組織病理学

組織病理学 · H2-013

多発性骨髄腫(MGG染色)

Myeloma multiplex (MGG)

描出疾患
多発性骨髄腫
疾患
軽鎖沈着症

🧠 全体像:(multiple myeloma/plasma cell myeloma)は、で単クローン性形質細胞が増殖するである。異型形質細胞、、、腎障害、貧血、を統合し、で治療を要する骨髄腫を診断する。

骨髄塗抹の所見

細胞・所見 形態
形質細胞 偏在核、クロマチン、質
核周明庭 Golgi装置に相当する淡明域
異型形質細胞 核大型化、核小体、核形不整、細胞
二核形質細胞 腫瘍性異型としてみられうる
背景造血細胞 好中球・骨髄球などが残存しうる

形態だけでは反応性形質細胞増加と区別できないため、CD138・CD38、軽鎖制限、、血清・尿検査を組み合わせる。

診断の枠組み

骨髄10%以上、または生検で証明された骨性・形質細胞腫に加え、少なくとも一つの骨髄腫規定事象を確認する。

区分 骨髄腫規定事象
C: に伴う血清Ca上昇
R:腎障害 主に軽鎖関連腎障害など
A:貧血 骨髄置換・腎障害など
B: 1個以上の
S:Sixty 骨髄60%以上
Li:Light chain involved/uninvolved100以上かつinvolved FLC 100 mg/L以上
M: で5 mm以上の局所病変が2個以上

💡 SLiMは2014年にへ足された。 それ以前は臓器障害()の有無だけで治療対象を決めており、が無ければ骨髄腫とされていた。IMWGは2014年の改訂で、そのうち「ほぼ確実にへ進展する」ことが検証された(S・Li・M)を持つ群を、治療を要するの定義に取り込んだ1。旧基準の 4項目は今も規定事象として残っているので、古い覚え方を捨てずに、された3項目を足して覚える。

や骨髄腫と区別し、M蛋白があるだけで症候性とは診断しない。少数には非分泌型があり、明瞭な血清M蛋白を欠いても除外できない。

骨病変の機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myeloma cell'>骨髄腫細胞</span>"] --> B["RANKLなど破骨細胞活性化シグナル"]
    A --> C["骨芽細胞分化を抑制"]
    B --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone resorption'>骨吸収</span>が亢進"]
    C --> E["骨形成が追いつかない"]
    D --> F["打ち抜き状<span class='jp-term jp-term-diagram' title='osteolytic lesion'>溶骨性病変</span>"]
    E --> F
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone pain'>骨痛</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pathologic fracture'>病的骨折</span>・高Ca血症"]

肋骨、椎骨、頭蓋骨、骨盤などにを生じる。一般的なと異なり、では反応性骨形成が乏しく病変を過小評価することがある。

遺伝学とM蛋白

を含む転座には、t(11;14) の CCND1、t(4;14) の FGFR3/NSD2、t(6;14) の CCND3 などがある。D型サイクリン経路の異常は共通してみられるが、単一の転座だけで全例を説明しない。が低いにもかかわらず1・D2・D3のいずれかの発現亢進がほぼ全例にみられ、t(4;14) のように直接D型サイクリン遺伝子を巻き込まない転座でもCCND2高発現へ収束する2。

腫瘍細胞は完全免疫グロブリンまたはを単クローン性に産生することが多い。M蛋白は感染防御に有効な抗体ではなく、正常免疫グロブリンを抑制して感染リスクを高めうる。

腎障害

病変 要点
とによる尿細管円柱で、代表的腎病変
AL 単クローン性軽鎖由来
非性の単クローン性軽鎖沈着
高Ca血症・脱水 低下と尿細管傷害を増悪

は起こりうるが、を単に「」とまとめない。腎生検を受けた190例では、関連病変が73%(33%、22%、21%)を占め、は9%にとどまる非関連病変であった3。も高Ca血症で生じうるが、は単クローン性軽鎖関連障害である。

治療の安全性

は主に高齢者に生じるが、年齢だけで診断やを決めない。例では、、免疫調節薬、副腎皮質ステロイドなどを組み合わせ、全身状態・併存症・に応じてと維持療法を検討する。だけでを決めない。

にはまたはを用いるが、腎機能、低Ca血症、リスクを評価する。感染・血栓症予防も治療内容に合わせて個別化する。

まとめ

  • は末梢B細胞リンパ腫ではなく、である。
  • 偏在核、クロマチン、核周明庭、二核などを確認する。
  • 診断はとSLiM-事象を組み合わせる。
  • は破骨細胞活性化と骨形成抑制、腎障害はなどで説明する。

出典

  1. 1.International Myeloma Working Group updated criteria for the diagnosis of multiple myeloma(International Myeloma Working Group / The Lancet Oncology・2014)MGUS・くすぶり型・症候性骨髄腫の境界に、骨髄クローン性形質細胞60%以上/血清遊離軽鎖比100以上(増加側FLC 100 mg/L以上)/MRI局所病変2個以上というSLiM基準を追加し、CRABが無くてもこれらを満たせば治療対象の骨髄腫(骨髄腫定義事象)と診断すると定めた。閲覧 2026-08-24
  2. 2.Cyclin D dysregulation: an early and unifying pathogenic event in multiple myeloma(Blood・2005)多発性骨髄腫では増殖能が低いにもかかわらず、ほぼ全例でサイクリンD1・D2・D3のいずれかの発現亢進・調節異常がみられること。転座はCCND1(11q13)やCCND3(6p21)を直接、あるいはCCND2を標的とするMAF(16q23)・MAFB(20q11)を介して調節異常を起こし、t(4;14)を伴う例と伴わない例のいずれもCCND2高発現を示しうること。すなわち単一の転座で全例を説明できず、サイクリンD経路の異常が共通の早期事象であること閲覧 2026-08-24
  3. 3.Clinicopathologic correlations in multiple myeloma: a case series of 190 patients with kidney biopsies(American Journal of Kidney Diseases・2012)多発性骨髄腫で腎生検を受けた190例では、パラプロテイン関連病変が73%を占め、内訳は軽鎖円柱腎症33%、単クローン性免疫グロブリン沈着症22%、アミロイドーシス21%であったこと。パラプロテイン非関連病変は25%で、その最多が急性尿細管壊死9%、次いで高血圧性細動脈硬化6%、糖尿病性腎症5%であったこと閲覧 2026-08-24