025年の総説でも「CLLの診断には末梢血のBリンパ球5,000/μL以上が少なくとも3か月間存在することを要する」とそのまま記載されている2。一過性の(感染など)を排除するための条件なので、1回の血算だけでCLLと決めない。

末梢血塗抹の所見

細胞・所見 形態
CL 小型、細胞質に乏しい、円形核、粗く凝集したクロマチン
核小体 通常は目立たない
塗抹時に脆弱な腫瘍細胞が壊れた裸核状物
前リンパ球 より大型で明瞭な核小体をもち、少数混在しうる(末梢血・骨髄で15%超なら前リンパ球性進行を考える)3
好中球 大きさ・染色性を比較する内部の目安

はCLLで目立つが特異的ではない。形態に加え、絶対B細胞数とで確認する4。

💡 「」という病名は、-HAEM5では消えた。 第5版は、(B-PLL)が不均一な集まりであることを理由に独立した病型として認めなくなった。かつてB-PLLと呼ばれていた症例は、(1) IGH::CCND1 をもつの亜型、(2) CD5陽性・非マントル系B細胞腫瘍で末梢血または骨髄の前リンパ球が15%超の「CLL/SLLの前リンパ球性進行」、(3) 残りの症例が新設病型 著明な核小体を伴う脾B細胞リンパ腫/白血病(SBLPN) へ振り分けられた3。塗抹で前リンパ球が目立つときの読み替え先である。

⚠️ SBLPNは「B-PLLの受け皿」だけの病型ではない。 -HAEM5が明記しているのは、SBLPNという語が「」と「CD5陰性」の2つを置き換えるということである。B-PLLのうち吸収されたのはCD5陰性の側で、CD5陽性の症例は上記(1)(2)へ回る。SBLPNの実体としてはが主体で、腫瘍細胞はCD25・・TRAP・CD123が陰性である(と逆向きの表現型)3。⚠️ さらに、同じ2022年の(ICC)はこの統合を行わず、とを別々の病名のまま残している5。「B-PLLという病名は消えた」と書けるのは-HAEM5の体系に限った話である。

CLLとSLL

flowchart TD
    A["同じクローン性小型B細胞腫瘍"] --> B["末梢血B細胞を評価"]
    B --> C["5 × 10⁹/L以上"]
    C --> D["3か月以上持続:CLL"]
    B --> E["5 × 10⁹/L未満"]
    E --> F["リンパ節・脾などの組織病変あり"]
    F --> G["SLL"]
    E --> H["組織病変なし"]
    H --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='monoclonal B-cell lymphocytosis'>単クローン性B細胞リンパ球増加症</span>を検討"]

CLLとSLLは別々の癌ではなく、病変分布の異なる同一疾患である。SLLのリンパ節では小型リンパ球が構築を置換し、より明るい(proliferation center)が散在する。

⚠️ 5 × 10⁹/Lという線は「恣意的」だと分類自身が書いている。 第5版はMBLとCLL/SLLを同じファミリーの2病型として残し、MBLを3亜型に分ける——0.5 × 10⁹/L未満のlow-count MBL、0.5 × 10⁹/L以上かつ総B細胞5 × 10⁹/L未満のCLL/SLL型MBL、そして非CLL/SLL型MBL。5 × 10⁹/L未満という境界は恣意的だが、5〜10 × 10⁹/Lの群に比べて治療を要する可能性が非常に低い集団を切り出すため採用されている、と明記されている3。数字を「生物学的な断層」と読まず、「治療の要否が分かれる実務上の目盛り」と読む。

💡 MBLは「何もない」状態ではない。 MBLは全亜型でワクチンへの反応が不十分になり感染リスクが上がるという免疫障害を伴う3。

免疫表現型

マーカー 典型的所見
CD19 陽性
CD20 弱陽性
CD5 異常
CD23 陽性または可変
・軽鎖 弱い単クローン性
LEF1 陽性となることが多い
cyclin D1・SOX11 通常陰性

