組織病理学

組織病理学 · H2-012

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(CD20免疫染色)

Diffuse large B-cell lymphoma (CD20)

描出疾患
非ホジキンリンパ腫
疾患
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫

🧠 全体像:びまん性B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma:DLBCL)のCD20免疫染色では、大型腫瘍細胞の細胞膜がびまん性に陽性となり、成熟B細胞性を支持する。ただしCD20は正常B細胞や他のB細胞リンパ腫も発現するため、陽性だけでDLBCLとは診断できない。

染色の読み方

確認点 解釈
細胞内局在 明瞭な細胞膜陽性を評価する
陽性細胞の大きさ 大型が染まることを確認する
分布 正常構築を置換するびまん性陽性
内部対照 残存する正常小型B細胞も陽性
陰性細胞 背景T細胞などはCD20陰性
flowchart TD
    A["HEで大型<span class='jp-term jp-term-diagram' title='atypical lymphocyte'>異型リンパ球</span>のびまん性増殖"] --> B["CD20膜陽性"]
    B --> C["成熟B細胞性を支持"]
    C --> D["PAX5・CD79aなどで確認"]
    D --> E["CD10・BCL6・MUM1を評価"]
    E --> F["MYC・BCL2蛋白と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fluorescence in situ hybridization'>FISH</span>を追加"]
    F --> G["DLBCLと関連病型を分類"]

CD20だけでは足りない理由

状況 注意点
反応性リンパ節 正常B細胞もCD20陽性
・マントル細胞・ 多くがCD20陽性
形質芽球性分化 CD20が弱い・陰性となりうる
治療後 発現低下・消失が起こりうる
古典的 CD20は陰性または一部弱陽性が多い

CD20陰性だからB細胞腫瘍を完全に除外できるわけではない。PAX5、CD79a、OCT2、BOB1、形質細胞マーカーなどを病型に応じて追加する。

⚠️ リツキシマブ後のCD20陰性化は理論上の話ではない。 リツキシマブを受けたB細胞腫瘍124例のうち、再発・進行を確認した36例(29.0%)からした19例中5例(26.3%。DLBCL 3例とから転化したDLBCL 2例)が、CD20蛋白陰性へ形質転換していた。5例とも陰性化の確認から1年以内に死亡している1。同じ患者のCD20陰性細胞ではCD20 mRNAが有意に低く、薬(5-アザ-2’-デオキシシチジン)を加えると3日以内に発現とリツキシマブ感受性が回復したことから、少なくとも一部はな発現抑制と考えられている1。再発時の生検では、初発時の免疫染色結果を流用せず染め直す。

💡 のCD20も「常に陰性」ではない。 未治療の598例では、132例(22%)でホジキン細胞・がCD20を発現しており、陽性判定は5年無失敗に影響しなかった(ABVDまたは同等レジメン群で86%対84%)2。したがってCD20が一部陽性でもは除外できない。分けるのは転写因子の組み合わせで、CD20・CD22・CD79aの3種がそろって陽性になるのはとDLBCLに限られ、では単一マーカーのみの陽性にとどまる。PAX5(BSAP)陽性かつOCT2またはBOB1のいずれかが陰性という所見がを支持する3。

HEでの大型細胞形態は H2-011:DLBCLのHE染色 で確認する。

治療予測マーカーとしての注意

CD20陽性はリツキシマブ(rituximab)などを組み込む根拠になるが、染色強度だけで治療反応を保証しない。DLBCLでは病期、臓器機能、予後指標、分子病型を合わせて多剤治療を設計する。

安全確認 理由
B型肝炎ウイルス検査 による再活性化
感染リスク評価 ・好中球減少
・腎機能 の予防
心機能 併用時の心毒性

まとめ

  • DLBCLでは大型腫瘍細胞のびまん性CD20膜陽性を確認する。
  • CD20はB細胞系統を支持するが、DLBCLに特異的ではない。
  • 抗CD20治療後や形質芽球性分化では陰性化しうる。
  • HE、広い免疫パネル、遺伝学的検査を統合して分類する。

出典

  1. 1.Down-regulation of CD20 expression in B-cell lymphoma cells after treatment with rituximab-containing combination chemotherapies: its prevalence and clinical significance(Blood・2009)リツキシマブ併用化学療法を受けたB細胞腫瘍124例のうち再発・進行を確認した36例(29.0%)で、再生検した19例中5例(26.3%。DLBCL 3例と濾胞性リンパ腫から転化したDLBCL 2例)がCD20蛋白陰性へ形質転換し、5例とも陰性化から1年以内に死亡したこと。同一患者のCD20陰性細胞ではCD20 mRNAが有意に低く、5-アザ-2'-デオキシシチジン処理で3日以内にCD20 mRNA・細胞表面蛋白発現とリツキシマブ感受性が回復し、エピジェネティックな発現抑制の関与が示唆されたこと閲覧 2026-08-24
  2. 2.CD20 expression in Hodgkin and Reed-Sternberg cells of classical Hodgkin's disease: associations with presenting features and clinical outcome(Journal of Clinical Oncology・2002)未治療の古典的ホジキンリンパ腫598例のうち132例(22%)でホジキン細胞・リード・シュテルンベルグ細胞がCD20を発現し、陽性・陰性で5年無失敗生存率に差がなかったこと(ABVDまたは同等レジメン302例で86%対84%)。CD20陽性細胞割合のカットオフを5%から50%まで変えても差が出なかったこと閲覧 2026-08-24
  3. 3.The B-cell transcription factors BSAP, Oct-2, and BOB.1 and the pan-B-cell markers CD20, CD22, and CD79a are useful in the differential diagnosis of classic Hodgkin lymphoma(American Journal of Clinical Pathology・2003)古典的ホジキンリンパ腫57例・結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫5例・非ホジキンリンパ腫33例(DLBCL 25例、未分化大細胞型リンパ腫8例)の検討で、BSAP(PAX5)陽性かつOct-2またはBOB.1のいずれかが陰性という組み合わせが古典的ホジキンリンパ腫を予測し、BSAP陽性・Oct-2陽性・BOB.1陽性は結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫またはDLBCLを予測したこと。pan-B細胞マーカー3種(CD20・CD22・CD79a)がすべて陽性となったのは結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫とDLBCLだけで、古典的ホジキンリンパ腫では単一マーカーのみの陽性にとどまったこと閲覧 2026-08-24