組織病理学

組織病理学 · H2-011

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(HE染色)

Diffuse large B-cell lymphoma (HE)

描出疾患
非ホジキンリンパ腫
疾患
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫

🧠 全体像:びまん性B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma:DLBCL)は、大型の腫瘍性B細胞がリンパ節構築をびまん性に置換する侵攻性リンパ腫である。増殖は速いが治癒可能性があり、形態、、細胞起源、MYC・BCL2 などの遺伝学的所見を統合して分類する。

標本の要点

所見 読み方
びまん性増殖 正常濾胞・洞・構築を大型細胞が置換
細胞 大型胞状核、核縁に複数の核小体
細胞 大型で中心性の明瞭な単一核小体、豊富な細胞質
高い増殖活性を反映
アポトーシス 増殖と細胞死の回転が速い
周囲 リンパ節外への進展を示す

「びまん性」は濾胞がびまん性に並ぶという意味ではなく、腫瘍細胞が濾胞構築を失ってに増殖することを指す。

DLBCLは単一遺伝子病ではない

flowchart TD
    A["成熟B細胞"] --> B["多様な遺伝子・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epigenome'>エピゲノム</span>異常"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='germinal center B-cell type'>胚中心B細胞型</span>"]
    B --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='activated B-cell type'>活性化B細胞型</span>"]
    C --> E["大型B細胞のびまん性増殖"]
    D --> E
    E --> F["急速なリンパ節・節外病変"]
    E --> G["治療に反応すれば治癒可能"]

IGH::BCL2 再構成は一部、特にで認めるが、DLBCL全例の原因ではない。MYC と BCL2 の再構成を併せ持つ病変は、現行分類で「DLBCL/B細胞リンパ腫・MYC および BCL2 再構成」として別に評価する。蛋白の二重発現とは同義ではない。

⚠️ 「現行分類」は一つではない。どちらの体系の話かを明示する。 には-HAEM5(2022)1とICC(2022)2が並立しており、名称も定義も完全には一致しない。B細胞リンパ腫(HGBL、全体の約2%)では、-HAEM5が「DLBCL/HGBL・MYC および BCL2 再構成(BCL6 再構成の有無を問わない)」と「HGBL, NOS」の2型を置き、MYC と BCL6 の二重再構成例はこのカテゴリーから外して形態に応じDLBCLまたはHGBL, NOSへ振り分ける。ICCは同じ2型に加え、MYC と BCL6 の二重再構成を暫定病型として残している3。旧来の「double-hit lymphoma」という呼び名は正式な病型名ではなく、どちらの体系でも上記の名称に置き換えて記載する。

診断パネル

目的 主なマーカー・検査
B細胞性 CD20、PAX5、CD79a
分化 CD10、BCL6
活性化B細胞分化 MUM1/IRF4
予後・分類補助 MYC、BCL2蛋白
遺伝学 MYC、BCL2、必要に応じ BCL6 のFISH
ウイルス関連 病型・背景に応じEBERなど

💡 分類は免疫染色で代用するが、限界がある。 による(GCB)/(ABC)の区別は、CD10・BCL6・MUM1の3抗体からなるHans法で近似され、152例の検討でGCB 42%・非GCB 58%に分かれ、はGCB群76%に対し非GCB群34%であった4。ただし時代の157例の検証では、Hans法がGCBと規定した症例の48%がと食い違い、Hans法を含むどの免疫染色アルゴリズムもGCB/非GCB間の予後差(では80%対45%)を再現できなかった5。免疫染色による細胞起源分類は目安であって、単独での根拠にしない。

CD20染色の役割は H2-012:DLBCLのCD20染色 で確認する。

鑑別

病変 鑑別点
反応性増殖 背景が多彩で構築が保たれ、クローン性を欠く
より均一な中型細胞、特徴的遺伝学、極めて高い
古典的 腫瘍細胞が少数で、強陽性・PAX5弱陽性
転移性 陽性、上皮性結合

治療の安全性

限局・進行、年齢、臓器機能、、分子病型を評価し、リツキシマブを含むを基本とする。R-CHOPは代表的治療で、選択例では を組み込むPola-R-CHPなども用いられる。単剤だけを一般的な治癒目的治療とはしない。

急速増殖性のため、治療開始時はを評価する。前にはB型肝炎スクリーニングを行い、使用時は心機能を確認する。

まとめ

  • DLBCLは大型B細胞がリンパ節構築をびまん性に置換する侵攻性リンパ腫である。
  • 型・型の形態、、アポトーシスを確認する。
  • t(14;18) は一部に限られ、全例の原因ではない。
  • とを統合し、を含む多剤療法で治癒を目指す。

出典

  1. 1.The 5th edition of the World Health Organization Classification of Haematolymphoid Tumours: Lymphoid Neoplasms(World Health Organization Classification of Tumours Editorial Board・2022)WHO-HAEM5(2022年)がリンパ系腫瘍を形態・免疫表現型・遺伝学的所見・臨床像の統合で分類する体系であり、大型B細胞リンパ腫群の病型名と定義を定めていることを確認した閲覧 2026-08-24
  2. 2.The International Consensus Classification of Mature Lymphoid Neoplasms: a report from the Clinical Advisory Committee(Blood / Clinical Advisory Committee・2022)ICC 2022がWHO-HAEM5と並立する成熟リンパ系腫瘍の分類体系であり、多くの病型で定義・推奨検査・診断基準を改訂し、一部の暫定病型を独立病型へ格上げしたことを確認した閲覧 2026-08-24
  3. 3.High-grade B-cell lymphomas: Double hit and non-double hit(Human Pathology・2025)高悪性度B細胞リンパ腫(HGBL)は非ホジキンリンパ腫全体の約2%を占めること。WHO-HAEM5はHGBLを「DLBCL/HGBL・MYCおよびBCL2再構成(BCL6再構成の有無を問わない)」と「HGBL, NOS」の2型とし、MYCとBCL6の二重再構成例をこのカテゴリーから除外して形態に応じDLBCLまたはHGBL, NOSへ振り分けたこと。ICC 2022は同じ2型に加えMYCとBCL6の二重再構成を暫定病型として残していること閲覧 2026-08-24
  4. 4.Confirmation of the molecular classification of diffuse large B-cell lymphoma by immunohistochemistry using a tissue microarray(Blood・2004)CD10・BCL6・MUM1の3抗体による免疫染色アルゴリズム(Hans法)で152例中64例(42%)をGCB、88例(58%)を非GCBに分け、5年全生存率がGCB群76%に対し非GCB群34%と有意差を示したこと(P<.001)閲覧 2026-08-24
  5. 5.Gene-expression profiling and not immunophenotypic algorithms predicts prognosis in patients with diffuse large B-cell lymphoma treated with immunochemotherapy(Blood・2011)免疫化学療法で治療されたDLBCL 157例の検証で、遺伝子発現プロファイルと比べGCB群を規定する際の誤分類率がHans法48%(Colomo 41%、Muris 30%、Choi 60%、Tally 40%)に達し、遺伝子発現プロファイルではGCB対活性化B細胞型の5年無増悪生存率76%対31%・全生存率80%対45%と差が出たのに対し、どの免疫染色アルゴリズムもこの予後差を再現できなかったこと閲覧 2026-08-24