CD5陽性B細胞腫瘍ではも鑑別する。cyclin D1、SOX11、CCND1 再構成などを用い、CD5だけでCLLと断定しない。第5版はCLLの診断における必須マーカーをCD5・CD19・CD20・CD23と表面/細胞質のκ・λ軽鎖とし、他の小型B細胞リンパ腫・白血病との鑑別に有用な追加標的としてCD10・CD43・CD79b・CD81・CD200・ROR1を挙げている3。

病態と臨床像

CLL/SLLは主に高齢者に生じ、診断年齢の中央値は60歳より高い。若年成人にも起こりうるため、年齢だけで除外しない。

BCL2を含むの亢進は腫瘍細胞の蓄積に関与するが、CLLを単一のBCL2だけで説明しない。del(13q)、trisomy 12、del(11q)、del(17p)/TP53 異常、IGHV変異状態などが病態・予後・に関わる。第5版はこれらの染色体異常に加え、TP53・IGHV体細胞超・ステレオタイプサブセット解析までを予後評価に必須と位置づけている3。

所見 機序
・ 末梢血中の腫瘍B細胞増加
全身性リンパ節腫脹 リンパ節浸潤
肝脾腫 への浸潤
貧血・血小板減少 骨髄置換または自己免疫
・治療関連免疫抑制

治療の安全性

無症候で安定した早期CLLは経過観察が標準であり、診断だけを理由に直ちに治療しない。治療を要するのは活動性・症候性の病変または進行したBinet/Rai病期の患者に限られる14。症候性・進行性病変ではや、(venetoclax)との時間限定併用などを病態に応じて選ぶ。多くの患者では化学療法を用いない初回治療が優先され、特に TP53 異常例ではへ依存しない。del(17p)/TP53 変異はへの抵抗性を予測し、同時に多くの分子標的薬でも増悪までの期間が短いことを予測する——「標的薬なら大丈夫」ではなく、予後不良因子そのものである4。

⚠️ 開始時は、では出血・心房細動など、ではに注意する。

まとめ

  • CLL/SLLは同一の小型で、分布により名称が変わる。
  • CLLでは末梢血5 × 10⁹/L以上が3か月以上持続することを確認する。この持続期間の条件は2018年改訂でも失効しておらず、2025年の総説でも同じ形で維持されている2。
  • 小型成熟リンパ球とを認めるが、形態だけでは確定しない。
  • CD5・CD23と弱いCD20・表面Igを確認し、無症候例は経過観察する。
  • 前リンパ球が15%を超えるCD5陽性・非マントル系の症例は「CLL/SLLの前リンパ球性進行」。-HAEM5はを独立病型から外し、CD5陰性の残余を著明な核小体を伴う脾B細胞リンパ腫/白血病(SBLPN)へ移した——ただしこれは-HAEM5に限った整理で、ICCは旧病名を維持している。

出典

  1. 1.iwCLL guidelines for diagnosis, indications for treatment, response assessment, and supportive management of CLL(International Workshop on Chronic Lymphocytic Leukemia・2018)CLL・SLL・単クローン性B細胞リンパ球増加症(MBL)の診断、末梢血の単クローン性B細胞5×10^9/Lという境界、活動性疾患に基づく治療開始条件と無症候例の観察、反応評価と支持療法を確認した閲覧 2026-08-24
  2. 2.Chronic Lymphocytic Leukemia: 2025 Update on the Epidemiology, Pathogenesis, Diagnosis, and Therapy(American Journal of Hematology・2025)全文の「診断」節で、iwCLLガイドラインに従い「CLLの診断には末梢血のBリンパ球5,000/μL以上が少なくとも3か月間存在することを要する(The diagnosis of CLL requires the presence of ≥ 5000 B-lymphocytes/μL in the peripheral blood for at least 3 months)」と2025年時点でも記載されていることを確認した。すなわち3か月の持続という条件は2018年改訂で削除されていない。あわせて循環B細胞のクローン性はフローサイトメトリーで確認すること、WHO第5版がCLLをMBLとCLL/SLLからなるファミリーに置くこと、B前リンパ球性白血病がもはや独立した病型として認められないことも確認した閲覧 2026-08-24
  3. 3.The 5th edition of the World Health Organization Classification of Haematolymphoid Tumours: Lymphoid Neoplasms(World Health Organization Classification of Tumours Editorial Board・2022)WHO分類第5版(2022年)がMBLとCLL/SLLを同じファミリーの2病型として残しMBLに3亜型(クローン性B細胞0.5×10^9/L未満のlow-count MBL、0.5×10^9/L以上かつ総B細胞5×10^9/L未満のCLL/SLL型MBL、非CLL/SLL型MBL)を認めること、5×10^9/L未満という境界は恣意的だが5〜10×10^9/Lの群に比べ治療を要する可能性が非常に低い集団を切り出すと明記していること、MBLは全亜型でワクチン反応の低下と感染リスク上昇という免疫障害を伴うこと、CLLの診断ではCD5・CD19・CD20・CD23と表面または細胞質のκ/λ軽鎖が必須マーカーでCD10・CD43・CD79b・CD81・CD200・ROR1が他の小型B細胞リンパ腫/白血病との鑑別に有用な追加標的であること、del(11q)・del(13q)・del(17p)・trisomy 12に加えTP53変異解析・IGHV体細胞超変異解析・B細胞受容体ステレオタイプサブセット解析が予後評価に必須であること、B前リンパ球性白血病(B-PLL)が不均一性のため第5版で独立した病型として認められなくなり、その一部はCD5陽性・非マントル系B細胞腫瘍で末梢血または骨髄の前リンパ球15%超と定義される「CLL/SLLの前リンパ球性進行」として扱われること、残余の症例が新設病型「splenic B-cell lymphoma/leukaemia with prominent nucleoli(SBLPN)」に分類されること、この SBLPN という語が「hairy cell leukaemia variant」と「CD5-negative B-cell prolymphocytic leukaemia」の2つを置き換えるものであり、腫瘍細胞は著明な核小体を持ちHCLのマーカーであるCD25・アネキシンA1・TRAP・CD123が陰性であること、略号は全文を通じてSBLPNの1通りのみでSLPNは0回であること、形質転換については「Richter症候群」より「Richter形質転換」の語が推奨されることを確認した閲覧 2026-08-24
  4. 4.Chronic lymphocytic leukemia: 2022 update on diagnostic and therapeutic procedures(American Journal of Hematology・2021)CLLが高齢者に典型的に生じ臨床経過が大きく変動すること、診断が血算・血液塗抹・末梢血B細胞の免疫表現型によりCD5抗原と典型的B細胞マーカーをもつクローン性B細胞集団の同定で確立されること、治療を要するのは活動性・症候性の病変または進行したBinet/Rai病期の患者に限られること、治療選択肢がベネトクラクスとオビヌツズマブの併用・BTK阻害薬(イブルチニブ、アカラブルチニブ)単剤・化学免疫療法であること、del(17p)やTP53変異は化学免疫療法への抵抗性と多くの分子標的薬での増悪までの期間短縮を予測し、これらの症例は化学療法に抵抗性なので分子標的薬で治療すべきであること、CLL-IPIが遺伝学的・生物学的・臨床的変数を統合してリスク群を分けることを確認した閲覧 2026-08-24
  5. 5.The International Consensus Classification of Mature Lymphoid Neoplasms: a report from the Clinical Advisory Committee(Blood / Clinical Advisory Committee・2022)PMC9479027 のHTML全文で成熟B細胞腫瘍の一覧(Table 1)を確認した。ICC 2022 は「B-cell prolymphocytic leukemia」を独立した病型として保持し、脾辺縁帯リンパ腫・有毛細胞白血病と並べて「Splenic B-cell lymphoma/leukemia, unclassifiable」を置き、その下位に「Splenic diffuse red pulp small B-cell lymphoma」と「Hairy cell leukemia-variant」を維持している。すなわち WHO-HAEM5 が SBLPN へ統合した2つの病名を、ICC は別々の名称のまま残している。同一覧は CLL/SLL について、単クローン性B細胞リンパ球増加症を CLL型・非CLL型に分ける形で併記している。閲覧 2026-09-08